14. 悪役令嬢、模擬パーティーのお相手は?
学園生活を楽しむなら今のうち!
朝のミーティングで発表されたのは、一年生の歓迎会を兼ねたダンスパーティーが開かれると言うことだった。
マナーの実技授業の一環でもあると言うことだが、学園行事として楽しむ要素が濃い催しみたい。
「基本的に男女でパートナーを組んでもらいますが、一年生は女子が10人多いので、一部の組みは女子同士で組んでもらうことになりますが、二年生は男子が8人多いので、勇気のある人は思い切って二年生にパートナーを頼みに行くのもいいですね」
フロリス先生が言った途端に女子の間でわずかに嬌声が上がる。二年と言えば殿下の他にもゲームの攻略対象者のイケメン達が集まる学年。当然狙いに行きたいご令嬢方が多いわけよね。
パートナー探しもこのミーティングでの発表から解禁になると言うこと。約一ヶ月後のパーティーまでにパートナーを見つけなくてはいけない。
殿下に至っては婚約者がいても群がるご令嬢方が減ることはないし放って置いてよし、向こうからも来やしないわ。
そういえば、殿下の側近候補のエリン・スチュワート公子がご婚約されたと聞いたわ。二年生の二組にいるけど、サトゥレ侯爵令嬢ってどんな方かしら?可憐で綺麗な感じの人なのは分かるけど、性格までは分からない。ヒロインのルート選択によっては私と同じく”悪役令嬢”役になってしまう可能性があるから、学年も違うし、やはり積極的に関わるのはご遠慮したいところ。
ああ、それよりも、パートナーどうしようかな。
考えながら頭につけたラビットの玉房を手で撫でてしまう。う~ん、この手触り癒される。周囲のご令嬢方からはちょっと……珍しがられたけど、ケープの紐の先とか裾にだって使われてるし、頭に付けたってそんなに変じゃないよね?ストラップで我慢しといた方が無難だったかしら?
朝のミーティーングが終わったその時、教室の後側の引き戸が開いて入って来た生徒がいた。ん、今日遅刻の人居たっけ?と思って視線を向けた、ら。ツカツカと早足に私の席へ向かって来た。
「マリノリア。 模擬パーティーのパートナー決まってる? 決まってないなら組もうよ。 ああ、殿下のことは気にしなくていいから」
フィンネルお兄様が言いたいことを言うだけ言って、胡散臭そうな、よく知らない人が見れば穏やかで優しげな微笑みを浮かべている。
ええええっ~、この早さ何?ミーティング中に抜けて来たんじゃないかって早さだよ!だって息切れひとつしてないもの。
周りのご令嬢方の反応が微妙だ。なんだろうこの反応……お兄様不評です?何やらドン引きされていますよ。
二年生は男子が余るって話だから、男同士でパートナー組むのが嫌で先手必勝しに来たのかと思い当たる。そうね、お兄様ったら通常でも殿方から秋波送られるものね。けどまぁ、この早さは、確かにちょっとドン引きだよね。
殿下のパートナーなんて元々気にしてないけど。
フィンネルお兄様のあまりの必死さに引きながらもパートナーの申し出を受けた。これで一件落着?
▽▲▽▲▽
ランチタイム、いつものように五人で食事をしながら今朝の話題に花を咲かせていた。
「わたくし残念ですわ、まさか二年生に先を越されるなんて」
「ルナヴァイン様なら男性用の制服も着こなせそうですもの、見てみたかったですわ」
「本当に……」
「ご兄妹でのダンスも眼福だと思いますけど、せっかくの機会ですものね」
なるほど。敢えて女子同士で組むって言うのも楽しそうではあったわね。
まだ特定のパートナーを作りたくないご令嬢方も少なくないでしょうし、私も対外的な立場上、身内以外は難しいものね。
六年生の時は女子同士でも考えてみようかな。って、それまで学園に居ないじゃないの!!
来年は良いとして、再来年は攻略対象者達のヒロイン争奪戦になるのかしら?こっそり見学に行きたいわ。
いやいや、このイベントでヒロインの選択ルートが判明するかもしれないじゃないの!
すっかり他人事のように傍観者になりつつある自分に気がついて、慌てて気を引き締め直した。