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滅亡間際の異世界へ〜オリジナル戦国スキルで異世界無双英雄伝〜  作者: さいぞう
第二章 アウゼフ王国義勇軍編
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第二十二話 キングロックバード 

リプルダの町から北西の山で三人はロックバードの群れとの戦闘に突入していた。


「俺は上に集中する!降りてきたやつは頼んだぞ!」


シルビアはそう言いながら矢を次々に放っていきロックバードを仕留めていっている。


何頭かのロックバードがシルビア目掛けて急降下を開始した。


「バロウ!右くるよ!」


「あぁ!俺にまかせろ!」


ロックバードが前足を突き出しながらシルビア目掛けて右から突っ込んできていた。


それをバロウが魔力の刃で翼を斬ると倒れ込むように転がっていく。


次は3頭同時にシルビア目掛けて上空から急降下してきている。


「白光一閃」


カイルは白い光を帯び、斜め上方へ飛び出した。

1頭に蹴りを食らわせながら、その反動を利用して空中で向きを変え、1頭に突きを打ち込むと更に衝撃波が発生し、残りの1頭を吹き飛ばす。


(あっ、これいいかも!)


着地しながら、空中の相手に対する攻撃方法を思いついた。


「ちょっと数を減らすね。」


シルビアに声をかけるとすぐに真上に向かって高く飛び上がる。

ロックバード達と同じ高さまできたところで素早く周りを見渡し、それぞれの位置を確認する。


「セット 服部半蔵」


武将を服部半蔵に切り替えると白光状態が強制的に解除された。


「分身の術」


槍を持ったまま空中に分身を作り出し、それを足場に飛び出した。


分身を出しては解除を繰り返しながら上空に足場を作り出していき、空中を自在に動き回りながらロックバードを次々に攻撃をしていく。


「おい、なんだありゃ。空中でカイルがカイルを踏みつけながら移動してんぞ。」


地上ではバロウがおでこに手を当てながら上空を見あげている。ロックバードがカイルに集中し出したため、降りて来なくなっていたのだ。


「あぁ、明らかに普通じゃない。不思議なやつだ。ーーもしかしたら、カイルとならお前の夢叶えられるかもな。」


シルビアは上空に絶えず矢を放ちながら会話をしている。


「お前もそう思うか!あいつ、一緒に魔導武器集めの旅に行ってくれるかな?」


バロウはシルビアの言葉にとても嬉しそうに笑っている。


上空で戦い続けているカイルはそんな地上の会話など知る由もなく空中での戦闘が楽しくなって来ていた。


(この分身の活用の仕方は発明だ。今度発動できる限界距離を調べておこうかな。)


ロックバードを倒しながら、分身の使い方について考えていると上空から何かが飛来してくる気配を感じた。


「なんだ...うわぁ!!」


上を見上げるとそれは既に目の前に来ており、両肩を捕まれそのまま身体を持っていかれてしまう。


両肩を掴まれた状態でものすごい勢いで落下していっている。肩を捩りながら逃げようとするが、爪が肩に食い込むように掴まれており逃げることができない。


よく見ると足をクロスさせているのが分かり、首も足部分で固められてしまっている。


「くっ、こいつがキングか!」


明らかに普通のロックバードよりも体格が大きかった。この巨体の全体重が首にのしかかった状態で地面に衝突すると流石に即死の可能性がある。


(まずい。首だけはなんとかしないと。)


槍を素早くポーチに収納し、再度出現させ首と足の間に槍を滑り込ませる。その槍を両手で抑え衝撃に備えることにした。


地面に落下していく勢いは止まらない。

遂にはドーン!と音を立て砂塵を巻き上げながら激しく地面に叩きつけられる。


「くはっ!」


背中に衝撃が走った。地面に自分がめり込んでいることが分かる。更には槍から伝わる衝撃で両腕に激痛が走るが、なんとか首だけは守ることができた。


しばらく楽な戦闘が続いていたのもあり、この危機感と痛みは久々だ。


キングロックバードはカイルを地面に叩きつけた後、再び飛び上がり上空に戻っていく。


「カイル!大丈夫か!」


エリクサーを飲もうか考えていたところにバロウが駆け寄って来た。


「ヒール」


バロウが手をかざしながら魔法を唱えると身体の痛みが薄れていく。


「ありがとう。なんとか大丈夫!助かったよ」


立ち上がりながらシルビアの方を見ると、心配してくれていたのか目があった。カイルの無事を確認するとすぐに視線は上空に向かい、キングロックバードに気を払いながらも、ロックバードの掃討を続けている。


(流石、冷静だ。雑魚がいたらボスとの戦いに集中できないからな。)


「バロウ。シルビアが雑魚を狩るまでキングの動きに注意しよう!」


「了解だ!」


まだロックバードは10数頭残っているがこの様子ならそんなに長くはかからないだろう。

やはり注意すべきはキングロックバードだが、遥か上空にいるのかどこにいるのかよくわからない。


「カイル!バロウ!キングが降りてくるぞ!」


シルビアがこちらに向かって叫ぶ。

上空を見上げているが、まだキングロックバードの姿は見えていない。


しばらく警戒しながら様子を見ていると確かにキングロックバードが落下してくるのが見えた。

どうやらシルビアは目がいいらしい。

自分達よりもかなり先まで見えているようだ。


「バロウ!爪に注意して、強力だよ!」


「あいよ!ーーー次の狙いは俺か!どうりゃあああ!!」


キングロックバードが飛来して来たのをバロウがメイスで弾いた。バロウのメイスからは魔力の刃が出ている。咄嗟に刃を出し弾いたのだろう。


上空は未だロックバード達が飛んでおりキングロックバードの次の動向が見えづらい。


「次はカイルに向かってるぞ!」


バロウの位置からキングロックバードが旋回してカイルの方へ降下したのが見え、すぐに叫んだ。


「了解!見えたよ!」


すぐに返事をして短剣を構える。

キングロックバードが爪を突き出しながらこちらに突っ込んでくる。


「ハッ!ーーー分身の術!」


それを横っ飛びで避けながら分身を素早く作り出した。


「はっはっはー!背中は貰ったぁ!」


カイルの分身がキングロックバードの背中に乗っている。振り落とそうとしているのか急上昇をし始め、グングン高度が上がっていく。


背中に乗った分身が短剣を思いっきり突き立てる。奇声が上空にこだまし、ダメージが入っていることがわかる。


するとキングロックバードがきりもみ式に回転し出したため、流石に分身は振り落とされてしまい落下して消滅した。


「カイル、バロウ!雑魚は倒した。あとはキングだけだ。」


シルビアが雑魚を掃討しきったようでこちらに伝えに寄ってきた。


「なぁ。あいつどう倒すかな。」


バロウが相談する様に聞いてくる。


「俺に作戦があるんだけどいいかな。」


カイルは戦闘しながら考えていた作戦を伝えることにした。うまくいけば倒せる可能性があると考えている。


「ああ、聞こう。」


シルビアがすぐに同意してくれ、バロウも頷いた。二人にカイルが手短に作戦を伝える。

二人は驚いた様子を見せ、顔を見合わせた。


「大丈夫なのか?そもそもがあんな巨体だぞ。」


シルビアが思わず確認をとるように聞いてきた。


「大丈夫!スキルで補うから任せて!この作戦で一番危険なのはバロウだよ。いける?」


「あぁ。そこは任せろ!やばかったら自分を回復すればいい。」


バロウが物怖じしない様子で答える。


「じゃあ、決まりだな。とにかくやってみよう。」


そして三人はカイルの作戦を実行することに決めた。


まず三人で固まってキングロックバードが降下してくるのを待つ。

上空を見上げ、降下を見極めるのはシルビアの役目だ。


「くるぞ。」


しばらく様子を見たのちにシルビアが合図を出す。バロウを先頭にカイルとシルビアが後ろにつく形に陣形取っている。


「おっしゃあああ!来やがれぇぇ!」


キングロックバードが爪を突き出しながら急降下してくるのを、バロウが叫びながらメイスで受け止めた。


「ぐおおおお!ヒーール!!」


地面に足がめり込み、そのまま後退しながらも自らにヒールをかけ必死に食い止める。

カイルとシルビアはキングロックバードとバロウが接触する直前にサイドステップで距離をとっていた。


「ふんがああああああ!!」


バロウは全身に力を込めながら必死に勢いを殺そうと踏ん張り続ける。

そしてついにはキングロックバードの勢いを完全に殺しきった。


「シルビアいくよ!剛力!」


それを見てカイルがすぐさま剛力を発動させながらキングロックバードに向かって飛び出した。


「どりゃぁぁぁ!!」


カイルの叫び声と共にドガンッという鈍い音がすると、バロウの目の前からキングロックバードが一瞬にして姿を消した。


カランビットナイフを握りしめたカイルの渾身の右パンチがキングロックバードにぶち込まれていた。


キングロックバードはその巨体をもって一撃で吹き飛ばされ、山の岩肌に激しくぶち当たる。


すかさず、胴体を一本の矢が突き刺さった。

激しく奇声をあげ、大きな翼をばたつかせていると2矢目、3矢目がドスッ、ドスッと突き刺さっていく。


そして、4矢目がキングロックバードの脳天を貫いたところでばたつかせていた翼が垂れ下がり、動きが止まった。


シルビアは様子を見ながらも次の矢を引き続けている。すると、キングロックバードは消滅していき何かが地面に落ちたのが見えた。


「やったか?やったな!倒したぞー!!いよっしゃあー!」


バロウが両手を突き上げ喜ぶ姿を見ながら、カイルとシルビアも笑顔で勝利を分かち合った。


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