表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜町幻想奇譚  作者: 里芽
故郷は幻の二月の淵に
305/360

故郷は幻の二月の淵に(4)


「ういい、暑い暑い。アイスキャンデーだけじゃあ俺の中で暴れまくっている暑さパワーは静まらないなあ!」


「何、その暑さパワーって。まあ確かに暑いけれど……でも向こうよりはやっぱりましかな」


「そうだけれどよう、こっちはエアコンとかないからきついぜ。電気とかはあるんだから、作れそうなんだけれどなあ、頑張れば!」

 小豆坂という、その名と同じ色の坂を下る颯馬は手をぱたぱたさせながら、オレンジのアイスキャンデーを齧る。建物と建物を繋ぐ紐に吊るされた紙風船が、視線を頭上へやる颯馬の目に映った。夜になるとこれらは皆橙色の灯りを放つ。真っ赤な提灯が吊り下げられているところもあれば、ビー玉を思わせる色や模様のものや手毬の提灯等が常時吊り下げられている通りもあり、それらが夜また別の顔を見せるから散歩は朝しても夜しても楽しい。

 

「幻の二月の淵の国だってのに、四季はちゃんとあるんだもんなあ!」


「でもその名前の通り、ずっと二月の気候ってのも辛くない?」


「確かにくそ辛い……向こう程酷くないけれどよう、でも、暑いのは嫌だ、耐えられねえ!」

 暑い暑い言っていると余計熱くなるよ、という陽太の言葉にそれもそうだと頷くが、その直後暑い暑いと呟くものだから、始末に負えない。この国には夏もあるし、梅雨もあった。六月も二人は和傘差しつつ幻淵の色々な場所を歩き回ったし、あんまり雨が強い日は本を読んだり、気が向いた時や好きな講義があった時に行く学校に足を運んだりした。また、半ば頃には『雨渡り』という祭りがあった。これは毎年何故か必ず雨が降る日、指名された千人の男女(特別な理由が無い限り、拒否することは出来ないそうだ)が笛や太鼓の音に合わせて、狐や翁の面を被り手に吊るし飾りのついた棒やら、色とりどりの造花を集めて作られた球体と鈴のついた棒やら、(まとい)に似たものやら、兎に角そういったものを突きながら決まったコースを歩き、最後辿り着いた広場で踊るというものだ。雨の中でやる上、やる側も見る側も、傘や合羽等で体を雨から守ってはいけないという決まりになっている為、皆等しくずぶ濡れになる。陽太と颯馬、理子それから草十郎は今回やる側に指名され、練習を積み重ね、そして激しい雨の中大声で歌いながら歩いた。数々の坂や石段を下り、水を含み段々と重くなっていく飾りや衣装に辟易しながらもどうにかやり終えた。次の日颯馬だけが熱を出し、「よりにもよって風邪をひきそうにない人間が……」意外な展開に呆然とし、馬鹿は風邪ひかないというのは矢張り迷信なのだ、と改めて思ったのがもう一か月位前のこと。

 閏の国の人々は、日本人に負けず劣らずお祭り好きだ。雨渡りに続き、今月末にもまた別の祭が控えている。二人が向こうに比べると大分ましながらも、アイスキャンディー齧りながらぼやくには十分すぎる暑さの中を歩いているのも、その祭りの準備の為。


 陽太の目が、ある店を捉える。日本の城と洋館を混ぜたような建物で、東風と西風の雑貨を取り揃えている店だ。店の前には笠を被った陶製の黒猫が立っていて、その首に『ひかりや』と書かれた木製の可愛らしい看板を掲げている。そしてこちらから見て左側に幟があり、そこには『星寄せ飾り好評発売中』という文字があり、それなりに広い店内はそれを求めてやって来た客で溢れかえっている。あまりの客数に入場が制限されているらしく、新たにやって来た人には整理券らしきものが配られていた。そういうことも今の時期のひかりやでは珍しいことではないようだ。


「うへえ、本当にこの店人気なんだな。芋洗い状態とはまさにこのことを言うんだなあ! 商品を見て飾り作りの参考に出来ればと思ったんだが……こりゃあ無理そうだ。整理券貰って後で来るってのも手だけれど、のんびり商品を見る余裕はなさそうだし、やめておくか?」


「そうだね……正直、あの人ごみの中に突っ込んでいきたくはない。草十郎さんの言った通り、適当な気持ちで行っちゃいけないね」


「少し高いがデザインも良くて、種類も豊富でしかも作りはどれも丁寧だって皆口を揃えて言う位だからな。他の州からわざわざここの店に星寄せ飾りを買いに来る人もいるみたいだし。しかしこんなくそ暑い時にあんな芋洗い状態の中に入ったり、遠路はるばるやって来たりしてまで買うなんて……本当、皆の星寄せの飾りつけに対する情熱すごいよなあ。誰も彼も理想の星寄せを完成させる為なら労力惜しみませんって感じだもん。まあ気持ちは分かるけれどな、俺もこういうことやる時って妥協したくない。やるからには全力でやるぜ」

 と言って颯馬はアイスキャンデー最後の一欠けらを口に入れた。颯馬の瞳の中で、星と見紛うような火の粉を撒き散らす、赤い炎が暴れ回っている。その炎が帯びるすさまじい熱は、彼ほど全力投球で挑もうとしてはいなかった陽太と理子をも熱くし、二人の中にあった炎の勢いを強めた。今はもう幻淵、いや全国一の星寄せを完成させようと意気込んでいる位だ。


 星寄せ、というのは『満星(みつぼし)祭り』という祭りが開催される四日間飾るもの。見た目はクリスマスツリーに似ているが、意味合いは七夕の飾りに近いかもしれない。基本的には家の中(広い通りに面している家や、庭のある家なら外)や、店内、広い通りに飾られるが、幻淵など一部の州には星の森なる場所があり(幻淵には三か所存在する)、抽選で当たればそこにある木を飾りつけ出来る。そして草薙庵は今年めでたく当選したのだった。

 飾りは雑貨屋等様々な店で売られている。洋食屋や八百屋、靴屋などそういったものと縁のない店でも店主が趣味で作ったものが売られている場合があるし、あちこちに星寄せ飾りを売る露店も現れる。勿論自分の手で作る場合も多く、陽太達の場合は後者であった。


「それにしても本当意外だよね……考えれば考える程意外すぎる。まさか君の手先があんなに器用だったなんて……工作とか絵とか手芸が趣味で、しかも得意で……未だ信じられない。君っていかにもちまちましたことが大嫌いで、縫い物とか編み物なんてやろうものなら三分で放っちゃいそうなのに。最後までやりきったとしても、ものすごくいい加減なものを作りそうなイメージしかないのに」


「何を、失礼な! ……と言いたいところだが、まあそう思うわな。俺も歳の離れた妹の為に可愛いぬいぐるみとか作りながら、時々これをやっているのは本当に自分なのか? って気持ちになる位だ。正直、何かを作っている時の俺は何かにとり憑かれているとしか思えん」


「案外前世が手芸とか工芸とかそういうものに造詣の深い人だったのかもね」

 そうなのかもしれないな、と颯馬は笑った。どこもかしこもすっかりお祭りモードで、誰もが浮足立っている。陽太も颯馬も例外ではなく、今ならうきうきのあまり空も飛べそうな気分だった。

 二人はまず手芸店に入り、材料を買った。どんな飾りをどれ位作るかはもうすでに決めてあり、それに適した材質、色のものを選んだ。一応陽太もどの飾りをどれで作るか考えたが、大体は颯馬に任せた。材料選びのセンスも、陽太より彼の方がずっと優れていたのだ。それから二人は硝子屋へ足を運ぶ。そこには硝子細工だけではなく、硝子の板も売っていた。星寄せの飾りは折り紙や厚紙を折ったものもあれば布と綿で作るものもあるし、硝子を加工して作るものもある。颯馬は硝子の板を使ってステンドグラス風の飾りを作る気でいるらしく、こうして専門店を訪れたのだ。硝子なんて扱ったことがあるの、と聞いたら中学生の時に何度かあるとさらっと言ってのけた。シルバーアクセサリーも作ったことがあり、大抵のことは一度はやったかもしれないと本人談。


「……一口に硝子と言っても、色々あるんだね」


「色も模様も手触りも全然違うからな、作るやつに適したのを選ばないと。作る時もわくわくするけれど、正直こうして材料選びしている時が一番幸せかもしれん。作っている時はさ、もう作業に集中しちゃっていて楽しいとかつまらないとか逆にあまり考えられないんだよな。俺だけかもしれないけれど」


「何となく気持ちは分かるかもしれない。旅行にしても工作にしても、色々なことを決めたり準備をしたりしている時が一番わくわくするかも。あ、この硝子の色良いんじゃない?」

 棚に収納されている硝子の板を取り出し、触ったり光にかざしたりしては戻し、取り出しては確認してしまい、を繰り返す陽太の心は弾んでいた。颯馬もいつも以上に表情が生き生きしていて、瞳の中、そして体の中で暴れる炎がますますその勢いを増している。


「色はいいけれど、材質がちょっとこれじゃない感がする。同じ色でもう少しざらっとしているのがあればいいな……あ、これなんか良い感じ」

 途方もない種類の中から作るものに適した硝子を選び、その板に書かれている番号を記入した紙を店員に渡し、代金を支払う。商品は後日草薙庵に宅配してもらうことにし、硝子屋を後にした。その後も好奇心旺盛な性格ゆえに寄り道を何度も繰り返しつつ材料を調達し、常闇通りにある鶏の丸焼き専門店で遅い昼食をとり、色々な店で販売されている星寄せ飾りを見、最後に若星子(わかほしご)というものに選ばれ、満星祭りで披露する舞や詩の暗誦等の練習をしている理子の様子を見に行った。練習している姿は決まりにより見ることが出来なかったが、陽太達が来てすぐ休憩時間に入った為会うことが出来た。余程ハードな練習なのか、差し入れのうんと冷えている、ゼリーと餡で作られた少しずつ赤く染まっていく空をそのまま切り取ったようなお菓子を陽太から受け取った理子にはいつもの十分の一の元気もないようで、颯馬との夫婦漫才にもキレがなく、颯馬は大変面白くないという風な顔をしている。それを見て陽太は彼に気づかれないよう声を押し殺し、ぷくくと笑う。


「体力と踊りには自信がある方だったのだけれど、いやあきついわ……。颯馬でさえ、きっと一日も経たない内に死人みたくなっちゃうわよ」


「僕がやったら?」


「死人みたくなる、じゃなくて死人になるでしょうね」


「なあなあ、舞ってどんな感じなの? こっそり教えてよ」

 悪戯っ子の顔でそんなことを言う颯馬に理子は顔を近づけ「だ・め」と憎たらしくなる位はっきりと大きく口を開けて答える。毎年変わるらしい舞は、お披露目するその時まで秘密のヴェールに包んでおかなければいけないのだ。けちんぼ、と颯馬は口を尖らせれば、あんたがそんな顔しても全然可愛くないし、申し訳ないって気持ちにもならないわと理子。彼女は陽太に星寄せ飾りの材料集めは順調か、と問う。しかし陽太が口を開く前に颯馬が「そっちが秘密なら、こっちも秘密にするもんね」とあかんべえ。今度は理子がけちんぼ、と口を尖らせる番だった。


「お前がそんな顔しても全然可愛くないもんね、ブースブー……ふが!?」

 颯馬の顔面に、理子の投げた竹筒がヒットする。そこから夫婦漫才第二幕が開始した。しかし矢張り理子には普段程の元気がない。塩ぶっかけた菜っ葉みたいなお前なんてお前じゃねえよ、お前がしおらしくっても全然可愛くないや、と颯馬が言えばこっちだって好きで塩漬け菜っ葉になっているわけじゃないってのと理子が返す。しかしそうしてぎゃあぎゃあやっている内、不思議と理子の体力と気力は削られるどころか回復したらしく、颯馬を口で負かした頃にはすっかり元の理子になっていた。颯馬と話すことは理子にとってHPとMPを両方回復する薬になるらしい。何のかんの言ってこの二人はかなり仲が良い。恋愛的な意味かどうかは微妙だが、お互いを好意的に見ていることは一目瞭然。

 雑談している内に休憩時間の終わりが迫ってきた為、陽太と颯馬は理子に応援の言葉をかけそれから草薙庵へと戻っていった。


 そこからは目まぐるしく時間は流れていった。颯馬と陽太は死に物狂いで星寄せの飾りを作る。星寄せ飾りは初めの頃は縁起が良いものや、自身の願いに関係した物だけを飾っていたそうだが、今はもうそういうことはあまり関係なく、自分の好きなものや、何の意味も無いものも一緒に飾ることが多いようだ。多くの人が不快に思うようなものや、あんまり縁起が悪すぎるもの以外ならOKらしい。色も古くはどんなものであっても基本的には赤か白で作っていたそうだが、今は色も自由だ。結局の所、ポピュラーな飾りは幾らかあるものの今は基本自由にやってしまっていいらしい。縁起物も自分の願い事に関係したものも無い星寄せもそう少なくないとか。心を込めて作ったり、選んだりしたりすれば良いのだ。そういった情報は陽太が図書館へ行って調べたり、颯馬が人に聞いたりして集めた。

 基本は自由、というのは世界が無限に広がる言葉だ。だが、広がりすぎるゆえに難しい部分もある。あんまり広すぎて、自分達の求めるものを見つけることが逆に難しいのだ。

 伝統を完全に無視したものを作るのも気が引けるし、伝統的な飾りを使いすぎてセオリー通りの無個性なものになるのもつまらない。古くからある飾りと、自分達が好きなように作る飾り、そのバランスをどうするか散々話し合い、バランスを決めた後は具体的にどんな飾りをどれだけ作るか決め、大まかな配置を決め、実際に星の森へ行って自分達に割り当てられた木を見てからデザインを調整した。もっとも、一連の事項を決めたのは殆ど颯馬だったが。陽太も理子もこういったことには疎く、時々意見を言いはしたものの、基本的には颯馬の提案にうんうん頷いただけだった。


「うわあ……颯馬、早いね。もう出来たんだ、それ」


「ああ。この位ならちょちょいのちょいだよ」

 そう言いながらも、次の作業に取り掛かっている。作業中の颯馬は気味が悪い位静かで、話しかけても無視されるか、もしくは生返事になる。すさまじい集中力である。むしろ今は理子の方がうるさい位だ。満星祭りの日に暗誦する詩を鯛の形をした布をたどたどしい手つきで縫っていきながら、ぶつぶつ小声で呟き続けている。その声も颯馬の耳には届いていないらしく、うるさいとも何とも言わない。読書をしている時程集中出来ない陽太の方は気が散って仕方ない。もっと大きな声で言ってくれる方がまだましだとさえ思う。


「あの、理子さん……」


「……私という名の匙にて掬い、食らった時……痛! もうまた刺しちゃった……ってああ! 今ので詩、忘れちゃった! あ、あれ? 何だったっけ……ええと、ええと……もう、なんだってこんな難しい詩を覚えなくちゃいけないのかしら! 意味が分からないのよ、意味が! 難しい言葉使えば良い詩になると思ったら大間違い! あ、痛!」

 そう言って理子は悶える。どうやら膝を針で刺してしまったらしい。針を持っていることをすっかり忘れていた右手で膝を叩いてしまったことが原因だった。自分も作りたいと、練習が終わった後星寄せ飾り作りを手伝ってくれるのだが、疲労が相当溜まっているのか彼女の飾り作りはなかなか進まず、手等を誤って針で刺したり、意味不明なことをやったりしてばかりだった。陽太は無理しなくて良いと言うのだが、彼女はやるのだと言って聞かない。二人に任せっきりなのは申し訳ないという気持ちも少なからずあるのかもしれない。


 三人は何日もかけて膨大な数の飾りを只管作り続け、満星祭りまでに全てを作り終えた。夜完成した時、三人で万歳三唱、達成感に気分は高揚。祭りの前日これを飾りつけるという作業があるが、今の三人はもう全てが終わったような気持ちになっていた。

 陽太も不得意ながら一生懸命頑張って作った。かなりの数を作ったと思っていたが、数もクオリティも手際の良さも何もかも颯馬の足元にも及ばず、改めて彼の意外な趣味及び才能に驚かされた。物を作っている時の颯馬の真剣な横顔は、同性の自分が見ても格好良いと思えるもので、尊敬の念をこの時彼に初めて抱いた。理子も颯馬の作った飾りを素直に褒めちぎる。


「本当これで料理や掃除も出来れば、良いお嫁さんになったのにねえ」


「せめて主夫にしろよ、せめて!」


「どちらにしても、颯馬には似合わない言葉だね。まあでも、間に合って良かったよね。まだこれからお店の看板作りとかしなくちゃいけないし、星座盤の用意もまだだし、他にも色々お祭りの準備が沢山あるし……」

 

「あたしは舞の練習とかあるしね……若星子でいる時の衣装は清女達が用意してくれるから良いとして……それ以外の時の衣装とか、飾りとかは自分でどうにかしないと。あれってどれか一つは自分の手で作らなくちゃいけないのよね。でも今日は無理、もうへろへろ……早く寝ないと、明日の練習に支障が……」

 悪いけれど、看板作りは二人に任せるわと言って理子はふらふらと自室へと戻っていった。彼女は向こうの世界でダンスを趣味でやっているそうだが、普段やっているものと今練習している舞は内容も動かす筋肉も全く違うらしく、なかなか上手く出来ない上にかなり堪えるらしい。得意なはずのものなのに上手く出来ないという焦りやショックゆえ、輪をかけて疲労しているのかもしれない。おまけに、小難しい詩を覚えそれを大勢の前で披露しなければならない。正直選ばれなくて良かったと二人は思っている。


「でもダンス経験者であれなんだから、僕みたいな人が選ばれたらどうにもならないような気が……」


「まあ、根性でどうにかするしかないんだろうな。もしかしたらやり遂げられそうな人しか選ばれないのかもしれないぜ。とりあえず俺達も今日はもう寝ようぜ。それでもって明日から、他のことを進めていこう」

 そう言う颯馬の大きなあくびを見たら、急速に眠気に襲われた。どんどん作業を進めたいのは山々だが、眠いのを我慢してやってもろくな結果にはならない。しばらくして草十郎が帰ってきた。彼は祭りの運営委員を毎年やっているらしい。更に祭り二日目には手作りの汁(颯馬は山賊汁と呼んでいる)を売る店を出す為、そちらの準備もある程度やらねばならず、なかなかハードな日々を送っている。陽太達はそんな草十郎の手伝いもしながら、自分達がやらなければいけないことも進める必要があった。勿論草十郎も、初めて満星祭りに参加する陽太達の手助けを出来る限りしてくれた。


 祭りが近づけば近づく程、皆忙しくなる。準備は忙しいが楽しく、楽しいが忙しい。浮き足るんるんモードと殺気びんびんモード、二つが混ざり合い、祭りが楽しみだと思いながらもピリピリイライラし喧嘩することもしばしばあった。思うように作業が進まない時は思わず叫びたくなった。文化祭の準備の時もこうだったな、と颯馬が呟く。

 それでも誰も投げ出すことはしなかった。『楽しい』だけでは祭りは出来ない。楽しい祭りの為に、苦しく辛く忙しない思いもしなくてはいけないのだ。

 三人も、草十郎も、幻淵や他の州に住む人々も、皆目まぐるしい時を全力で駆け抜け、そしてとうとう満星祭りの日がやって来た。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ