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なぜ、ここにいるのだろう?
私は幾度も繰り返してきた疑問をまた考えていた。
答えのない迷宮じみている。
自と他?それとも無数の自と無数の他?
混濁した意識ではそれすらもわからない。
私は少なくとも3人の私だった。記憶を共有しているせいで、同日の同時刻に複数の記憶がないまぜになってしまっていて、どうしても混乱してしまうのだった。
ただし、「2年前の10月」の記憶だけは視点が異なるものの、同じ記憶を共有していた。
ちょうどハロウィンの仮装をして誰が誰だか見分けがつかないお祭り騒ぎの時だった。
地下で秘密の集会があり、金星の政治の後ろ盾をどうするかで意見を出し合っているそのさなかに、威力の強い爆弾が落とされた。
私は複数の私と混ざり合い、分化し、散り散りになった。
同じ記憶を重複して私がもっているということは、逆にその記憶だけを持っていない私も存在するということにならないだろうか?
その私は私を捜して彷徨っているかもしれない。
私は今、地球にも金星にもいない。じっと身を縮めて隠れている。
私の脳に、重要事項が決定された記憶が存在しているのだ。それを奪われるわけにはいかなかった。
ここから脱出して、金星に向かうには、足りないピースがいくつかあり、私はそれが揃うのを待っていた。