俺はこのペンで全てを書きとめる
今日は短編を書きました。
1番初めの作品よりはクオリティーが上がっていることを信じます。
僕は、クルフ。クラン『風龍の翼』の書記を務めている。
「おいクルフ。これ明日のダンジョンボス攻略会議に使う書類、人数分書き写しとけよ。」
今も、この机には、沢山の書類が増える一方だ。
その量は、部屋の両端から今も書類の山が形成され、
今のペースで進めていれば、普通ならあと2日と少しで、この部屋が書類で埋め尽くされるだろう。
だが僕ならこの書類を1日で処理できる。
何故なら僕は、12歳の時にこのギルドに拾われ、今日までずっとこの仕事を続けているからだ。
けど、この仕事は休日でも遠慮なくやらされる。
そんな状況で僕は何度もこのギルドを脱退しようとした。
けれども、僕を拾ってくれた恩を感じてクランマスターに脱退届けを出そうとしなかったのも事実だ。
クラン内の人間は自分の仕事を終わらしてからしか、
クランマスターには会えない。
そんな規約のせいで僕はそもそもクランマスターに会えやしないのだ。
そしていつもの仕事を淡々としていた。
扉が静かに開く。そしていつものように僕は声も聞かず、
「書類ですよね。そこの右端の山に置いといてください。
明日までに仕上げます。急ぎなら僕の机に置いといてください。」
とだけ告げる。こうすることがここでの当たり前なのだ。
僕はそう言いながら、手を動かし、ペンを走らせる。
「クルフ」
「はい!なんでしょうか!」
僕はペンを置き、話しかけて来た人物の顔を見る。そこには炎のように赤い髪と獲物を見つめるような鋭い目をもつ、クランマスターザラトラストがいた。
「クルフ、今日までありがとう。今日新しい書記が見たかったんだ。」
そう言って彼は、後ろにいた。風そのものを表したような美しい薄い緑の髪を持つ、女性を僕の前に出した。
「彼女はサーシャと言ってね、この彼女が君の後を継ぐんだ。
つまり君はもう、このクランに必要ないんだ。今までありがとう。」
僕はその間一言も喋らず、気づけばクランを放り出された。
◆
クランを放り出された僕は、今ギルドへ向かっている。
ギルドでは、冒険者の登録だけでなく、新しい仕事の紹介もしているのだ。
ギルドに入ると、周りが一斉にこちらを向く。
「あれって『風龍の翼』のクルフだよな」
「聞いたんだが、クルフは追い出されて、代わりにサーシャってやつが『風龍の翼』に入ったらしいぜ」
噂が広がるのは早いというが、ここまでのスピードで、
流石だな。
「おい!!クルフ!お前追い出さたらしいな。物を書くことしかできない無能じゃ仕方ないよなww」
俺にそう話かける男は、煽っているつもりなのだろうが、
周りの冒険者は男の言動で、ざわざわしだす。
そして周りの冒険者はみなある方向を見ている。
俺もその方向を見ると、ギルド職員全員が、俺に話しかけて来た男に向かって殺意を放っている。
紙に依頼や、達成報告書をよく書くギルド職員を敵に回す発言をした男は、
その殺意に耐えられず、ギルドを飛び出して行った。
俺はそのままギルドの仕事紹介の窓口に並ぶ。
この場所は、人がいないことの方が多いので比較的早く俺の番が来た。
「こんにちは。ここは仕事紹介窓口です。以前どんなことをしていらっしゃいましたか?」
「こんにちは。クルフと言います。ほんの数時間前まで、『風龍の翼』の書類全てを担当していました。」
これは本当だ。俺はクラン内全ての書類に目を通し、
その担当は俺たった1人だったのだ。
「えっ……たった1人でクラン内の書類を?……全て?」
受付の人もだいぶ混乱しているようだが、俺は、
「はい。全てです。」
と答える。すると受付の女性は一旦席を離れ、奥にいる複数の
ギルド嬢と話している。
数分後、受付の女性は、
「クルフさん!!ギルドで、働きませんか!住み込みで、1日3食
です。お給料も弾ませていただくので」
ギルド嬢は、必死に俺を勧誘しているが、俺の答えは決まっている。
「もちろんですとも。元々転職するならここだと思っていましたし」
この時、この瞬間から、元『風龍の翼』のメンバーである。
クルフのギルドに永遠と語り継がれる物語が始まった。
そして1000人以上で構成され、その全ての戦闘員がAランクの冒険者である、
王国史上最高のクランと呼ばれていた『風龍の翼』の全ての書類を任されていたクルフを追い出したことにより、
『風龍の翼』の壊滅もまた、この時から始まった。
始めました。
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