表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜町幻想奇譚  作者: 里芽
在りし日の姿は鏡の中に
351/360

在りし日の姿は鏡の中に(5)


 シイナラ・チュカクのはずれにあるシイナラ・テーベ。ウェディングケーキの様な形をしており、いちごやクリームにあたるのが、ずらりと建ち並ぶ建物だ。建物はどれも黒い瓦屋根になまこ壁、一見蔵の様な見た目の建物である。ここ、シイナラ・テーベに住んでいるのは神官(神官+公務員といった役目の様だ)及びその家族、カブネリ関係者、シイナラ・タメノハーテ・チョーサのメンバー、ミカガミ様にお供えする諸々のものを作る人が主だそうだ。プラスして、そんな彼等が生活する為に必要な物を販売する店が並んでいる。テーベ・モートに比べると建物の密集度は低く、緑も多くずっと長閑だった。


 眼下にテーベ・モートが広がっている。もうここへ来てから相当な時間が経っているはずだが、未だにシイナラは明るい。夜というのは名ばかりのもの。シイナラは『暮れ』を知らない郷なのかもしれない。永遠に光溢れる、闇の無い郷……。

 こうして見下ろすと、いかにごちゃごちゃぐちゃぐちゃしているかがよく分かる。絶景とは言い難く、ここから何も考えずどんどん投げ捨てたゴミでいっぱいのゴミ捨て場の様に見えた。本当にシイナラ・チュカクはサトトザシ時点ですでにこんな場所だったのだろうか?


 神殿へ向かう途中、先程タスケモノ屋に入っていった女性と再会した。どうやら買い物は比較的早く終わったらしい。彼女は家の前と思しき所を箒で掃いていた。


「あら、先程のマレビトさん達。今からミカガミ様に会いに?」


「はい……シイナラの話を色々聞こうと思いまして。そういえば、良いタスケモノは買えましたか?」

 柚季は挨拶してすぐ別れるのも、と思って適当に話を振った。ところが何気ないその質問を聞いた瞬間、女の表情がさっと変わった。


「新しいタスケモノ……? 一体何のことですか?」

 女はまるで意味が分からない、という顔をしていた。意外な反応に二人はぎょっとし、思わず「えっ」と驚きと戸惑いの声をあげる。柚季は女と出会った時のことを詳しく話したが、女の表情が変わることはなかった。柚季達と会ったことは覚えているが、自分が新しいタスケモノを買いに店の前までやって来たこと、ミカガミ様に許しを乞う動作をしてから店へ入っていったことは覚えていない。彼女はすっとぼけているのではなく、本気でそれらのことを忘れている様子でそれがまた二人を混乱させた。


「確かに我々シイナラの民が美しい永遠を損なうような行為をすることはあります。……ミカガミ様にお許しをいただく為、そして美しい永遠を壊した自分に罰を与える為にすることを貴方達に話した覚えも何となくはあります。けれど、タスケモノ屋に入って何かを買った覚えはありません。日々を過ごす上でどうしても必要なものは買っていますけれど……ああいった物を買うのは美しい永遠を壊す行為になります。だから、そういうものは私は買いません」

 私の家はサトトザシをした時から変わっていない、美しいままだ……女は最後にそう言った。鳳月と柚季はこれ以上追及しても無駄だと悟り、彼女と別れて神殿を目指す。


「……もしかしてタスケモノ屋の前でやっていたあの動作って、自分が新しい物を買って『美しい永遠』を壊したことを忘れる為のおまじないみたいなものなんじゃ」

 神殿へ向かう石段を上りながら先程のことについて言うと、鳳月は無言で頷いた。


「恐らく誰もがああなのでしょうね。他の人がそれをすることはあるけれど、自分は一度もしたことがないと思っている。……こうなると、矢張りここシイナラがサトトザシ以来その姿を変えていないという話は大分怪しいですねえ。変化を全てなかったことにして生きる内、誰もかれも本当のシイナラの姿を忘れているのかもしれません」


「……それはミカガミ様も?」

 どうでしょう、と鳳月は肩をすくめる。そんなことはミカガミ様に直接聞かなければわからないことだ、とでも言いたげである。先程船で会った男のことも気になるが、僅かな情報から彼の正体を推察するのは難しかったしどうせ後でまた会えるようなことを言っていたから、こちらについても今あれこれ考えることもないだろう。


 石段を上り終えると銀で出来た塀と門、それから黄金で出来た神殿が見えた。門の前に紺の着物に灰色の袴、頭に鉢巻をつけ長い木の棒を持った男が二人立っていた。恐らく門番だろうが、悪さをする為に無理矢理門を突破して神殿に入り込もうとするような不埒な輩などここシイナラには存在しないためか、二人共神殿を訪れてきたのだろう一般人と呑気に喋っていた。門も開けっ放しである。門番といっても恐らく形ばかりのものだろう。柚季達の姿を認めると「シイナラ・クーリャンセ!」とだけ言ってさあどうぞとばかりに門を指す。セキュリティガバガバ、と少し呆れながらも二人は門をくぐり翡翠の敷かれた道を歩いていく。


 目の前に見える神殿は、まるで神殿には見えないものだった。道の両脇に等間隔で並ぶのは水晶で作られた柱。パルテノン神殿等で見かけるエンタシス形式のもので、上部と下部にはでかでかとした金剛や紅玉、青玉、碧玉等の宝石がとりつけられている。柱上部からまるで噴水の様に何かが噴出しており、何かと思えばそれはどうやら金箔粉であるらしかった。それらは下に落ちると、まるで幻であったかのようにすうっと消えてなくなる。翡翠の道を渡った先にある神殿は、そんな柱の何十倍も派手だった。巨大な神殿は一言でいうと『平等院鳳凰堂を黄金にして、宝石や螺鈿でごってごてに装飾した』ものだった。その装飾にセンスは欠片もなく、ただ権力を誇示する為に高価なものをつけられるだけつけましたというもの。しかしあまりにセンスがなさすぎる為に正直そんなものは感じられず、見ているととても情けなくて、恥ずかしくて、そして腹立たしくなる。


「……なんといいますか、その……大きな宝石のついた指輪や首飾りをこれでもかという位身に着けて、毛皮のコートを羽織って高笑いしている肥えた金持ちの厚化粧おばさんって感じの見た目ですねえ」


「その例え方もどうかと思いますけれど、気持ちは分からないでもないです……」


「中に入ること自体が精神的にきつい……これ、何かの罰ゲームでしょうかねえ」


「まあ私からしてみればこんな世界に否応なしに放り込まれた時点で立派な罰ゲームです」

 神殿とこちら側を隔てる人口の池には宝石が敷き詰められ、その上を金や銀の鯉や得体の知れぬ魚が泳いでいる。水は常に色を変化させている。その色はどぎつく、水面には金箔がゴミの様に浮いていた。その上に架かる橋も黄金で、左右に埋め込まれた宝石が見せる下品な輝き。二人共げんなりしながら橋を渡り、入り口の前に居た門番二人から歓迎の言葉をもらいながら中へと入った。

 外装にセンスがなければ、内装もまた酷いもの。壁一面にびっちり埋め込まれた宝石、照明はミラーボール、常に天井から降り注ぐ七色の光の粉。あまりのセンスのなさに、じわじわがりがりと心を削がれていく。もういっそミカガミ様から話を聞くのも辞めようかとさえ思う始末。しかしそう思っているのは柚季や鳳月だけで、神殿内を歩いている神官(白の着物に袴姿、と皆宮司や巫女の様な格好をしていた)は平然としていたし、誕生日を迎え神殿を訪れた一般人は感極まって泣いていた。


「嗚呼、何とお美しく立派な神殿でしょう。いつ来ても、いつ見てもミカガミ様が御座すこの神殿は素晴らしい。これ以上に素晴らしい建物を私は他に知らない!」


「またここに来ることが出来て、俺は大変幸せだ。嗚呼、早くミカガミ様とお会いしたい! そしてありがたいお言葉を頂戴したい!」

 ミカガミ様と会い、帰る途中らしい人間ともすれ違った。彼等もまた皆ミカガミ様と出会い、言葉を交わした喜びにむせび泣いていた。その姿に二人は狂気以外を感じられず、神殿の酷い内装も手伝って吐き気を覚える。どうして自分達はこんな思いをしてまでミカガミ様と会おうとしているのだろう?

 しかしこれだけの思いをしてまでここまで来たのに、今更帰るのも馬鹿馬鹿しい。二人はガリガリ削られる精神と、こみあげる吐き気を抱える胸を時折抑えながら神殿内を進み、先程神官の一人に教えてもらった『マレビト専用のお見合い場|(ミカガミ様に謁見する場をそう呼ぶらしい)』を目指す。

 

「……おっと」

 とん、という音と共に鳳月の背中に何かがぶつかった。ぴたっと立ち止まった彼とその隣を歩いていた柚季が振り返ると、そこにはおでこの辺りをおさえている女の子が立っていた。歳は十位だろうか。巫女の様な格好をしているので、恐らくは神官――まだ幼いので見習いかもしれない――だ。

 鳳月と顔を上げた女の子の目が合う。人の視線が余程苦手らしい鳳月がさっと視線を逸らすと、女の子は彼がとても怒っているのだと思ったのか泣きそうな顔。柚季が慌てて別にこのお兄ちゃんは怒っていないから大丈夫よ、と言ってやると安心したのかほっと一息。それからぺこりと頭を下げた。


「ごめんなさい、全然前見ていなかった! 歩く時はよそ見しちゃ駄目ってお母さんによく言われるけれど、いっつも忘れちゃうの。今は歩いていたんじゃなくて、走っていたのだけれど」

 そう言って女の子はぺろっと舌を出す。あまり反省はしていないようだ。柚季は苦笑しながら少女に話しかける。


「君はここの神官さん?」


「うん! といっても見習いだけれどね。本当はいつか立派な神官になりたいけれど……ここは永遠の郷だから、それは出来ないの。あ、私の名前はミイコっていうの。皆ミイちゃんって呼んでいるよ」


「そっか、ミイちゃんっていうのね。ミイちゃんはシイナラのこと、好き?」

 聞いてから柚季は内心しまった、と慌てた。鳳月も「その質問は」と言いたげな苦々しい表情。あまりに無垢な表情をミイコが見せるので油断していたが、ここシイナラの人々の郷土愛は狂気さえ覚えるもの。こんな質問をしたらまた微妙な気持ちにさせられるようなことを言いだすことはほぼ間違いないからだ。しかしミイコの反応は予想とは少し違ったものだった。

 ミイコはそれを聞いて少し考えるような仕草をしてから「うん、好きだよ」と答える。しかしその声に他の人程の愛は感じられない。


「好きだよ、うん、シイナラのことは好きだよ。でも私……」

 ミイコは何事か、辺りをきょろきょろ見まわしてから小声で言った。


「本当はね、夢の中のシイナラの方がもっと好きなの」


「夢の中のシイナラ?」


「そう。私ね、いつも寝ている時はここと同じように『シイナラ』って呼ばれている所の夢を見るの。ミカガミ様も、神殿も出てくるけれど……でもこことは全然違うシイナラなんだよ。神殿はここまで大きくないし、金ぴかじゃないし、池だって七色に光らないの。テーベ・モートだってあんなに建物なんていっぱいないし、そんなに住んでいる人だって沢山いないし、ええとあまり発展とかしていない感じで……。そもそも夢の中のシイナラは、私達が今住んでいる『シイナラ・チュカク』だけ。私の知っているシイナラはうんと広くて、シイナラ・チュカク以外にも色々な所があるけれど、夢の中にはないの。夢の中のシイナラは山とか森に囲まれていて、その先には海しかないの。しかもそこには人も妖も住んでいないし、魚だって泳いでいないの。あってないような場所なの」

 ミイコは『夢の中のシイナラ』と『実際のシイナラ』の違いを次々と喋る。そしてそれを聞く限り、彼女の夢に出てくるというシイナラは今柚季達がいるシイナラとはかなり様子が違うことが分かる。


 例えばカブネリ。ミイコの夢に出てくるカブネリは年に二度行われるお祭りで、仮装した郷の人々が蕪を模した灯り(ミカガミ様の好物)を持ち、歌い踊りながら郷を練り歩き、最後に郷の中心にある大木の周りに集まって飲み食いしたり騒いだりするものなのだそうだ。郷の人々がカブネリの最後に集まる木は『コウリン』と呼ばれ、薄桃の牡丹の様な花をつける木だそうだ。なんでも天上にある世界に住んでいたミカガミ様が降り立った場所から生えたものらしい。ミカガミ様は自らが降り立ったその土地を『シイナラ』と名付け、シイナラの神様としての日々を送るようになったという。

 そんなミカガミ様は夢の中ではフレンドリーで、郷の人々もミカガミ様を『シイナラ・アイゾッカ』――シイナラの愛すべき家族と呼び、神でありながらかなり自分達に近しい存在として慕っていたようだ。シイナラの人々にとって、郷に住む者は神でも人でも妖でも皆大切な家族だった。そしてミカガミ様は本来は女神であり、しょっちゅう鏡から抜け出しては山や森や小川で子供達と遊んだり、郷にある茶店でおばさん達とお喋りしたり、男衆と酒を飲んだりしていたらしい。そして神官に見つかっては、軽くお説教されながら神殿に連れ戻されたそうだ。幾ら家族の様な存在とはいえ神様は神様、あんまりそんなことばかりしていては威厳が云々とよく言われたそうだが、彼女は「神官達ったら皆頭が固いんだから」と笑いながらいうばかりであまり堪えてはいなかったそうだ。


「昨日はコウリンの下でミカガミ様とお喋りする夢を見たの。コウリンの花びらがひらひらって私の頭の上に落ちたのをね、ミカガミ様が笑いながらとってくれたの。ふわふわひらひらって落ちる花びらと、にっこり笑うミカガミ様……うんと綺麗で、それを見たらすごく幸せな気持ちになった。夢の中のミカガミ様はとっても優しい。それにシイナラはとっても綺麗な所で……宝石みたいにキラキラしてるの」

 だがこの夢の中のシイナラの話をすると皆に怒られてしまうらしい。例え夢の中の出来事であろうと、ミカガミ様と仲良く遊んだりお喋りしたりしたなどという畏れ多いことを口にするものではない、と。そして皆言うのだ。そして今のシイナラよりも美しいものはなく、夢の中のそのように寂れたシイナラを綺麗だと思うなんてとんでもないことだ、とも。


「私はそれでも、あのシイナラの方が好き。というか私、思うんだ。あっちのシイナラの方が本物なんじゃないかって……ミカガミ様とコウリンの下でお喋りした夢を見た時、私とっても懐かしい気持ちになった。あれは夢じゃなくて、昔本当にあったことじゃないかなって思っちゃう位。私にはやっぱりあの夢がただの夢だと思えないんだ。あの夢の様にシイナラは温かくて優しくて、キラキラした所で……ミカガミ様は私達にとって家族みたいな存在で……神官さん達も威張ってなくて優しくて……お母さんももっともっと優しい人だったんじゃないかって思うの。夢じゃなくて、私は思い出を見ている気がするの」

 ミイコは目を瞑り、夢の中のシイナラの姿を頭に描いているのだろう――とても幸せそうな表情を浮かべていた。その顔を見ていると、柚季達まで胸が温かくなる。ここシイナラへ来て初めて感じた幸福。

 だがその時間も長くは続かなかった。


「ミイちゃん」

 その声にびくっと体を震わせながらミイコがぱちっと目を開いた。二人がばっと振り向くと、そこには一人の女が立っていた。歳は三十半ば程で、衣装を見る限り神官の一人だろう。いかにも厳しそうな人である。


「ミイちゃん駄目でしょう、この方々はミカガミ様とまだ会っていないのよ。我々神官がミカガミ様より先に、お客様と長い間接することは禁止されているでしょう。それはミカガミ様の大切なお客様を畏れ多くも横から割り込んで、ミカガミ様から奪う行為です」


「はい……ごめんなさい」


「まさかあの口にするのも恐ろしい、夢の話をしたわけではないでしょうね?」

 話していないよ、とミイコは彼女から視線を逸らす。そのあからさますぎる態度で全て察したらしい女は溜息をついた。


「全くいけない子です。でも仕方ないわね、貴方はそう生まれ育ってしまったのだもの。本当は貴方の為に矯正をしてあげたいところなのだけれど、それさえ美しい永遠を壊す行為になりますからね……嗚呼、失礼しましたマレビトの方々。美しい我等の神、ミカガミ様とお会いし言葉を交わす幸福な時間を奪う行為、申し訳ございません。私は神官の一人エイコ、こちらにおりますミイコの母です」

 さあお見合い場までご案内致します、とエイコはしゅんとしているミイコを置いて進みだした。ミイコはしゅんと俯いたまま小さな声で「ばいばい」と手を振る。柚季としてはそんな彼女をそのままにしておきたくなかったが、エイコがずんずん進んでいくので仕方なくそちらへとついていった。後ろ髪引かれる思いとはまさにこういうものだ、と思いながら。

 広々とした通路にぽつんと立っている少女。彼女を慰めるかのように、優しく頭を撫でる白い面を被った黒い着物姿の男。彼の存在に気づくことなく少女は一粒涙を零したのだった。


 お見合い場はミイコと会った場所からそう離れていない場所にあった。移動中エイコはミイコの話した恐ろしい夢の話のことは忘れろと言ったきり無言だった。

 エイコが立ち止まり、ここがお見合い場ですと大きな扉を指さす。例に漏れずその扉も宝石でびっちり埋め尽くされており、ぎらぎらと気味悪く輝く鱗を持つ怪物を扉にはめ込んだ如く。龍の形をした取っ手は金ぴかだ。エイコがマレビトが来たことを伝えると、扉の向こう側から「どうぞ、入りなさい」という落ち着いた女性の声が聞こえた。その声を聞き、エイコが静かに扉を開き二人を部屋の中へ引き入れる。


 お見合い場は床も壁も天井も玉虫色。壁には水晶の顔、黄金のタテガミ、紅玉の目、銀の刃を持つ獅子がくっついている。そしてその周りには神殿内同様に宝石がたっぷり埋め込まれているが、兎に角つけたいだけつけたという風でセンスは欠片もない。天井には豪奢なシャンデリア、宝石がびっちりついたボール状の飾り。

 前方には黄金で出来た台があり、宝石やら螺鈿やらで派手に飾り付けられている。それらは照明によって眩く輝いているが、その輝きに美しさは感じられない。ぎらぎら輝きすぎてただただ目が痛くなる。そしてその台の周囲を黄金の像やら食器やら壺、宝石、派手な装飾を施された剣等見るからに高そうなものが堆く積み上げられたものが覆っていた。ここを見て誰が神様と会い、話をする為の部屋だと思うだろうか。

 そしてその台の中央に置かれている鏡が一枚。それは柚季と鳳月をこの世界へ誘ったものと全く同じものだった。鏡の両端には榊を挿した銀の壺。二人はぎらぎら輝く部屋に目を傷めつけられ、がんがん痛む頭を押さえながら台の前にぽつんと置かれている座布団の上に座った。この部屋にあるものはどれもこれも見るからに高級品であったが、その座布団だけはどこにでもあるごくごく一般的なものであった。


「ようこそいらっしゃいました、マレビトの方々。あ、エイコはもういいですよ下がってなさい」

 エイコは恭しく頭を下げ、静かに部屋を後にする。


「この美しい永遠の郷はどうです、素晴らしいものでしょう。そしてこの神殿は中でも特に美しく、素晴らしいでしょう? ここシイナラの神である私の住む場所ですもの、どんな所よりも立派でなくては。私以上のものはここシイナラには存在しないのだ、ということをはっきりと皆さんに分からせるにはこれが一番なんです。絶対的な力を可視化するには、金銀宝石が一番です。権威とは財力で示すものです。こうして私という存在がどれだけのものか常に目で見て分かるようにしておかないと、いつかなめられてしまいますからね……私はここシイナラにおいて絶対の存在です。だって私がいなければ、シイナラは存在を保つことが出来ないのですもの。そのことを彼等は永遠に忘れてはいけないのです。そして私も彼等がそれを理解している限りは、ずっとこの郷を守ってやるのですよ」

 ミイコが夢で見た郷や住人を優しく温かく見守っているミカガミ様はここにはいない。いるのはこの私がシイナラと貴方達を守ってあげているのよ感謝しなさいと常に上から目線の神様だ。どことなくここに住んでいる住人を見下している様な印象を誇らしげに語る彼女の声から受ける。


「先程貴方達はミイコと会いましたね。私はそれをここから見ていましたよ。どうせあの子はまた夢の話をしたのでしょう。そしてあの子はその夢の中のシイナラに焦がれている。でも私はそのことを怒りはしませんよ、子供の考えることですもの許してあげなくては。あの子は永遠に幼いままですからね……神と人間や妖の間にどれだけの隔たりがあるか理解することはないでしょう。分からないから、私と仲良くお喋りしたいとか、遊びたいとかそんなことを夢に見るのでしょう。分かっている人はそんなこと考えもしないでしょうからね。子供らしい夢で、まあ可愛らしいものだと思いますよ。まあ所詮は夢で、私はなれ合うつもりは少しもないですがね。そうして仲良しこよしやっていたら神の威厳も価値もなくなりますよ。手に届かないものだからこそ私は絶対的な存在なのです。まあマレビトの貴方達にとっては私などどうでも良い存在でしょうがね」

 そう言ってふふふ、と楽しそうに彼女は笑う。そんな彼女は随分と神としての威厳とか権威とか、そういうものに固執しているように二人には思えた。そんなことばかりを、いやそのことだけを考えて今を生きているのではないかとさえ思う。


「たまにこうしてシイナラの民以外の人と話をすることは良い気分転換になります。少し気楽に話すことが出来ますからね。神だって誰だって、ずっと張りつめていたら身が持ちません。でも私が気楽に話せる相手はシイナラの人々であってはいけないのですよ。さあさあ、色々お話ししましょう。なあに時間はたっぷりありますよ」


「え、でも貴方に会いに来ている人が沢山いるのに……」


「それならお気になさらず。彼等が会い、言葉を交わしているのは私の写し身……まあ分身のようなものです。例え一年に一度でも、この私と話をするなんてとんでもない。私自身と直接会話をするものといえば神官か、貴方達マレビト位のものです」


「……自分達がが話しているのはあくまでミカガミ様の分身である、ということをシイナラの民は知っているのですか?」


「さあ? どうでしょう。言ったような気もしますし、言っていない気もしますし。まあどちらでもいいじゃないですか。例え写し身であっても私は私。一年に一度写し身であるにしてもこの私と話が出来るなんて、最高の幸福じゃないですか。普通はないことですよ? 神と直接話せるなんて。私ってば少しお人よしなところがありますからね……なんて自分で言ってはいけませんよね、ふふ。彼等だって同じ様に思っているでしょうよ。自分が話している相手が本物であれ写し身であれ、ありたがいこと、至上の幸福であることに変わりはないと」

 尋ねた鳳月はそりゃあそうかもしれないけれど、と言わんばかりの顔をしている。柚季もミカガミと会って喜びの涙を流していた人のことを思ったらなんだか少し可哀想になってしまった。


「そんなことはどうでもいいじゃないですか。もっと他のことを話しましょう。私のこの美しい永遠の郷のこととか、貴方達の住む所についての話とか」


「……では、ここ模造品のシイナラではなく本物のシイナラについての話をしましょう」


「え、鳳月さん!?」

 柚季は隣で正座をしていた鳳月がいきなり本題に入ったことに驚き、思わず彼の方をばっと見た。もう少し別の話をしてから、上手いことそちらの方へと話題を移していくものだと思っていたからだ。彼とはまだそう長い時間を共に過ごしていないが、話の流れを自然と自分が思っている方向へ動かすことなどが得意そうな人だという印象があったから、まさかこんなに強引に、そして単刀直入に本題へ移るとは思っていなかった。もしかしたら最初は少しずつ話題を変えていって……と思っていたのかもしれないが、こんな所からは一刻も早く出たいという気持ちが強くなった故にこうなったのかもしれない。もしくはこの神とあまり長いこと話していたくないと思ったからか。

 ミカガミの方はそれを聞いて気分を害する様子も、困惑する様子もなくただ「あらまあ」と気の抜けた声を出す。


「本物のシイナラというのは……私の内ではなく、外に元々あったシイナラのこと?」


「ええ、そうです。そちらのシイナラです。……どうやらそちらのこともちゃんと覚えているようですが、一体本物のシイナラはどうなってしまったのですか?」


「そっか、貴方達は知っているのですね、あっちのことを。ふむ……本物ねえ……まあ確かに貴方達にとってはあっちが本物でしょうねえ。実際かつては向こうこそが本物だったわけですし。そのシイナラがどうなったって? さあ、どうなったんでしょうね。知りませんよ、私は。ただまあ……私無しにはその存在を維持出来ないような所でしたからねえ……私が離れた以上、もう無いんじゃないですか?」

 二人は予想だにしなかった反応、そして答えにしばし呆然。ミカガミがこの模造品のシイナラを作り出したのは、何かしらのハプニングが起きた為に本物のシイナラが滅びてしまったからだと思っていたから。そしてそれにより生じた深い悲しみを癒す為、心に空いた穴を埋める為、そして自分がかつて愛し守り続けてきた郷の姿を永遠に忘れないようにする為にこの模造品のシイナラを作ったのだと考えていたから。だからこのことについて尋ねたらミカガミ様はとても苦しそうに、悲しそうに過去を語りだすか口をつぐむか、或いは本物のシイナラが滅びた事実から目を背けているが為に「ここ以外のシイナラは無い」と言って怒ったり、取り乱したりするものだと思っていたのに。

 しかし彼女の反応、そして返事については全く想定していなかった。


「まあ十中八九滅びているでしょう。あそこに住んでいた人達が大好きな『あれら』がどうにかしたかもしれませんが……いや、流石にそれはないでしょう。あれらに私以上の力などない。私の代わりなど出来ようはずもない。だからまあ、滅びたのでしょう。どちらでも構いませんよ、あんなシイナラのことなど。今の私にとって本物のシイナラはこちらです。こちらだけがシイナラ、他のシイナラなど存在しません」


「そんな……一体どうしてそんなこと言うんですか? 本物のシイナラで一体何があったんですか?」

 あまりに冷たすぎる『本物』への想い。予想外すぎる展開に頭は真っ白。それでもどうにかそのことを尋ねる。ミカガミ様は「話したくないんですけど」と言わんばかりのため息をつき、無言。またしばらくしてから「嫌なら別に話さなくてもいいですが」と言いたくなる位気分が悪くなるため息をついて。


「……あの『かつて本物だった』シイナラの民は、私を裏切ったのですよ。ええ、あれは酷い裏切りです」


「裏切った?」

 

「ええ、そうですとも。私はシイナラを愛し、シイナラに住む彼等を愛していました。そして彼等も私を愛してくれた……。私は私のことを愛してくれる彼等の為に、シイナラを守り続けました。私は彼等にとっての一番で、私にとって彼等は一番の存在……そうだった、そうだったはずなのに。私が作り上げ、守って来た郷。長い間大切に、この胸に抱き続けていた愛する子……永遠に美しいままでいるはずだったのに……ある日シイナラに入り込んだ『あれら』が私から全てを奪った! あれらをすぐに追い出していれば良かった……!」

 

「あれらって一体なんですか? それが何かしたんですか?」


「何か? ええ、しましたとも。あれらはまず私のシイナラに術を用いて入り込んできました。術を使い入り込もうとしていることは私も気づいていましたが、彼等から邪なものは感じなかったのでそのまま何もせず彼等を迎え入れました。彼等はシイナラ・タメノハーテ・チョーサの人達が持ってこなかったような技術や知識を有しており、私はそれを取り入れシイナラを発展させていきました。シイナラはどんどんと豊かになっていきました。ええ、始めは良かった。あれらは幾度となくシイナラを訪ねては新たなものをもたらしました……沢山、沢山。そうする内にシイナラは私が愛した美しい郷からすっかりその姿を変えてしまいました。あれらの技術や知識がシイナラを少しずつ呑み込み、気づいた時にはシイナラは私の郷ではなくあれらの郷になってしまっていたのです。私はそのことに気づいた時、愕然としました。しかしそのことに気づいた時には遅すぎました」

 そして更に、とミカガミは話を続ける。


「あれらはシイナラの民の愛すらこの私から奪っていきました。民達は多くのものをもたらし、シイナラを豊かにしたあれらに心惹かれていきました。シイナラを誰よりも愛し、長い間守り続けたこの私よりもあれらの方を大切にするようになっていきました! 心が、愛が、少しずつ私から離れていく……それは耐えがたい苦しみでしたよ。彼等の一番は私でなくてはいけないのに! 私の一番は彼等のままなのに、それなのに、それなのに! 彼等は私がもうあれらをここシイナラに入れたくないと言うと『それはシイナラの為にならないことだ、より良いシイナラを作る為には彼等の力が必要です』などと言ったのです! 彼等は! 私の郷ではなく、あれらの郷の方を選んだのです! 私が愛したシイナラよりも、あれらが作り出してしまったシイナラの方が良いと……! シイナラの神は私なのに……気づけばあの郷の神は私ではなくあれらになってしまった。私は、私は彼等にとって神ではなく生き物が住める状態を維持する為の装置になったのです。結局私はあれらを迎え入れ続けました。そうしなければシイナラの民の残り僅かな私に対する愛さえ消えてしまいそうな気がしたから」

 ミカガミの声には悲しみや苦しみがぐちゃぐちゃに混ざっていた。その声に含まれているそれらが、柚季と鳳月の胸をがんがんと叩く。胸が、その内にある心臓がそれにがくがくと揺さぶられるのを感じた。


「シイナラは更に形を変えていく、醜く歪んでいく……それなのにあれらを追い出すことは出来ない……シイナラの民を、シイナラを見捨ててどこかへ行くことも出来ない……愛を失って尚愛し続ける苦しみ……その愛さえ少しずつ消えていく……怖かった……私の中にあるこの愛さえもなくなったら、もう私には何も残らなくなる。私はそれらに対する恐怖や悲しみ、苦しみからどうにかして逃れたかった。そう思った私は、自身の内側にかつて愛した美しい郷を作り出しました。あれらに侵略される前のシイナラを。それがそう、ここですよ。私はこのシイナラを見て傷ついた心を癒しました。皆の中から失われていったシイナラは、私の内側には残っている。その美しいシイナラを見ると、私は幸福な気持ちでいっぱいになりました。まあそれで幸せな気持ちになればなるほど、現実を見た時余計みじめな思いをするのですが」

 そこまで聞けば、彼女がこの後どういう道を辿っていったかが容易に想像出来る。そして彼女は思った通りのことを話しだした。


「私は段々と自分の中に作り出したシイナラに夢中になっていきました。私の中にあるシイナラは美しく、そして民達は皆私を一番に愛してくれている。その世界のなんと居心地の良いことか。でも現実に目を向ければ、あれらに奪われた郷とあれらにさっさと乗り換えた郷の住人達が待ち受けている。私は現実に意識を戻す度、心と魂を抉られるような思いをしました。そして現実と夢を交互に見る内に、私が抱いていた悲しみや苦しみは怒りへと変わっていきました。郷を作り、長い間守り続け、共に愛し続けた私よりも、ぽっと出の、シイナラを発展させる代わりに穢した、得体のしれぬあれらの方を選んだ郷の人々が許せなかった。耐えがたい、酷い裏切りだと思いました。彼等は私を裏切り、あれらと共に私の郷を壊していった……私の美しかった郷を、あれらと一緒になってこの私から奪った! そんな人達をどうして守りたいと思えるでしょう、愛せるでしょう? 私は自身の内側にかつてのシイナラを作ることでどうにか自分の心を癒し、あの郷を守り続けようとしました。しかしそうしたことでかえって私の中に眠っていた感情は膨れ上がり、そして抑えきれず浮上した……幸福な時間を目の当たりにすればする程残酷な現実がつける傷は大きくなり、どうしてこうだったのにあんなことになったのかという怒りは大きくなった」

 そして彼女はどんどん自分の中に作り出した世界にのめりこんだ。幸福な気持ちに優しく抱かれながら、眠り続ける。少しずつ本当のシイナラには目を向けなくなり、郷を守ろうという気持ちも消えていく。


「向こうのシイナラへの愛が消える程、この郷を愛しく想う気持ちが強くなっていく。私は向こうのシイナラの民の声など聞かなくなっていきました。だってどうでも良くなっていたのですもの、彼等のことなど。どうして何も返してくれないどころか私の全てを奪う者達の為に、苦しい思いをしながら汚らしくなった郷を守らねばならないのでしょう? 悲しみや苦しみは怒りになり、そしてそれが膨らみ続け最後には無になりました。愛しさはおろか、悲しみも苦しみも感じなくなりました。私は彼等にもう関心を向けなくなりました。好きの反対は無関心、というのは本当でしたね。彼等など私には愛はおろか怒りや憎しみを向ける価値すらなくなってしまった……そして私はあの場を去りました。だってもう居る意味などないのですもの。それよりも私は穢れていない、私が愛して愛してこれから先も永遠に愛し続ける、この美しいシイナラをもっと多くの人に見てもらいたかった! 自分が愛するものを他の人達にも見てもらいたい……そう思うのは神も人も同じです」

 ミカガミはそうしてシイナラを去り、虚のシイナラを大勢の人間に広める為に層を飛び越えあちこちを回った。彼女は現実から目を逸らし、やがて現実を忘れていった。そして恐らく彼女に見捨てられた本物のシイナラは今はもう存在しない。


「ここは何と素晴らしい所でしょう! ここの民は私を裏切らない。誰もが私にとっての一番、誰にとっても私は一番! 嗚呼、変わらないことの何と素晴らしいことか……! 貴方達にはその素晴らしさは分からないでしょうねえ。そしてもうここが私にとって本物の、唯一の、絶対の、美しい永遠の郷! 私の幸福が、人生が、ここにある! 私という神だけが作り上げた郷だけがこれ程までに美しい!」

 誇らしげに、声高らかに。そして心から幸せそうに。その声を聞くと、胸がぎゅっと締めつけられて、苦しくて、そして気持ち悪い。確かに彼女は幸せなのだろう。自分を裏切らない、自分にとって都合の良い人達に囲まれ、自分が好きだった頃の景色広がる郷で日々を過ごせるのだから。そして恐らく現実のシイナラに住んでいた人を基に作られたのだろう者達もこの何もかも変わらない世界で生きていることに疑問を抱かず、そして幸福に暮らしている。


(でも……でも、本物のシイナラは。そしてそこで暮らしていた人達は)

 神に忘れられ、捨てられた彼等は。きっとそこにいた人達もミカガミのことを慕っていただろう。そんな神に捨てられた彼等は滅びゆく郷を前に何を思っただろうか。そもそもミカガミの言う通り、本当にシイナラの民の心は彼女から離れていたのだろうか。目の前にある鏡、その中にいるであろうミカガミの声からは狂気が滲み出ている。そんな彼女から語られたことは本当に全てが真実だろうか。そもそも今聞いた話は所詮彼女の主観に過ぎない。だから、実際はどうだったのかいまいち分からない。

 隣にいる鳳月も苦しげな表情を浮かべている。苦しみ、悲しみ、そして目の前にいる神に対する怒りも感じられた。


「……変わったことで大切なものを失うことはある。変わり、失った世界から目を逸らし逃げる気持ちも分かる。私だって逃げているようなものだ……でも、そうしたところで幸福などありはしない」

 そんな呟きはミカガミには届かない。


「さあさあお二人共、是非この美しい永遠の郷を見て回った感想を言ってくださいな。感想だけじゃなく、質問でも良いですよ。私は私の郷のことをもっと自慢したいし、語りたいし、教えたいし、聞きたいのですよ」

 そう言われても、二人共何も聞く気にはなれなかった。だから二人は顔を見合わせ、こくりと頷いて立ち上がった。一体どうしたのです、とミカガミが突然立ち上がった二人に面食らったような声を上げる。彼女は二人が沢山ここシイナラについて聞いたり、感想を言ったりしてくれるものだと至極当然の様に思っていたのだろう。


「私達はもう帰ります」


「そんな、もう?」


「ええ、もうです。申し訳ありません。……嗚呼、でも後一つだけ聞いておきましょうか。このシイナラは本当に何一つ変わることのないまま、美しい永遠を保っているのですか? 私にはとてもそうは思えないのですが」


「勿論ですとも。ここは何も変わっていませんよ。変わっていないからこそ美しいのです。私が愛した郷は、愛した姿のままであるからこそ価値があるのです。変わることは厭なことです。とても、とても、とても……だから今までも、これからもここはずっと変わることのない美しい郷です」


「そうですか、分かりました。それでは」

 鳳月は彼女を憐み、侮蔑し、そして罵る様な笑みを浮かべ、柚季と共に趣味の悪い扉へと歩いていく。ミカガミはそんな二人をもう少し話をしようと呼び止めたが、いいえもう十分ですとだけ言ってその扉を開け、そこから出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ