83. 悪役令嬢、夏休みらしくBBQを楽しみましたの
なーつやすーみ♪晴れ上がり~だっけ?もう夏休みに入ってしまっていた。”婚約破棄イベント”は無かった!
つまりヒロインは殿下だけではご満足頂けてないのだ。
殿下だって高スペックの超絶イケメン皇子様なのよ!!ただ俺様で命令はするくせに私のことをちっとも考えてくれないだけ。まぁ政略結婚の相手に過ぎない女と惚れた女への対応が違うのは当然ね。
私も弱っちい殿下相手にやり過ぎたとは思うわ。あそこまで徹底的に伸さなくても良かったかもしれないけど、我慢出来なかったの。どうしてそこまで我慢出来なかったのかまでは覚えていないわ。だって私が七歳の頃のことよ?あまり良い思い出でも無いのに細かく覚えている訳がないわ。
私は今領地の本邸の屋根の上でお昼寝していた。まるで猫みたいだわぁ。さっきまで新作の刺繍を根詰めてやっていたからちょっとだけ息抜きね。そろそろ戻って、ティータイムにでもしようかしら?
私は私専属侍女のケイナに紅茶を淹れてもらって、ゆっくり美味しいビスケットとともに楽しんでいた。ケイナは癖の全くない漆黒のストレートの髪が神秘的で瞳はロイヤルサファイアのような濃いブルーの美人。所作も美しく優しいお姉さんのような人。私のお気に入りだからこそ、専属にはしたく無かった。でもそう上手く行かなかったのよね。
今彼女には本邸の片隅でひっそり営業して居る『ルゥナ工房』の店長も任せて居るから、私に万が一のことがあってもこのお店が彼女に残る。絹物の布製品に刺繍や魔法付与を施した魔石を付けた商品が主力の小さなお店だけど、割と繁盛している。刺繍職人の補充も考えたほどだったけど、今の所は間に合っている。まぁ、うちの製品は魔法付与で絹物なのに長持ちしてしまう物が多いから、って言うのもあるのかなぁ~良いことだと思うけどね。なのでまったり、新作のデザインなんて考える余裕があったりするの。
さて、刺繍の続きでもしようかな?って思っていたところに、少し早めに昼食の準備が出来たと知らせがあったので、そのままダイニングへ。
あらら?お母様のご機嫌がよろしく無いわ。今日の昼食に早く呼ばれた何かがあるに違いないわね。私は黙って席に着いた。
「まったくもう、面倒なことが起こりましたのよ」
お兄様方が着席してからお母様が切り出した、でもお父様はまだ来ていない。
「森の別邸近くに、ダンジョンが出現しましたの。 幸い一早く気が付いたお義母様が出入り口を封印してこと無きを得ているわ。 お父様はそれで先んじて森の別邸に飛んだの。 幸い小規模なダンジョンで、15階建ですって。 つまりは地上部で15階層、地下は無いわ。 ダンジョン破りするにも、消滅時に森に被害が出るかもしれないわ」
あー……分かる。日本ではやれないけど海外では良くやってた老朽化した建物の解体方法と同じね。ちゃんと周囲を覆って爆破するのだけど、粉塵がすごいって話。今回も粉塵被害が出るわね。それにしてももう内部調査済みか。真っ先に対応したお祖母様といい早いな。後分かって無いのは魔物の出現情報かな。
「ダンジョンを潰す前に結界で覆う必要があるって訳だね。結構大きめの結界が必要になるし、後片付けも面倒そうだな。全く迷惑な事だ」
リンデーン兄様が世間話でもするかのように応じた。私は落ち着いて居られないわ!あの美しい森が被害に遭っただなんて!既にダンジョン敷地の自然は破壊されているだろう。
「お祖母様が封印しただけで済んでいるって言うのがまた凄いな。で、この件はどう処理するの?もう決まっているんですよね」
フィンネル兄様も落ち着いている。なんだろうなぁ、私以外みんな落ち着きすぎだよ!
「今回のダンジョンの建物の素材は何で出来ていますの?」
私はまず環境破壊がどの程度の影響になるのかの材料を知りたくて聞いてみた。
「そんなにヤワなもんじゃ無いよ、何しろ魔物が住むと言うよりは、閉じ込めている建物だ。 通常は硬い岩や鉄鋼石を主材にした中に希少金属が含まれている。オリハルコン、アダマンタイン、ヒヒイロカネ、ミスリルとか色々言われている」
ヤバい、私の守銭奴根性に火がついた!
「それは全部鉱山施設に持ち込み精製しなきゃ!」
「「「……」」」
「まぁ、何にしてもやる気があるみたいで良かった、あまり気乗りしなそうで心配してたからね」
何だか一瞬ドン引きされたけど、フィンネル兄様が環境破壊を想像して思い悩んでいた私を心配してくれていたみたいね。
「つまり、冒険者ギルドなどには報告せずに、うちの領内だけで片付けてしまおうって事なのね」
「報告は事後で十分なのよー。 余計な横槍もお節介も入れられたくないでしょう?」
わーお、流石お母様。いや今回はお祖母様とお父様もかな?うちの領には冒険者ギルドが無いから、お世話になったら面倒なだけだものね。要するにダンジョンのお宝も素材も一挙両得、総取りしちゃいましょう!って事です。私だけが守銭奴じゃ無かった!いや、ただ単に面倒なことが嫌いだってだけかも。うん、お父様は確実にそうね……。
斯くして、ここに親子パーティー(仮)が誕生したのであった。
でも実際はラブラブバカップルパーティーと兄妹パーティーに分かれての突入となったのだけどね。ああ、あの夫婦の共闘見てみたかったのになぁ。
うわぁ!長方形15階建ビルディングが我が領の森に突如出現ってこれ嬉しくも何とも無い光景だなぁ。現実感が無いわ。現在このダンジョン出現に関する情報は規制されている。さっさと片付けて後処理と報告書だ!
そして私達は1階の封印された扉をお祖母様に開いてもらい、中に入った。当然ながら中の出現状況に関する情報は何も無い。ただ学園ダンジョンと比べたら飽和していない分楽そうってだけ。一応周回のために入り口の封印は解いてあるけど、魔物が出て来そうなら直ぐさま封印するとのことでお祖母様が待機している。心配そうなお祖父様と一緒にティーテーブル持ち込みでゆっくり仮設陣営を設けて、護衛騎士達も周囲を警戒している。疲れたらダンジョン外の陣営で休憩出来るって何やらピクニックに来たような気分ですか?
「一応マリナ仕様の服装なんだね」
「それはそうですわ。 わたくし対外的には深窓の令嬢と言う事になっていますのよ?」
「まぁ何が起こるか分からないからそれで良いよ」
うん?リンデーン兄様は何か心配事でもおありでいらっしゃるのかしら?
それにしても、下から上に上がっていくダンジョンは初めてだから新鮮!でも当然と言えばそうだけど窓はないのねぇ。
現代風に見える四角い15階建ビルディングダンジョンに入って大暴れすべく気合を入れた。
「きゃーっチビドラゴンだよ!可愛いかも!」
「暢気なこと言ってないで一掃しちゃって」
「もう!【雷の乱舞】」
「いやー飽和じゃ無いって言うけど割とキリが無いね【光の矢】」
「はぁ、二人共ダンジョン慣れしすぎだよ【雷の矢】」
私達は1階から一掃作戦で飛ばしまくった。割と飛翔系が多いので雷撃や遠距離攻撃が主。たまに回復しつつ15階に到達する。そこには10m級の本物のドラゴン、赤いから炎吐くのかなぁ~って思ってたら、炎の息吹を吐かれた!
もちろん皆んな逃げましたけど。
「【絶対零度】」
「【氷の球】」
「【聖なる炎】」
これヤリ過ぎでしょ皆んな……。向こうも無双しているんだろうなぁ~なんて思いながら、フロア核とドロップアイテムを拾って転送陣に……。
「ねぇ、帰りも歩いて出ない?」
リンデーン兄様?そんな事するくらいなら周回したほうがお得なんですよ。フィンネル兄様と説得して転送陣で外に出た。
カードゲームに興じる祖父母に近づいて両親の様子を聞いたところ、核は全部集まったけど、物足りないからもう一周しに行ったとのことだった。
「まだ居ないなんて、んな事だろうと思ったよ……」
フィンネル兄様が遠い目をしている。実は私達も核を全部揃えたんだけど、もう1セット行っちゃうよね?だってリンデーン兄様が行きたがっているんだもの。でもその前に一休み。
美味しいバーベキューと永久氷で冷やした果実水とシャーベット!うーん、我が家にとっては新ダンジョンもアミューズメントパークなのか!?野外キャンプを楽しんでいたところにお父様とお母様が戻って来た。早っ!何この早さは?
「まぁ!美味しそうなもの食べているわね。 私達も休みましょう?」
お父様はもちろんそのまま椅子に座った。私達はお腹も一杯になり、一休みしてから二周目に突入した。
この一日だけでいくら稼いだのかは謎だけど、まぁルゥナ工房の売り上げになりますのでそのうち分かる、かもしれない。
結果、英雄夫妻の周回八回、兄妹で五回とまぁ十分過ぎるほど稼いだ。後片付けにも時間と手間がかかると言う事でラストダンジョンを五人でさっさと片付けに行った。例の二人のやり様は丈夫なはずの建物が崩れるんじゃないかってほど手荒だった。こんな人達を敵に回して戦ったアルト兵に同情したくなった程だ。
崩れる際に起こる周囲への粉塵災害対策にお祖母様が結界を張った。私達は少しばかり砂まみれになったけど、怪我など無く、あとには大量の素材瓦礫の山が残された。地上ダンジョンの欠点と言うのか利点と言うのかは個人の価値観の問題だろうと思った。ここには美しい木々、泉、ハーブや木苺、山菜など山の幸に溢れていたのに。瓦礫をどかした後に復旧出来るのかな?
念の為に魔物が残って居ないかも索敵で確認し、もう暗いので一旦撤収する事になった。
思いがけず祖父母の別邸にお泊まり。翌日からは片付けが大変そうだけど、この日はゆっくりと温泉にも入って休んだ。
後片付けが大変だなんて誰が言ったんだっけな?いや、私が勝手にそう思っていただけだ!
大量の素材瓦礫は魔法で分別されそれぞれ亜空間収納に仕舞われた。残ったのはダンジョン出現により潰され破壊された跡地。私は浄化を使った。あれ?私いつの間にか家族の前で聖属性魔法使っちゃってるなぁ~……しかも誰も驚きもしないし指摘もしないってさ。いや、お母様にはさらっと言われてたわね。もう何がバレてるか分からなくなって来たから良いか?修復もしちゃえーーっ
「【現状復帰・回復】!!」
あーら不思議!元通りの美しい森が帰って来ましたよ。そう言えば土属性魔法も畑や魔法付与以外では初めて使ったかもなぁ。
「あー、やっぱり全属性持ちだったよね。 うん、分かってた」
リンデーン兄様がぽつりと呟いていた。
のちに皆んなが言ってた大変、面倒は主に報告書の作成と提出、その後の反応の事だったと分かった。
ちょっと所じゃなくダンジョン内の様子が物足りない描写になってしまいましたが、完結後に余裕があったら考えてみようかなぁと思っております、とりあえず家族の楽しい夏休みの思い出が書きたかっただけです。m(__)m




