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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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60. 悪役令嬢、収穫祭という名のお茶会ブッチしちゃいましたわ!

今回は短めです。

 剣術の模擬試合の翌週月曜日には、なんちゃって収穫祭が開催される。私は行きの馬車の中で具合が悪くなってしまい学園に到着後、保健室へと直行する事となった。私の精神力はまだそれほど強く無いらしい。ゲームシナリオ開始までには心臓に毛が生えているんじゃないかってくらいに強くなっておきたいなぁ。


 「マリ、家に帰るわよ、ゆっくり起き上がりなさいな。 模擬試合観戦とは違って、大きなパーティーはまだ無理があったみたいね、心配しなくて良いわ」

 「……お母様、ありがとう」


 お母様が侍女を連れて迎えに来てくれた。頭をゆっくりと撫でられて、そのまま安心して眠ってしまいそうだったけど、おかげで少しは身体が軽くなった気がしたので、お母様と侍女の手を借りながら迎えの馬車で一緒に帰宅した。事前にどんな雰囲気のお茶会になるのか確認しておきたかった所だけど、こればかりはしょうがなかった。



 夕方になって帰宅したお兄様方が私の部屋まで様子を見に来てくれた。私が欠席することを友人達に知らせてくれた事。お茶会は特別何かがあったわけでは無く、会場になった中庭の隅の方にいくつかのテーブル席が用意されてはいたものの、基本的に立食式のパーティーだったとのこと。さらにお茶を片手に持つとスウィーツが持てないと愚痴っていた。二人共甘い物が好きなのに残念だったようね。

 でもお茶とスウィーツの取り皿を同時に片手に持つ事は出来るのよ。あとで伝授してあげなきゃね!




▽▲▽▲▽


side.boys


 「あーあ、特に代わり映えの無いこの催しってなんか意味あるの?もう帰って良いかなぁ」


 正直過ぎると言おうか、取り繕う気が全く無いフィンネルが表情にもツマラナイと出して言った。そこに兄のリンデーンが宥めに入った。


 「まぁまぁ、これ美味しいから取って来なよ」

 「甘いものだけ食べるのもなんかなー、途中でお茶が欲しくなるからいっそ座ろうか。 って、もう満席だな、席もっと用意しておけって抗議しとくか」

 「おいおい、収穫祭の意味ちゃんと分かってるか? あまりそう、大きな声で不満を言わない方が良い」


 明らかにつまらなさそうに愚痴を垂れ続けるフィンネルに、多少の呆れを含みつつ忠告して来たのはアーノルドだ。そして小さな声で「気持ちは分かるがな」と呟いた。そこにヘルムルトも加わった。


 「収穫祭は、どうせなら市井の祭りに繰り出した方が楽しいですよ。 もうほとんどの地域で終わってますがね」


 どうやらお忍び常習犯らしく、軽くそんなことを言う。こちらもご同類のジルアーティーが話を付け添える。


 「祭りに合わせて魔術道具作りを散々手伝わされたから、是非とも見て欲しいものだね」

 「ああ、夜空に火の粉が舞う芸術的な魔術道具だっけ。 使い切りだから毎年用意するのに大変なんだってな」


 ジルアーティーの肩に手を乗せエリンが労を労う。使い切りであろうと魔術道具はそう安いものでは無いのだが、民衆が楽しむ祭りのために各地の領主や、裕福な商人などが毎年提供しているのだ。現代風に言えば花火である。


 魔法ならではの美しい火花が夜空に共演する様は、実際お忍びで見物に来る貴族も多い。

 皇城でも毎年上げているが、見るなら少し離れた邸からの方が城を背景に美しく見えるのだが、皇城前の広場には毎年多くの帝都民が集まり、歌って踊るの大騒ぎである。屋台も出る。貴族街の一等地ではあるが、この時ばかりは民衆が溢れて馬車を出すどころではなくなる。皆空気を読んでその時間帯は馬車など出さずに済む様にスケジューリングするのが常だ。

 他の領や地域で行われる収穫祭も同じ様なものだ。そんな賑やかな収穫祭と比べれば、学園で行われる事になったティーパーティーなどつまらなくも感じるだろう。


 「殿下はお忍びなんてやめてくださいねぇ」

 「ええそれはもう、切に願いますよ」


 等と情けない声で訴えるのは殿下の乳姉妹で護衛でもあるパトリックと側近で侍従兼護衛のジーンだ。


 「だが、叔父とフリードは今年見に行ったと言っていたぞ?」


 揶揄うようにアーノルドが応じると二人は揃って頭を抱えながら口々にそれは真似しないでくださいと訴えていた。叔父は現皇帝の弟でアーノルド殿下の3歳上、本来なら学園に通っている年齢だが隣国に留学している。隣国は教育制度が違う所為か長期休暇期間が違うようだ。フリードは皇太子殿下の腹違いの弟でフリーディア第三皇子のこと。2歳下で来年から学園に通うことになる。


 ふと、あるご令嬢方のグループを見かけて気になった事をアーノルドが呟く。


 「お前らの妹はどうした?」


 珍しいこともあるものだとルナヴァイン家の双子の兄弟はしばし目を合わせた。


 「殿下がうちの妹の心配をする?」

 「たまたま気になっただけだろう?」


 明日にでも雹が降るのでは無いかと心配にでもなるものだ、と言わんばかりの驚き様だったが、こういった所で素早く持ち直してフォローするのはフィンネルの役目だ。


 「通学中に具合を悪くしまして、保健室に連れて行きました。 心因性のショック状態だということで、恐らく家から迎えが来てもう帰っているでしょう。 ご心配無用です」

 「……なんだそれは」


 アーノルドには理解出来なかった様だ。リンデーンが肩を竦めながらフォローを重ねる。


 「妹はまだ人の多く集まるパーティーが怖いようです。 あんな事がありましたから、ご理解くださると有難いのですが……」

 「とりあえずは分かったが、ショック状態とはどんなものなのだ?」

 「……うーん、何と言うかですね。 呼吸困難のような、引き付けのような、体温も下がって良く無い状態ではありましたかね」


 リンデーンは、吐き気も伴い少しばかり嘔吐したことまでは伏せた。

 流石のアーノルドも何も言えず、この話は打ち切りとなった。数人の視線がちょうど合った。考えていることは恐らく一緒、皇太子殿下のご婚約者がパーティー恐怖症ではこの先どうなる事やらといった所であろう。


 パーティー中に各々令嬢方から声を掛けられはしたが、概ね平穏にティーパーティーが終わった。

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