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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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9. 悪役令嬢、快適屋根裏部屋ライフ準備開始

 今日は疲れた。もう帰りたい。

 まさか私に無関心なお兄様が、しかも上の。脳筋とはまではいかないが短気で割と単純、でも貴族令息らしいプライド(たまに予想不可能な方に振り切れるのだけど)を持ち合わせた、比較的マシな方のハズなのに!よりにもよって食堂で、自宅でもしたことのない無作法を装いながら強引に接触してくるとは思わなかった。


 それに、その後周囲のご令嬢方の高ぶった気持ちを収めるのがとても大変だったのよ。

 お兄様はまだ弱冠十三歳の青二才(ガキンチョ)だけど、ーー前世が永遠の十七歳の私から見たら十三歳なんて可愛らしいものよ、ああ、まだあと数日は十二歳だったわーー家柄は飛びっきり良いし、容姿も外面だけは優しげで儚げ。ふわふわの絹糸のような金髪と、まだほっそりとしているけど長身で学園の制服補正など無くても長い手足も相まって正直キラキラの美少年。それに私同様、幼少期から剣を握り成長に負担をかけないよう慎重に身体作りと剣術の鍛錬を行って来ているから痩せ型といっても軟弱に見えるほどではない。ヒロインが転入してシナリオが始まる頃には素敵な細マッチョになることはまだ私にしか分からないことだけどね。

 午後の授業にご令嬢方が浮き足立ったままでは、彼女達の成績が心配だもの。



 今日は社交の場を始めとした様々なシーンにおける挨拶の種類を学ぶことになっている。男女別で他の二組とも合同で行われる授業だった。ここで最初に脱落すると後がしんどい事になるの、最初の印象って大事。

 社交界デビュー済みのご令嬢なら、完璧とは行かずともカーテシーくらいは出来るでしょうけど、これはなかなか難しいらしく、昨日の広大な敷地と豪華な設備を誇る学園内ツアーで、ご令嬢方の体力不足に起因する脱落者が大多数出たことからも、美しいカーテシーをつかの間維持するための最低限の筋力さえ備わってない方が多いのは想定の範囲内だったわ。


 「流石、ルナヴァイン嬢ですね、まるでお手本のような優美なカーテシーです」


 マナー担当教諭は思わず漏れそうになったため息をすんでのところで飲み込んでいた。喜色の混ざる声までは抑える余裕がなかったようだけど。

 大げさだわ、だって十二歳ともなれば上位貴族の半数以上が社交界デビューを果たしているはず。

 この国の成人は十五歳。大抵の高位貴族はその前に令息令嬢達を社交界に売り込むためデビューさせるのだから、挨拶くらい躾けられてないはずないじゃない。

 これは学園入学前の躾も十分に出来ていない低位貴族の子女達を焚き付けているのね。現に他の高位貴族のご令嬢方も手放しに褒められているようだもの。


 個人的意見だけど、出来ないご令嬢方をあまり煽らない方がいいと思う。貴族階級の違いを思い知らせるのもある程度必要なことだとは思うけど、無駄に感情的に対立するほどになってはこの帝国の未来は明るくならないわよ。

 ランチをご一緒しているご令嬢方四人も担当教諭のフロリス先生のお眼鏡にかなったようで褒められていたから良かった。


 この学園は場所柄だけに教員も貴族階級の者が多くを占めるから、最初の心象というのはかなり重要になるの。

 ちなみにフロリス先生はフロリス伯爵家先代当主の三女、伯爵家といえば上位貴族だけどフロリス家はそれほど裕福な方ではなく、地位も多くの伯爵家の中では中の下といった所。後進を指導したいという志でこの道に入ったのか、実家が持参金を用意しきれなくてこの道に入ったのかは分からないけど、女性の過去はあまり詮索しないに限る。噂好きが多いのは置いといて。

 他には修道院と言う手もあるけどある程度の寄付金が必要になるし、皇宮官僚は女性への門戸が非常に狭く、よほど優秀でなければ推薦状を取れない。あとは宮廷女官、侍女、家庭教師など。貴族階級であっても女性が就ける仕事は非常に少ない。


 予想はしていたけど、本当につまらない授業で見学にさせて欲しいくらいだった。もちろんぼーっとアホみたいに眺めるつもりはない。未来の目的のための知識を深めておきたいから読みたい本はいくらでもあるもの。



▽▲▽▲▽


 不覚にもお兄様に後ろを取られたから、帰宅後は部屋で瞑想して心を落ち着けてから裏庭で鍛錬を積んでいた。


 「はぁっ!」


 走り込み一時間で体を温め、素振り百回をこなし、軽い準備体操を終え剣を構える。

 丸太を芯にした藁巻きの棒がさして手応えなく斜め切りされた。


 「あら、そんなに剣の腕前落ちてない、かも?」


 ここしばらく社交界デビューや学園入学の準備に時間を取られて鍛錬を怠っていたにしては上々なんじゃないかな。

 身体も軽いし、これは屋根裏部屋生活を楽しむための準備にかかって良いのではないかと思ったので、予定より早めに鍛錬を切り上げ、シャワーで汗を流し、少しぬるめのお湯でゆっくりと半身浴をする。今回はラベンダーの精油を数滴浴槽(バスタブ)に垂らした。

 ラベンダーは鎮静効果も高いけど、気持ちをすっきりとさせる効果もある。それに頭まで湯に沈めると髪がサラツヤになるの。本当は黒髪の方が効果高いらしい。効果の差は検証出来ないけど、傷んだ髪を労ってくれる効果があるのかもね。




▽▲▽▲▽


 入学式から三日が過ぎ、ようやく週末がやって来た。

 今日は試してみたいことがあった。

 領内では天才魔術師とその素質は買われているけど、実際に出来ることはあまり多くない。だってちゃんとした指導者に師事していないのだもの。領地の城には生活に必要な魔法スキルが高い魔法使いや魔術師が多かったから、必要に応じて教えてもらっていたの。


 ルナヴァイン家には三つの生活拠点と砦が一つある。公爵家としては少ない方かな。

 皇都の邸、所謂タウンハウスは皇宮の南西側。お隣さんといっても良いほどすぐ近くにもかかわらず、かなり広い敷地に贅を凝らした母屋と別棟数棟にそれぞれに庭園などムダに贅沢。

 領地の本邸に至っては町一つくらいありそうな敷地に本邸はお城で、その他にも別棟や尖塔がいくつもあるし、自慢の庭園がいくつもあり良く手入れされた森も残してある。当然使用人も多く、一家で住み込みも珍しくないから本当に町一つね。

 他に先代当主夫妻が療養している森の中の小さな別邸、温泉付き。


 ()()の”城塞”も敷地は広い。砦としての機能重視で優美さには欠けるけど非常に堅牢な作りで、周囲を囲む城壁は国境線の城壁と深いお堀並みで、急な有事でも皇宮に早馬を飛ばし、協議と各地からの援軍が到着するまでの時間稼ぎで約二ヶ月近く持ち堪えられるように想定されている。同直轄地内には皇家管理下の物見の塔が五ヶ所設置されているのだけど、どれほど役に立つのかは知らない。うちの監視も含めていたりして?まぁうちにヤマシイことはないけどねー。


 ”城塞”が建てられている土地は帝国直轄地であり隣国との国境がある緩衝地帯。療養や物見遊山に出かけるような場所柄ではなく、いかに皇家から信を置かれる我が家であろうとも、当主一家がマメに出入りすれば二心ありと邪推される恐れがあるーーどの派閥にも所属してないから全方位警戒対象なのよ、うちは中立派ですらないのーー為、数年に一度の軍事指導を兼ねた視察時には当主でも客間に滞在するから、当然私物も置いてないらしい。本邸から生活に必要な物資を運び込まなくてはならず、移動は小さな遠征規模。


 普段は国境警備の為の、護衛騎士1,200名と私設魔導師団50名、世話役の使用人60人が24時間体制で国境を警戒している。うん、生活拠点というよりは住み込みの職場ね。

 そんな皇都を離れた正真正銘の何もないど田舎だから公共設備(インフラ)も完備されているのは下水道だけ。福祉経済(インフラ)設備を皇都と比べてはいけない、ましてルナヴァイン公爵家領地となんてとんでもない。


 でもそこはルナヴァイン家。

 敷地内に井戸は数カ所あれどそこから水運びをさせるなんて無駄な重労働をさせれば使用人の数が足りない。つまり非戦闘要員をあまり置きたくない。だから他の邸同様に福祉経済(インフラ)設備を独自に備え付けてある。流石公爵家序列第二位にして大金持ちのルナヴァイン家ね!他家とはお金の使いどころが違うの。


 個室、二人部屋はシャワーと浴槽(バスタブ)は魔法の使えない使用人でも使えるように、魔術道具(下手なドレスや宝飾品より高価)を使ったユニットバスが各部屋に設置されている。

 中部屋から大部屋にはシャワー室を設置していないけど、各階にシャワー室だけを順番待ちに不自由ない程度の個数設置して、他に男女別の大浴場が二十四時間使用出来るようになっている。ちなみにトイレは共同で室内には無い。これは掃除の効率化を優先した結果ね。でも各階に数カ所の他、鍛錬場近くにも十分な数を設置してあるから不便はないと思う。もちろん全て水洗トイレ。(ウォシュレットはないわよ?欲しいけど)

 客室には本邸や別邸と比べればこぢんまりとしているけど、シャワールームと浴槽(バスタブ)が付いているし、トイレも洗面付きの専用のが設置されていて、ちょっといい感じのホテルのよう。


 調理場の水周りももちろん、現代のシングルレバー式蛇口と給湯システムとはいかないけど、蛇口をひねれば水が出る、魔術道具の湯沸かし器からお湯が出る。

 なので設備的にはここが帝国一の最新設備と言えるんじゃないかしら?疲れた兵士達(魔法使い含む)や使用人達に、更なる労働をさせないための配慮といえば聞こえがいいかも。本当は場所がここでなければもっと非戦闘要員の雇用を増やして補えるわけで、本来ならその方が喜ばれると思うのよ?うちのお給金と福利厚生は高水準だからね。


 さて、どうやって自由時間を作ろうか?貴族令嬢が伴も連れずに数時間でも行方不明になったら大騒ぎよね。

 とりあえずは屋根裏の状況確認がしたい。ついでに掃除も。うーん。


 朝の支度を簡単に終え、朝食前に一汗……ではなく、かねてより試したかった”転移魔法”を実験してみることにした。本当は誰かに師事して指導してもらいたい。魔力量と知識は十分ある。魔力の制御にも自信がないわけじゃないけど、コントロールを誤り暴発すると大怪我をしかねない。


 「と言ってもやるしかないわ!城塞には行ったことがないから顔パス効かないかもしれないし、早馬でも五日はかかるというのに悠長にしていられない」


 幸い庭が無駄に広い。あえて手付かずにしている森の中を「一人で散策したい」と侍女を下がらせて準備OK!?

 帝国地図の中でも市井に出回ることのない軍事用の精密な地図を使って転移先を確定し、魔法陣を展開させる。


 【座標移動(テレポート)】 真下に展開させた魔法陣が青白い光を放つ!


 ひゅうぅぅ~


 「寒い!」


 一言零しながら急激に下方への(重力)を感じる。


 (ここ城塞の上空だ!)


 咄嗟に【空中浮遊(レヴィテーション)】を唱える。

 初めて、それも急の判断でコントロールも意識出来なかったけど成功したみたいでほっ、とするとともに脱力する。

 屋根裏への移動が失敗したのは、城塞の結界が上空までドーム状にすっぽりと覆っていたかららしい。

 ああ、ここからどう結界の隙を探して屋根裏に潜り込もうかな?と考えていたら、地上の様子が慌ただしいことに気がついた。


 あーーこれ確実に見つかったわ。

ここまでで、かなり誤字脱字があったので多少加筆し修正しました。m(_ _)m

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