17. 悪役令嬢、中の人について考える
今回も、モノローグ多いです。
そろそろ物語を動かしたいのですがつまづいてますねm(__)m
まさか”悪役令嬢”に”ご褒美イベント”が発生するなんて誰が考えただろう。
とにかく降ってわいた幸せにニマニマしながら、しばらくベッドの上をゴロゴロしてた。
これは良い思い出として胸の中にしまっておこう。これで微かな恋愛フラグが立って、ゲームシナリオ終了後に縁があって親しくなれるかもしれない、なんて都合のいい夢は考えないでおく。いや、確実に無いでしょ、だって私は幽閉されるんだもの。
今日は鍛錬で汗を流す気にもならない。だってお兄様方が中々戻って来ないから三曲も踊れたのよ。まぁ会話は弾まなかったけどね。
話すことがないのよね。接点が無さすぎるし、現時点でマリノリアが知らないはずのことを興味本位で聞くわけにもいかないでしょう?魔法のこととか、冒険者活動のこと、ヒロインが深く掘り込んで聞いてくれなかったことを沢山聞いてみたかったわよ。
でも流石に三曲目を終えた後、喉が渇いたことを伝えたらデザートコーナーに連れて行ってくれて緊張をほぐしてくれたわ。私はガッツかないように気をつけてクリームの乗ったプリンをお上品に食した。
ジル様が気を使って私の好みを聞いて飲み物を取って来てくれたし、自然に「いつも食堂で食べる時よりも美味しく感じますね」なんて、フッと少し笑いながら話しかけてくれたり、もう私の気分は舞い上がってそのまま後ろにひっくり返りそうだった。パーティー会場には毛足の長い絨毯が敷かれていたから怪我をする事はないと思うけど。社交用笑顔を保てていたかすら覚えてない。うっかり恋する乙女の顔を覗かせてしまっていたりしたら最悪だ。
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ふと、私はジル様が一推しだからこんなに嬉しいけど、元のマリノリア、つまりゲームキャラのマリノリアはどうだったんだろう、と考えてしまった。
一度もそういったことを考えたことが無かったわけではないけど、急に恋愛感情は誰に有ったのかが気になった。
少なくともジル様と踊れて嬉しいってことは無かっただろうな。
もしかして、茉莉奈がマリノリアを乗っ取ってしまったのでは?でも私の前世の記憶が戻ったのは十一歳の社交界デビューのパーティー会場でだったけど、記憶を取り戻す前のマリノリアの記憶には茉莉奈の性格がかなり影響しているように思える。
食べ物の好み然り、健康になった喜びでなのかご令嬢らしからぬお転婆(野生児気味だったような気もするけど!)なのは、お母様譲りかもしれないのでマリノリア由来かもしれないけれど、私は度々この世界にはない言葉を発していたのだ。悉くスルーされているから問題になってないだけで。但し五歳未満の記憶は無い。理由は分かっているから私の所為では無いと思う。
過剰なまでの英才教育はお妃教育の一環ではなく、奇行を繰り返す私を止めるためだったのかもしれない……。
ただマリノリアの意思というか、感情をこれまで意識したことは無かった。
これで良いの?私は俺様皇子に恋愛感情なんて無い。でもマリノリアはどうだったんだろう?ただ七歳の手合わせ時に皇子をあれほど容赦無くコテンパンにしたことを考えると……それでもマリノリアの感情がそこにあったかは分からない。そもそもどうして得物が木刀とはいえ決闘まがいの勝負が許されたのだろう。元々有ったエピソード、でも無さそうなんだよね。やっぱ私のせいで起きたイベント?
私がマリノリアに生まれ変わったから、マリノリアの中の人は何処かに行ってしまったのだろうか?では他のキャラは?ここはゲームの世界だけど、みんなこの世界に生きてる。急にマリノリアの中の人が『よくも私を乗っ取ってくれたわね!』なんて、出てくる展開とかある?
ゲームシナリオ上のマリノリアは、感情があまり無いようだった。
ヒロインはいじめてない。ただ数回、ヒロインが勝手に目の前で転んだり、あまりにも令嬢らしく無い振る舞いに注意したことはあった。それが歪んで攻略対象者達に伝えられて”断罪イベント”につながった。
余罪は他の攻略対象者達の婚約者達やそのご友人方のやったことだろうけどね。学年違うからマリノリアは目にしてないのよ。ああ、”断罪イベント”を回避するためにはこの辺も策を弄しておかなければいけないわ、既に進行中だけど。
”断罪イベント”時はただ驚いてそのまま断罪されるがままで、モブの護衛騎士だかに連れて行かれて食堂から退場した。もしも皇太子に好意を持っていたら、もっと往生際悪く取り乱したり、言い訳したりしただろうと思うんだけどな。
やっぱりルナヴァイン家側は皇家との縁組をよく思わない理由が色々あったのだろう。マリノリアもそれを全部ではないけど理解していたのか、ただ公爵令嬢としての矜持で取り乱す姿を見せたく無かっただけなのかは分からないけれど。
もちろん今世は毅然として否定しますよ。だいたい学年が違うのだから接点なんてほとんどないのよ。それこそ意識して作らない限りね。
皇太子ルートでは、乙女ゲームヒロインあるあるのドジっ子属性とか迷子ってやつを発揮してマリノリアとエンカウントしていた。シナリオでは偶然の遭遇になっていたけど、そんなに偶然なんて続かんわ!
本当に穴だらけのシナリオだったな。推しが居なければクリアする前に投げ出していたかも。
スチルは綺麗だったからこれもモチベーションに繋がっていたんだろうな。
恐らくこっちが会わないように気をつけていてもシナリオの強制力が働く可能性があるから要注意だけど、ヒロインはゲームプレーヤーかひょっとしたら私と同じく転生者である可能性も否定出来ない。転生者が私だけだという根拠なんて無い。もしかしたら何人もいたりして、と考えると怖いからやめておこう。
ヒロインは私が三年生になる年に一つ上の学年に編入してくるから今考えてもしょうがない。でも他のキャラは?なんだかゲームシナリオと違うようなキャラが何人かいるんだよね。シナリオスタート前だから、これから何かあってゲームスタート時の設定と同じ性格になって行くのかもしれないけど。
まず双子のお兄様方、マリノリアに絡みすぎ。これで断罪イベント時に擁護することもなく成り行きを見守るだけとか無くない?無い無い、どんだけ冷血なのよ。
皇太子も若干違う。政略結婚の相手でしかないマリノリアに優しくはしなかったけど、挨拶すらしないほどでは無かった。今日だって皇帝命令があったのなら、しぶしぶでも婚約者のエスコートをしたと思う。今の殿下私のこと嫌いすぎだろ。
よし、これはこのまま維持しよう!お互い嫌い合っていることが分かっていれば、少なくとも私が嫉妬にかられてヒロインをいじめるなんてアホな考えには行き着かないはずだ。更に言うなら私たちの不仲は周知の事実となっている。これで『マリノリア様が可哀想』なんて言って代理虐めなんてものをしてくれるはた迷惑な”おとりまき気取り”のご令嬢も現れないだろう。
それにジル様。公式の場では男性は手袋をするのだけど、ジル様は学校行事でも執事の如く頑なに手袋着用の潔癖症なのだ。身体密着も好ましく無かったはず。それで最初は、やたらと距離が近く馴れ馴れしいヒロインとの好感度が中々上がらないのだ。なのに今日は手袋をしていなかった。ゲームでは外す必要がある場以外では手袋してたのに。だから今日のご褒美イベントはまさしくご褒美だったの!
と、いう事は、まだ潔癖症になっていないのかな?これからどんなことがあってあんなに潔癖になるんだろう……気になる。
そう言えば、攻略対象者達の中で唯一婚約者が居なかったから、婚約者選びの過程でプチ女嫌いになったりして?それは私にはどうしようもないわ。
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今日はせっかくいい気分なので、久しぶりに締め付けられたコルセットから解放された後、シャワーで汗を流しながらアカスリもして、バスタブにゆっくりと浸る。
バスグッズはある程度脱衣所に置いてあるので、フルーティーな香りのするバラを基調としたバスソルトを入れて身体の芯から温まって幸せをかみしめた。
今後は分からないけど、少なくとも今の私は幸せだ。
ブクマ、評価入れてくださってありがとうございます。
読んでくださる方感謝です。もっと精進して行きますね。