1. プロローグ
キャラクターと世界設定ぼんやりはしたんですが、プロット苦手で見切り発車ですが、長〜い目で見守ってくださるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いします。。
一人称で楽しく読んでいただけるように書きたかったのですが、どうも硬い文章になってしまいましたね。
徐々に精進して行きたいと思います。
ドン!
背中を押された。
バルコニーから外階段で中庭に降りようとしていたマリノリアの身体は、何の抵抗もなく宙に浮き……そのまま落下して地面に叩きつけられる。もしくは階段をゴロゴロと転げ落ちる……。
……ことにはならなかった。
まず背中を押されたことへの既視感から、走馬灯のように様々な景色、感情が流れてゆく。『ああ……私、こんな風にそのまま死んだんだな』っと思い出した。
”私”こと、”高森 茉莉奈”の記憶は十七歳で終わっていた。
”私”は視線を巡らし階段の中段あたりに右手をつき、バネのように階段を押し、空中で体勢を整えながら、階段一段目の前に広がる芝生に狙い通り着地した。
社交界デビュー用の白を基調としながらもきらびやかなドレスを纏っての段差宙返り。
”私”はこんなコト出来た覚えは無いのだけど身体が覚えていた。落下のGもかかった所為か両足にしびれを感じるし、何なら右手も痛いのだけど。
「ふう!我ながらカッコ良くない?10点満点!とはいかないけどね!!」
つい貴族令嬢にあるまじき言葉遣いで自画自賛した後、周囲に神経を集中する。
誰も、居ない。
そう言えば、階段に手をついた時に突き落とされたバルコニーが視界に入った時には、もう誰も居なかったな。
(逃げ足の速い犯人だなぁ)
だいたい階段落ちなんてお笑いにしかならない。
”私”はそれで死んだようだから笑えない話ではあるけれど、幸いにして”マリノリア”は運動神経抜群の健康優良児であることが一番嬉しいことだと思う。健康第一!身体が資本!
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side.Malinoria
(階段から突き落とすなんてふざけた真似をしたのは、一体誰なのかしら? 心当たりがありすぎて特定など出来ないわ)
わたくし、マリノリア・ルナヴァイン公爵令嬢十一歳は、この国、スウィテ・セレナ帝国の第一皇子アーノルドの婚約者。
第一皇子は一つ上の一二歳だが既に立太子されている。このまま行けば次の皇帝である。しかしお互いが物心つく前、アーノルド皇子十ヶ月、わたくしが三ヶ月の時に婚約した完全なる政略結婚。会ったのはほんの数回らしく、しかも幼少期で覚えてなどいない。
(覚えているのは最後に会った5年ほど前の事くらいね)
それ故、互いに愛などは爪の先ほどもない。
その為か、アーノルド皇太子殿下の関心を惹き、婚約者の座を奪い取ろうと目論むご令嬢は数えきれないほど居る。娘をけしかける親も然りだ。
▽▲▽▲▽
まずは今、”私”が置かれている現状を確認しよう。
”私”の中にある”マリノリア”の記憶だけでも十分分かってしまったのだけど、解せぬ。
いや認めたくないのだ。残念ながら、落ち着いて考えれば考えるほど泥沼にはまるだけなのだけど。
そう。ここは友人にオススメされて、唯一プレイしていた乙女ゲームの世界そのものなのだ!
先ずここは世界観がめちゃくちゃだ。はっきり言って出来の悪いファンタジー世界が基本になっている。
貴族が居てお城があって、中世ヨーロッパのような風景と世界観なのに、魔法や魔物が存在する。
えーと、中世と言えば魔女狩りはどうなりました?
電車も飛行機も無く、集団での移動手段は馬車なのに電気はある。ただし現代のような大規模な発電所は無く、城や邸、公共の大きな建物などに、水力や風力を動力とした自家発電機が設置されている程度で、民間にまではほとんど普及していない非常に高価なものだ。当然、冷蔵庫や洗濯機のような便利な家電がいろいろ普及しているわけはない。似たような物がある場合もあるが、全て高価な魔術道具だ。
魔法も決して安いものではない。誰もが使えるものではないからだ。特に魔術道具を作り出すには特別な術式を必要とする為、専門の機関で学んだ魔導師達が作り出すものが主流だ。だから自然と高額になるし、基本的にオーダーメイドだから余計に高い。
それはそれとして、科学と魔法が都合よくちゃんぽんされていて、便利なのか不便なのかよく分からない世界観。
ゲームのシナリオ上重要でないことは非常にふんわりでーー恐らく細かいところは設定されてないのだと思われたーー科学と魔法が都合よく融合している。
極め付けはスウィテ・セレナ帝国?地球上のどこだよそれ?
いや、とあるゲームの中には存在してたけどね!
元はソシャゲで、その後ゲームソフトが発売されたくらいにはソコソコ人気作品だった乙女ゲーム『イケパラシリーズ』の世界のひとつに間違いない。正式タイトルは『イケメンパラダイス エターナルウィンド〜目覚めの時』。ヒロインがイケメンに囲まれてウハウハするタイプの乙女ゲームだ。
大事なコトなのでもう一回言わせてください。夢であって欲しかった……。
▽▲▽▲▽
「ああ、そうか!ここは夢の中なのかな?」
非常に往生際が悪いことは重々承知です!
夢の中ならば”マリノリア”であっても良いかもしれない。そんなことを思ってしまうキャラなのだ。
でも夢にしては”マリノリア”の記憶が鮮明なのよね。大体正確な婚約時期なんて”私”は初めて知ったよ……。
ゲームの設定では『幼い頃からの婚約者』としか紹介されていないの。
全てが”私”の夢の妄想世界とは思えないほどに、”マリノリア”の記憶の中にはこの世界の知識があった。あり過ぎるほどに。
まだ混乱しているけど分かる。これはわずか十一歳にしてはあり得ない幼少期からの厳しいお妃教育の賜物であると。
しかもこの身体能力は何?そんなのゲームシナリオには一切出て来ていませんでしたよね?おかげさまで自分で身を守れたのだけどさ。
「まぁ、あの皇子サマ、イケメンだし一応スペックは高いんだよねー……」
だからモテるし、婚約者であれば妬まれて当然。
遠い目をして呟きながら、わずかに乱れたドレスを整え、”私”、”高森 茉莉奈”の十七年にぼんやりと想いを馳せる。
高森 茉莉奈は、成績上位で翌春には名門大学への進学が決まっていた。生まれつき虚弱体質で幼少期は学校を休みがちではあったけれど、ただひたすら勉強に励んだ結果だった。
人に恨まれるような覚えも特にない。性格はたぶん温厚で大人しいわりに友人ーー帰宅部だったので主にゲーム仲間だーーもそれなりにいて、平穏な日々を送っていたハズだ。
その日は、隣に住む幼馴染の男子が、なんの前触れもなく『オレが参加する試合を見に来て欲しい』と言って、一枚のチケットをくれた。青天の霹靂だった。問題が起こることしか思い浮かばなかった。
幼馴染の男子は幼い頃からサッカー一筋のサッカーバカで、中学、高校でキャプテンを務めていた。それだけでは無く成績もそこそこ良かった。ただの脳筋では無かったのである。それでも進学校である私と同じ高校にはスポーツ推薦で入って来たのだけど。
当然モテた。というか幼い頃からよくモテてた。そのこともあって、お隣さんだというだけで一緒に居ようものなら周囲の女子のやっかみで悪目立ちしていじめの対象になってしまうので、小学四年生辺りから自然と距離を置くようになり、近所ですれ違う事があれば挨拶をする程度になっていて、向こうが同じ高校に進学して来てもそれは変わることがなかった。
校内ではお互い話しかける事も無い間柄だったのに、なぜ急にチケットをくれたのかさえ分からなかった……。
登校時はチケットを渡した後走り去ってしまい、理由を聞けずじまい。結局そのまま昼休みが終わろうかという時間に急いで教室に戻る途中、階段の踊り場から宙に身体が投げ出されてそれ以降の記憶が無い。
背中を押されたのだけは覚えているが、誰の仕業なのかは分からないままだ。でも背中に感じた手の感触から女子だと思う。ソレしか手がかりが無い。こうなってしまってはもう永遠に分からないだろう。
「う~ん、やっぱ……奴のファンからの嫉妬かなぁ? 私って男運ないのかな?」
思わずため息が漏れる。断じて自惚れているわけでは無い。”私”の容姿は十人並みでそこそこだったし、モテてもいない。だってソレ以外に心当たりなど無いのだ。
幼馴染がどれだけモテていたかは知っている。
以前より噂で聞いた限りの内容だが、サッカー部のマネージャー同士で取っ組み合いの喧嘩になった原因だったとか、練習中もファンの声援が煩くて練習にならないという理由で、『見学はおしゃべり禁止』に、『差し入れ禁止』にもなった事件もあった。他にも色々噂だけは聞いている。
でも私にとって幼馴染は幼馴染みでしかなかった。
向こうもそうだったはずだ。恐らく観戦チケットを受け取ったのが間違いだったのだ。きっと何か誤解を受けたに違いない。
もう認めるしかないのかもしれない。私、”高森 茉莉奈”は死んじゃったのかな?もしかしたら昏睡状態なんて事もあるかもしれない。
それなら今は……夢の中?それとも、ゲームやラノベの設定にありがちな架空の世界への転生?
どっちにしろあまりいい状況ではないことはよく分かった。もう現実逃避している場合では無さそうだった。胸のあたりがもやもやした。何時かは忘れてしまったけれど覚えのある感情だった。
”マリノリア”は”私”をすんなり受け入れたようであった。だって、『”私”を思い出した』のだ。階段から突き落とされた既視感で。
せっかくの異世界転生ーー夢であって欲しいのだけど!ーーなのに、また好きでもない男のせいで不幸になりそうな悪寒しかしないじゃないの!
▽▲▽▲▽
「マリノリア。そんなところでぼんやりして、どうしたんだい?」
コツッ、と靴音を鳴らしてバルコニー上から声をかけて来たのは一つ年上で双子の下のお兄様。
お母様似のふんわりゆるやかに空気を含み波打つ輝く金髪、吸い込まれそうに透き通ったブルーグレーの瞳、柔らかく微笑みを浮かべた非の打ち所のないキラキラ美形。ただし外面だけ。
「フィンネルお兄様。 少し疲れてしまったので風に当たっていたのです」
そう、振り返りながら応える。身体中が軋むように痛いことには今は触れないでおいた。
今日は私の社交界デビューの為に皇城に来ていた。変に騒いでコトを大きくしたくないし、目立ちたくもない。
後日お父様を通して騎士団にでも被害届を出して貰えば良いわよね?
普通なら早めに報告した方が良い訳だけど、この皇城には城壁から皇宮の敷地の全てを覆う、特殊な結界が張られている。幸い特に怪我も無かったことだし、後日でも問題無い。っと思った。
この特殊な結界は越えるのも難しいのだけど、それよりも厄介なのは万が一通り抜けた者が居た場合に、その者を記録し、追跡する機能がある、非常にいやらしい結界なのだ。とは言え、これは公然とされていない機密事項だけど。
それに、このパーティーは単なるデビュタント用のパーティーでは無い。この帝国の社交シーズンの始まりを告げると共に、格式高い建国記念パーティーであって、他国からの賓客も招かれる。当然会場となる大大広間の警備は厳重なハズなのである。よってここで問題があると非常によろしくないのである。帝国の権威に関わると言ったら大げさかしらね。
今は謁見の間にて皇帝陛下と第二妃殿下への挨拶を終えた後のパーティーで、お披露目のファーストダンスを上の兄をパートナーにして披露し、その後無難に父と下の兄とでダンスを踊って、挨拶すべき人には挨拶も終わっている。
少しばかり休憩していても問題ないはずだと思う。
「まだアーノルド殿下と踊ってないだろう?」
と、フィンネルお兄様が言ったが、マリノリアは夜空に浮かぶ月を見上げながら声に抑揚も乗せる事なく応えた。
「殿下のお相手の順番待ちしている間にパーティーが終わってしまいますわ」
と、多少の皮肉を込めて言った。本来なら向こうからダンスの誘いをする場面であるからだ。淑女からダンスの申し込みなど普通はしない。
階段を上ろうとする、と、先にフィンネルお兄様が階段を降りて来て手を差し出した。
なんと!エスコートしてくれるつもりらしい。こんな公式の場ではあっても人目も無いのに外面いいんだな……とは思わなくもなかったが、それでも今はその気持ちが嬉しかった。
でも多少の支えにはなっても手足が痛いことには変わりなかった。表情や動作に出さないようにしていても、この下の兄は鋭い目を持っているから、私の体調の事など分かってしまっていただろうけれど。
下の兄は妙に聡いところがある。そして何を考えているのか分からないところが不気味だが、マリノリアに対する興味が無いーー公式設定では苦手らしいけど、どの時点から苦手になるのかは分かっていない。兄妹間のエピソードが描かれていないのだーーのが救いなのかもしれない。
(とは言え、この先現れるヒロインに陥落し、皇太子と共にマリノリアを蹴落とす仲間になる攻略対象者だから、たとえ兄妹といえども油断はならないよね……。”悪役令嬢断罪イベント”お決まりのヒロイン側メンバーだから仕方ないにしても、身内が敵に回るのよ。果たしてこの世に私の味方は存在するのかしら?ヒロインの攻略対象者の婚約者というだけで既に終わっているのよね……)
一応婚約者なだけのアーノルド殿下が、わざわざ周囲を囲むご令嬢方をかき分けてまで、マリノリアの元に来たりはしないだろう。シナリオ開始前だというのに既に冷え切った間柄であった。
今日のパーティーですべきことは終わっている。いくら前世の十七歳の記憶があろうと、幼少時から大人びて見られ、”天才””完璧令嬢”などとご大層に呼ばれていようと、実際のマリノリアはまだ十一歳の子供に過ぎない。
お兄様方は私の異変に気が付きながらも何も言っては来なかった。こんな場所では誰が聞いているのか分からないからでもあるでしょうけど、少し薄情じゃ無いかしらと思う。
正直身体の痛み以前に精神的にも疲れていたので、社交嫌いのお兄様達と早めに帰ることにした。
お父様とお母様、大人達にとってパーティーの夜はまだまだ長い。
▽▲▽▲▽
そして今、皇都にある別邸に帰って来た私は自室のベットに横たわり、これからのことを考えていた。
「ヒロインならそう悩むことも無いんだけど……」
あまり好きなタイプのヒロインでは無かったが、ほんの少しの努力とも言えない頑張りで、一推しとハッピーエンドになれるのである。超イージーモードである。正直羨ましい。
そう、深くため息をつきながら、先のことを考るに当たって、今いるこの世界のことを前世の記憶の中から思い起こしてみる。
私、茉莉奈はオタクというほどでは無いが、虚弱体質故インドアな趣味が多く、ゲームは結構好きで、幼少期からのいじめの影響もあり現実の男子には興味が無くなってしまい、中学に入ってからは二次元彼氏にハマっていた。今居るのはその中の一つで『イケメンパラダイス エターナルウィンド~目覚めの時』と言う『イケパラシリーズ』の乙女ゲームの世界だ。
なんてダサいタイトルだと思ったけど、これは友人からのオススメでプレイし始めたのよ。これが私の乙女ゲームデビュー。でも一推しが出来てまんまとハマってしまった。
大まかなシナリオとしては、主人公の名前は任意。平民生まれのヒロインが十三歳になる年のある日、教会で聖女と認定され、そこの領地の領主貴族デボワール伯爵家の養女となる。
聖女は当代で一人居るか居ないかの稀有な存在で、認定されれば力の強弱に関わらず様々な保護を受ける事が出来る。その内の一つが認定地の貴族に保護されることだ。多くは養女として引き取られる。聖女を輩出した家門には多額の恩給が帝国より支給される。聖女とは存在して居るだけでその地に豊穣を約束し、さまざまな浄化をもたらし世を安穏に導く、とされているからだ。
そして十五歳になる年に貴族学園に編入して六人のイケメン攻略対象者達と出会い、友人になったり、想いを通わせて恋仲になったりして、学園卒業までにいずれかのエンディングを迎える。
さて、ここで私の現状に戻る。私の名前はマリノリア・ルナヴァイン。
ルナヴァイン家は貴族の頂点である公爵家四つの中でも序列二番目に位置する由緒ある家柄。
この時点でヒロインではないことは確定なのだが、それ以上にもう絶望しか感じない。
なぜならマリノリア・ルナヴァインは、ヒロインの攻略対象者の一人である皇太子アーノルド殿下の婚約者。つまり問答無用で悪役令嬢ポジションでしかないの!
このゲームでは初期攻略対象者と呼ばれる六名の各攻略ルートに進んだ場合、ハッピーエンド、ノーマルエンド、ハーレムエンドの3エンドが用意されているのだけど、ヒロインがどの攻略対象者を選んでも、ハーレムエンドに進んだ場合には皇太子殿下の婚約者であるマリノリアは当然”邪魔者”になる。つまり、ヒロインが皇太子以外を選択しても安心するのは早く、エンディングを迎えるまでどうなるか分からない。
他にも初期攻略対象者六名のルートを選ばずに、一年後のプロムパーティーを迎えると”隠しルート”へのフラグが立つ。ただ条件はそう易しくは無い。
攻略対象者達六名全員の好感度を80%以上にする必要がある”ハーレムルート”は”隠しルート”に繋がっている。新たな攻略対象者が追加されるのだ。
隠しルートは別名ドラマチックルートとも言われ、所謂悲劇エンドに行きやすい。だから”隠しルート”に行きたくなければ、”ハーレムルート”でも一年後のプロムペーティーを迎える前に2つのエンドのうちどちらかを迎えなければいけない。
それが、攻略対象者六名全員の好感度を80%に保ったまま迎える”お友達エンド”と、攻略対象者達六人全員を好感度MAXにしなければならない難関の”ハーレムエンド”だ。
エンディングのタイミングは各攻略ルートごとに微妙に違うのも厄介だ。
ヒロインが攻略対象ルートを確定すると、その婚約者は洩れなく”悪役令嬢”となる。本人の性格がどうであれ、取り巻きや関係無い令嬢達のやっかみでヒロインがイジメられた分の罪を全て背負い”婚約破棄イベント”が発生する。
と、ここまでは基本的に他の攻略対象者達の婚約者達も同じ立場なのだけど、皇太子の婚約者であるマリノリアだけは違う。ヒロインがどの攻略対象者を選ぼうとも、”婚約破棄イベント”が発生する謎仕様なのである。
それは偏に皇太子がヒロインに一目惚れしてしまい、婚約者との政略結婚に疑問を持ってしまうから。っと言うより、メイン攻略対象者だからである。彼だけはいつでもヒロインの味方で有り続け、様々な手助けをする強力なサポートキャラでもあるのだ。いわゆる『真実の愛を見つけた』っと言う、訳の分からない流行り文句の流れで勝手に悪役令嬢にされてしまうのだ。ただし”悪役令嬢”の”婚約破棄イベント”はプロムパーティー前日には必ず行われる。だから、ヒロインがどの選択をしたのか見届ける事が叶わない場合もあるというわけ。
攻略対象者は皇太子以外も何れ劣らぬ名門貴族のご令息。幼い頃から親の定めた婚約者が居てもなんら不思議はないのだが、今の時点では皇太子の婚約者マリノリアだけが”悪役令嬢”最有力候補である。
”邪魔者”=”悪役令嬢”はシナリオ開始までの今後数年間で増えることになるが、全員が意地悪キャラ設定ではない。ただ当然のことながら好意的でもない。それにルートによっては名前しか出てこない婚約者やその取り巻きも多かった。
どのルートの誰が一番キツくヒロインに当たっていたっけ?思い出せないほど些細な”いじめ”が断罪材料になっていた気がするし、確たる理由も無しに婚約破棄される可哀想なご令嬢もいたと思う。
ちなみに私の一推しのジル様には婚約者が居なかった。だからなんだと言われればそれまでだけど……。
”悪役令嬢”の末路は一般的に悲惨なものが多いけど、このゲームの場合、マリノリアが一番悲惨なのはやはり皇太子ルートである。皇太子がヒロインと心を通わせた時点でマリノリアが”邪魔者”となるーー実際にはヒロインと出会った瞬間から”邪魔者”である。そして”婚約破棄イベント”が発生し、場合によっては”断罪イベント”も付いて来る。正式に婚約破棄となったのちに親からも見捨てられ、かつて戦争した隣国との境界線近くの”城塞”、通称『砦』に幽閉される。”断罪イベント”が付いて来た場合は修道院入りだ。皇太子ルートでは修道院に行くまでに馬車の事故に遭い行方不明となる。はっきり言って死亡フラグ。
各ルートのハーレムエンドでも同じようなものだ。皇太子以外のルートでの幽閉先ははっきりと明言されていないが、どこぞへ幽閉されるのは変わらない。哀しいかな、この『どこぞへ』に脇役への適当感が出ている。そう、”悪役令嬢”はモブなのだ。ヒロインの引き立て役に過ぎないのだ。
他のルートの時は皇太子に婚約者が居ることには触れられているが名前すら出てこない事もある。何しろヒロインと攻略対象者達はマリノリアの一学年上、同じ学園内に居ても特に接点もなく、ヒロインをイジメたりはしない。そもそもマリノリアの方が下級生だ。
要は存在しているだけで悪役なのだ!ここはヒロインのための世界。
ヒロインの恋の”邪魔者”になる者は全て”悪”というシンプルなご都合主義で世界が構成されているのだから。
プロローグを1Pにまとめました。
少し改行と分かりづらい部分に修正を入れて読みやすく?してみました(2021.4.12)
上記が足りなく、修正しました。(2021.04.20)