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プロローグ

別のジャンルの作品を書いて見たくて書き出してみました。続きは中々出せないかもしれませんが、楽しんで頂けたらと思います。

 まだ小学校入りたてだったころ、幼いながらも幼馴染を庇った男の子は、そのチビな身長とブサイクな顔立ちのせいで執拗にいじめられ、その幼馴染の女の子も仕返しが怖くて近づかなくなり、狭い世界の小学校のクラスで、それが一年以上続いた時、遂に男の子は家族以外の人間を拒否するという、人間不信に陥るのでした。


 彼の家はスポーツジムという事もあり、トレーナーの父は、


 「まあ、お前の気持ちは判らんでもない。だから好きにするといいが、引きこもってばかりだと、心だけでなく身体も弱るぞ。なんで、お客のいない暇な時はスポーツ器具をどんだけ使ってもいいから、将来、動きたくなった時、いつでも動けるように身体だけは鍛えておけ。心はゆっくりでいいからな」


 そんな、父に惚れて結婚した栄養士の母も、


 「今は成長期で体のバランスが悪いだけよ、いずれ貴方に見合う立派な身体つきになるから、慌てずに、いい子に育ってくれれば、それだけでいいのよ」


 優しい言葉を掛けてくれる、そんな両親に育てられ、事情を知る有名な小、中、高、一貫教育を実施している学校関係者も、いじめ問題の表面化を恐れ、自宅療養と保健室内個人登校を認め、義務教育の過程を毎日父母による送迎登校で裏門から入り誰にも会わせないという事で、無事終了する事が出来たのでした。中でも保健医として出向していた大学の研究機関にいたという、心療内科医の資格を持つ派遣された先生は、その子に対し、心のケアだけでなく学業に対しても物覚えの良いその子が気に入り、丁寧にワンツーマンで教えていくのでした。


 時が過ぎ、義務教育を終え、高校へと進学の時期を迎えるころ、子供だったその子も周りのすごく大切にしてくれる人達と接し、七年間という期間で、ようやく世の中が自分に対し悪意に満ちた者だけがいる世界ではないんだと気づき、思う事が出来る様になったのです。ただし、自分が容姿的にも頭脳的にも運動能力的にも英才教育を施されたのを気付かず、過去の自分の価値観を持ち続けたまま。


 「雅也、無事義務教育を終わる事が出来た事だし、どうする、私と同じ様にジムで働くか。歓迎するぞ」


 「父さん、高校まではちゃんと卒業しておきたいと思います。それから先の事はまだ判りませんが、頑張りたいと思います。でも、正直、あの学校の高等科に通う自信はありません。なので外部受験をして他所の学校に通う許可を貰えたらと思うのですが、駄目でしょうか?」


 「な~に不安な顔をしている。全然構わんぞ。な~母さん」


 「ええ、保健医の近衛先生も、都内どころか県内すべての高校にトップクラスで行けるでしょうと太鼓判を押されてたくらいですもの、好きな所を選んで行きなさい」


 「ありがとう、父さん、母さん」


 こうして雅也少年は端正な顔立ちと細身の身体を母の栄養学により手に入れ、それでも、どんな運動にも耐えられる絞られた筋肉を父親から与えられて、どんな学校へも行く事の出来る様な頭脳を近衛先生より貰い受け、普通科2クラス、特進科1クラス、スポーツ科1クラス、芸能化1クラスの、40人1クラス、1学年200人を誇る、生徒それぞれの個性を大事に、というスローガンを持つ清和学園へと、な・ぜ・か普通科生徒として入学するのでした。特進科の生徒を置き去りに、首席合格の生徒として。



 幼い頃、執拗に男子から揶揄われていた女の子がいた。その子は毎日訳も分からず揶揄われる毎日が怖くて仕方がありませんでしたが、在る時幼馴染の男の子が間に立ち庇ってくれたのでした。でも、それからは自分が揶揄われている時と違い、執拗ないじめが繰り返されるのを目の当たりにし、またこれが自分の方に向いたらと、怖くなり自分では何も出来なかったのです。来る日も来る日も繰り返されるいじめ、それなのに何も出来ずにいる中、とうとう男の子は教室に来ることはなくなるのでした。後悔した女の子は泣きながら両親に話しました。それから毎日男の子が来るのを待ちましたが、来ることはなく、泣き続ける娘を心配した両親は、職場に近い別の街へと引っ越すことを決めたのでした。

 

 引っ越した後、仲の良い友達から連絡が来た時、幼い時揶揄われていたのは、ほんの少し他の子より可愛ったから気を引く為だったんだと聞きました。それを邪魔した男の子は、だから皆に嫌われたのだとも教えられました。それでもその時から、その男の子の事だけを思っている私は、多分彼があの時からピンチになったら私を助けてくれる王子様に見えているのでしょう。今いる街でモデルにスカウトされた私は、少しでも彼の目に留まればと、自分の容姿を磨きました。脇に立つ場所から少しでもページの真ん中へ、写れるようにと努力をしていたら、少しは名前が売れるようになったのか、この春より芸能科があるという学校へ特待生として行けるよう計らっていただきました。今彼はどうしているのでしょう。そう考えてたら、


 「良かったわね、由梨ちゃん」


 「どうしたの、お母さん?」


 「貴方が行く高校ね・・・」


 「うん?」


 「あの彼が通うそうよ。本当によかったわね」


 「雅也君が、あぁ~やっと会えるんだ」


 泣き崩れる私を母は、優しく包んでくれるのでした。この時より期待に高鳴るばかりの胸は、静まる事なく、高校入学に向け私を輝かせてくれるのでした。

よろしくですです。

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