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滅亡間際の異世界へ〜オリジナル戦国スキルで異世界無双英雄伝〜  作者: さいぞう
第二章 アウゼフ王国義勇軍編
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第十五話 行商人 イザベル

拠点を出発して、3日が経過した。

カイルは一番近い町っぽいポイントを目指し進んでいる。身体作りを兼ね移動はもっぱら走りだ。ひたすらに町目指して爆走中だった。


「ハァ、ハァ。今日はここら辺までにするか。」


空は夕日色に染まり、夜が近いことを告げていた。索敵のスキルを使い、周辺に魔獣がいないことを確認した上で寝床となる場所を探す。


しばらく探した後に大きな木を見つけ根元に腰掛けた。


慣れた手つきでポーチから枝をポンポンと出し重ねていく。


「クリエイトファイア」


魔法を唱えると指先からライターのように小さな炎が現れ、枝に火をつける。

焚き火が即座に出来上がる。


使用したのは大谷吉継のスキルである生活魔法だ。


ポーチから解体済みのリトルボアの肉を取り出し、枝に刺して焼いていく。


「クリエイトウォーター」


今度は別の魔法を唱えると、指先から水が飛び出してくる。その水を直接口に流し込み、喉の渇きを潤した。


食事を終え、ひと息ついたところでトレーニングを開始することにした。

槍術、短剣術、格闘術とそれぞれの型を繰り出していき、動きの練度をあげていく。

このトレーニングも日課のようにこなしている。


ひとしきりトレーニングを終え、いい具合に汗もかいていた。


「クリエイトブロック」


魔法を唱えると、地面の土が長方形に綺麗に抜き取られ、手元にレンガが出来上がる。

ポイっとそのレンガを焚き火の中に入れた。


「クリエイトブロック。クリエイトブロック。クリエイトブロック。」


何回もクリエイトブロックを唱え、ついには小さな箱状の空間を地面に作り出す。


「クリエイトウォーター」


そこに向かってクリエイトウォーターで水を張っていく。しばらくボケーっとしながら待っていると満水になっていた。


先程の焚火に入れたレンガを木の枝で触れるとレンガは消え去り、アイテムボックスに収納された。今度は先程の水場に向かっていき、焼いたレンガを空中に取り出し落とす。


ジュー!という音を立てながら、水温が上がっていき簡易なお風呂が完成した。


「ふ~、極楽。極楽。」


満天の星空を眺めていると、まるで露天風呂に入っている気分になる。1日の終わりはやはり風呂に入りたくなるというのは日本人の性というやつかもしれない。


ついでに着ていた服をお風呂の中で軽く洗い汚れと汗を落とすのも忘れない。


「あー、いいお湯でした。」


ホカホカに温まった身体で裸のまま出ると、濡れた衣服を枝とツルを組み合わせた物干し台にかけていく。


「クリエイトウィンド。クリエイトウィンド。クリエイトウィンド」


魔法を唱えながら手を振ると風が発生する。焚火の熱を利用してクリエイトウィンドで衣服に温風を当てているのだ。


しばらく風を当て、衣服が乾いていることを確認し服を着た。


カイルは生活魔法をフル活用していた。


蘭丸といた時は、まぁいいか!などと適当に過ごすこともあったが、一人で生活をしていると何故か淡々と作業をこなすように過ごしてしまう。


今もまるでルーティーンをこなすかのように一連の夜の流れを行っていた。


「ふー、あとはボケーっとしてから寝るだけだな。」


なるべく草むらっぽいところで、頭の後ろで腕を組み寝転がる。


すると遠くからガラガラという音がして、こちらに何かが近づいてくるのがわかった。


ガバッと起き上がり、すぐさま短剣を取り出し警戒をする。

索敵スキルで確認しても敵反応は無かったため敵意は持ってはいないようだが、念のため警戒は緩めない。


そのまま警戒を続けていると荷馬車がこちらに向かってきているのが見えた。


「すいませーん、今夜一緒に過ごさせてもらえませんかー?」


荷馬車から人の声がし、敵意がないことを見せているのか少し遠目から手を振りながらこちらに話しかけてきた。


「どうぞー!」


そう返事を返すと荷馬車はそのまま近づいてくる。馬が木製の荷台を引っ張っていた。


(おぉ、この世界にも馬があったのか)


馬の存在に少しテンションが上がったが、平静を装い相手の出方をみている。


「あれ?君、一人?」


荷馬車から降りてきたのは女性だった。

赤髪で歳は20歳手前くらいだろうか。

この世界で初めて出会った人族だ。


「うん、一人旅だよ。」


とりあえず10歳っぽさをだすためにタメ口で話すことにした。


「そっか。いや~、助かったよ~。実は馬が突然暴走しちゃってさ。迷子になっていたところで火の明かりが見えたから。神のお恵みだぁ~っと思って。突然お邪魔しちゃってごめんね。」


参ったという様子で頭に手をやり、笑いながら話す様子からは敵意は感じなかった。


「困った時に助け合うのは当たり前だよ。

一人旅だから寂しかったんだ。話し相手にでもなってよ、お姉さん」


手の中には短剣を隠し持っており、警戒は一応解かないでいる。


「話し相手ならいくらでも任しといて!これでも行商人なの。私、イザベルよ。以後お見知り置きを~」


「俺はカイル!よろしくね」


イザベルの様子に、とりあえずは害は無さそうだと判断し、返答をしながら見えないように短剣をポーチに閉まう。


「良ければご飯でも食べる?」


なんだか苦労してここまで来たようなので社交辞令的に聞いてみた。


「えぇ?いいの?!実はペコペコなの」


お腹をさすり、笑いながら答えるイザベルのその人懐っこさは確かに行商人に向いてるなと思い、なんだかこちらも笑みが溢れる。


いつものようにポーチからリトルボア肉を取り出し枝に刺して焼いていると。


「ま、まさか!それアイテムボックス?!」


イザベルは目を見開き、前に乗り出しながらカイルのポーチを見つめている。

あまりに驚愕している姿にとても珍しいものなんだと察した。


「あ~、たまたま運良く手に入れたんだ」


どこで手に入れたかなどは聞かれないように、とりあえず笑いながらごまかしているが、完全に苦笑いになっている気がした。


「あっ、ごめんね!あまりにびっくりしちゃったものだから。アイテムボックスってね。一部の冒険者しか持ってないものなの。市場にあまり出回ってないのよね。」


慌てて前のめりの状態から座り直し、アイテムボックスの貴重さを説明してくれた。

なるほど、アイテムボックスはかなりレアアイテムらしい。

そうこうしてると肉がいい感じに焼き上がり、美味しそうな匂いを放ち始めた。


「はい、どうぞ!」


肉を刺した枝ごとイザベルに手渡した。


「ありがとう、頂きま~す!ーーーん~、これはいい焼き加減ね!カイルくん、調理の才能あるわよ!」


「はは、ただ焼いただけだよ」


「あっ、そうだ!」


突然立ち上がるイザベル。

荷馬車の方へ行き何やらゴソゴソしている。


「これこれ~♪」


手に取った何かを焼いた肉にふりかけている。


「それ、まさかっ!調味料?調味料もってるの?!」


今度はカイルの方が身を乗り出し驚きの声をあげた。


「これはケシの実を砕いたものよ」


「ちょっと僕ももらっていい?」


おねだりをしてみると、どうぞと渡されたので新たに肉を焼き、ふりかけて食べてみる。


(これは!間違いない!胡椒だ!)


「あ~、ずっと求めていた調味料の味。幸せだぁ~」


カイルは至福の表情で肉を頬張っている。


「そんなに珍しいものでもないじゃない。」


イザベルはカイルの様子をみて大袈裟だと言うような感じで笑っていた。


しばらく二人で舌鼓を打ちながら肉を堪能した。



「あっ、そうそう!カイルくん、これあげるわ。今夜のお礼に。ほんとに助かったわ」


ふと思い立ったようにそう言いながらイザベルが出してきたのは新しい服だった。

どうやら荷馬車に向かった時に一緒にとってきたようだ。


「えっ?いいの!嬉しいよ!」


カイルは転生してから同じ服でずっと過ごしていた。戦いの影響もあり、ところどころ破れたり汚れたりしていたのだ。


「ちゃんと似合いそうなのを選んだわ。私のお墨付きよ!ーーーーーところで、さっきから気になってたんだけどこれは何なの?」


イザベルが気にしていたのはカイルが入ったお風呂だった。


「これは簡易に作ったお風呂だよ」


「えっ?こんな野外でお風呂に入れるの?ねぇ、私も入りたい!」


目を輝かせながらイザベルにお願いされてしまった。


「いや、作るのは簡単だけど目の前で入る気なの?僕、一応男なんだけど。」


「あら。もうそういうの気にするお年頃なの?一緒に入りたいなら、お姉さんは全然いいわよ~」


「は、入らないよ!ん~、そこまで言うなら作ってあげるよ。僕は後ろを向いとくからさ。」


子供だと思って喋っているのだろうが、身体は10歳でも中身は立派なおっさんだぞ。と心の中でツッコミを入れながらも結局作ってあげることにする。


同じ流れでクリエイトブロックで穴をつくり、クリエイトウォーターで水を貯め、焼いたレンガを落とし込む。


ついでに余ったレンガで焚き火の前に壁を作った。これで見えることもないだろう。


「できたよ。冷めないうちにどうぞ~」


そう言いながら、レンガの壁で見えない位置に腰をかけた。とりあえずは火の番でもしておくつもりだ。


シュルシュルと服を脱ぐ音が聞こえ、参ったなと気にしないように努めた。


「はぁ~。気持ちいい~」


「湯加減はどう?」


「うん、ちょうどいいわ~」


どうやらかなり満足してもらえているようだ。


(それにしてもどういう状況だ。これは。)


ふと冷静に今の状況を俯瞰的に見ると不思議な気分になってしまうが、こういう風に誰かと過ごすのも悪く無いもんだと気づけば頬が緩んでいた。


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