79. 閑話 裏事情
サブタイトルのナンバリングが途中からズレていたので、見直しながら多少誤字などの修正をしました。加筆と言うほどの修正はありませんのでご安心ください。m(__)m
なので今回はSSです。ちょっと黒い双子が見られますw
side.Twins
今は、午前授業の一時限目が終わり、二時限目が始めるまでの準備及び小休憩時間だ。ルナヴァイン公爵家の双子は窓際で外を見る様にしながら、視界の端でそれとなく他のご令嬢方と談笑する聖女を見ていた。こういった場面は珍しくも無い。聖女様は必ず皇太子殿下の隣に座るが、護衛やお世話係として周囲に付いて居るのは高位貴族の令息達だ。まさかご令嬢の『お花を摘みに』行くのにまで付き添う訳には行かない。洗面所は直ぐ近くだし、護衛なんて学内に於いては最初に殿下が言っていた通り、便宜上のもので形式的なものなのだ。要は『聖女』がどれだけ特別な存在なのかを見せつける為のパフォーマンス。何もつきっきりで居る必要など無いのだ。
「ははっ、聖女様に擦り寄るご令嬢方のなんと浅ましいことか。目的が透けて見え過ぎる。 もっと隠せないものなのかねぇ」
フィンネルがいつもの柔らかい表情を崩さないまま、隣に居る双子の兄にだけ聞こえる声で呟いた。
「まぁまぁ、しょうがないだろう。 マリアほど完璧な淑女でありながら純粋なご令嬢なんてそうは居ないよ?」
「ああ、マリアが可愛過ぎるのは同意だ。 聖女を殿下にけしかけて現婚約者を排除しようとするご令嬢方とは比べるべくも無い」
そう、ヒロインがゲームシナリオのように虐められないのには理由がちゃんとあったのだ。
フィンネルはそのまま続けて言った。
「相手がご令嬢といえどもマリアを傷つけようってことなら容赦しないが、殿下との婚約破棄はなぁ……むしろ本人が望んで居るからしばらく傍観するしか無い」
「うーん、しかしまぁ頭の悪いご令嬢が多いなぁ。 マリノリアから聖女様に婚約者が変わったとて、上手く第二妃に滑り込めると思っているのかな。 殿下は真面目で一途だぞ」
「やだなぁ、聖女様がそのまま婚約者に収まれる可能性がどれだけあると思う? 教会を使うところまで織り込み済みだよ」
フィンネルの情報網は一体どのような伝手によるものなのか、恐ろしいほどに現状を把握していた。
ルナヴァイン公爵令嬢を蹴落とす事は普通のご令嬢方には無理だ。彼女は皇帝のお気に入りで、何と言ってもルナヴァイン家にやっと産まれた令嬢で、取り込みたいのは何も皇家だけでは無い。そのまま皇太子妃になり順調に後継が生まれでもすれば第二妃にですら滑り込むのは不可能となる。
だが聖女は違う。『聖女』という稀有な存在に対する世の中の認識は多様である。
特に処女性に関しての見解が教会内でも割れている。厄介にも王侯貴族間や市井でも違っている。誠に面倒な問題なのだ。前聖女の婚姻の事実が秘匿されていなければまだ違ったのだろうが、それは過ぎたコトだ。
仮に皇太子妃にまでなれたとしても、白い婚姻になる可能性が残されている。
教会の大多数が聖女の婚姻に否定的な派閥だ。聖女のみが持つ豊穣、浄化の加護が失われる事を惜しむ。そして第二妃候補である次の婚約者選びが始まるのだ。そうでなくとも、聖女で伯爵令嬢という立場ではあるが生まれは平民。やはり後継は貴族の血統で残した方が良いと主張する派閥も無視出来ないだろう。
聖女はパッピーエンドを迎えた後にも困難が待ち受けているのである。以下続編。
「それにしてもエリンは贅沢だなぁ」
急にリンデーンが話を切り替えた、フィンネルは『何が?』と言う思いを込めて頭を傾げ、先を促した。
「婚約者殿だよ、健気じゃないか。彼女本来なら組み替えの対象外の一組に、座学10位以内をキープし続けて見事四年生から入る事が叶ったんだよ?涙ぐましい努力だ、あんなに素気無くされているのに一途だよなぁ」
「ドMなんじゃないか?」
「そんなこと言うなよ……」
リンデーンは少々嫌そうな表情でフィンネルの笑えない冗談に返す。そしてそのまま次の授業を受けるため席に着いた。




