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それは熾烈を極める精神の闘いだった。お互いの腹の探り合いから始まり、ひいては相手を自分の中へ取り込もうとする闘い。
まるで二頭の龍がお互いに絡み合い、もつれ合い、優位に立とうとするような様相だった。
「GG!あの人たちは恐ろしいわ」
ニアが言った。
私がニアの中に居座っているせいで、ニアにもギルバートとゴッセンの闘いの様子がわかるらしかった。全身に鳥肌が立っている。
「ニア。弟を連れてできるだけこの場から離れるんだ」
私は外部からの攻撃にいち早く気づくことができた。
取り巻いていたクローンたちは、私のテレパシーにより、ニアたちに干渉しなくなった。
ギルバートとゴッセンは互いのことだけでせいいっぱいで、危機に気づいていない。
「姉さん!どうゆうことか説明してくれないか?」
「父さんのクローンたちの中で力のある二人が闘っている最中なのよ。今が逃げ出すチャンスだわ」
「わかった」
弟はニアに従い、できるだけ急いで闘いの舞台から離れようとした。
「いかん!」
私は外敵が原子爆弾を発射したことを知り、金星のあちこちに点在するシェルターの一つを目指した。
「間に合えばいいが…」
シェルターにたどり着き、扉に手をかけると、アラーム音がひっきりなしに鳴り響いた。
「姉さん?」
「いいから急いで」
非常灯が心許なかった。
やがてグラグラと世界が揺れた。
「あっ!!」
ニアが頭を抱えてうずくまった。私はしばし混乱した。
ニアの頭の中にギルバートとゴッセンが引き入れられた。
肉体を失った彼らは、まだそのことに気づいていなかった。
私を統合しなければならぬ!
私はギルバートとゴッセンを私の中へ吸収した。
「姉さん?」
「私はギルバート・ゴッセン。ニアは今眠っている」
「なんてことだ!!」
ビルは雄叫びをあげた。