4/10
3
3
規則正しく並んでいる銀色の針に黄色い糸を引っ掛けてゆく。途中、模様を作る場所は休み目にして、コマで一気に一段編む。
また繰り返し。気が遠くなりそうだ。だが、彼女は黙々と続ける。
「そこにいるのか?」
「そうだ」
「なぜこちらまで来れなかった?」
「そんなことより、クローンを殺したな?!私は宿り木をなくしてしまった!」
「やつは情報を持っていなかった」
「情報が欲しいのか?」
「そうだ」
「私もそちらが探してる情報は持っていない」
「なんだと?…では、別口か…」
声が途切れた。
「GG。頭の中で誰と会話してたの?私、編み方間違えちゃったわ!」
ニアが怒りに満ちていた。私も怒りに満ちる。
編み機を壊したい衝動に駆られるが、ニアの自制心に止められた。
冷静に、冷静に。
声の正体がわかった。やはり私だった。私のクローン。或いはオリジナル。
しかし、他のクローンから情報を集めているのなら、オリジナルの線は薄いかもしれない。
一体、何人のクローンが用意されているのだろうか?声は「別口」と言っていた。
別口のクローンが情報を持っている。とても興味深い。