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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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68. 悪役令嬢、運命のエンカウントですわ

エリンのデビューを忘れていたので少々加筆修正しました。m(__)m

 いよいよ運命のゲームシナリオ開始日がやって来た。来てしまった……。

 皇宮まで馬車に揺られ、と言っても、うちから皇宮前までは最高の施工技術で敷かれた石畳の馬車道でたまに石板の繋ぎ部分で多少の振動が出る程度、我が家の馬車も最高級だから揺れなんてほとんど無く快適なものである。快適で無いのは私のメンタルだけだ。今日の馬車は少し大きめの馬車で一家五人が余裕で乗り込む事が出来るやつ。両側から私を気遣うお兄様方の視線を感じる。顔色は多少悪くなっている、だが、今日の私は此れでもかと言うほどの重装備。『永遠の涙』と言うチョーカーは『即死攻撃回避、状態異常無効、癒し*ただし夜間だけ』、『金剛の腕輪』は『魔法攻撃反射』、これだけでも素晴らしいと思うのだけど、私はこの日の為に私の心の安寧を補強してくれるであろう小物を用意していた。


 何の変哲も無い扇子である。淑女がよく口元を隠す為に使うアレである。ある意味戦場である社交界を渡り歩く淑女の必須アイテム。これを私仕様に特注して作って貰った。考えたデザインがあまりにも複雑で、私の精神力だけで完璧に仕上げるのは不可能かと思われたからだ。

 鉄扇はいざとなったら武器にもなるけど重いので軽いミスリルでさらにレーシーな文様を掘り出しで施して貰った。それだけでも芸術的な品。それを骨組みにし、最高級のシルクオーガーンジーを貼り、扇子上部にはもふもふ!

 普通は羽毛を使うのだけど、私のはラビットの毛皮を羽毛のようにふわっと、小さな玉房も交えて可愛らしく仕上げている、超拘りの品だ。これには汚れと破損防止に現状復帰の魔法付与を施した。まぁ以前ハンカチで使用したことのある形状記憶とそう変わりはないけど、水属性と土属性という無難な組み合わせで出来たので使ってみたのだ。白いから少しでも汚れるのが嫌なのよ。


 さてはて、流石にここまで重装備したお陰と家族から注がれる暖かい思いやりの気持ちとに支えられ、何とか、皇宮内で我が家に与えられている部屋までやって来る事が出来た。早めに来たので皆んなでゆっくりとティータイムでくつろぐ。


 「マリア、今日は入場から退場まで俺たちが付いているから安心してパーティーを楽しもうな」


 まぁ!リンデーン兄様ったら本当に過保護が過ぎると言うものだわ。この二人をパーティーの間中独占するなんて、まさに両手に花!いいえ、もうね、周囲のご令嬢方の嫉妬の視線がとてもチクチクと突き刺さる事請け合いでしょうね。それに、リンデーン兄様はまだ婚約者が居ない。予定が狂ってますわ。せめてこのパーティーでの出会いを考えてもおかしく無いのでは?私の事を最優先にしてくれるのも嬉しくはあるけど、なんだか申し訳なくもあるのよね。


 「気にする必要はないよ、マリアを守ってやれるのは僕ら家族だけなんだから」


 うわぁ……フィンネル兄様のどストレートなセリフに鼻の奥がツンとして思わず目が潤みそうになりましたわ!

 ええもう、今日はお兄様方に思いっきり甘えさせて頂くことにしますわ。


 「とても心配をかけて申し訳ないと思うのだけど、でも嬉しいわ。 今日はお兄様方に甘えさせていただいて、パーティーを楽しむことにしますわ」


 「そうよ、思いっきり楽しんでいらっしゃい」


 お母様の極上の笑みだ。うーん、我が母ながら美しいわぁ。ってかこの部屋の中美しいがゲシュタルト崩壊起こしているわよ。パーティー会場ではうっかりスウィーツ等に気を取られると油断につながってソコを狙われるかもしれないので、今のうちに軽食と共にスウィーツを味わった。うーん、だいぶ癒された。これで舞踏会会場に入ってもきっと大丈夫!


 デビュタント参加者以外は自由に舞踏会会場入りして良いので、余裕を持って会場入り口の大扉へと向かった。私は入場もお兄様方二人と両手に花状態での入場だ。お兄様方が差し出した腕にそれぞれ手を乗せる。注目集める事間違いなし!ものすごく悪目立ちするように思うけど気にしない。

 会場はお父様とお母様が先に入り、その後に続き三人で入った。うん、超注目されてます。


 この先は一般招待客ーー国内の貴族のことだーーがあらかた入場し終わったら、賓客が入り始め(デビュタント後でもOKだ)、皇族が専用扉から会場入りして着座する。今回、皇太子殿下は居ない。

 その後、今年社交界デビューする貴族の子女が大扉から入場する。殿下はその一番最初に、聖女を伴って出て来る。と言う流れだ。



 国の英雄と社交界の白百合で華の両親は挨拶に集まった貴族達との談笑に忙しそうだ。私達は早くから来て居た互いの友人達と挨拶を交わしてテラスの方に向かおうとした、っと、何やら黒い塊が物凄いスピードで突進して来ます?それも私に向かって!

 でも私の両隣には強い味方がおりますのよ。でもそこで予想外、というかどっから来たの?って人が割り込んだ、正装をしているので招待客であることには間違いないだろうが、帯剣していて、抜刀して黒い塊、まぁ端的に刺客って奴ですわね、と剣戟を重ねた。周囲ではご婦人方の悲鳴が聞こえる。ザクっと嫌な音が二度して、間に入った貴族の男性が床に沈んだ、瞬間黒い塊の男と目が合った、感情の無い目、多分プロの刺客だ、相当の手練れだ、でも私の両脇に居るお兄様方もめっちゃ強いからね?あと3mと言う所に迫ってお兄様の手が上がった。


 「【雷の大蛇(サンダースネイク)】」


 うわぁ!えげつない拘束魔法だ。フィンネル兄様らしいったらないわ。これ解いても麻痺効果が残るのよ、それもアイテムや魔法で回復するまでずっと。

 リンデーン兄様は私の肩を抱き腕の中に庇いながら、やはり攻撃の準備か前に手をかざしている。男の呻き声が聞こえた、雷撃が消えても動く様子は無い、まぁ身体中が麻痺してるからね。やっと警備の護衛騎士隊が三人やって来たが、男を拘束しようとしたら自決した。どうやら口の中に毒薬を仕込んでいたようだ、忠義なことだ、よほど飼い慣らされた刺客だったのだろう。しかも何の呪い(まじない)か、男は灰になって姿形もなく消えた。ええーーーっ吸血鬼?まさかぁ!?服毒で死ぬ吸血鬼なんて居るのか?


 そこで私は思い出した!私を助けに入ってくれた貴族男性の存在を!

 駆け寄る、お兄様方はぴったりと付いて来ている。幸い息は有った、でも右足と腹部をザックリと切られている、周囲で『治癒師(ヒーラー)を!』っとか色々叫び声が聞こえるが、もう予断ならない容体だった。足は千切れそう、多分普通の治癒師では切断だろう。腹部は態勢を変えただけで内臓が飛び出るだろう。自信は無い。完全に人体実験になってしまう。でも今直ちにこの人を治せる可能性が有るのは私だけかもしれない。聖属性は隠蔽しているからここでは使えないけど、きっと出来る。

 私は両手を彼にかざした。


 「優しい闇夜に心身を委ね癒しを享受せよ【究極治癒(エクスヒール)】」


 新月の光のようにぼんやりと優しい、弱い光が彼を包み込み、見る間に傷を癒して行く。綺羅綺羅しいシャンデリアの光の下では目立たない程度の淡い光だった。流れ出た血は戻らないけど、傷は初めから無かったかのように消え去っていた。

 同級生だ、その時になってやっと少年を認識した。同級生のディリスナ・リード辺境伯嫡男。冬休みが終わった頃、殿下の側近になったと自己紹介して来たメガネ男子だった。その時は、まぁ殿下の側近になれるなんて出世(めいよ)を、誰彼にでも自慢したくてしょうが無いのだろうと思っていた。が、何故彼が私を命がけで守ってくれたのだろう?彼は殿下を護衛する為に会場内での帯剣を許可されているはずだ。思わず身体が動いてしまうほど騎士道精神に目覚めていたのだろうか。ぼんやりとそんなことを考えていたら、身体がふらついた。治癒魔法自体は、というよりMPは無限なので問題ないけど、あれだけの大怪我を治癒する為と、初の人体実験での緊張もあって精神力がレッドラインに達したのかもしれない。リード辺境伯子息はまだ目覚めない。お礼を伝えたいけどそれは後の方が良さそうだ。


 私はお兄様方に連れられて、とりあえず人目に付かないテラス席に移動して休憩する事にした。

 早めに会場入りして良かったのかもしれない、まだ皇族も賓客も会場入りして居ない。血で汚れた場所は何も無かったかのように洗浄され元どおりになっていた。リード辺境伯令息も担架で運ばれて行った。家に帰ったら彼宛にお礼状を送っておこう。それよりも学園で会う方が早いかもしれないけど、こう言った事はそういう問題では無いのだ。リード家はご夫人がお母様のご友人、なお一層礼を尽くしておかなければ。


 今頃警備担当の帝都騎士団所属の護衛騎士隊達は相当怒られているだろう。賊の侵入を容易く?許してしまった上に辺境伯嫡男の負傷、狙われたのは一昨年、昨年に続き皇太子殿下の婚約者。まぁまぁ、警備体制も相変わらず甘ったるいことね。私は明日からの学園生活を安全に過ごす為、かつ最終的な自己防衛の為に”奥の手”を使うことにした。お兄様方にそれを伝えたら、いい時期だろうと同意の言葉が返って来た。お兄様は独自の情報網をお持ちだから、何か知っているのではないかしら?それにしても、暖かい紅茶にも癒されるけど、扇子の先のもふもふ、これ最高だわ。さりげなく頬や顎にもふもふ出来る。なんて癒されるのかしら。


 そろそろ皇族がご入場されると聞き、会場内に戻った。私達は出入り口を避けた壁際に寄って待つことにした。皇族専用の扉から皇帝陛下、皇太后殿下、第二妃殿下、第二皇子殿下、第三皇子殿下、皇弟殿下が入って来た。

 おやまぁ、珍しく勢ぞろいですか。

 皆んな入って来た皇族に注目しているのに、大神官が私に突き刺さるような視線を投げかけて来ている。恐らく闇属性の、それも聖属性ですら滅多にお目にかかれない究極治癒を見せられた為だ、興味が湧かないわけがない。だが所詮闇属性だ。神殿が関わる問題ではないのよね。まだ私の精神力は回復してないけど、レッドラインは乗り越えたようで多少の余裕が出て来ていた。うーん、お茶かもふもふか、それが問題だ!なんちゃって。私は口元を扇子で隠しながら、お兄様方、特にフィンネル兄様に伝えた。


 「大神官がずっとこちらを見ていますわ」

 「ああ、俺たち三人共目を付けられているみたいだな」


 リンデーン兄様は読唇術対策で軽く握った手を口元に持って来てから話をした。フィンネル兄様はそのまま話す。唇を動かさずに話す腹話術みたいな事が出来るのだ。普通口の中で喋ると、もごもごして聞き取り辛いものなんだけど、そうならない。無駄に高スペックだわ、何を目指しているのかしら?


 「まぁ元々、我が家自体が目を付けられているんだ、今日の事は関係無い。 前聖女の子孫は僕らだけだからな。 それに……」

 「分かる、政略結婚以外でまともな嫁が来ない。 よくここまで保ったと思うわ」


 リンデーン兄様も気が付いてた!ルナヴァイン家の嫁の系譜を辿るとお家騒動待った無しな危うい橋を渡って来ているところ!


 「虎視眈々と潰そうと狙われている感じがするってことなのかしら?」


 だが今この場の話題としては的外れだったらしい。


 「いやぁ、流石に潰そうとはしないでしょうよ、何とか弱みを握ろうと探られてはいるけどな。 あと母上も聖女でこそ無いが聖属性の上級魔導師だからな?」


 あーら、やっぱりフィンネル兄様はジョブチェンジした方が良さそうよ?未来の天才軍師様だからこその洞察力、諜報力ではあるのだと思いますけど。やっぱり敵に回したく無い攻略対象ナンバーワンだわ。



 一旦閉じられた大扉が開かれる。これからようやくデビュタント参加者の入場が始まる。先ずは聖女様とパートナー、皇太子殿下だ。続いてエリンとサトゥレ侯爵令嬢、次がヘルムルトとディナ、今年社交界デビューの令息、令嬢は多く50組らしい。これはファーストダンスまでかなり待たされそうだ。ファーストダンスは今年社交界デビューするペアのみが参加するので、関係無い私達は初々しいダンスをただ見て居るだけだ。

 ヒロインはスチル通りの可愛らしい女の子だ、殿下にエスコートされて舞い上がっているのが分かる。うん、ちょっとくっつき過ぎかな?殿下の腕に胸がぶつかりそうですわよ。かなりすれすれだ。皇帝陛下の前で挨拶する。午前中に正式な挨拶を済ませて居るから、淑女の礼で挨拶する。一旦腕から手を離し、その後は殿下が差し出した手の上に、手を重ねるだけなので、歩調を合わせて歩くだけで良いから失敗は無いだろう。まぁ、本当は手を離さずそのままで出来る程度の淑女の挨拶をすれば良いんだけどね。しかも、彼女の足元はどうにも不安げだ、すっ転ばなければ良いなぁ。


 「どう思う?」


 うん?リンデーン兄様は何が聞きたいのかしら?


 「何がですの?」

 「やだなぁ、婚約者殿が他の令嬢のエスコート、しかも社交界デビューのをすることについてじゃないか」


 安定のネチッこさですわフィンネル兄様。私はすかさず答えた。


 「まぁ、殿下にはお似合いだと思いますわ」

 「「……」」


 ちょっと!人に聞いといてその態度は何よ。本当にお似合いだと思っていますのよ?

 やっとファーストダンスが始まった。白いドレスと礼服が会場の中央で翻り舞い踊る。初々しくもあるけど、大抵の人は危な気無いのに、ヒロインはやっぱり危な気な様子だ。あ、今殿下の足を踏んだな。一回だけならむしろ好感度アップすると言う変わった恋愛パラメーターだ。他の攻略対象者達の足は絶対に踏んではならないのだけど。

 彼女は今日、何人の攻略対象者達とダンス出来るのかしら?


 ファーストダンスはつつがなく?終わった。次の曲が始まるので殿下は別のご令嬢からの誘いを受けていたのだけど、ヒロインはうろうろと、目線もキョロキョロして誰かを探しているようだった。彼女の周囲で一番近くに居るのはヘルムルトだが、お相手のディナは婚約者なのでそのまま続けるようだ。エリンも多分ダメね、そもそも普段相手して貰えてないと嘆いているご令嬢がこの機会にエリンを離す訳が無いわ。ダンスは基本的に男性から誘う、でもお目当ての男性に近づいてそれとなく主張するのは大丈夫なので、実質女性からダンスのお誘いをしても良いようなものだ。要はやり方の問題。


 運悪くダンスのパートナーが見つからなかったヒロインには挨拶タイムが来たようだ、愛想を振りまいて、周囲もそれを好意的に受け取っている。だって聖女様だもの、居るだけで愛される存在って良いわねぇ。


 ダンスを踊るつもりもない私達三人は、フロアの様子をそれとなく見ながら壁際で楽しく談笑していた。


 「あー、ジルのやつあんな所に逃げてやがる、エリンは何時の間にか逃げてるな、流石としか言いようが無い」


 リンデーン兄様が楽しそうに呟いた。あらら、エリンは婚約者からも逃げ回っているのかしら?お気の毒ねぇ、この場合エリンのお相手の婚約者がってことね。全く、腹くくって二曲三曲くらい付き合いなさいよ。まぁ、私は別よ、お互いにダンスする気が無い場合は無理にダンスする事ないと思わない?


 壁の花に徹して居た私達に近寄ってくる青年が居た。外国からの賓客が何故お子様三人に近寄って来るのか。意図が読めないのだけど、失礼の無いように対応しなければね。近寄って来た良い頃合いの所で淑女の最高礼を取る。お兄様方も同様に紳士の最高礼を。賓客の青年は軽く手を振り、楽にして欲しい。と言って来たので、一旦姿勢を正した。


 「わたしはテス・テラ王国から国王名代として来た、ハイドラ・マイナードと申す者、お見知りおきくださると幸いです」


 随分と低姿勢な人だ。国王名代ならばもっと尊大な態度を取る者も珍しくはないのに。しかもこの人、明らかに私に挨拶しているよね?本当ならリンデーン兄様から挨拶するのが良いのだけど、ええいままよ!


 「まぁ、ご丁寧にありがとう存じます。わたくしはマリノリア・ルナヴァイン、こちらはリンデーン・ルナヴァイン、公爵家嫡男ですわ、そしてこちらはフィンネル・ルナヴァイン、兄でございます。マイナード様におかれましては、公爵家ご当主で現国王のお従兄弟君でいらしたかと存じます、長の船旅でお疲れでございましょう。パーティーはお楽しみ頂けておりますでしょうか?」


 楽に、とは言われても、相手は国王の名代である。ドレスを少し摘み上げ、左足を少し引いて淑女の礼を取りながらご機嫌伺い程度の挨拶と、こちら側の紹介をした。そして頭を上げて微笑みかける。


 「ほぉ、これはこれは、かの有名なルナヴァイン公爵家のご子息ご令嬢方でありましたか。遠目にも麗しい天上の住人かと思われるお姿を拝見しまして、失礼ながらお声をかけてしまいました、無作法をお許しいただきたく存じます」

 「無作法だなんて、お上手ですこと。かのお国の話はかねがね伺っておりますわ、身につけていらっしゃるお衣装は民族衣装とお見受けしますが、とても繊細な技巧を凝らした逸品ですのね」


 その後、お兄様方も一緒になってしばらく歓談した。一体何が目的だったのかは分からない、普通に世間話というか、互いの国の文化を褒め称え合って話が終わった。何とか国益に適う関係の話に持って行けないかと思ったけど、うちの領に港は無いし、外交官でも無いので、無難な話で終始した。


 「あいつ、絶対にマリア目当てだったな。 始終隙あらば褒め称えて秋波を送りやがって、見え見えなんだよ」

 「あー、ランディでも分かる事を見事にスルーしちゃってていっそ清々しかったよねぇ、見てるこっちは楽しめたけど?」


 もう、お兄様方の言っている意味が分からないわ、あんなの社交辞令の内に収まる程度じゃないの。確かにちょっと大げさだった所もあったけどね。女神だの天使天女妖精、どんだけ持ち上げるのか、女性が居たら褒め称えずにいられないイタリア人なのかしらってほどだったわよ。


 「ルナヴァインってだけで有名ですのね」

 「そりゃそうでしょ。 アルト国を撃退したのは実質ルナヴァインだって知れ渡っているよ」

 「姫将軍も凄かったけど、その前に勝敗決してたようなものだから」


 リンデーン兄様もフィンネル兄様も、両親も、普段は家を誇ることは無いけど、知識として知ってはいるのね。まぁ、ルナヴァイン家が自由に出来ているのって、先祖代々の功績の積み重ねによるものだものねぇ……。


 存在を忘れかけていたヒロインが視界の隅に入った。こっち見てるよ、いや何時から見てたの?聖女の周りには他の攻略対象者は見当たらない。ヤな予感がした。私も、何故かお兄様方もそっちを見ないで逆側を向いて話を続ける。うーん、お兄様方は私の護衛優先って事なのかな。意外と真面目なのね。そのうちリンデーン兄様が喉乾かない?なんて言って来た。そうねぇ、ずっと同じ場所で立っているのも何だかよね。ここはありがたく乗ろう。


 「そうね、お茶がしたいわ」


 そうして、会場を出ようとしたら何時の間にか側にいてヒロインから声をかけられた。今走って来なかった?殿下狙いかと思ってたらお兄様方も狙ってるのかしら?最悪のシナリオフラグにもやもやして来る。

 声もゲーム通りだ、可愛らしい甘ったるい声。


 「リンデーン様、フィンネル様、お久しぶりですわ」


 なんだ、その挨拶は。やっぱり淑女教育は上手く行ってなかったらしい。大体お兄様方は名前を呼ぶ事を許したのかしら?


 「ああ、聖女様、いらしたのですね」

 「ご機嫌いかがですか、パーティーはお楽しみでしょうか?」


 冷たい、こんな冷ややかなご令嬢への対応なんて初めて見ましたわお兄様方。一応、口元は笑みを浮かべているけど、きっと身内以外からは綺麗な笑顔を浮かべているように見えるでしょうけど!


 「ああ!ちょうど良い機会ですからご紹介します。こちらはわたくし共の妹でマリノリアです。学園では校舎が違いますので、ご挨拶する機会も無いでしょうからね。マリノリア、こちらは新しく顕現された聖女様で、モクレン・デボワール伯爵令嬢だ」

 

 私は深く淑女の礼を取りながら自己紹介した。


 「ただいまご紹介に与りました、マリノリア・ルナヴァインでございます。聖女様におかれましては、ご機嫌麗しゅうございますでしょうか」


 そして速やかに終了。顔を上げてにっこりと微笑むと、お母様プロデュースの妖精さんの装いが効いたのか、頬を染めながらモジモジしている。普通に可愛らしい仕草だと思うけど、貴族社会では通用しなかったりするんだよねぇ。その証拠にリンデーンお兄様は、


 「さあ、挨拶も終わったし、ゆっくり休みに行こう。 久しぶりの大きなパーティーで疲れただろう?」


 これ見よがしに私の背中に手を回すのは何アピールでしょうか?ええ分かっています、早く帰りたいんですね。

 そしてヒロインを置いてけぼりにし、速やかに舞踏会会場を出て我が家の馬車に乗り込んだのであった。お父様お母様のお帰り用の馬車は私達が帰宅後に送れば十分に間に合うから良いのだ。

やっとヒロインと悪役令嬢が遭遇しました。

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