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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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78. 悪役令嬢、やはり学園は憂鬱な事もありますのね

読んでくださってありがとうございます!

ブックマーク、評価してくださった方、感謝です♪

 あれから数週間が平和に過ぎた。さらに数週間が過ぎれば夏休みに入る。ここで一つの分岐点がある、私にとっては一つの人生の終わりだ。

 ヒロインが皇太子ルートを選択した場合のエンディング、つまり悪役令嬢マリノリアへの”婚約破棄イベント”ないし”断罪イベント”が起こるのよねぇ。

 今日も我が家の護衛騎士達と汗を流してスッキリ爽快になった後、シャワーを浴びて普段着のドレスに着替えた私は、何時ものようにガラス張りのテラスでティータイムを楽しんでいる。テラス脇のドアを僅かに開けて風を通しているから、初夏の心地よい風を感じる。

 目の前のマカロンタワーに手を伸ばした時に双子のお兄様方がプライベートリビングに入って来て、そのまま私の方に来て同じテラステーブルに着く。これももう慣れた光景だった。私は二人の為に新たに紅茶を淹れた。


 「ふーっ、やっぱりマリアの淹れた紅茶が一番美味しいな」


 リンデーン兄様が一息つく。フィンネル兄様は紅茶を少し飲んだ後マカロンタワーに手をのばした。


 「いやぁ、最近ほんの少しだけど平穏になって良かったよ。 でも先週末は聖女様のお買い物に付き合わされて一日中潰れてしまったし、過大なストレスを受けた。 マリア、今週末はダンジョンに行って思いっきりひと暴れしない?」


 えーと、フィンネル兄様?『思いっきり』と『ひと暴れ』のどちらが本命なのでしょう?とりあえずストレス解消したいのは理解しましたわ。


 「まぁ、良いですわね! わたくしもそろそろ魔石の在庫を補充しなければいけないのではないかと思っておりましたの」


 リンデーン兄様が午後の専攻授業を男子だけしか参加出来ない授業に切り替えようと提案した翌日から、なんとまぁ二人揃って全振りが叶い、午後の授業を平穏に受ける事が出来るようになったとの事なのだが、まだ午前授業は一緒で恒例の質問タイムーーしかも食堂へと歩きながらなので危なっかしくて見ていられないとかーー、女子寮から教室への送り迎えと聖女様が外出したいと言い出した時の学園外での護衛業務、既に仕事と割り切ってはいるらしいのだが、それで受ける疲労が蓄積されるらしいのね。聞くところによると、殿下には苦言を呈されつつも、ジル様もランチタイムを抜け出して魔導師の塔に行く事が多くなり、午後の専攻授業に魔法関係の講義が無い時は、お兄様方と同じ専攻授業を受けているらしい。うーん、今の所この三人の好感度が著しく下がっていると見て良いのかしら?


 ゲームシナリオではヒロインを敢えて避けるような行動を取る攻略対象者は居なかったのよね……それぞれ差異はあれど何かと気遣って構ってくれるのよ。それはメイン攻略対象者を決めてルート選択した後でも同じく変わらない。

 大体魔法関係の授業を外すって高位貴族では特に考えられないの。それだけこの帝国、っと言うか大陸全土で魔法が政治経済に与える影響が大きいから。

 それにジル様は最初から上手く好感度を上げられていれば、ヒロインの持つ聖属性の魔法には元々興味を持っているから、そろそろ話しかけてくれるようになるはず。これは上手く攻略出来ていないか、殿下一筋に切り替えたと思って良いのかしら?でも殿下一筋ならば尚更避けられる理由が分からないのだけど。

 でもそうなれば、夏以降のイベントを見る事は叶わなくなってしまうけど、私一人が犠牲になる、いえ『自由』になるエンドに一直線って事だわ!ディナとリリーが哀しむ事が無くなると思えば、衆人環視の中での辱めなど耐えてみせるわよ。こっちだって準備万端なんだからね。今まで無為に過ごして来た訳では無いの。


 「俺も俺もー!」


 まぁリンデーン兄様は最近とみに子供っぽくなる事が増えたわね!これも過大なストレスの蓄積ってモノの所為なのかしら?でもフィンネル兄様は何時如何なる時でも冷徹な軍師様よろしく重要な所では外さない。


 「ヘイムとジルも休日だからダメだよ」

 「何で俺は付いて行っちゃダメなんだよー。俺も行きたい!」


 リンデーン兄様の拗ねてる姿って、年頃の少年らしさが出ていて可愛らしいのよね。言ったら怒られそうだから言わないけど。でもそう思っているのは私だけではなさそうで、フィンネル兄様は敢えて弄っている様なのよね。本当に意地の悪い事だと思うけど、それは親しみを込めた愛情表現でもあったりするから、本当にツンデレって難しいわよね。理解するとこれほど攻略しやすいキャラもいないと思うのだけど。

 前世において私は、双子ルートも攻略サイトに頼らずに全てのエンドをクリア出来ていた。もちろんハーレムエンドもだ。各攻略対象者の中にはルート確定後にヒロインへの対応が変わるキャラがいるの。そこがまた難しいのだけど面白みもあった。最初の頃はハーレムルートを狙っている節があったヒロインは出来ていないみたいだけど。多分元々の性格が殿下と相性が良いのだと思うわ。きっと素直で可愛らしい女の子なんでしょうね。


 「しょうがないだろう? ジルはともかくヘイムは察しが良いんだ、妙に。 そう野生の勘が働く厄介なやつなんだ。冒険者マリナがマリアだって気が付かれたらマズイだろう」

 「仕方ないなぁ、今回は我慢するよ。 あいつら今週末、聖女様の護衛にでも付いてくれないかなぁ」


 まぁ!なんて不穏なことをおっしゃいますの?ヘルムルトはともかく、いいえダメね。ディナが哀しむわ。もしかしたらデートの約束でも入っているかもしれないじゃないの。そう、エリンと違ってヘルムルトはディナをお出かけに誘ってくれたり、手紙やプレゼントを贈ってくれたりするらしいの。それを話すディナの様子はとても微笑ましいし、良い傾向だと思うわ。ジル様だってヒロインを避けるくらいには苦手らしいのに気の毒だわ。それに私も、ちょっと気になってしまいますわ。諦めてはいても、乙女心って複雑なのよ。



 結局ディナーの時間になるまで、そのまま三人一緒にテラスで過ごしてしまったから、ディナー後自室に戻ってからリンデーン兄様の冒険者(コスプレ)衣装を考え始めた。そうなの、リンデーン兄様のは最初に着せた間に合わせの衣装のままだったのよね。剣士だから少し勇ましい感じの、勇者っぽいデザインが良いかしら?こういうのは考えている時間が一番楽しいわね。ワクワクしながら紙に羽根ペンを走らせた。




▽▲▽▲▽


 次の日、予期していなかった事が起こった。ヒロインが居るのだ、私の目の前に。私の方へ歩いてくる。どうして?今居るのは低学年の校舎から講堂へ行くために使われる渡り廊下で、上級生であるヒロインが使うことの無い場所なのだ。周囲も若干困惑しているのが分かる。そりゃあそうだ、下級生と上級生ではスカートとドレスの違いがあるため一目瞭然なのだ。周りは、いや私も含めて『何故こんなところに上級生が?』っと言った所だ。

 そして、全くもって予想の範囲内なコトに、彼女は転んだ。もちろん私のすぐ近くでだ。あー、彼女は自ら虐められる可哀想なヒロインイベントを作る為にやって来たのだ。全くおバカな事だ。私がそんな事に引っかかるとでも思っているのかしら?甘く見られたものだわ。私は初めてヒロイン、モクレン・デボワール嬢にほんの少しだけだけど敵意を抱いた。


 「まぁ、大丈夫?」


 そう、ほんの少し大きめの声を意識してヒロインに手を差し伸べながら声を掛ける。彼女は大きな紫色の瞳を潤ませながら顔を上げている。私は彼女に言葉を発する隙を与えること無く、腰を折って彼女の手を取り、背にもう片方の手を回しながら彼女を流れるような所作で抱き起こした。そして出来るだけ優しい笑みを心掛けながら浮かべて彼女に声をかける。


 「学園は広いから迷ってしまいましたのね。 ここの廊下は絨毯の毛足が長くて引っかかり易いの。痛みのある所は無いかしら?」


 周囲からため息が漏れる。若干ヒロインに向けて刺すような嫉妬の視線が向けられる。そこら辺も織り込み済みだ。だって私はただの悪役令嬢では無い。男女学年問わずに憧憬と好意(恋愛感情では無い)を向けられるお姉さま的憧れの存在なのだ。それに、自分としてはやらかしでしか無かったのだけど、建国記念パーティーで付いた異名『月の女神の化身』が、こういった場面でいい感じに作用するのだ。ヒロインはぽかーんとしている。あれ?私に見惚れちゃってどうしたのよ。ダメでしょう。


 「あっ!大丈夫です、ありがとうございます」


 ヒロインは慌ててお礼とお辞儀をして、その場を逃げるように去って行った。

 すかさず近くに居たご令嬢から声をかけられた。


 「まぁ、何だか落ち着きの無い感じのご令嬢でしたわね。 一体何処のご令嬢なのかしら?」


 若干ヒロインをバカにしたような響きが含まれているが、これに乗ってはいけない。


 「もしかしたら、今春からの編入生なのではないかしら? 普段通らない場所を歩いて見たかっただけなのかもしれないわ」

 「ああ!そう言えば今年は四年生からの編入生が多かったのでしたわね。 わたくし達もまだ高学年側の校舎までは見に行ってませんもの。そういうことなら解りますわ」

 「それにしても、羨ましいですわ。 わたくしもマリノリア様の前で転んでみたくなってしまいましたわ!」


 そこに別のご令嬢も加わって、周囲の雰囲気が和んだのが分かった。とりあえず危機は乗り越えられたかしら?まぁ、此処までしなくても私には”奥の手”が付いているのだけど、それでなくとも短い学園生活を、出来るだけ楽しく過ごしていたいもの。



 でも私は()()しまった、興味は元々あったのだけど意図してやろうとはしていなかった。でも視ちゃったの、彼女のステータス。

 乙女ゲームの〈攻略状況〉の好感度ではない。そんなものは視る魔法が無いと思うのよね。

 無意識に人に対して鑑定を使ってしまったの。そうしたら見えた、何故ヒロインが無条件で周囲から愛されるのかの秘訣が。

 彼女の魔力と魔法攻撃力は大した事無かった、平凡な数値よりも少し上といった所で、努力して中級魔法がやっとといった所だった。そこはどうでも良い。聖女の価値はそんなところでは無いからだ。私は祝福の項目に聖女と表記されているが、彼女は称号の所に聖女と表記されていた。その差異には心当たりがあるけど、今はどうでも良い事だ。そんな事が吹っ飛ぶモノが彼女の加護の項目にあったのだ!


 加護:豊穣、浄化、()()


 魅了だ。ジル様とお兄様方の好感度が全く上がらない理由がきっとそれだ!私が渡した魅了や状態異常無効の魔法付与を施したアイテムを常に身につけている事によって、無意識に攻撃されている状態だから上がらないのだ。だが彼女の魅了の力は一体どの程度のものなのか。周囲の、殿下の他にも攻略対象者がいる。エリンとヘルムルトだが、その二人も、護衛に付いている少なくとも私と同級生の二人も聖女を褒め称えたりしないのだ。本来なら彼らは聖女を事あるごとに褒め称え、ヒロインが労せずとも聖女信者が増えていくはずなのだ。主に男性中心にだけど。そのためなのか、彼女が虐められている様子は無いらしく、むしろ同じ組のご令嬢方とも上手く行っているらしいのよね。

 彼女の転生者特典は?っと思ったけど、魅了は違うだろう。恐らくヒロイン由来のものだ。他に何があるんだろう。スキルはページが違うから一瞬で見る事が出来たのは最初のページだけだった。そこには転生者特典の表記が無かったのよ……。



 ああ、何だろうこの疲労感は、私も週末は思いっきり暴れてストレス解消する事にするわ。何ならダンジョン梯子(ハシゴ)しても良いわね!




▽▲▽▲▽


side.Heroine


 また上手く行かなかった。


 私は自分でイベントを作り出すことを考えた。悪役令嬢に自分から近づいて、虐められたかのようにわざと振る舞うのだ。

 本当はこんなことやりたく無い。気が進まないけど、アル様以外の好感度がちっとも上がっていない気がするの。それどころかジル様は冷たいし、ランディ様は一緒に居る時はたまに笑みを向けてくれるし、段のある所では気遣ってくれてたまに手や腕を貸してくれるのだけど、フィー様と一緒に午後の授業は男子だけしか選択出来ない授業を取るようになった。しかも嬉しそうにランチタイムが終わったら速攻で午後の授業に行っちゃうの。フィー様はジル様以上に冷たいの。たまに嫌味っぽい事も言われちゃうし、シナリオで悪役令嬢やその他令嬢達が冷ややかな苦言を呈して来るセリフに近いような事を言って来ることがあるの。完全に嫌われているっぽい。なんで?私はヒロインで聖女なのよ?帝国に豊穣をもたらし、安寧に導く稀有な存在なのに。



 午後の授業に向かう前、女子だけを対象にした講義があるその日に作戦を実行に移した。ちょうど三年生は芸術鑑賞として講堂に向かう渡り廊下を歩くという千載一遇のチャンスだった。私は急いで講堂に行って、低学年の校舎へ行く為の渡り廊下に向かった。タイミングを計る為にほんの少し待っていたら、悪役令嬢の一人マリノリアがやって来た。ちょうど一人だ。取り巻きが周囲に居ないなんて、なんて運が良いのだろう!その時はそう思ったけど、そんなことは無かった。

 渡り廊下に入った時に周囲の空気が変わったのを感じた、何だか不審者を見る感じの視線を感じたけど、それよりも足元の絨毯がふかふかで踵が引っかかりそうなのが気になった。変なところで転んでも意味が無くなってしまう。足元とマリノリアとの位置関係に気を配りながら歩いて、ちょうど彼女の横に並びそうなタイミングで転んで見せた。で俯いている間に涙が出るように悲しい事を思い浮かべ……


 「まぁ、大丈夫?」


 とても心地よく響く綺麗な声がした。マリノリアだ。私は目を潤ませながら顔を上げたら、目の前に手を差し伸べられていた。そして優雅に、本当に美しい所作で腰を折って屈み私の手を取って、背中にも手を添えて立ち上がらせてくれた。うわぁ!カッコいい!そう思ったのは私だけじゃ無かった。周囲の女子からの視線が怖い!ええっ?これって嫉妬されてる感じ?


 「学園は広いから迷ってしまいましたのね。 ここの廊下は絨毯の毛足が長くて引っかかり易いの。痛みのある所は無いかしら?」


 美しい鈴を転がすような声ってこんな声のことを言うのかなって声で私を気遣う様に声をかけて来る。周囲が男女の別無くほうっと見惚れている。悪役令嬢マリノリアに対してだ。私は急に物凄く恥ずかしくなって、慌てて頭を下げながらお礼を言って、その場を立ち去った。もうそれしかしようが無かった。自分の行いが恥ずかしかったし、マリノリアがあまりにも美しすぎて見惚れてしまった事も恥ずかしかった。


 彼女の瞳が金のような琥珀色、ほんの少し赤味の乗ったインペリアルトパーズのようだなんてまだ足りなかった。輝き艶のある彼女の瞳はそんなものでは無く、右目下部にほんの少しだけ青みがかったオッドアイだった。あんな瞳で見つめられたらイチコロだろう。ずるい、なんで彼女はあんなに綺麗なの?

 悪役令嬢が綺麗過ぎるなんて攻略の邪魔にしかならないじゃない。私はヒロインなのに、十分可愛い容姿だと思うのに、全然敵わないよ。どうしてこんなに意地悪なルートになっているの?ハーレムルートってこんなに難しかったっけ?攻略サイト頼みだった私には訳が分からない。もっとやり込んでいたら分かったの?それとも、私の努力が足りないの?そうかもしれない。でも納得出来ない。だってゲームシナリオのマリノリアだって、幼い頃から厳しいお妃教育を施された完璧な淑女(レディー)だったじゃないの!


 私は午後の授業に滑り込むように間に合った。心は混乱して授業どころでは無かったけど、とにかく授業に集中した。だってあんまりにも酷い成績を取ったらエリン様に嫌われちゃうんだもの。

ヒロインはまだハーレムルートが諦められないようですね。イケメンの総取りはそう簡単に諦められないのか、一人だけで良い人には理解出来ない心情なのです^^;

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