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「…の地点へ移動したまえ。そこで落ち合おう」
声が指示してきた。記憶の欠落。声は誰だろう?だが、私を助けようと指示を送ってきたのだから、信用に値するだろう。
意識を集中する。
出現ポイントをできるだけ具体的に思い描き、自分をそこへ運ぶ思念。
「…私は断じて、…ない!」
強い思考が意識の集中を妨げた。
行くべき場所の手前で私はとどまる。
「私はこれに断じて同意したくない!」
彼女は必死だった。
私は彼女だった。
彼女はTwitterで拾ったツイートに憤慨していた。
「あなたに必要な人は必要なときに現れて、必要でない人は必要でないときに去ってゆく。来るもの拒まず、去るもの追わず精神で」
「冗談じゃないわ!本当に必要な人が去っていくことだってあるのよ!この胸が痛むのに、それを忘れられるはずないじゃない!」
「確かにそうだね」
「誰?」
「GG」
「GG?」
訳あって名乗れない。だからGG。
「私はニア。なぜあなたの声が聞こえるのかしら?」
「精神体だけ移動中にニアの中にとどまってしまった」
「怖いわ!」
「そうだね。じきに慣れるか、状況が変わるだろう」
「早く状況が変わりますように!」
私は思念の肩をすくめた。