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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
~異世界転生で超健康になったので冒険がしたいです~
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105. これって罠ですの?何の為なのか分かりませんわ

思いがけずデート?回が長くなってしまいました、まぁ甘さは全くありませんがお許しくださいm(__)m

 今なにが起こっているのかは理解出来ないけど、ジル様が私を逃すまいとしている事だけは分かる。

 持ってくれた重い書物を正確に書架に戻し、そのまま手を引いて今居る五階から下階に向かう、見る人が見ればただの手繋ぎデートin図書館である。でも私の緊張感はMAX越えしている。二階をスルーし、一階の受付で、ジル様は入館・貸出管理カードを見せた、私も続いて見せてそのまま図書館を出てしまった。


 「あのー飲み物なら持ってるから図書館内のラウンジで良かったんだけど、これからどこに行くの?」

 「ああ、すまないが俺は今冒険者バッグを持っていなくてね。 心配しなくても可笑しな所には連れて行かないから」


 いや、冒険者バッグ持って無くてもラウンジには軽食とドリンク売ってるわよ?っと言おうとしたけど声が出なかった。

 私にケープを着せる手伝いをしてくれながらそう言うジル様の表情は柔らかい。これじゃ見た目にはまるでおサボりデートでしかない!いや、私はサボりじゃないけどね!

 左腕を通す時に少し引っかかったのをジル様が袖に手を入れて引っ掛かりを直して通してくれた。まるでお子様に服を着せるかのように甲斐甲斐しいのだけど、こっちは残念ながらお子様ではなく立派な淑女(レディー)なんです、あと一月と少しすれば成人の儀を迎えるお年頃なのよ~~~。っなんて私の心の叫びは通じるハズも無く。


 「引っかかったのはブレスレットだったみたいだ。 曲がってしまいそうだから取り外したけど、これって学園ダンジョンのドロップアイテムだったよね? 小さ目だがティアラだから髪に付けた方が似合いそうだと思うが」


 うわぁっ!これ持ち歩いてるのバレた!いや別にジル様を意識して、持ってたけど!問題はそうじゃなくていやもう遅いよ、私はフード取った状態で、膝裏までの長ーい銀髪さらさらストレートをポニーテールにしただけの状態なの。以前にも、何なら素の時にも見られているけどまた見られてるよ!だってここにジル様が居る予定なかったし!

 ジル様はその腕輪をそのまま私の髪を結った部分に乗せてしまった、当然の事ながらサイズ調整自在のそれは、まんまとそこに誂えたようにティアラ型の髪留めとしてしっかり収まる。


 「ほら、とてもよく似合ってる」


 貴婦人相手ならともかく、ただの女の子にそんな褒め言葉を社交辞令でも自発的に言ってるの聞いた事無いんですが?何ならご令嬢方にも言いませんよね?ゲームシナリオに於いてさえヒロインにすら言わなかったよね?


 「ぁ、ありがとう、アート。これね、効果が〔癒し、幸運、水中散歩〕って珍しいでしょ? 特に幸運ってお守りみたいで気に入って持ち歩いてたの」


 私の内心は滝汗を流し続けて居る状態だ。

 似合うって言われてもマリナは顔半分以上、しかも肝心の目元を中心にマスクで覆っている状態で美醜の区別など付くまい。あれだ、髪に似合ってるって事で納得させよう……。このお父様似の綺麗な銀髪は、侍女達が日々宝物の様に磨き上げてくれた賜物で『芸術品だ』っとはよく言われている。要するに珍しい色合いの瞳程では無くても私を示す特徴の一つ、帝国では銀髪ってだけでも割と珍しい部類に入る。だから最初に冒険者(コスプレ)衣装とスタイルを考えた時にこの髪をどうやって隠そうか悩んだのよ!

 いつの間にかジル様は私のケープの首元のボタンまで留めて、もふもふ玉付きのリボンまで結んでくれてて、すっかり歩く準備が整った状態にされてた。周囲はそれほど人通り多くは無いが、若干女性からチクチクする視線を向けられているのが分かる。これは相手がジル様、つまりクロスディーン公爵家のご令息だとバレてて、何者か分からない女の子の世話をさせられているように見えなくも無いからに違いない。物凄く居た堪れない状態だ。でもジル様はそんな視線など慣れっこなんだろう。全く気がつく様子も見せずに、また私の手を取って、今度は指を絡ませる事無くスマートにエスコートでもするように手を引かれるがまま付いて行く、事しか出来なかった。



 果たして着いたそこは皇城前広場にもほど近い貴族街一等地。クロスディーン公爵家にも近い貴族街(マートル)一等地に建つ超高級商店でお洒落な外観の七階建”~カナリアン~”。

 店名は聞いた事があった。同じ組のご令嬢が、入って見たいが伝手が無いと店舗自体に入店すらさせて貰えないと言ってた店、ちなみにそのご令嬢は侯爵家のご令嬢である。

 一階はサロンになっているようなのだが、外にメニュー表などと言う親切な物は当然無い。見るからに会員限定のサロンで一見さんはもちろん、当然庶民お断りの超高級スウィーツ店だ!見える所に値段表示が無い恐ろしい庶民お断り店など、私は今世でも入った事など無いわよ?だってスウィーツはうちの料理人が作ってくれるもの。紅茶だって最高級品を我が家の料理長がお取り寄せか、私が自領で作って貰って飲んでいる。


 要するに私は外食など殆どした事が無いのだ。学園の食堂は別として。トラム領の宿は高級だったけど料理は美味しく無かったし、何なら屋台の串焼きやドーナツの方が美味しいと感じるど庶民なのよ。淑女(レディー)教育はバッチリだからマナーは何とかなるけど、いくらジル様でもこんな怪しげな女の子を連れて、こんな超高級店に入って良いの?今日は冒険者衣装でもお出かけ仕様だからそこそこいい素材を使っているけど、ドレスでは無いのよ!


 しかしジル様は何も気にする事無くその店の扉を引いて入った。店内に入ると一階はティーサロンで一部吹き抜け、すぐ傍に壁に沿って二階に上がる階段があって、その上は宝飾店のようだった。当然私は店員の拒絶の視線を覚悟していたのだが無かった。執事姿の店員がコートーー私の場合ハーフケープだけどーーを、預かり、そのまま上品なメイド風の制服を着た店員が席に案内してくれた。


 あれ?ジル様が顔パスで入店出来るのは良いとして、どうして私も入れたのかしら?ジル様が一緒だからなのかな、やっぱそうだよね。でもそれでも普通は他の客が”店の品格が落ちるのを嫌がる”からって、こんな庶民入店させないよ?『大変失礼ながらお連れ様はご入店いただけません』ってなるシーンになるハズなの。


 「マリナって本当に分かりやすいね。 この店は多分君が思っている通りの店だが、マリナ自身が君の事を分かって居ない。 君は何処から見ても育ちの良いお姫様のお忍び姿にしか見えない。 初めて会った時だって、ルーンの奴がエルフかと聞いていただろう?」

 「あー……そんな事も言われたことあったよね」

 「今のマリナはさしずめ(めしい)の巫女姫様のお忍びと言った設定かな」


 うわぁっ!言われている内容が全て吹き飛ぶような優しいイケボな上に、学園の庭園のひとつで初夏の日差しを木陰越しに浴びながら微笑んでて、見ながら絨毯の上を萌え転がったスチルを思い出しちゃったよ!!

 場所もシチュエーションも全く違うけど実物はそれ以上の効き目!!マスクで顔隠れてて本当に良かったし、厳しいお妃・淑女教育のお陰で何とか品位を保つ事が出来ているのが幸いなんだけど。


 でも私のコスプレって、その程度だったんだ。

 生地はちゃんと庶民用の使ってたよね?うちの侍女が見て、一体何に使うつもりなのか困った感じだったのよ?

 今日のはしょうがないよ。だってブラウスはうちの店で使ってる最高級絹だし、スカートやベストに使っている生地も、たぶん普通の庶民では手が届かない、アンゴラの特別柔らかい毛を厳選して織られた生地だもの。薄手だけどとても暖かくて良い生地だとは思うわ。でもドレス生地じゃ無いのよ。

 ケープも厚手のベルベットにラビット毛皮。ベルベットは最高級品なのよね、でもまぁこれは可愛いから私はお気に入りだけど、ラビット毛皮は高級品とは言われないのよ。庶民にも好まれる毛皮だもの。

 だって、最近手芸専門店に生地の仕入れ行けて無かったんだもの。でも最初のでもダメだったのか……。やっぱこの髪の毛バッサリ切るくらいにしなきゃダメだったか。私は水を飲みながらそんな事を考えた。


 もう社交界にも出ないし切っても良いかなぁ。お兄様方とケイナが嫌がってた気がするけど。なんて考えてたら、ワゴンを押した店員さんが近づいて来た。あ、実物から選ぶ形式か、私はチョコレートケーキとブルーベリーソースがけのチーズケーキを選んだ。え?別に一推しの前だからって一個にしないよ?食べたいものは程々に食べますから!まぁ、お兄様だけならあと二個くらい選んでたかもしれないけどね……ここのケーキって小さめだから軽く食べられると思うわ。

 紅茶は等級が良いものが入荷していたマイージャのマラードの新茶を注文した。普段は少し渋みが強いお茶なのだけど、厳冬期の一~二月に採れる若葉のみを使った希少な新茶は甘い香りがして渋みも無く爽やかな深みのある味わいなの。このお店は流石に最高級店だけあるわね、もうこのお茶が入荷しているなんて。


 当然、この状況で庶民の所作など出来るハズも無い。紅茶もつい値段も分からないくらいの、普通の帝国民には馴染みの無い茶葉を選んでしまった。後の祭りってこの事ね。これってもしかして、まんまと嵌められたのかしら?

 でもケーキも紅茶も絶品だった。ごちそうさまでした……。


 「でもさ。今日はアートが一緒だから良いところのお嬢様に見られただけかもよ?」


 などと、往生際悪いと思いつつも言わずに居られなかった。しかもここの店にはレジなど無かった!全部ツケ?今日の私の分の注文金額はおいくら?財布を出す隙すら無い!

 さらに追い打ちが、ケープを羽織って店を出ようという時に訪れた。


 「お嬢様、これをどうぞ」


 そう言って渡されたのは、私が注文した紅茶の茶葉!恐らくお得意様用サービス品として売り物の茶葉缶とは別に用意されたミニサイズの可愛い缶入り。当然こういったモノは非売品。私は条件反射でつい。


 「まぁ、ありがとう」


 などと、マスクで見えないのに思いっきり淑女の微笑みを返してしまった!だがしかし今はフードを被っていないし口元は見えている訳で、ジル様が微かに肩を震わせているのが見えた気がした。ヤバい、ジル様の方が上手だ。まさか平日に学園をサボってまで図書館に来て、こんな店にまで連れて来るなんて。一体何がしたいのか益々分からなくなった。



 お店を出てしばらく歩いて図書館が見えて来た所で、私は当然、庶民感覚として割り勘かせめて自分の注文分を支払うと交渉した。が、当然無駄に終わった。そりゃそうだ、クロスディーン公爵家のご令息ともあろうものが割り勘や一度支払った代金を女の子から受け取る訳が無い、分かってたけど!私は聞き分けが悪いんです。


 「えーと、結局ご馳走になってごめん、でもすごく美味しかった!ありがとう。 今度機会があったらご馳走するね」


 いや、会うのは私の身の危険だからごめんこうむりたいのだけど、あくまでも社交辞令だ。

 結局また図書館に戻り、何故だかジル様も一緒で隣の席に座って居る。


 「アートは本読まないの?」

 「ここにある魔法関係の書物なら家にあるから」


 って、わざわざ図書館に来ておいて本を読みに来た訳じゃ無いという事をご自身で暴露しちゃってますよね?


 「魔法関連の書籍はあまり親切な表現を使っていなかったり、専門用語も多いが、マリナは問題無く読めている?分からない事が有ったら大抵のことは教えられると思うから、遠慮なく聞いて?」

 「流石アートは学園で学んで居るだけあって凄いね。 私は周りの人達に教えて貰って、お勤め先の書物でのほぼ独学だけど、今の所分からない記述は無いから大丈夫だよ。 気を使ってくれてありがとう」

 「そうなんだ……マリナの周囲には余程優秀な魔術師が多いんだな」


 そう言ったジル様は何だか残念そうに見えた。うーん、公爵家四家の内でも最高レベルの魔導師を輩出し続けている血族としてはプライドを傷つけられてしまったのかな?既に成人の儀を迎えているとは言えども十五歳って難しいお年頃よね。


 年下の初級者向けの魔法書を読み漁る女の子に、少しは良い所を見せたかったって……いやいや!それは絶対に無いわ!相手はジル様よ!?聖女様の質問タイムで『もうそんな基礎忘れた』っと、素気無くバッサリお断りした件はお兄様方から聞いている。それも初期の頃だ。シナリオスタート時点からジル様は”面倒は嫌い”なのだ。貴重な時間を知り合い程度の冒険者に割く等あり得ない。これはアレだ、どう自然に、私に座標転移で逃げられずに情報を引き出すかの駆け引きなんだわ!


 今のルナヴァイン家本邸はとにかく忙しい、()()()()()()の一従業員であるマリナだって冒険者活動などしている余裕等無いほど忙しいハズでーー実際にそうであるーー”城塞”の顛末を僅かなりとも知っていれば、今皇都に私が居る事自体が珍しい事だと分かるだろう。それをどうしてジル様が知っているのかは分からない。昨日の捜査協力要請で”マリノリア本人”が皇都に出て来ている事を知る者はほんの僅かな人数のハズなのに、お兄様から聞いたにしても今日は無理だろう。昨日の現場検証は帝都騎士団によるもので魔導師の塔は関係無い。

 いくら宰相の孫であっても、宰相が仕事の内容、しかも官僚方々がかなり後手に回って不名誉な処理の進捗状況を関係者以外に漏らすとは思えない。

 それに……昨日の内に領地に帰っている可能性の方が高い私が帝立図書館に居ると何故分かったの?

 現れたタイミング的に家からの尾行では無さそうだし……まさかのまさかだけど、私を探す為だけに皇家の”目”、ウチの”耳”に相当するクロスディーン家の”奥の手”を使った?でもクロスディーン家のは扱いが非常に難しいと聞いた事がある、どう難しいのかまでは分からないけど。




 ああ、今の私にはジル様の考えが全く分からないわ。

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