19. 悪役令嬢、待ちに待った夏休み
遅々として話が進みませんがご容赦をm(__)m
夏休みだ。
二ヶ月もあるのだから屋根裏部屋のリフォームも一気に進むに違いない。
今まで週末は出来るだけ素材の買い出しをして屋根裏に持ち込んだから、一気に出来るんじゃ無いかと思う。魔法が上手く使えたらの話だけど。
何しろ下水道の配管工事までしようとしているから失敗出来ない。
これまで土木建築関係の本も読み込んで、間取り図で出来上がりをイメージトレーニングして来たから結果に期待したい。
魔法を使う上でイメージトレーニングはとっても大事。
同じ魔法を使っても結果が違ってくるのは単に魔力量や制御能力だけではないらしい。うーん、長い説明を要約すると『心技体』みたいなものかなって思ったの。
心→イメージ、技→制御能力、体→魔力量って感じ?
ここに来て資金不足が深刻になって来た。
だって自分でお買い物する事なんて無かったから定期的にお小遣いを貰っていたわけじゃないのよね。
私が内緒でお金を稼ぐとしたら、使わなくなったドレスやアクセサリーをリフォームしてから売るとか……?
そのまま売れないのは、うちが財政難だって噂が流れたりしたら困るから。
公爵家の名誉に関わる、かもしれない。
ダメだなこれは、万が一出所が知れたら理由を問い詰められること請け合い。
やっぱ冒険者として自分の腕で稼ぐ?
お兄様達は狩に連れて行って貰ってたと言うエピソードが有ったけど、私は領地暮らしで箱入り令嬢だったから実戦経験無し。いきなり魔物退治とかメンタル的に自信無いけど、将来的には自分で稼ぐ手段は必要不可欠だよね。
解体もやれないと生きていけないかしら?魚下ろすくらいなら出来るけど動物は経験ないよね。
前世は一七歳だったけど、残念なことにアルバイト経験すら無しだから働くのは完全に未経験なの。とほほ。
だから家具やインテリアは後にしよう。素材集めから自分でする手もあるけど、とんでもなく手間がかかるんだよね。
でも魔法の練習にもなるからやってみる価値あるかな。
魔法が使えても”魔法のランプ”みたいに、望みを自由に叶えられるわけじゃ無い。
錬金術も不老不死も太古から研究されて来ているけど、結局、無から有を生み出したり、世の理を覆す魔法は無いの。
そんなこと出来たら命を掛けて他国に戦争を仕掛ける必要なんて無いよね。
▽▲▽▲▽
「結局二人共帰ってこなかったわね、領主になるつもりあるのかしら?低学年の方が暇なのに」
皇都の邸を出て領地への馬車に揺られていると、お母様は昨夜と同じ愚痴を言い始めた。
お父様も私も反応が薄いからご不満なのね。
だってお兄様方は学園に入ってから週末も長期休暇も皇都の邸にすらほとんど帰って来ないじゃない。今更よ。
馬車の窓を開けると夏の初めの甘く爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。
これはリンデンの香りだ、領地にもあるかもしれないけど花を収穫したいな、でもここでのんびりしては今日の宿泊地に到着するまでに日が暮れてしまうかもしれない。
デビュタントが行われた春の社交シーンの始まりに合わせて皇都に向かった時は二日間の旅程だったけど、初夏を幾分過ぎて暑くなった今回は馬車を引く馬の体力消耗を考慮し、余裕を持たせて三日間の旅程になっている。
皇都を抜けるのに半日かかる為、隣接する領地に入ってすぐの街で宿を取ることになっているんだけど、そこから三、四時間も馬車を走らせれば貴族にも人気の貸し別荘地で、そちらの方がだいぶ涼しい。それに料理を自分達で作れる。
皇都に近くはあるが、山裾で標高も高く、森が近い湖畔だから夏でも涼しいの。
街には街の良いところもあるけど、買い物をしたいわけでもないのでただ寝て食事を取るだけ。面白くはない。
予定より少し早く宿に着いたので、先に汗を流して着替えをしてから宿泊部屋のリビングへ行く。
準スイートルームの様な寝室二つ付きのゆったりした間取りで調度品も落ち着きがあって品がある。
ディナーはサラダと、メインディッシュの温野菜、デザートだけ食べてたらお母様に怒られた。
……ごめんなさい、メインディッシュのフィグマスがあまり鮮度よくないの。味付けもイマイチだわ、無理。
茉莉奈なら確実にWコンボ食らってたと思うけど、マリノリアは内臓も丈夫だから、このくらいなら痒くもならないしジンマシンも出ないけど食べたくない。
近くの湖で獲れる淡水魚なのにどうして鮮度落ちてるの?魚介で鮮度良くないのって最悪じゃない?
パスタもふやけてて無理、これなら硬くてもパンの方が良かったわ、しょっぱいだけのスープと合わせればなんとか食べられたかも。
なんだかこんなワガママばっかり言ってると本当に悪役令嬢みたいね。
でも美味しくないものは美味しくないの。
私、食糧難になったら真っ先に死にそう。
次の宿泊地に着いた頃には、暑さと道中の食事事情もあって疲れ切ってた。
これからはMy調味料持ち歩こうかな?前世でもクラスメートにマヨラーとか居て、外食時に何を食べるにもマヨネーズを付けまくっていたな、懐かしい。
でもお出汁、コンソメ、ブイヨンは難しいわ、コンソメとブイヨンは煮詰めてから乾燥させたら良いの?お出汁は鰹節と乾燥小魚を粉末にすれば代用出来るかしら?シーズニングハーブも良いわね、しょっぱいお料理には使えないけど、味が無い料理には魔法の調味料になるわ。
そう言えば亜空間収納に入れておけば腐らないんだった。普段持ち歩く用の小さめのを試しに作ってみよう。
侍女達が荷解きをしてくれて、お茶を用意してくれた。
美味しい……温かいミントブレンドティーが疲れた心身に染み渡って、やっとひと心地ついた感じがする。
はぁ、今日はもう何も考えずに眠っちゃおうかな。
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朝早く起床してサッと寝汗をシャワーで流して身支度を整える。使用人泣かせなのは重々承知してるわ。
でも彼女達は他に細々とした仕事をしっかりしてくれているから問題ないと思うのよ。
だって今日のドレスも皺一つなく整えられていて、旅装でありながらもトータルコーディネートバッチリに揃えてあったの。
本当に素晴らしいと思うわ。今日はパステルグリーンを基調として、所々に空色のパイピングやフリルが控えめに付いていて可愛らしい。ドレスがね!
「よっと……ここなら意外と目立たないかな?」
宿泊した宿はこの辺の建物の中でも一等高かったので、屋根の上に腰を落ち着ける。
取り出したるはがま口が気に入って買ってもらった化粧ポーチ。
本邸の出入り業者から購入したものだから品物がいいのと、普段中身がスカスカなのだけど見た目より収納力がある。
好きな浅葱色だ。だいたい自分で選ぶものは青系のものが多い。どうしても好きな色に偏ってしまうのは仕方ないわね。
がま口を開ける、中は空っぽにしてある。
ポーチの開口部に手をかざし、ソコソコの大きさの空間をイメージ。
「空間よ開け 【亜空間収納】」
するとポーチの底が見えなくなった。
「……ああ、内張の布可愛かったのに、覗いたら真っ暗になっちゃった。うん、しょうがないわね」
一発成功なんて中々すごいわ!これで沢山物を入れても豚さんポーチにならないし、こっそり調味料の持ち込みも出来るようになるわ。
夢が広がる。
今日の魔法実験は大満足、さて早く部屋に戻ろう。
「お嬢様、おはようございます。朝食の支度が出来ておりますのでリビングへお願いします」
おや、私が突然部屋に移動して来ても驚かないのね、その方が驚きだわ。
以前訓練も無しに座標移動してお父様にしこたま怒られたのが使用人達の間にも広まっているのかも知れない。
……気を使わずに済むってことで良いのよね?
まだ領地に着かない。




