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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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12. 悪役令嬢、初めてのお使い

 買い物は午前中に行くに限る。何故ならお店が早く閉店してしまうから。一部の飲食店、宿屋や怪しげな店は夜遅くまで営業しているけど、ほとんどの店は夕方の日が沈む頃には閉店してしまう。

 ランチ後にゆっくり、なんてお買い物は出来ないのだ。買いたい物が決まっていて、行く店も決まっているのなら良いのだけど、品物をじっくり物色する時間も無ければ、ウィンドウショッピングしながら目的の店を探す時間も無い。皇都に来てから邸と学園を馬車で往復するだけで、車窓から見える景色は皇城と貴族邸だけ。


 自慢にならないけど十二歳にもなるのに箱入り娘の私は外に買い物に出たことがなかった。


 領地では幼少期から家庭教師によるスパルタ英才教育、剣の鍛錬や魔法の練習に明け暮れる日々で、城の外に興味が無かったのよね。まして前世の記憶が戻る前だもの。

 深窓のご令嬢ではないけど、一応貴族のお嬢様だったのね……。それにしても城の敷地内から出たことがないなんて、皇都に出て来るまで、よく我慢出来たものだなぁ。


 お貴族様のお買い物といえば、邸に業者を呼び付けて、持って来こさせた品物から選んで買うか、オーダーメイド。

 外で買う時は大抵顔パスの利く店でツケで買って後払いだからお財布なんて持って歩かないわけ。何しろ買い物金額が高額。カードなんて無いし、金貨どっさり馬車に積み込んでお買い物なんてしてたら護衛がいくら居ても足りないわ。


 と言っても私の前世は庶民、普通の買い物の仕方くらいは知ってる。

 今回私がしようとしているお買い物はお貴族様のお買い物と違って、お店を自分の足で回って、品物を自分の目で見てその場で買う、ごく普通のお買い物。

 そこでいくつか注意点があるの。

 皇都は治安が良い方だけど、貴族の住居街を抜けて庶民の商店がある方に行くと、大通りはまだ良いけどあまり離れるとよろしくない。大通りでもちょっと危ないから貴族じゃなくてもお金持ちの子女は護衛を連れている。

 普通のお店で買い物するには金貨で支払ってもお釣りを出せないことがある。特に露店とかは金貨での買い物はまず無理だと思った方がいい。つまり、金貨を出すだけでもちょっと危険。まして十二歳のお子様が金貨なんて持ち歩いて良い事ない。


 腕には自信ありますよ。そんじょそこらの護衛じゃ役に立たない程度には。でも街中で暴れて目立つのは得策じゃないよね、一応公爵令嬢なんだもの。でも護衛連れて歩くのも嫌なの、一人でぶらぶら買い物したい。

 買いたい物がね、普通のご令嬢が買うようなものじゃないと思うの。どうしようかなぁ。




▽▲▽▲▽


 結局私は妥協して、護衛二人と侍女一人に付き添ってもらい、貴族街を抜け、目抜き通りにほぼ十字に交わる半円のようにカーブする三番街にある大きな手芸用品専門店に来ていた。

 ここなら良い家柄のご令嬢がお買い物に来ても可笑しくない。刺繍は淑女の嗜みだし、レース編みやお裁縫も趣味として嗜んで問題無し。

 作ろうとしているものが少々……大分変わっているのだけど、そんなの気にしてたら前に進めないわ。


 「……」


 侍女が物言いたげにしているが、賢明にも口を閉ざして成り行きを見守っている。時折手元をしげしげと見つめている。

 うん、言いたいことは分かる。持たされてる生地の質がうちの使用人のお仕着せに使われている生地よりも数段安っぽい綿メリアス生地やら、織りこそ荒くはないけど織糸の太さが不揃いな安物の麻とかで、一体何を作るつもりなのか疑問に思うわよね。


 まさか変装用の庶民服を作ろうとしているとは思わないでしょう。冒険者風なら多少変わったデザインでもイケるからコスプレ衣装を仕立てる気分で考えるだけで楽しい。


 伸縮性のある生地も見つかったし、カバンと防具用に柔らかく鞣した革をいくつか選んだ。カバンは布製にするか悩んだけど、最初思い付いたのが某バトル&ゲット&育成ゲームに出てくるカバン、トレーナー用の見た目以上に物が収納出来る便利グッズで旅の必需品。でもデザインがちょっと現代的過ぎるかなと思ったのと、厚手のデニムとか帆布みたいな布地が見つからなかったの。


 だいたい欲しいものは揃ったからお会計しようかな、っと思ったら、目に入ったキュートなラビット毛皮。

 ふわふわもふもふ!大好きなのよこの手触り!

 頬ずりしたいのを堪えて物色し始めたら、視界の隅に見覚えのある素敵なストロベリーブロンドの髪がちらついた。

 まさかと思い視線を目の前に固定したまま視界の隅に集中して見たら、あーらジル様。

 はっきりと見つめたわけじゃ無いけど間違いない。どうやら母親の付き添いか護衛で渋々来たって感じね。普段はクールで涼しげな表情だけど今は見るからに不機嫌そうな無表情。それでもイケてるって美形はいいわぁ、なんて感心している場合じゃ無い!


 どうしよう、ここは挨拶すべき?でも学園じゃあるまいし、同じ公爵家とは言えクロスディーン家の方が序列一つ上だから、こっちから気軽に声をかけるわけにはいかない、だって親しい間柄でもなければ正式に挨拶したことすらない。要するに知り合いですら無い。


 よし、決まった。ここは気がつかなかったことにして手早くお会計を済ませて帰ろう。

 一推しと仲良くなろうなんて下心出していられる立場じゃ無いもの。正直冷や汗かいてる自分がなんだか哀しい。


 もふもふを予定外に買い込んで速やかにその場を立ち去った。

ラビット毛皮はウサギ牧場で育てられた食用のウサギからってことでよろしくです。

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