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「ビル!」
「姉さん。どうしたんだい?いきなり呼び出して」
ビルは確かに私と瓜二つの青年だったが、クローンではないので、私ではなかった。
ビルとニアのいるカフェテリア近くに黒塗りの大型車が横付けにされた。
車から複数の男たちがばらばらでてきて、ビルとニアを拉致した。
「父さん!この2年、一体どこでどうしていたの?!」
ビルそっくりの年配の男。私のクローンが車に乗っていた。
ニアは自分の父親だと思って話しかけたが、他の男たちの顔にも気づいて絶句した。
「なぜ父さんが何人もいるの?!」
「クローンだからだ」
「GG!」
「君の本当の父親はいつか現れるだろう」
私はそう言ってニアを落ち着かせた。
「ギルバートが二人に用があるそうで、連れてくるように指示された」
クローンがビルとニアに言った。
「用事が済んだら帰してもらえるの?」
ニアが震える声で聞いた。
「このまま金星に向かう」
クローンはそっけなく言った。
「金星だって?!」
ビルが蒼白になりながら抵抗しようと暴れたが、逆に無力化されてしまった。
「ビル!ビル!」
意識のない弟をニアは揺さぶった。
「ニア。動かさないほうがいい」
私がそう言うと、ニアが、わっと泣き出した。
「ギルバートという名前に心当たりは?」
「ないわ」
では、声の名前かもしれないと、私は推測した。