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【第7話】それぞれの苦悩


 1-Eと1-Fの合同授業は続いていた。

相も変わらず、不用心に罠に突っ込んでは足止めを食うクラスメイト達を助けながらレイとラルフは進んでいく。


――助けていたのは主にラルフだが


レイはさすがにうんざりし始めたが、ラルフの方は当然のように動けない生徒に手を貸していった。


そして気付けば、いつの間にかレイたちは先頭になっていた。

後ろの生徒たちを待って、また手助けするというのもおかしな話なので、

レイたちはそのまま先に進むことにした。


「ラルフ、そこの足場は崩れるぞ」


「おっと、危ない。助かったぜ、レイ」


「お前が動けなくなったら、他の奴らが困るからな。気をつけてくれ」


「はは、そこまで頼られても困るんだけどな。しかし、なんで分かったんだ?」


「……さぁな、勘だ」


「勘?それにしちゃ随分と確信を持った言い方だったが」


ラルフは納得していない様子だったが、レイが無理やり話題を切り替える。


「それよりもそろそろゴールみたいだ」


「ようやくかぁ、随分とハードな課題だったな」


それはそうだろう。ラルフは道中で罠に嵌った生徒を全員助けてきたのだから。

そして二人がゴールしてから暫くして、続々と他の生徒達もゴールに辿り着き、

最終的には全員がなんとかゴールすることが出来たのだった。


 最後に今回の授業の評定が生徒各々の端末に配布されて合同授業は終了となった。

評定は全部で5段階。最高評価は『S』であり、以降は『A』『B』『C』『D』と続く。

また『S』評価の者は成績優秀者として、公表される仕組みとなっている。

逆に『D』評価は不合格を意味し、補修を受けて評定を上げないと留年となる。


今回の評定結果は、ラルフが『S』、レイは『A』であった。


授業が終わると、ラルフのもとに1-E、1-Fの生徒たちが殺到する。

目的は当然、バディの申し込みだ。

ラルフは困惑した顔をレイに向けるが、レイは素知らぬ顔でその場を後にした。


■---------------------------------------------------■


 1-Fとの合同授業を終え、レイは想定以上にバディ決めが難しいことを痛感させられていた。

今回はどちらも2ndのクラスだったため、大きなトラブルこそ無かったものの、

終わってみれば、印象に残ったのはラルフしかいない。

しかも後から分かったことだが、ラルフはレイと同じ1-Eだった。


合同授業を行ったのは今回が初のため、ラルフは候補の一人でしかないが、

それは向こうも同じこと。いやそれ以上にラルフは今回の一件で引く手数多となるだろう。

自分が選ぶまでもなく、彼がバディとなる可能性は極めて低いとレイは考えた。


「1-Aは最後か。それまでに適当な相手が見つかると助かるんだが…」


サラの在籍する1-Aは1st。

実力差以上にステージの違いから、2ndに対する蔑みや偏見を持つ者が多いだろう。

そういった感情の摩擦があることから、おそらく今回と同じようにはいかない可能性が高い。

つまり、それまでに相手を見つけられなければ高確率で抽選行きだ。


まずはラルフ以外のバディ候補を見つける必要性を、レイは感じていた。


■---------------------------------------------------■


 1-Aは1-Bとの合同授業を終えたところだった。

予想通りではあるが、サラの周りにはバディを申し込む生徒が群がっていた。


「申し訳ありませんが、まだ始まったばかりですので、今の段階では決めかねます」


先ほどから何度繰り返したか分からない、丁寧な断りの言葉を周囲に伝え、

サラは逃げるようにその場から立ち去った。


「人気者は大変だねぇ〜」


シェレンが面白そうにサラに話しかける。


「もう、からかわないで。こちらにも選ぶ権利はあるのだから」


「あっ、もしかしてもう意中の相手がいるとか?」


サラの態度に含みがあると感じたのか、シェレンが今度は穿った推測をする。


「残念だけど、そんな相手はいないわ。……シェレンなら良かったのに」


「うっ…。だからそれはごめんてば」


いよいよいじけ始めたサラに、形成不利と判断し、シェレンは早々に白旗を上げた。


「でもさぁ、サラなら選び放題じゃん。少しでも良いと思った人はいないの?」


「声をかけてくれた人たちはとても優秀な人ばかりよ。でも決めるのは全て終わってからにしたいの」


「そっか、うん!良いバディが見つかるといいね!」


「ありがとう、シェレン。そのためには私も頑張らないと」


サラが再び取り囲まれる前に、二人は教室棟へと引き上げたのだった。

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