80. 悪役令嬢、パーティー結成!?
以前職人に作らせた扇子の存在を忘れていましたので一部訂正しました。(2021.03.05)
チクチクチク……
私は週末に向けてお留守番で少々いじけているリンデーン兄様用の冒険者衣装を縫っていた。今回は一緒に行けないけど、次はこれを着て一緒に行こう、っという約束。まぁご機嫌取りって言ってしまえばそれまでだけど、約束の形があるのと無いのでは心持ちが違うと思うのよね。
リンデーン兄様、っと言うか、お兄様方のイメージカラーは白なんだけど、そんな汚れが目立つだけの衣装を着ている冒険者は、キザな剣士か、聖職者っぽいイメージ付けで治癒師であることを分かり易くしたい人だけだ。実際はケープだけ白って人が多いけど。そもそも剣士は前衛で治癒師は後衛、衣服の汚れの度合いが段違いでもある。
リンデーン兄様は剣士で登録しているので、勇者っぽい衣装。ただ赤はヒーローっぽ過ぎるし、青はジル様のイメージカラー。
まぁそんな細かいゲーム設定など気にしなければ良い事なんだけど、上衣は紺色で立襟、腰下丈でウエストにベルト。ズボンは黒のプラス・フォアーズで、ロングブーツが履き易く、元々ゴルフズボンとして用いられた動きやすさが良い感じ。そして冒険者バッグはワニ皮の、見た目だけは小さめで動くのに邪魔にならないようにして、剣帯に通せるベルト通し付き。うん我ながら良い出来だわ。少年誌に出て来る勇者っぽい感じになった。
剣はしばらく攻撃力、素早さ、斬鉄、強度を各二倍付与した鉄剣で良いかな。そのうちお宝ドロップしたら変えればいいよね?ミスリルとかアダマンタイン、オリハルコンなんて普通には売ってない。前に作ってもらった扇子はドロップアイテムを素材にしたの。この世界にはドワーフの鍛冶屋さんも無いからしょうがないよね。
ああ!益々週末が楽しみになって来たわ♪
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side.Heroine
「今週の休日に、刺繍糸を買いに行きたいの」
私はそう殿下に伝えた。殿下の休日は平日よりも更に忙しくて、中々一緒にお出かけして貰えない。私はこうして小さなお買い物に行きたいと度々伝えていた。
最近やっとお小遣いが貰えるようになったの。今までは全部デボワール伯爵家で止まってたみたいだけど、聖女への恩給の一部を私に直接支給してくれるようになったの。そのお陰でこうして休日にお出かけし易くなって良かった。
「リンデーン、フィンネル、パトリック予定空いてるか?」
ああ、今回も殿下はダメなのね。そう思ったけど、休日に双子揃って一緒にお出かけ出来るなんて、もしかしたら送り迎えの時の様な一人ずつよりも、ゲームシナリオと同じ双子一緒の方が好感度が上がる可能性があるかもしれない!なんて期待も出て来た。
「ダメだ、その日は先約がある」
なのに、すぐさまフィー様に断られた。今返事が超早かったよ!よっぽど大事な用事なのね……何かが私の邪魔をしているみたいだわ。
「じゃあヘルムルトは?」
「俺もダメ。 その日はジルに呼ばれてる。 冒険者ギルドとの打ち合わせがあるんだ」
アル様が考え込む。ローテーションを考えているのね。アル様には休日のお出かけは中々付き合って貰えないけど、その分送り迎えの頻度を高くして調整してくれているみたいなの。本当に優しくて素敵。
「つまり、ジルアーティーもダメだってことか。 じゃあエドワーズはどうだ?」
「畏まりました」
「では、リンデーン、パトリック、エドワーズ、聖女様の護衛をくれぐれも頼む」
えーっ、攻略対象者が一人だけってどうなの?むしろ攻め時ってことかな?ランディ様のエスコートは歩きやすいから良いんだけど、しっかりと線引きされている感じがするのよね。どうやったらその線を越えられるのかな?
あれ?今ヘイム様は冒険者ギルドと打ち合わせって言った?冒険者やっているのってジル様だけじゃないのね。色々違うわ。それともゲームシナリオ部分には描かれていなかっただけで、ラノベとかコミックスの設定なのかな?私はゲームしかやってないの。だって絵師が違ったんだもの。そんなの違うキャラになっちゃうじゃないの。でも気になったら聞く!会話のチャンスだもの。
「ヘイム様も冒険者やっているんですか? お家のこともあるのに大変じゃありませんか?」
ヘイム様はほんの少し目を丸くして、楽しそうに答えた。
「聖女様、うちは武家ですから、これも教育の一環みたいものです。 魔物被害はまだ完全に無くなった訳ではないんですよ。 冒険者としての活動は鍛錬にもなるし、あとはまぁ、息抜きでもあるのかもしれませんね」
ええーっ魔物退治を息抜きって、とても強いのね、やっぱカッコいいわ!
「そうなんですね。 でも冒険者って、四、五人でパーティーを組んでるものだと思っていました。 他にもご一緒している方がいるんですか?」
「わたしは固定のメンバーは作らないんですよ。 冒険者ギルドには助っ人登録制度というのがありまして、何らかの理由でパーティーメンバーが足りなくなった所から助っ人を頼まれたりするんです。 冒険者には個性的な人が多くて中々楽しいものなんです」
「お前は市井に溶け込むのが上手いからなぁ。 一種の才能だな」
丁寧に説明してくれたヘイム様にエリン様からのツッコミが入った。わぁっ、なんだか会話らしい会話になってる!
「ヘイム様はお忍びで出かけたりするのがお得意なんですか?」
「ははっ、聖女様もお忍びしたいですか? でもちょっと難しそうですね。 陛下に叱られてしまう」
うーん、やっぱりヘイム様って優しなぁ。でもまだ私のことを名前では読んでくれないのよね。殿下だけは送り迎えとかのあまり周囲に人が居ない時に呼んでくれるんだけどなぁ。
「少しは興味あります。 なんだか楽しそうだなって」
「まぁ、今は無理だろう」
殿下が話に水を差すって珍しいわ。もしかしてヤキモチ焼いてくれた?いや~ん、嬉しいけど、他の攻略対象者達とも好感度上げたいんだよなぁ。ゲームよりも難しくて困っちゃう。
ステータス画面が見られるだけでもかなり違うと思うんだけどなぁ。
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やって来ました週末!ヒロインの謎に悶々としながらも、いつもと変わらない生活をしてこの日を迎えられた。リンデーン兄様に冒険者衣装を渡したら大層喜んでくれた。『これで今日の業務も乗り越えられる』なんておっしゃっていたけど、フィンネル兄様は『気にしないであげて』と言ってた。でもまぁ察しましたよ。今日はヒロインとの集団お買い物デートなんですね。
それでも私達2人は気持ち良くダンジョンの入り口に来たんだけど……。
閉まってる。
「何かあったのかな? 完全に封鎖されているね。でもダンジョンが消滅した訳では無さそうだ」
フィンネル兄様は探索を使って中の様子を探って言った。ここは冒険者達にあまり人気が無く、私が初めて来た時には”飽和”しかかってたユトドラス洞窟ダンジョンだ。それからたまに来るようにしていたんだけどなぁ。何があったんだろう?
「消滅はしていないのよね。 だったら移動で入っちゃう? 暴れたいだけで魔石拾いするくらいなら冒険者ギルドに持ち込まなければバレないよ」
「流石、マリナは言うことが違うな」
ひゃあっ!上からジル様の声がしましたよ!!なんだか楽しそう?笑われてるだけかも……。あ、今ちょっとマリナモードに入り切って無かったけど大丈夫だったかしら?
「アートとルーンだっけ。 何しに来た?」
「うわーっ、フィーの奴が冷たい!」
ヘルムルトも一緒だ。二人で崖上から洞窟の入り口前で【空中浮遊】している私達を覗き込んでる。やっぱり今日はリンデーン兄様を連れて来なくて良かった!冷徹軍師様の感は素晴らしいです。
「ねー、ここってなんで封鎖されているか知ってる?」
私は完全にマリナに切り替え、どっちに声を掛けるとも無く目の前の鉄板を見ながら崖上の二人に聞いた。
「ここは危険ダンジョン通知が出された。 まだ飽和には至っていないが、今のうちにフロア核を集めてダンジョンを消滅させる為に来たんだ」
答えてくれたのはジル様だ。何ですと?私とフィンネル兄様がたまに一掃しているというのに、普段あまりにも冒険者達が来ないからって消滅させるとは勿体無い!でもまぁ、冒険者ギルドの決定なら従うしか無いね。
「マリナどうする?」
フィンネル兄様がチラリと視線だけ寄越して聞いた。
「フィー兄、思いっきり暴れたいんでしょ? だったらここ周回しちゃえばいいじゃん。 消滅したらもう来れないんだよ」
「よっしゃ!分かった。 じゃあお前らと僕達は別ってことで入らせて貰うから!」
おおーっ、フィンネル兄様それは妙案です。その方が私も思いっきり魔法が使えちゃうし、お互い聖属性魔法も使いたい放題で鍛錬出来るよ♡
「ちょっと!何勝手なこと言ってんだ? フロア核集め終わったらギミック動かすんだぞ。 そっちが入っている間待てってことか?」
まぁ!ヘルムルトったらケチんぼね!そんなこと言うなら、こっちのフロア核譲ってあげないよ?
「そんなの知らないし、簡単にフロア核集まると思ってるの?【座標移動】」
私はフィンネル兄様の手を取って強行突破だ!わはははっ、守銭奴聞き分けないお子様マリナの本領発揮ですよ~っ。
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「だから!なんでお前らが付いて来るんだって!」
フィンネル兄様がお怒りだ。ああ、そうね。ジル様には私の行動は完全に読まれてましたね。しかも短距離なら移動魔法出来ましたね……。
とにかくこのメンバーの何が悪いって、私達の聖属性魔法が使えなくなること。あとはまぁ、フィンネル兄様に私がジル様のこと好きだってバレたら困るってこと。だって察しが良いのよ、こっちのお兄様は!
「いやー、フィーが思いっきり暴れる所なんて見てみたいものだよなぁ!」
そう言ったのはヘルムルトだ。笑ってる場合じゃ無いわよ。あんたが居たら思いっきりは出来なくなるんだってば!
「別行動の方がフロア核集めやすいとか思わなかった? まぁいいよ、一周だけだから。 後はそっちも時計くらい持ってるだろ?時間決めて入り口に集合で良いだろう」
「フィーはどうしても俺らと同行したくないようだな」
フィンネル兄様の妥協案に皮肉を込めて返したジル様のお声が、普段よりも大分低い。あれーっ?ご機嫌斜め?まぁ、ちょっとどころじゃ無く端迷惑な二人組だと思われてるんだろうな。分かります、和を乱すのは好ましくありませんよね。でも言っちゃう。
「でもさぁフロア核ってそう簡単に集められないよ? 二手に別れた方が良いでしょ。 今ある核はいくつ?」
ここはやっぱり一推しよりもフィンネル兄様の味方をしておかなくちゃね。
「3つだ」
ほう、ジル様と一緒に入った時に山分けした分の内、ジル様は全部ギルドに引き取りしてもらってたのね。つまりそれ以外は無いと。ほーっ、これは良いことを聞いた。
「フロアボスが居ないフロアでも核必要だったよね?かなり出現率が低かったと思うけど違う?」
「合ってる……」
うわぁ、なんだろう。ジル様の声がより冷えて怖くなって来た!『聞き分けの無いお子様達は嫌いだ』って心の声が聞こえた気がしたよ!だって、こっちにも都合ってものがあるのよ許して!!
「あー……。アート、ここは仕方がない。フィーの案を採用しよう。 フロアボスから10個、レア核があと12個必要。とてもじゃないが簡単には集められない。 とりあえず時間は17時で良いか?」
ヘルムルトが右手で頭を押さえている。ええまぁ、この状況では頭が痛くなりそうですよね、でも譲れないモノってあるんです。少々どころで無くギクシャクした雰囲気を漂わせながら、一周目は四人パーティーで回ることになった。
「マリナの剣って綺麗だよね。 汚れないよね。 その剣圧だけで吹っ飛ばすのって何事なのかな。 実は称号とか持ってるんじゃない?」
ヘルムルトがうるさい。私は別に物理前衛ではないのよ。便宜上職業を剣士にしただけだし、基本おひとりさま活動だったから視界に入った魔物を一気に片付けるようになっただけなの。その方が負傷率低くなるから接近戦はしない。だって物理防御力低いの分かっているんだもの。
ちなみに今回も私は予め聖女の加護の一つ『浄化』をピンポイント隠蔽している為、普通に魔物が出現している。でないとボス無しフロアのレア核なんて出て来ないと思うわ。通常発生の魔物からのドロップなんてそもそも確率が低すぎる。レア進化個体から核が出て来た事も無いし、そもそもここの上層階でレア進化個体に出会す事自体が稀だったなぁ。今日だけで集められたら超ラッキーって感じなんじゃないの?
【雷の矢】
フィンネル兄様は低階層から得意の雷魔法で飛ばしてる。単発攻撃のハズなのに複数矢が飛んでるし一掃してますわ。はいこれぞルナヴァインって感じですね。ちなみに『大魔法使い』の”祝福”持ちだと判明している。魔力判定の後出し情報なので大司教、大神官にもバレてる。それゆえ期待されて狙われているのだけどね。神殿に修行に来いとの勧誘が私達二人に頻繁に来ている。
「どうなってるのこの二人?」
だからヘルムルトうるさいってば。
「別にー。 全体攻撃ってスカッとして良くない?」
フィンネル兄様が軽く応じる。とりあえずこの状況を楽しむことに切り替えたようだ。まだ御機嫌斜めなのはジル様だけだ。何も話さないで黙々と出て来た魔物をやっつけてる。
でも、幸先の良いことに1階層目から当たりを引いた!でっかいマダラデメキンちゃん、マーブルペヨゥト。通常のが30cmでそれでなくとも可愛く無かったのに、ヒレが鋭利になってるしお口から見えるそのギザギザの歯はピラニアですか?って凶悪さ、体長1m超え、これをオーバーキルすれば良いのかな?それともクリティカルヒット?
「【雷の柱】」
はい、丸焦げになっちゃいましたね……流石に上級魔法はやり過ぎたか?っと思ったら、出た出たフロア核とドロップアイテム!これは指輪だなぁ~ちょっと趣味悪い成金仕様のゴテゴテデザインだ。効果は『カメレオン』。ああ、忍者の壁隠れの術みたいなものか。とりあえずフロア核をジル様に渡す。
「はい、これで一丁上がり♪」
「ああ、ありがとう……やはり君と居るとドロップ率が全く違う気がしていたんだが、気のせいでは無いな」
「たまたまでしょ? 私普段から運良いけどね」
反対にマリノリアは生まれる前から第一皇子の婚約者で、めっちゃ運悪いですわ。同一人物なのに!茉莉奈の運が悪かったのは17歳で終わった時だけだったよね。病弱で両親に迷惑かけてごめんなさいとは思ってたけど、自分を不運だと思った事は無かった。ああ、そう言えばあの時の犯人も分かってなかったなぁ。
「すごいなぁ!俺フロア核自体見たの初めてだ」
「だろう?それが普通だと思う。俺もごく稀に、マリナと居た時を除いたら二回しか見たことが無い」
「「……」」
ヘルムルトが感動している。ジル様もそんな情報今更出して来ないで!
私とお兄様はちょっとだけ遠い目をした。そうか、フロア核自体がそんなにレアだったのか。ちょっと、いやかなり感覚違ってたわ。もしかして祝福持ちのお兄様も何らかの加護持ってるんじゃないの?だってここのフロアボス無しのフロア核出たの初めてだよ?それだけじゃ無いんだけど……。
「もう次のフロア行こうか」
何事も無かったかのようにフィンネル兄様が階段に向かう。流石だ。私、今回はレアとかボスのトドメ刺すの遠慮しとこうかな。お兄様と二人になってから頑張ろう。
ただ、やはりレア進化個体の出現率は他のダンジョンよりも低いらしくそれっきり出て来なかった。
そしてここからはフロアボスが居る13階層、あー、ここのフロア核私家にまだ置いて有ったな。乳白色で半透明だけど虹が入った綺麗な魔石だったんだよね~加工する為に割るの勿体なくてね。また出てくるかなぁ。でもここは他の人に譲ろう。誰かトドメ刺してーっと思って、一番後にボスフロアに入った。そんな感じのことを繰り返す事五回。うん、ここまでフロア核出て来なかった事無かったよ。お兄様が一回トドメ刺した時も不発だったけど、それくらいではデータにならない。
だって、私一人の時よりお兄様と一緒の時の方がドロップアイテム多い気がするもの!
うーん、なんか視線を感じる。けど気のせいって事にしよう。たぶん今そっちを見ちゃいけない。そう言えばまだ休憩しようって誰も言い出さないな。まぁ人数居るからまだ疲れてはいないんだけどね。18階層一気にって中々ハードな方だと思うよ。ヘルムルトは体力あるから言い出さないな。お兄様は普段なら気を使ってとっくに休憩しようって言ってると思うけどこの周回を早く終わらせようとしているなぁ。ジル様は、何考えてるか分からないや。ただ見られてるのは分かる。うん、一旦早くここ出よう!
そして最終フロアだ。よーし、ほんの少し頑張ろう!出て来たのは深淵のエンペラーエイドLv.65。あれ?レベルが前より低いよ?
「【絶対零度】」
速攻で私が粉々にしてやった。けど予感的中で、出て来たのは普通の魔石だった。やっぱLv.70じゃないとフロア核落とさないんだわ。こりゃ運勝負連勝出来る人じゃないと核集め難しいわ。私の加護だってドロップ率上昇するだけで、確実に落ちるわけじゃ無いし、レア進化個体との遭遇率は違うからね。それにしては他のダンジョンでは出会い率高いんだけど。
そして私達は転送陣を踏んでダンジョンを出た。
「今回の収穫は1個だったか。 やっぱフィーの策で行くしか無いな。 でも俺、絶対零度なんて初めて見たなぁ。 結構高ランクのパーティーとも組んだ事あるんだが、あれって水系の上位だよね?」
「うん氷魔法の最上級だよ」
ヘルムルトがうるさいので一応答えておいた。
「えーと、君って剣士だったよね?」
「うん、そうだよ。 でも剣士でも魔法使うでしょ?」
本当にヘルムルトって頭固くてうるさいのね。やっぱ脳筋だ。
別に剣士が魔法使えたって良いじゃないの!一応称号は剣聖、祝福が聖女、大魔法使い、で両道なのよ。
「マリナ、僕らは崖の上で少し休憩してから二周目入ろう」
ほらね、フィンネル兄様は休憩を忘れていた訳じゃ無かった。ただ早く済ませたかっただけ。
私は「うん!」って答えてフィンネル兄様と崖上に上がる。ここで偽名二人組と別行動になった。短い四人パーティーの時間は終了した。
「で、なんで一緒に休憩してるの?」
フィンネル兄様が胡乱げな視線を偽名二人組に向けた。
うん、この休憩中も私はボロを出さないように黙っとこう。私は冒険者バッグから出したチョコレートケーキを黙々と食べた。ジル様の視線が背中に刺さってる怖い。




