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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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103. 何故か現場検証に呼び出されましたわ

 もうっ!証拠が十分に揃っているのならば、こんな事勝手に処理してくれれば良いのにどうして私が巻き込まれているの?

 私被害者なのよ?正直現場なんてもう立ちたくも無いの。普通のご令嬢なら怖がって部屋から出ないって手も……あら、私も使えば良かったわ。


 ここは、私がとっくに自主退学した帝立学園の庭園の一つで、私が秋の収穫祭と言う名のお茶会で毒蜂に刺されて冬休みを前に長期休暇することになった原因の場所。

 今は授業中で生徒は居ないものの、さっさと終わらせてくれなければ授業が終わって、多くの好奇の目に晒されてしまう。



 実行犯は契約術師(テイマー)で学園内の教会の修道女(シスター)マナ。黒幕は宮廷貴族のパーシモン・ナハーランド伯爵嫡男三十五歳。夫人とは政略結婚だが嫡男が居るとのことだ。

 身分差があって結婚が許されなかった、元男爵令嬢マナとの間に生まれた最愛の一人娘を何とか皇太子殿下の婚約者にしたかったらしい。


 そんな事知らんがな!

 で、今ここで私が確認する事などあるのか?肝心の凶器となった蜂の死骸はとっくに宮廷魔導師の塔で検証済み。報告書も上がっているらしいけど、仮契約であったためなのか術者までは辿れなかったとのこと。帝国屈指の魔導師が集まっているはずなのに無能だ。特殊な毒を蜂の毒針に追加塗布されていたと言うのに!


 この実行犯が判明したのは、皇家の”奥の手”である”目”の報告書をフィンネル兄様がしらみつぶしに読み込んで得た情報を更に精査したから。それで黒幕まで突き止めたのよ。流石天才軍師様。報告書の情報を読み解く才能もあるのね。


 皇帝側にも”目”の報告書原本が行っているハズなのだけど、どう処理したものやら、何の役にも立てて居なかったようだった。やはりこの婚約破棄は間違いじゃなかった!


 「あっ」


 私はわざと身体から力を抜き、ふらりと近くにあった支えになりそうなものに縋った。それは私の身長を超えるアーチに誘引されたつる薔薇。当然の事、私の手の平には薔薇の棘が刺さり、ぷくりと複数の血が盛り上がり、ダラリと滴り落ちる。周囲に居た騎士の一人が慌てて私の両肩を支えて薔薇のアーチから離し、近くのベンチまで連れて行き座らせた。

 私は騎士に向かってお礼を言う。本当は役立たずと文句を言いたい所なのよ。


 「ありがとうございます、ここに居るのは辛いことを思い出してしまい、つい」


 薄っすらと涙を浮かべる。この程度の事はヒロインだけの専売特許では無いのだ!まぁ本当に痛いのもあるんだけど……。


 「それで、わたくしはここで何を確認すればよろしいのかしら?もう辛くて……」

 「ああ、ルナヴァイン公爵令嬢。 その前に手当てを」


 もーう!本当に鈍臭いわ!両手の平から血が流れてて、この場にいるのも辛いとふらついている淑女に対する対応がそれ?それとも私は罪人扱いなの?被害者よね?あんた達の捜査が遅かったから、既にここに居る意味すら無いわよね?


 りーんごーんーー


 ああ、終業の鐘がなってしまったわ。

 その時颯爽と現れたのはリンデーン兄様だ。まるでヒーローの様だ。流石初期攻略対象者。


 「お前ら何をして居る! 役立たずが今更何を挽回しようとしているのかは知らないが、妹を巻き込むな! 被害者でしかない妹が確認しなければならない事などもう無いはずではなかったか? 報告書類は俺も全て確認済みだ。 どう言い訳しても無駄だ。 下がれ!」


 そう言って、私の両手の平に治癒魔法付与の魔石付きハンカチを巻き、私を抱え上げて馬車止まりの方まで直行した。お陰様で在学生に会う事無く我が家の馬車に乗り込めた。


 「お兄様、助かりましたわ! もう、皇帝の名を使って呼び出されたから赴いたものの、なんの進展も意味も感じられずに、正直キレる寸前でしたわ。 せっかくの”奥の手”も使い手次第って事ですわね。 結局皇帝にとってわたくしの存在って何だったのかしら?」

 「何も考えてなかったんじゃ無いか? 古い人種だからね。 純血派の残り派閥の一つだ」

 「あら。 そんなもの、まだ他にもいらっしゃいますのね」


 ふっと、小さくため息をつくと兄様は言った。


 「分かっててとぼけているの? 皇帝の他にも代表的なのは、神殿の大神官を始めとする聖属性魔法使いの質とランクを下げたく無い奴らだ。 初代王妃であらせられる聖女セレナ様の血を濃く残していきたいんだ。 流石に皇子や皇女は血が近すぎて降嫁させるか一生使い潰すしか無かったが、フィーが聖属性に覚醒し、婿入りさせられれば上手く行くって考えて居る奴は、残念ながら大神官だけじゃ無いんだ。 まぁ、幸か不幸か今代には皇女が居ないが、とりあえず一番力の強い巫女か、次代の皇女に婿入りさせるって手も考えてるらしい」

 「まぁ……それは、フィンネル兄様も早く素敵なご令嬢と出会わなければ危ないのね! どうも最近お父様に似て社交嫌いが加速しているようで心配ですわ」

 「人のこと心配するより、自分の心配!」


 馬車の扉を開けたのはフィンネル兄様だ。


 「ああ、おかえり。 今日の聖女様はお出かけ要請無くて助かったな。 もう少しで出発させる所だったよ」

 「有ったが、殿下に押し付けて来た。 僕に聖女様の頭飾りなんて選べると思う? リボン一本だってごめんだね!」


 おやまぁ!あのヒロインはまだフィンネル兄様を諦めてないのね!なんて強いメンタルなのかしら?

 馬車を走らせる。そして、フィンネル兄様が私の両手に巻かれたハンカチに視線をやった。


 「これはどうしたの?」


 言いながら右手のハンカチを丁寧に外した。そこにはもう傷ひとつ付いていなかったし、ハンカチにも汚れひとつ無い。

 でもリンデーン兄様は一部始終を話して聞かせた。


 「へーっ、これは是非とも父上からご丁寧な抗議文書を送って頂かなければならないようだね」


 うわぁっ!フィンネル兄様の周囲だけ気温が下がっているようですわ!



 斯くして、宮廷には十枚にも及ぶ、今回の無駄な現場検証への立会い命令への抗議、並びに提出済み書類の精査不足や対応の遅さ、諸々への指摘や捜査を進めるにあたってのご丁寧な指示まで事細かく、几帳面な細かい字でぎっしりと記した文書が届けられた。

 私が五歳で暗殺されかかった件から婚約破棄されるまでに狙われた、表に出ていない暗殺計画に至るまで全てを処理・処分決定まで一部の宮廷官僚達の執務区域は不夜城と呼ばれることになった。実に二年以上の歳月がかかったと言う。



 当然の帰結ながら、それなりに多くの貴族と、関係者達が罪の重さは違えど処分対象となった。

 一番重かったのは帝国で一番格式高い建国記念パーティーを騒がせた、猛毒針の黒幕モナード・マイリン侯爵と翌年刺客を送った黒幕ムベラータ・サンスベア侯爵。

 一族に至るまで罪に問われ、爵位剥奪の他、三親等まで処刑、他投獄、蟄居、修道院送りとなった。

 マイリン侯爵、サンスベア侯爵共に皇宮官僚貴族で、皇族と遠戚になる事で領地が欲しかったのが動機。サンスベア侯爵に至っては、お家断絶したヒソップ・ユトドラス侯爵家の元分家筋で親戚関係にあり、ヒソップ・ユトドラス侯爵家がかつて領地としていた土地を狙っていたのだとか。領地返還の原因となった我が家としてはなんだか複雑ね。でも当時、領地を引き継ぐ事を認められなかったって事は、それだけの縁を認められなかったってだけの事。


 ちなみに、同じく建国記念パーティーでの暗殺未遂事件ではあるけど、私を階段上から突き落としたご令嬢、フィカナ・ローレンティー侯爵令嬢は二年の謹慎処分となった。今四年生で殿下と同学年なのに学園在学中に二年もの謹慎はかなり痛い罰。帝立学園に留年制度は無いけど、侯爵令嬢でありながら三組で座学の成績も悪いのに、二年もの謹慎明けとほぼ同時に卒業資格って貰えるのかな?かなりの補習が必要そうね。まぁ中退の私よりはマシかもね!


 処分の対象者、特に貴族は高位貴族が多かったのは狙いが皇太子妃、未来の皇帝第二妃とくれば当然だったと言える。

 一番多く処分も重かった貴族が多かったのは侯爵家、降格処分になった家もかなり多かった。次いで伯爵家、降格に等なればもう第二妃でさえ狙えない地位に落ちてしまっただろう。後は共犯や実行犯として下位貴族も処分を受けた家が意外とあって、もしも男爵家が降格したら騎士爵って事は無いだろうから平民かしら。

 美味い話だと思って乗ったのか、脅されてなのかは多少の情状酌量の材料にはなったでしょうけど、公爵令嬢、しかも当時第一皇子、皇太子の婚約者への暗殺未遂事件関係者とくれば、そう罪は軽くはならなかったとの事。


 私が五歳の時に暗殺しようとした教育係は、以前仕えていた侯爵家のお嬢様のお願いに負けて暗殺しようとしたらしい。幼いお嬢様の当時のお願いは罪は問われなかったが、件の教育係と推薦者は当時既に処分を受けていた。因みにお願いをした件の令嬢はフィカナ・ローレンティー侯爵令嬢……執念ね。




▽▲▽▲▽


side.Jillartie


 りーんごーん

 午後の弓の授業が終わり、後片付けをし終わった所だった。鐘が鳴り始めると同時に、まるで一陣の風のようにリンデーンは校舎とは少しずれた方向へ走って行った。


 「なんだ? 今日の聖女様の送り係はフィンネルだったよな?」

 「ジルも甘いなぁ。 聖女様の事ごときでランディがあんなに急ぐ訳無いから」


 婚約者とでも約束が有るのかと思い至ったもののそれでも向かう方向が違う気がしたが、俺はそのままフィンネルと共に教室に戻った。今日の聖女様お送り係の殿下、フィンネル、エリンと聖女様に挨拶した俺はヘルと馬車止まりの方向へ向かっていた。今日も魔導師の塔に行く予定だったからだ。その時、馬車に駆け込むように乗り込むリンデーンを見かけた。

 ドレスを着た令嬢を抱えてそのまま乗り込むとは、何か緊急事態でも有ったのか、その時俺は自分が少しばかり遅かったことを直ぐに知る事になった。


 「あれ? 妹ちゃん学園に来てたんだ? 捜査にはもう関係無いはずなのになぁ」

 「ヘル、今のはどう言うことだ?」

 「ああ、もう宮廷魔導師はこの件終わっているもんな。 今日は帝都騎士団の調査団が学園内に来てるって話は聞いてたんだが、まさか被害者のご令嬢まで領地から引っ張り出して現場検証なんてするとは思わなかったなぁ。 今更新情報など何も出て来ないだろうに、奴ら少しでも手柄を立てたくて必死だなぁー。 ただご令嬢に会いたかっただけかもしれないが……」


 最後のは俺への揶揄いも含まれてそうだな。確かにアレからマリナの時にさえも会えない所為で感覚が鈍っていたかもしれない。もう少し早ければご令嬢に挨拶の一つも出来ただろうに。だが、今のはどう言った状況だったんだろう?いくらリンデーンとは友人でも閉ざされた馬車の扉を開けさせるのはどうなんだろうか?ご令嬢をあんなに急いで迎えに行き、抱えたまま馬車に乗り込むなど緊急事態だったとしか思えないが、どうしたものか……。


 「ジル。 気になるにしても聞くなら明日にしとけ」


 ヘルはそう言って、馬車に乗り込み帰って行った。俺も気にはなりつつも魔導師の塔に向かった。そこで事の次第が分かってしまった。

 学園の現場検証なるものをしていた帝都騎士団の一人が、「治癒魔法師(ヒーラー)を一人派遣してくれ」と慌てて来て、理由を説明していたからだ。

 なんでも、被害者であるご令嬢一人を呼び出し件の現場検証中、ご令嬢が具合を悪くしよろめいた際に、近くにあった薔薇のアーチに素手で掴まってしまった為、両手の平が血で染まっている。いくらご令嬢が高位治癒魔法を使えても自己治癒は出来ないし、学園の校医に任せて傷跡でも残れば事になる。それで急いでここに来たと言う事だった。


 何と言う事だ。きちんと報告書を読んでいれば、事件当時のご令嬢は意識が殆ど無く、状況など把握するどころでは無かった事が分かるはずだ!現に俺が治癒魔法を使った事さえおぼろげだったと双子から聞いている。そして俺が毒を吸い出した事は全く記憶に残っていないらしい、残念なのか助かったのか……つくづくご令嬢とは縁が無い様に思えて来る。

 ちなみに俺は見習いという立場からこの件には関わらせてもらえなかった。俺の手で犯人を捕まえてご令嬢の苦しみを分からせてやるためにも倍以上に痛めつけてやりたかったのに。


 俺はその治癒魔法師(ヒーラー)の要請は必要無くなった事を伝え、当時殆ど意識が朦朧としていたご令嬢を引っ張り出したミスを攻めた。たっぷり皮肉を込めて!少々八つ当たりも含まれていたのは否めまい。

マリノリアの首筋へのジルの口づけ2回(ただの毒吸い出しで救命行為)は、まさかのノーカウントでした。

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