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桜町幻想奇譚  作者: 里芽
雛宴
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雛宴(3)


 家の人が気持ちよさそうに眠っている吉田家は、雛達で賑やか華やか。赤黄緑桃、顔の違う小さな花々で埋め尽くされた家の中はまさに万花の園。宴に身分の上下も何もなく、無礼講。女雛も三人官女も今はただの女で、男雛も五人囃子も仕丁も今はただの男。ぐちゃりぐちゃりと混ざって輪になって、女は喰らいながら只管喋り、男は飲みながら只管騒ぐ。雛宴は女子会、雛宴は飲み会。神聖な儀式でもあり、なんてことはないお祭り騒ぎ馬鹿騒ぎでもあり。

 初めて会った者同士でも、酒と食べ物とお喋りであっという間に仲良くなり、何十年来の友達のようになるから不思議なもので。


「本当に菊野おばばの作る料理は美味しいねえ。ああもう手が止まらないよう」

 と言ってひなあられをがっと掴んでは口に放り、掴んでは放りを繰り返しているのは高崎一子。固有の名前を持っていない限り、三人官女は一子、二子、三つ子(いちこ、にこ、みつこ)と呼ぶ。普段長柄を持っているのが一子、島台を持っているのが二子、提下(ひさげ)を持っているのが三つ子。五人囃子は太郎、次郎、三郎、四郎、五郎、右大臣左大臣は右近と左近、仕丁は一太、二太、三太。そこに名字をくっつけるのが基本だ。輪の中に同じ名字の者がいなければ単純に名字だけで呼ぶ場合もあるし、必ずそう呼ばなければいけないという決まりもない。


「菊野のおばあさまが褒められると、自分まで褒められたような気持ちになって嬉しくなりますよ。娘さんの紅葉さんも、孫の紗久羅さんも料理が上手なのですよ。一度あの二人の作るひなあられも食べてみたいものです」


「紗久羅の姫様のことは知っていますよ、私の家の姫様と仲が良かったですから。私が飾られている時、遊びに来ていましたよ。いつも元気で明るくて、気が強くって男の子みたいな話し方をする子ですね。彼女は今も元気にしていますか?」


「ええ、元気にしていますよ。彼女はいつも元気です。ふふ……彼女も幼い頃はそこまで気が強い子ではなかったのですよ。小学校に入ってからですかね、あんな風になったのは。気づけば菊野おばあさまとそっくりになって、お淑やかとか女性らしいという言葉とは縁遠い子になりました。でも私はそれでも構わないと思いますよ。女の子だからといって女の子らしく振る舞う必要はないですもの。他人にあんまり迷惑をかけすぎたり、苦しめたりするような人にならなければ、健やかに育ち日々を楽しく生きてくれればそれだけで。皆様の家の姫様方はどうです、今も元気でやっていますか」

 紗久羅は元気か、と尋ねた女雛――高山姫はええ元気ですよ、と頷く。


「私達の姫様もひと月前には酷い熱を出して大変だったようですが、今はもうすっかり元気です」

 はきはきとした声で答えたのは花田家の桃雛。それから家に住んでいる人達の近況が雛達の口から語られる。こういったことを語るのは、雛達の恒例行事の様なものだった。


「健太郎坊っちゃんの方は相も変わらず元気だよ。あんまり元気なものだからうるさくて敵わない。少し元気がない方が丁度いい位だ。妹の伸子姫さんは最近片思いしていた人に告白して、振られてしまってねえ……いつもは元気な娘だけれどそれからは少し元気がないね。健太郎坊ちゃんは坊ちゃんなりに妹を慰めようとしているのだけれど、只管うるさくて馬鹿ばかりやって……完全に逆効果」


「渡辺姫の家の姫様は想い実らなかったのですね。逆に私の家のゆりか姫は好きだった人と結ばれたようで、毎日幸せそうですよ。二日前など、お酒をしこたま飲んで酔った彼女に只管のろけ話を聞かされました。でも私それがちっとも嫌ではありませんでしたよ。彼女が私達を見て、私達に向かって話してくれて……何だか彼女と友達になれたようで、むしろ嬉しかった位です。彼女の幸せがこの先もずっと続いてくれればと心から祈ります」


「私のいる家に住んでいた真知子姫様、今頃何をしているかしらねえ? 結婚して遠くに行ってから、顔を見ていないよ。偶に旦那や産まれてまだ間もない娘と帰っては来ているようだけれど、その時あたし達はしまわれているからさ。嗚呼、またあの娘の顔を見てみたいものだ。あんな顔でもずっと見ていないと、見たくなるものだねえ」

 とお吸い物をずず、ずずり。すると彼女の隣に座っていた島田三つ子がため息をつく。どうしたのさ、と口の端からわずかに垂れた汁を拭いながら神田一子。


「ゆりか姫も、真知子姫も随分幸せな様子で結構なことじゃあないか。あたしの所の美香子姫は最近、娘と実家に帰った。結婚する時連れていったあたし達ひな人形も一緒に連れてね。なんでかって? 別れたのさ、旦那と。しかも原因は旦那の浮気! 以前美香子姫と娘さんがどかに泊りに行って家にいない時、泥棒女を家に呼んだこともあったっけねえ。あたし達が丁度飾られている頃だったよ、確かね。その時の様子だと、浮気歴は相当長いね。あたし達が普段からこうして喋れれば、そしてそれが人間達に聞こえればもっと早くに彼女に教えられたのに、残念だよ。しかもあの旦那、浮気がばれた時に逆切れしてね酷い言葉を美香子姫に浴びせてさ、全くこの手で張っ倒したくなったよ。こんな話、楽しい宴の場でしたくはなかったけれどねえ」

 まあ、と輪に居た雛達が驚愕と悲しみと憐れみの混ざった声をあげる。近況を話していると、こういった悲しい話もよく耳にするが何度聞いても慣れないものだし、他人事でも気分が沈む。美香子を家族のように思っているだろう三つ子は尚更辛かろう。


「もしかしてあちらでちらし寿司を食べている一子さんの元気が無いように見えるのは、その為ですか」


「ええ、そうですとも。あたし達ねえ、まだ小さかった頃の美香子姫にシールを貼られたことがあるんだよ。妹に悪戯の罪をなすりつけられてね、何度自分じゃないと言っても信じてもらえなくて……その腹いせにね。他の皆は子供のしたことだし、やってもないことをやったと言われて怒られた彼女が腹をたてて、傷つくのも無理はないとそこまで怒らなかったんだけれどね、あいつだけはかんかんに怒った。あいつのシールだけ上手く剥がれなくてね、痛い目に遭ったのさ。その時あいつは言ったのさ、美香子姫がいつかうんと不幸になればいいってね」

 そしてその呪いの言葉通り美香子は夫と離婚し、逆切れされ、心をうんと傷つけられた状態で娘と共に実家へ帰って来たのだ。


「あたしの呪った通り不幸になったざまあみろって口では言っているけれどね、本当は悲しくて苦しくて仕方が無いのさ。そして自分を責めているんだ、あたしが呪ったせいで美香子姫は不幸になったんだって。ふん、馬鹿だねえ! あたし達に人を不幸にする力なんてあるものかい」

 他の家の三人官女とくっちゃべっていた島田一子が三つ子をきっと睨む。しかしその目に力はない。威勢のいいことばかり言っているが、実の所一番の臆病者で心は硝子で出来ている女なのだ、と三つ子は肩をすくめた。雛達は美香子姫に新しい幸せが訪れることを祈る。

 赤い盃、満たす月光――否甘酒。小さな唇を寄せ、盃を傾ければ白濁の酒がすうっと流れて美しい着物を纏った体の内に入っていく。そうしながらあられ食べ、蛤のお吸い物をすすり、菜の花のおひたしのほろ苦い春の味を楽しむのだ。食べ物や酒を口に入れ呑みこんではお喋りし、また食べては喋る。

 そうしている間にも招かれた客が次々とやって来て、吉田夫妻に挨拶する。今も紋様入りの黒い縫腋袍着た男雛、桃色の唐衣美しい女雛が手を畳について挨拶をしていた。渡辺姫があれは確か高橋家の雛達だと教えてくれた。その二人の後ろにぴたっとついているのは、二羽の可愛らしいうさぎの夫婦。彼等のことは渡辺姫も知らないという。可愛らしい容姿と、滲み出る初々しさに零れる笑み。


「とても可愛らしいうさぎの方。あの赤い瞳、きっとつるつるとして輝いて赤い珊瑚の玉みたいに違いないですよ。あんなにかちこちになって、とても緊張している様子。初めての雛宴なのでしょうか」


「きっとそうよ。懐かしい、私達もきっと初めはあんなだったのでしょうね。今じゃああんな初々しい姿とは無縁。宴の場に馴染むまでに少し時間がかかって、それまでの間は体を小さくして石みたいになっていた時が懐かしい。他人の家ってのは異界みたいなもので、自分は不思議の世界に迷い込んでしまったのではなどと思いもしたっけね。周りにいるのは自分と同じような姿をした雛達だというのに、妖幽霊化け物、異界の住人に見えた」


「懐かしいねえ! あたしも初めての時は、正座をしてその膝の上に汗でびっしょりの拳を置いて背筋をぴーんと伸ばしていたねえ。誰かに話しかけられる度にびくっと体震わせて、声なんて笑っちゃうくらいどもっちまってねえ。それが今や家に着いて挨拶するなりあぐらかいて酒飲み飯食らい」

 がっはっは、と島田三つ子。他の雛達も大体同じだったようで、初めての雛宴の時自分達がどんな様子だったか語りだす。最初から少しも緊張しないでいられた雛などいなかった様子。と、懐かしい思い出を語る井上姫達に高橋姫が声をかけた。うさぎの姫様も彼女にぴたっとくっついて、まるで親子。高橋の君と、うさぎの男雛は男衆で構成されたグループの一つに声をかけ、すでにその輪の中に入っていた。


「渡辺姫、五年ぶりでしょうか。着物の梅花、ひらひら舞う扇の美しさもよく覚えております」


「私も貴方のことはよく覚えているわ。懐かしいわ、私貴方に百人一首でぼろ負けしたわね。ね、後で勝負しましょうね。私負けたままではいられないわ。といっても別に練習してきたわけではないし、五年の間に腕が上がったとはいえないけれど」

 是非勝負いたしましょう、今回も負けませんと高橋姫はふわり柔らかい笑みを浮かべた。それから井上姫達に挨拶をし、今度はうさぎのお雛様の番。彼女は完全に緊張していて、ふるふると震えている。今すぐにも抱きしめて大丈夫ですよと優しく耳元で囁いてあげたいと思える程。うさぎの雛は深々と頭を下げ、井上姫達の顔を真ん丸の目で見、また頭を下げる。


「あ、あの私は三つ葉市にございます及川家の雛でございます。このような宴の場は初めてで、とても緊張しております……あ、あの粗相の無いよう気をつけます」


「本当に可愛らしいお姫様だねえ。こんな姫様でも数年すれば島田三つ子のように来るなりあぐらをかいて、堂々と飯を食ったり酒を飲んだりするようになるのかね」


「どんなに慣れてもあぐらをかくようにはならないだろうさ、こんな可愛らしいうさぎの姫様がそんなことするものかい。ねえ、あんた?」

 及川姫は電流でも流れたかのようにびくっとし、それから困ったような顔で「あの、あの」と何度も続ける。こりゃまだまともな会話は出来そうにないね、と三つ子はため息。


「うちの小桃には劣るけれど本当に可愛らしい方。ところで及川姫、貴方の家には柚季という姫様がいらっしゃいますか?」


「え、ええ……はい」


「やっぱり。きっと私の家の紗久羅姫様のお友達ですね、貴方の家の姫様は。直接お顔を見たことはないのですが、紗久羅の姫様と柚季の姫様の楽しそうな喋り声を聞いたことがあります。私達もきっと仲良くしましょうね」

 及川姫はは、はいとこくこく何度も頷いた。そして井上姫達も短い自己紹介をし、それから二人を加えて宴の続き。及川姫も始めの内はとても緊張していて、高橋姫と井上姫とだけまともに喋っていたが段々と宴の空気に馴染んでいき、朗らかな笑顔を浮かべるようになりまともな受け答えも出来るようになってきたし、控えめながら冗談を言う余裕も生まれてきた。井上姫が持ってきた菊野特製の料理が彼女の緊張を和らげる一因なったかもしれない。彼女は頬を桜色に染め、珊瑚の瞳をきらきらと輝かせながら小さな口で美味しそうにひなあられを頬張る。雛達は彼女を妹や娘の様に愛おしく思い、大変可愛がった。

 押入れ等にしまわれている間家族の会話やTVなどで得た情報とか、自分が今まで会った中で印象的だったひな人形についてとか、そのようなことを話していると一人の三人官女が部屋に入ってきて声を張り上げた。


「これより二階にあるうさぎの部屋にて、春うらら様によるコンサアトが開かれます。各自食事やお酒をお持ちの上ふるってご参加ください。うさぎの部屋というのは、入口の戸にうさぎの形の板が飾られている部屋のことです」


「春うらら様? コンサアト?」

 及川姫が首を傾げると高橋姫が「宮下姫もいらしていたのですね」と笑う。三人官女の言葉を聞いた途端、雛達が次々と立ち上がり行ってみようと二階へ向かった。その多くは男雛で。

 雛達がぞろぞろと二階へ向かう様子を眺めながら、意味が分からない様子の及川姫に高橋姫がハルウララのコンサアトのことを話してくれた。


「春うらら様というのは、三つ葉市にある宮下家の姫様のことです。宮下姫は人の世にあるアイドルという職業の真似事をしていらっしゃいます。春うらら、というのは芸名と呼ばれるもののつもりだそうですよ。彼女は家に住んでいる方の影響で現代的な歌や舞が好きになったそうで、七楽人の演奏に合わせて歌い踊るのです。あれはあれで趣があり、面白いですよ」

 

「宮下姫のことは幾度か聞いたことがあります。実際に彼女のコンサアトを見たことは無いのですが……少し、見てこようかしら」

 と井上姫が呟くと、高橋姫の話を聞いて興味を抱いたらしい及川姫が「私も行ってみたい」と言い他のメンバーもそれに続き、結局全員で二階へ行くことに決めた。雛達がそれぞれ行う『催し』に参加するのも、雛宴の楽しみ方の一つ。


 二階にあるうさぎのプレートがかかった部屋をすり抜ければ、雛、雛、雛。床も棚上も宙も鮮やかな花乱れ、彼等が手にもつひなあられの甘い香りを花の香りと錯覚する程。雛のいない場所を探すことの方が困難であった。すでに家を出遠くの街に住んでいる長女の部屋らしく、人は誰もおらず置いてあるものも少ない。部屋の最奥にあるベッドも布団はどこかに片付けられているらしく、もし彼に生命が宿っていたなら寒い寒いと震えていることだろう。そのベッドの上には七楽人。三角に折られた、見様によってはイカに見えないでもない侍烏帽子を被った少年達で、男雛や右大臣左大臣などに比べるとあどけなさの残る顔だち、おかっぱ頭の愛らしい。それぞれ手に持っているのは琴、横笛、縦笛、火焔太鼓、笙、琵琶、羯鼓(かっこ)

 そして彼等の前方に立つのがこの舞台の主役である女雛。桃色の唐衣にはそれより薄い色した桜の花が幾つも咲き、手には吉祥絵の美しい檜扇。ベッドを飾るのは右近の橘左近の桜。照らすは雪洞の淡い桜色の光。そのベッドを降りてすぐの所には宮下家の男雛や三人官女、右大臣左大臣に仕丁がずらり。彼等は大声を張り上げ、部屋を埋め尽くす雛達にコンサートの楽しみ方をレクチャーするのだった。


 やがて始まった宮下姫――春うららによるコンサート。七楽人がそれぞれの持つ楽器で激しく、本来ならまずその楽器で奏でることはないだろう旋律が部屋を満たした。しかしその音よりも激しく大きいのは、歓声。そのあまりの声の大きさに耳が死ぬどころか、体がばらばらになったような心地さえした。

 宮下姫は流行りのアイドルソングを歌いながら踊っている。その歌は井上姫も押入れの中で聞いた覚えがあった。十二単だというのに彼女の動きは実に軽やかで、身に着けているもの何もかもは霞で作られているのではないかと思える程で。実際今の彼女達の体も着物も質量と呼ばれるものなど無いのだから、その気になればなんでも出来るのだ。

 コンサートの後聞いた話だが、宮下姫がこのようなことをやり始めたのは宮下家長男の影響であるらしい。彼はアイドルオタクで、同じライブDVDを何度も見返していた。押入れの中で繰り返し聞く内雛達はすっかり歌を覚えてしまったらしい。曲自体も大変気に入り「自分もやってみたい」と思うようになり、雛宴の際皆の前で披露するようになった。歌の練習も、人形という体の中にいながらよくしていたそうな。踊りは普段押入れの中にいるので見られず、見られるのは居間に飾られている時だけだし、練習も出来ないから拙いものでほぼ自己流だが、上手い下手など雛達にとってはどうでもよく、楽しければ振りつけなど何だって良いのだ。歌詞だって本来のものとは違い、特に英語の部分など滅茶苦茶だが細かいことなど誰も気にしない。間違いは多いながらも、年々クオリティは上がっている様子。


 はい、はい、はいはいはい!

 春うららこと宮下姫の歌と踊りに合わせて、皆で仲良く天へ突きあげた右手を振り、笏や檜扇はうちわやタオル、サイリウムの様に振られ波の様。

 始めは遠慮がちだった井上姫達も、場の極限まで熱された空気に呑まれてぶんぶんと思いっきり手を振ったり回したり、コールをしたり飛び跳ねたりとノリノリになっていった。楽の音、歌声、雛、全ては光となり花となり、咲き乱れ、満開。誰も彼もが銀色の月の様な汗を流し、楽しいという気持ちが生じさせた熱を体外へ放出し、そして正の感情は家を浄化していくのだった。


「う・ら・ら、う・ら・ら、は・る・う・ら・ら!」

 曲の合間にアイドルとしての姫の名を叫んだ井上姫と及川姫は顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべた。井上姫はこのコンサートを通じて及川姫、いやこの部屋にいる全ての雛との心の距離が縮まったことを感じるのだった。


 勿論全員がこの部屋に来ているわけではない。夫婦が眠る部屋を占領している一つのグループ――女六人――は食べ比べに夢中。折り紙で作られた前田二子はクレヨンで描かれた大きな口をいつも開いており、蛤の貝殻に布と和紙を貼りつけて作られた蛤雛は岡部姫、青地に檜扇文の華やかで美しい。西城姫は硝子製。丸っこい体を飾るのは赤と白の斜めの縞模様で、線の太さは不規則。顔は透明で胸にある扇は黄色。彼女と共にいる西城一子も勿論硝子製で体の色は上部は白くそこから徐々に赤くなっていき、そのグラデーションが美しい。原三つ子はサバトラ猫、ぷっくりころころしていてまるで卵。白の小袖に赤い袴、花咲き乱れる赤い打掛。この中では一番長生きしている岸本姫はこけし雛。小さな丸い頭が、大きく大福の様にふっくらしている体の上に乗っていて、いつもにこにこ笑っている。


 彼女達はコンサートにも貝合わせにも百人一首にも目もくれず、ただただ色々な食べ物を食べては感想を言い合っている。彼女達はそれぞれのひな人形に関する情報は殆どもたないが、どの家のどんな料理が美味しくて、どの家の料理は不味いだとか、そういう料理に関する情報だけは豊富にあった。


 この家に招かれた雛達が持参した食べ物でこの部屋はびっしり、足の踏み場など殆ど無い。ひなあられ、菱餅、蛤のお吸い物、鯛の塩焼き、ちらし寿司、菜の花のおひたしといった定番もの、母親がひな祭りのご馳走にと作った子供の好物、雛宴の為に人間が供えた紙『供え紙』に赤文字で書かれた通りの料理――ミートソーススパゲッティにハンバーグ、ステーキ、お寿司、グラタン、カレーライス、パフェ、ドーナツ、ケーキ……。近頃人間達は単純に自分の好物を書いてお供えすることが多い、そのお陰で様々な種類の食べ物が食べられるようになったと数々の料理を見て嬉しそうに言う六人。

 六人仲良くちらし寿司を頬張り、その瞬間目をかっと見開いて「美味、美味、真に美味 !」と感嘆の声。


「矢張り井上様の料理は美味しいわね、他の家とは格が違う! 口の悪い、短気で勝ち気な老婆が作ったものとは到底思えない位、優しい味がするわ。これを食べるだけで疲れも嫌なことも忘れてしまうでしょうね、癒し系の味よ癒し系の。どんな薬よりも、この料理は効くに違いないでしょう」

 前田二子の言葉に、西城一子が頷いた。


「優しく庶民的な味を突き詰めると、こういう味になるのでございますわねえ、きっと。それとは対極の上品で高級感のある味といえば、舞花市の梶浦家の料理でございますわね。確かちょっとお高い割烹店をやっていらっしゃるのですわよねえ。私は梶浦家の味の方が好きですけれど、でも井上家の料理も矢張り美味。嗚呼、娘さん達が羨ましい。これ程美味しい料理を毎日食べられるのですものねえ!」

 西城姫はそれに相槌を打ちながら、あらゆる家の蛤のお吸い物を飲み比べている。


「これは少し塩辛い、これは蛤の下処理がなっていない……これは少し薄すぎ、ああこれはなかなかに美味! こちらは味薄いを通り越して無味、水でも飲んでいるみたい。一体何をどうすればこうなるのか不思議でならないわ。確か崎本家の奥さんが作った物ね……まあ、これでも良くなった方か。数年前に彼女が作ったらしいちらし寿司なんて、食べられた物じゃなかった。あた、こちらの鞠麩はとても鮮やかで綺麗ね。種類も沢山あって、見ていて楽しい。でもこれ少し入れすぎじゃあないかしら。あら嫌だ、こちらは髪の毛が入っているじゃないの。きっとお供えされた元のものに入っていたのね」

 そう言いながらお椀をくるくるとせわしなく入れ替えている。どうやら蛤のお吸い物を自分が美味しかったと思った順に並べ替えているらしい。なお菊野が作ったものは『殿堂入り』扱いとなっている様子。ほほほ、と笑いながら岸本姫も同じように蛤のお吸い物ランキングを作っていたが、西城姫のそれとはまた違う並び順。こんな風に二人はあらゆる食べ物のランキングを作り、並び終えたらお互いのランキングを見て感想を言い合い遊んでいる。

 原三つ子は甘辛ダレの手羽先揚げをむしゃむしゃと。醤油とみりんと砂糖と生姜で味付けされ、からっと揚がって食欲をそそる茶色に白ゴマがぱぱっとかかっている。前田二子はこれを「酒のつまみにはいいが、そのままだとちょっと濃すぎる」と評していたが、濃い味付けが大好きな三つ子はご飯もお酒も供にせず、そのままばくばくと食べていた。


「あたくしは矢張り供え紙の料理が一番。だってうんと不味いってことがないから安心して食べられるのですもの」


「心のこもった手料理の方が、供え紙の料理より美味しいですわあ。供え紙のも美味しいけれど、何か物足りないのですわあ」


「そうよそうよ、一子さんの言う通りよ。あんたもたまには食べてみれば良いのよ、ここには少なくともあんたの所の奥さんが作った、地獄と悪夢を材料にして作ったような料理なんて無いわよ」


「一度あの恐ろしいものを口にしたら、二度と手料理など口に入れられません。あたくしはこうして供え紙の料理だけ、食べているのです。嗚呼このドーナツ美味しいわ、見た目も鮮やかで見ているだけでわくわくしてしまうわ。ちらし寿司と同じように、色々な種類のドーナツが並ぶ箱も宝石箱の様にきらきらして。甘い香りの宝石箱は、ただの宝石箱より良いもの」

 と蛤雛の岡部姫はごろんと寝転がり(というより構造上常時この体勢)、天井を見つめながらカラースプレーチョコのまぶされたストロベリーチョコドーナツをもぐもぐしている。彼女は菊野の料理さえ口にしない。そして食べ終えると「どりゃあ!」という声と共に体を起こし、ぷるぷると震えながらぴょんぴょん飛び跳ね、デミグラスソースのかかったハンバーグを手に取ると元の場所に戻ってきて再びごろん。ぜえぜえ言いながら、むしゃむしゃと。ソースが着物にかかっても気にもとめず。その様子を気持ち悪いものでも見る目で原三つ子。


「相変わらず移動する君の姿は気味が悪いなあ。鬼気迫る表情だし、起きあがる時の声だって獣の咆哮かと思う位だ」


「その位の力を入れないとどうにもならないのよ。ころころ寝っころがりはまぐり」

 六人はそんな風にお喋りしているか、食べているかのどちらかだった。


 屋根の上では男衆が酒盛り。飲んでいるのは殆どが甘酒だったが、それで酔っ払ってしまうのがお雛達。妻や知り合いの女雛から借りた檜扇を使って裸踊りを始める島田の君、くだらない洒落を言ってはぎゃははははと品性の欠片もない笑い声をあげる男達、笑いながらダッシュして屋根から落ちていった原右近、彼が発した笑い声だか悲鳴だか分からぬものを聞いてげらげら笑いながら「私も落ちる!」と言って屋根から飛び降りる原右近、普段は大変気が強く怒りっぽいのに酒が入ると泣き上戸になる岸本の君は、近頃主が自分達を押入れから出してくれないことを泣きながらぼやいている。

 酔っ払い共がいるのは屋根の上だけではない。台所、居間、階段、和室……どこへ行っても酔っ払いだらけ。時計を雛と勘違いして只管話しかけている者、洋式トイレにどぼんと飛び込む者、酒がもう水みたいになっている者、電気の紐にぶら下がり奇声を発している者、三人官女や女雛の尻を下品な笑い声浮かべながら追い掛け回している者。


 一方一階にある、祖父母の部屋。こちらには和室に飾りきれなかった手毬があるのだが、美しいそれらは今精神年齢が小中学生になっている男衆のおもちゃになっていた。一言でいえば、毬のぶつけ合い。ドッジボールのように敵も味方も、勝ち負けも、ルールもない。ただ滅茶苦茶に鞠をぶつけ合っているだけである。

 畳の上に敷かれている布団に老爺と老婆が寝ている。彼等は今雛達にとって築山となり、彼等の上を走り回ったり、飛んだり跳ねたり、手毬を避ける為の盾にしたり。二人はまさかひな人形に踏みつけられているとも思いもしてないだろう。布団の中に隠れたり、電気のかさの上から投げつけたり、棚の上や中を駆けまわり、そこから飛び降りて畳に着地したり、箪笥の中に潜みタイミングを見計らって飛び出したり、あちらでぎゃあぎゃあ、こちらでぎゃあぎゃあ。当たる度死んだふりをする者あれば、他の者を悪霊自身を陰陽師と設定し悪霊祓いと称して手毬を投げつけている者の様にごっこ遊びに興じている者もある。

 暗がりの中、舞い、飛び、跳ね、打つ麻の葉、菊、鶴、朝顔、白梅紅梅、桜、紅葉、桔梗、美しの幾何学模様の数々。赤青黄緑紫白黒茶金紫、鞠の一つ一つが、万花の園の様に色鮮やか、彩。鮮やかな毬が暗闇に、夢幻の灯りに。これがふわり、ふわりと優しく舞うなら鮮やかな蝶と思うが、これだけ激しいと七色のスズメバチが暴れ回っている様にしか見えず残念でもある。手毬観賞を楽しんでいた小桃は逃げるように部屋を出、あんな風にあの美しい毬を扱うなど酷い話ですと、おしゃべりに花咲かせていた井上姫に飛びつきおいおいと泣く。


 台所にある冷蔵庫の中には宮部の右近と左近。どうしてそのような所にいるかといえば、彼等は酷く仲が悪くすぐ喧嘩になる。今日も些細なことで低レベルな喧嘩に発展し、腹に据えかねた宮部姫が「頭を冷やしなさい」と言ってこの中に入れたのだった。別に出ようと思えば簡単に出られるが、姫の命令だから出るわけにもいかない。しかしそのような所に入れたところで、頭は冷えないしむしろ二人きりになって誰も止める者もいなくなったので、喧嘩はますます激しくなるばかり。冷蔵庫から出るな、という言葉は律儀に聞くが喧嘩をするなという言葉は聞かぬ二人の小学生の喧嘩。


「貴様のせいで私はこのような所へ入れられたのだぞ、どうしてくれる!」

 と宮部右近が卵(正確にいうと、卵から取り出した実体のないもの。今の雛達と同じ状態のもので、サイズも彼等の手に収まる位小さくなっている)をぶつければ、橙がかった黄身と透明な白身で身も衣も汚れた宮部左近が、ふざけるなとコーラの蓋を開けてそれを右近めがけてぶちまける。


「何を、それはこちらの台詞である! 我が姫に怒られたのは貴様のせいである! 貴様など間違えて宮部家の者にゴミ箱に捨てられれば良いのだ! そうすればそのまぬけ面を二度と見ないで済む!」

 コーラまみれになった右近はミネラルウォーターで体を綺麗にすると、おお寒い寒い凍りそうじゃといいながら左近の蹴りをジャンプして避け、上の段に置かれていた豆腐を投げた。パックに入った豆腐の角が左近に直撃する。豆腐の角に頭ぶつけて死んじまいな、いやそうはならない。おのれ右近許さないのである、と左近はすぐ近くにあった納豆のパックを手に持ち、ぴょんぴょんと最上段まで跳ぶと、逃げる右近に納豆の雨を降らした。


「こっちとて、貴様を許したことなど唯の一度もないわ。貴様は常に許されぬのだ!」


「ええい、今度は何を投げてきた! 手裏剣か、いやきゅうりの浅漬けか。これは好物ありがたい」


「人が投げたものを食べるなど、行儀の悪い意地汚い汚らわしい! こんな男が左大臣など……悲しいことだ」


「食べ物を投げることは良いというのか、食べ物を粗末にするなど家畜でもやらないのである!」


「物を投げているのはお前も同じではないか、自分のことは棚に上げて!」


「なにおう!」

 冷蔵庫の中を乱舞するマヨネーズ、ケチャップ、ヨーグルト、お味噌。さてどうなったろうと様子を見にきた宮部姫は冷蔵庫の中のがたがたという音と、低レベルな口げんかに「矢張り駄目でしたか」とため息。


 二階にある次女の部屋では、百人一首や坊主めくりによる勝負を楽しんでいる者達の姿がある。坊主をめくって嘆く泉右近を笑う原姫、めくったのは坊主。人を呪わば穴二つ、人を笑わば坊主二人。彼等と一緒に坊主めくりをしている根谷姫は、どこか浮かない様子。彼女達根谷家の雛は、最近近くにある家に引き取られた。その家の人達も自分達のことを大切にしてくれたが、それでも恋しい故郷の家。自分達を根谷家の娘が他の人に引き渡したことがショックで、何を食べても、お喋りに混ざっても、こうして遊んでいてもずっと憂い顔。

 ばらばらに並べられた百人一首の札をぐるりと囲む雛達。上の句を読む西城の君の声の低く、そしてよく響くこと。歌を歌うかのように読み、それを聞けば誰もが頭に歌の作り出す世界が浮かぶ。あああった、あら間違えた、あっとられた悔しいと、わいわいしながら気楽にやっている。ばん、ばん、と札に手をつく雛達。その白い手は月光の様に美しく、そして優しく輝いて。

 あちらでは貝合わせ、雅。

 

 楽しい宴の時間だが、永遠に続くわけではない。雛達は朝の訪れが近づいてきていることを感じ取っていた。甘酒を沢山飲んでふわふわしていた及川姫(今の貴方はいちごマシュマロみたいね、と井上姫は赤らんだ彼女の顔を見て笑っていた)も、自分達が何となく後少しで帰らなければいけないということは察していた。


「寂しいことです……朝が訪れても、ずっとこうしていたい。最初はとても緊張していて、今すぐ逃げ出してしまいたいような気持ちでいたのに……僅かな時間でこれほど心というものは変わるものですね」

 そうですね、と頷いたのは高橋姫。彼女は自分が連れてきた及川姫が、終わりを惜しむ位宴の時間を楽しいと思ってくれていることを嬉しいと思った。連れてきて「来なければ良かった」と言われたら悲しいし、自分がちゃんとフォローしてあげなかったせいだと自分を責めていたことだろう。

 

 一人、また一人と雛達が帰っていく。あれだけ騒がしく、賑やかで、鮮やかな花咲き乱れていた家は少しずつ静かになっていった。家の前に置かれている牛車の数も、皆が持参した料理や百人一首セットや貝桶もなくなっていく。そうして少しずつひな人形の宴の痕跡が消えていく。どうせ残っていても、消えていても、普通の人間にはまず見えないものだけれど。

 人間の時間が訪れ、ひな人形の時間はもう終わる。とうとう高橋夫妻と及川夫妻も帰る時間となった。まずは二階の廊下で競争をしていた吉田の君に挨拶し、次に一階で坊主めくりをしていた吉田姫に別れを告げる。


「及川の君、及川姫。初めての宴はどうでしたか?」


「はい、とても楽しかったです。私今から来年の雛宴が楽しみな位です。楽しいですね、こうして多くの人と語らうのは。あまり楽しくて、心も体もぽかぽかふわふわしています」


「それは酒のせいもあるだろうね、及川姫。全く君ったらそんなになるまで飲んでしまって……」


「かくいうあなたも顔が赤い。私達夫婦そおろって真っ赤、林檎の夫婦ね」

 そう言って微笑みあう及川夫妻は、本当に幸せそうだ。及川夫妻は高橋夫妻と共に牛車に乗り、そして柚季が寝ているだろう家へと帰って行った。そしてそれに続くようにして井上夫妻も沢山の人に美味しい料理をありがとうと礼を言われながら帰っていく。


 帰りながら彼等は今日の雛宴の思い出を語ったり、来年の宴に早くも思いをはせたりするのだ。小桃は井上夫妻に自分が見た素晴らしいお道具や手毬のことを延々と話し、余程興奮しているのかお酒を飲んでもいないのに頬は赤く。あちこちで見かける酔っ払いふらふら行列。げらげら笑い、踊りながら行進している行列もある。五人囃子の笛太鼓、実に陽気で阿呆な旋律が響き渡った。

 三人は家に辿り着くとまずは貝桶や重箱などの道具を戻し、そして井上姫と井上の君は小桃にせがまれて彼女を優しく抱きしめた。これから一年はこうして抱きしめることも、触れることも出来なくなるから。ただ、話すことは出来る。だからうんと寂しいことはない。

 最後に三人はひなのかみにお礼を言い、来年もよろしくお願いいたしますと言ってから自分の体の中にすうっと入っていく。一方及川夫妻もお礼を言って別れた高橋夫妻から言われたようにひなのかみに礼を言い、来年もよろしくお願いしますと言ってからすうっと体の中に入っていく。こうしてひな達は本体の中に戻っていって、雛宴は終わる。

 ちなみに今年も他の家の牛車に間違って乗って帰ってしまった者、同じ家に飾られている別の者の体に入ってしまった者(一度入ると出られなくなってしまうのだ)が続出。宮部右近と左近は喧嘩した罰として、互いの体に入ることを命じられた。来年の雛宴までには元の体に戻るとはいえ、二人にとっては最大級の罰である。


 こうして終わった今年の雛宴。そしてその宴の力で、悪いものが取り除かれて少し綺麗になった家々、土地。それも本当に気休め程度のものだけれど、気休めでもないよりはましである。

 朝が来て、起きた人々は供え紙を処分したりひな人形を片付けたりする。その中に本当に雛宴は開かれているのだと信じている人はどれ程いるだろうか。ひな人形達が自分達の家で大騒ぎしていた事実を知っている人は。

 柚季が朝起きてみると、可愛いうさぎの夫婦雛の頬が仄かに赤くなっていた。それを見ると夜見たものは幻でも夢でもなかったことを感じさせられる。柚季はやっぱり怪談よ、こんなものと溜息をついたが幸せそうに微笑んでいる夫婦雛を見ていたら、自然と笑みが零れた。


「……まあ、いいか。楽しんだならそれで。来年も楽しめるといいわね」

 そう言って、柚季は二人を押入れにしまったのだった。

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