第二十一話 魔獣討伐依頼
目的の山は山下に森が広がっており、中腹から山頂にかけては岩肌になっていた。
地図上のマーキングポイントは丁度岩肌の部分にあるようだ。
「俺は索敵スキルがあるから先行するね」
森に入るところでカイルは二人に後ろから声をかけ前に出る。
カイルとしてはマーキングポイントに誘導したい思いもあったからだ。
恐らくはそこに今回の目的の魔獣もいるはずだ。
「そういやスキルの話をしてなかったな。」
バロウが後ろから話しかけてくる。
「俺は治癒士のスキルだ。回復は任せてくれ。まぁ、前衛でも普通に戦うけどな。」
「俺は見ての通りだが弓士のスキルだ。後衛だから前は頼んだ。」
バロウに続いてシルビアも保有スキルを説明してくれた。
「了解。俺は槍術に短剣術に格闘術、あとは索敵に地図に生活魔法があるよ。状況によって使い分けてるけど前衛だね!」
「なんだそりゃ、スキルてんこ盛りかよ」
「えっ?あぁ、あはは。」
バロウの言葉に笑って誤魔化しつつ、改めて自分のスキルの多さを認識した。今まであまり実感はなかったが、武士スキルはやっぱりチート性能なようだ。
(それにしても、この二人はたぶん当たりだ。
戦場でも弓は重要ポジションであるし、何より回復役がいるというのも大きい。)
この依頼が終わったら仲間になって欲しいなと思い始めていた。
「気をつけて、この先に魔獣がいるよ。3体かな。」
索敵に反応があり、すぐに二人に伝えると、
自らは短剣を素早くポーチから取り出す。
「セット 服部半蔵」
呟くように武将を服部半蔵に切り替え、反応のあった方に進んでいく。
反応の正体はゴブリンだった。
ダンジョンで散々戦った魔獣だ。
「俺に任せろ。」
そう呟いたのはシルビアだ。
大弓を構え、矢をギリギリギリっと引いていく。
(こんなところから届くのか?まだ魔獣が見えたばっかりだぞ。)
それはカイルが想定していた弓の射程よりもだいぶ遠く思えた。
バシュンッ!という音と共に放たれた矢が風を斬りながら豪快に突き進む。まるで重量の影響を感じないかのように矢が一直線に飛んでいき、弓ゴブリンの頭部に命中した。
矢の威力は衰える事なくそのまま頭を引きちぎり吹き飛ばした。
「すげ〜」
カイルは思わず感嘆の声をあげる。
ゴブリンはこちらの存在に気付き向かってき始めていた。
「シルビアの射線だけ気にしとけば大丈夫だ。あとは好きに戦っててもあいつがうまく調整してやってくれる」
バロウがシルビアとの連携の取り方を簡単に説明してくれた。かなり信頼を寄せているようだ。
どうやら自分が射抜かれるかもというのは心配しなくていいと言っているのだろう。
「了解!」
バロウに返事をしながら、カイルがゴブリンに向かって走り出す。
シルビアの射線と被らないよう少し外側を意識して進んでいると二撃目が発射されたようで、真横を矢がすごい勢いで通り過ぎていく。
(すごい風圧だな。あの大弓だからこその威力と射程か。)
カイルがたどり着くまでに既に2体のゴブリンを仕留め、残り1体になっている。
最後はカイルがすれ違いざまにゴブリンの放つ攻撃をかわしながら背後に周り、短剣を後頭部に突き刺す。
ズシャと短剣を引き抜くと、そのままゴブリンは倒れ込み生き絶えている。
「楽勝だったな!」
「お前は何もしてねーだろ。」
腕を頭の後ろで組みながら笑っているバロウに対して、シルビアが呆れ顔でツッコミいれる。
「じゃあ、次はバロウに戦って貰おうかな!」
カイルは笑いながらバロウに向かって冗談っぽく言う。
「おう!まかせろ!」
バロウは自信満々に笑い返した。
三人はそのまま目的地に向かって進んでいく。
「今度は2体だね」
「おいっ、出番だぞ。」
索敵に反応がありそれを伝えるとシルビアがバロウを冗談っぽく軽く煽る。
「俺一人で十分だよ。見とけよ!カイル!」
バロウがバロウメイスを構え先行する。
反応はまたもやゴブリンだ。
どうやらゴブリンの生息地のようだ。
「おらおらおらー!バロウ様のお通りだぁ!」
バロウのその言葉にゴブリン達もこちらに気付き、向かってきた。
「そいっ!」
魔力の刃を出し、出会い頭に一体を斬りつけるともう一体が飛びかかってくる。
「ほっ!ーーーおらっ!」
それをメイスを頭上で水平にして攻撃を受け止めるとすかさず前蹴りを腹部に食らわせ、後方に吹き飛ばしたところを追い討ちで斬り伏せた。
「どんなもんだい!」
メイスを地面に立て、高笑いをしている。
「まだまだ余裕な感じだね!見事だったよ!」
シルビアとバロウの二人は明らかに戦闘慣れしている。二人でギルドの依頼をこなしまくって来たのだろう。
「よーし!このまま一気に行こう!」
それからもちょこちょこ戦闘をしながらも突き進む。そのまま森を抜け山に差し掛かってきた。
カイルは地図を開き、位置を確認する。
(もうちょっとでポイントの場所だ。
「おいっ、目的地あそこじゃないか?」
「あぁ、たぶんあそこだろうな」
二人の会話に、えっ?っとなり顔を上げ、バロウが指を刺している方向を見た。
平地のような場所があり、鳥のような魔獣がたくさんその上空を飛んでいる。
「今回の魔獣知ってるの?」
「なんだ?知らずに来たのか?今回の依頼はキングロックバードだ。ロックバードは群れで行動するらしいからな。あそこにキングがいる可能性は高い。」
思わず二人に質問すると、シルビアが不思議そうな顔をしながらも答えてくれた。
「あはは、実は文字が読めないんだ。強い魔獣がいるってことで来たからね。」
笑いながらなんとか誤魔化すと、バロウに肩をポンと叩かれた。
「カイル、気にするな。俺も読めねー。俺達にはシルビアがいる!」
親指を立てて自信満々な顔で言うバロウに、
シルビアがやれやれというような顔をした。
「さっ、雑談は終わりだ。あそこにいくぞ」
シルビアに促され、平地を目指して進む。
少し迂回気味に山を登っていき、ついには平地にたどり着いた。
「何頭いるんだ。」
ざっと見ただけでも2、30頭はいるだろうか。
「ひたすらシルビアの矢で数を減らしていくのをメインとして、俺とバロウでシルビアを守りながら近づいて来たやつを処理するってのでどう?」
「あぁ、それしかないだろうな。」
「了解だ!」
カイルの提案に二人はすぐに同意し、すぐに武器を構えた。
カイルは武器を朱槍に変え、カードセットも可児才蔵にしている。上空の相手なため少しでも長い武器がいいと考えたからだ。
「じゃあ、始めるぞ。」
そう言いながら、シルビアが弓をギリギリッと引き始める。
「いつでもいいよ。」
そう返事をしつつ、槍を構えいつでも動ける体勢をとった。
バシュン!と言う音と共に矢が上空に向かって飛んでいき、ロックバードの胴体を貫いた。
そのままロックバードが落下していく中で、ほかのロックバード達が一斉に奇声をあげ、戦いの幕が開けた。
執筆のストックが少なくなってきましたので2日に1回ペースになります




