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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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21. 悪役令嬢、夏休みの領地視察

 今回の小旅行は5泊。領内の小旅行にしては余裕のある日程だなと思っていたら、翌日には理解した。

 昨日とは違い、上品さは損なわない程度の動きやすいマキシ丈のドレスを着せられ、山頂の塩水湖周辺を見て回る途中、従者や使用人達が細かに小休憩を申し出て来て、ゆっくりと探索することが出来た。普通の観光では色々見ようとするあまり、一所をじっくり見る余裕がないんだよね、特にツアーだと。

 でもその内使用人や護衛達がスケッチしたり、サンプル採取しているのを見かけた。


 気になって近づいて聞いたら、この辺りの植生や生態系の調査をしているとのこと。


 「でも高山植物は貴重な種の場合があるから、矢鱈と採取しない方がいいのよ、絶滅してしまうこともあるわ」


 現代では研究や趣味で珍しい植物を根こそぎお持ち帰りする人達に因る乱獲で絶滅してしまった植物が沢山あるのだ、植物だけに留まらないけど。

 でも今回の調査では一部採取という手法を取り、根元から掘り取って全草図をスケッチや念写で記録したら丁寧に植え直すなどの配慮をしているらしい。それは良かった。私はこっそり調査済みの場所に癒しの魔法をかけておいた。


 うん、ここまでくれば私にも分かります。

 これは『夏休みの思い出旅行』という体を取った『領地内視察と生態系管理のための調査』ですね、道理でお兄様方が来なかったことをお母様が恨み節してたはずだわ。


 私に取っては、夏休み中の自由研究なんて宿題も無いから、生まれてずっと暮らして来たにも関わらず、実際に見たことのない領地巡りを出来る機会。

 でもルナヴァイン公爵領は小さめの領地だけど、そんな短期間で終わるのかしら?私の夏休み大ピーンチ!!

 山の頂上から下に移動しつつ大自然を感じて満喫して、旅行としても申し分無いのだけど、これで良いの?




▽▲▽▲▽



 ルナヴァイン公爵領は皇都よりも多少狭いくらいの面積で、なおかつ三分の一をアトランタ火山が占め(山の裾野の方には畑や農村はあるけど)残りの五分の一を森林が覆っていて、領都は商業施設や集合住宅が並ぶ人口過密地になっている。領都を出ると農村や酪農地帯が広がる穀倉地域となる。

 人口過密地域があっても治安が良くスラムが存在しないのは商業の発展の他に、帝国内でも1、2を争う質と産出量を誇るコランダム鉱物鉱脈がある鉱山があったりして、資源が豊かで職があるから。

 豊かな領地には人が集まりやすいけど、帝国では移住に関してはある程度の規制を設けているので、他領から難民が流れてくることも無かったりする。

 まぁルナヴァイン領周辺は領政が落ち着いてる領地が多いし、何より皇都が近いもんね。


 ルナヴァイン領で一攫千金は難しい。魔物も出なくて治安もいい、だから冒険者ギルドが無いって、移住希望者どころか観光客も来ないよね。

 だから今のうちに領内の徹底調査をしておこうってことなのかな、さらに利用出来る資源の発掘に繋がるかもしれないものね。

 と、領内についてはこんな感じ。


 結局5日では山の頂上から5合目までの調査しか出来ず、主に岩山部分が占めてたから北側の森の一部に入った時に貴重な薬用植物の他に、小さめの温泉が発見されただけだった。裾野の方には知る人ぞ知る秘密の温泉地があったりするかも。

 観光地化するかは別の話だよね、既に隣接する領の温泉地が有名だし、皇都近くにもあるから。




▽▲▽▲▽



 流石のお母様も『夏休みの思い出計画』を連続で入れる気は無かったようで、少なくとも3日は自由時間が出来た!

 早速、休み中の課題を進めたいからと言って早朝から部屋に引きこもった。万が一のために机の上に『夕食時までには戻ります、探さないでください』と書き置きしておいた。


 城塞の屋根裏部屋にlet’s go!

 片方だけでも転移魔法陣を敷いていると魔力消費がかなり節約出来て、やっぱり便利。


 「ん、まずは間取りから。修復ではなくDIYで間仕切り壁や、防音対策の二重床工事、水回りまで全部組み立てようというのだから、いくら素材が揃っていてもかなりの難易度だから、雑念を追い払って集中しなくちゃ」

 「……これって呪文は何でもいいのかしら?」


 しばらく考え込む。両手を開いたまま重ねて前に突き出す。

 「私の憩いの隠れ家を整え構築せよ!【内装構築(リフォーム)】」


 まんまやん、と頭の中で突っ込みながら光り輝きながら変化していく屋根裏部屋内を見続けること30分ほど。

 思い通りの間取りの部屋が出来上がっていた。試しに水回りに問題が無いか、壁や床も一通りチェックしてみる。


 「驚き。問題ないみたい。あとは家具とインテリアか……」


 がらんとした何も置かれていない室内を見て、満足げに微笑んだ。


 「さて、帰ろうかな」


 屋根裏に上がって直ぐは3畳ほどの小さな板の間になっており、南側に一つだけドアがある。

 その扉を押して開けると見た目ワンルームのダミールームになっている。簡易キッチン、シャワー室、脱衣所兼洗面室、トイレの付いた計12畳ほどの部屋、一応この室内設備だけでも最低限の家具を整えればそこそこ快適に居住可能だと思う。備え付のクローゼット奥の床には転移魔法陣が隠されている。

 さらにダミー部屋内から隠し扉の奥に行くと、快適居住スペースが広がっている。間取り的には2LDK。


 「ちょっと欲張り過ぎたかな、いざって時にこの拠点捨てるの惜しくなりそう……」



 やっぱり何もかも適度ってものがあるよねー

 転移魔法陣に向かおうとした時、足から力が抜けて座り込んでしまった。

 魔力、すなわちMPは∞と表記されていて規格外(チート)だったはずだけど、他を消費したらしい。

 ステータス画面を見ると、ん、これはSP(せいしんりょく)、なるほど、大きな魔法を使うと減るのはMPやHPだけじゃないってことか。

 自分が調子に乗ってやったこととは言え、ちょっと遠い目をして現実逃避してみたくなった。



 なんでチョコレート持って来なかったんだろう。

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