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桜町幻想奇譚  作者: 里芽
遷都バレンタインデー
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遷都バレンタインデー(13)


 痛々しい沈黙が、辺りを包み込んでいた。子供達は皆、石のように動かない。君江ももう何も言わなかった。あまりの衝撃に誰もかれも今は泣き叫ぶことさえ出来ないようだった。嵐の前の静けさに体を抉られる痛みに襲われながらも奈都貴と陽菜は子供達に声をかけようとするが、どんな言葉をかければいいのかまるで分からない。

 どうすればいいのか、何と言ってやればいいのだろう?

 結局この沈黙を破ったのは二人ではなく、清太の「あーあ!」という声だった。


「もう終わりかよ、ちえっ、つまんねえの! まだまだここにはいると思ったんだけれどなあ!」

 子供達の目が一斉に清太へと向けられる。彼の様子といい台詞といい、一見思ったよりはショックを受けていないように見える。だが、奈都貴にも陽菜にも分かっていた。彼は随分と無理をしている。軽い言葉に隠されているのは重い心、掠れている声は内側の思いが外側の薄い殻を擦り破ろうとする音に聞こえた。


「でもしょうがないよなあ、そういう運命なんだもん。今までだってそうだったんだ、例外なんてありゃあしない。そう、しょうがないんだよ。しょうがないったらしょうがないんだ。先生と俺達は住む世界が違うんだもの。へへん、俺ってば物わかりがいいだろう? 大人だもんね。皆は俺より大人じゃないの? 小筆なんて、いつも俺のこと子供ねって言うくせに。皆辛気臭い顔しているなあ! しょうがないってさ、割り切ろうぜ。明日には、どうせ、どうせお別れなんだからさ……最後は、笑って……笑って終わりにしようぜ……な、泣いてお、おわ、おわ……お別れなんて、嫌、だろう。おい、何か言えよお前等、黙っていないでさ、喋っているの、俺だけじゃん、皆で先生にさ、よ……さよ……笑えよ、皆、わら……わあああん!」

 段々と詰まる言葉、泣きそうな子供達の顔を見てとうとう耐え切れなくなったのか、清太は泣きだしてしまった。そしてそれが他の子供達のかたかた揺れていた箱の蓋を取っ払い、そこから感情が溢れ、涙となって体外へと出た。誰もかれも大きな声を上げ、別れを告げる鐘と同じように世界を震わせ、そして奈都貴と陽菜の心を揺さぶった。嫌だ嫌だ、お別れしたくない、お別れなんて嘘だ、という悲痛な思いを涙や言葉によって吐露し続ける。あまりに心を揺さぶるものだから、二人共思わず声を上げて泣きそうになった。しかし、それを必死になってこらえる。


「ねえ先生、お別れなんかしないよね? 先生も、一緒に、一緒に来るんだよね? お別れじゃないよね、ね?」

 藤吉郎が奈都貴の顔を見、泣きながら問う。もう「分からない」という言葉は使えず、奈都貴は静かに首を横に振った。藤吉郎の泣く声がますます大きくなった。


「俺も陽菜も、お前達と一緒に行くことは出来ない。明日で……お別れなんだ」


「先生は、先生はおいら達のことが嫌いなの!? 嫌いじゃないなら、好きなら、一緒に行こうよ。先生なら、せん、先生なら知っているだろう? きっと、知っているよね? こっちに来る方法を。ねえ、ねえ、知っているでしょう!?」


「藤吉郎君……ごめんなさい。私も奈都貴も、知らないの。先生達にも、分からないことがあるの」


「それなら、あのパソコンってもので調べてよ! あれにならきっと載っているよ、だって何だってあれには載っているじゃないか!」

 駄目だ、と奈都貴は再び首を振った。あの機械にはそっちの世界のことは載っていないんだよ。あれだって何でも載っているわけじゃないんだと言い聞かせる。そうすると、今度は小筆が「それなら本は? ねえ、本は?」と聞いてくる。本にだって、きっと載っていないわと陽菜が申し訳なさそうに言うと、小筆は再び泣きだした。

 子供達は泣いても泣いても、まだ泣き止まないという風だった。一体どうすればいいのだろうと二人は頭を悩ませる。元気を出せとか、泣き止め、と言ったところでどうにもなるまい。


「出会わなきゃ良かった!」

 他の子供達の声を全てかき消す位大きな声で平助が叫んだ。


「出会わなきゃ、こんなに、苦しくて痛くて悲しい気持ちになんてならなくて済んだんだ! いつもみたいに、ああまた次の場所へ行くんだなって、それだけで、それだけで……済んだんだ! 先生と会わなきゃ良かった、会わなきゃ良かったよ……!」

 その言葉を聞いた子供達は皆「嗚呼、そうだ」と言った。学校ごっこなんてしなければ良かったんだと、泣きながら言う。


――だって、お友達を作ってもすぐ別れるんだもの。作ったって悲しい気持ちになるだけだもん。だから私、友達は作らない。作らない方が、ずっと、良い――


 その言葉は、遠い日のことを思い出させる。親の仕事で転校を繰り返していた少女、誰とも話さず、遊ばず、いつもぽつんと一人で本を読んでいた。それは人付き合いが苦手だからではなく、すぐに訪れる別れを恐れるがゆえの。


「先生達と会わなければ、こんなに、泣くことなかったんだ! ずっとずっと、一緒に、いられるって思ったのに……おいらがうんと大きくなって、先生よりももっと賢くなって、先生に色々、教えてあげるんだって……初めて、夢、持ったのに、でもそれも叶えられない。こんなの、おいら、嫌だ! 痛いよ苦しいよ、わあああん。こんな思い、するなら、会わなかった方が、会わなかった、方が……!」


――友達を作らなければ、楽しい思い出なんて作らなければ、引っ越す時悲しい思いをしないで済むもん――

 ちょっとだけ気になっていた、あの女の子の言葉。それを聞いた時奈都貴は胸が痛んだ。そして藤吉郎の悲痛な叫びを聞いた今も、胸が痛くて、苦しくて仕方が無い。

 俯いて、泣いて、思い出を否定する子供達を奈都貴は何とかして救いたかった。前を向かせてやりたかった。だから、口を開く。分かってくれるか分からなかったけれど、このまま何も言わずにいたらきっと後悔するに違いなかったから。


「……でも、会わなかったら一緒に遊んだり、教わったり、笑ったりすることもなかった。今までの思い出全部が無くなってしまう」

 子供達は無言になる。きっと奈都貴や陽菜と過ごした日々のことを思い出しているのだろう。


「それは、いらないものだったか? 本当に。俺達と過ごした思い出は、そんなに簡単に捨ててしまっても良いものだったか?」


「そんなこと、そんなことないよ! 学校ごっこも楽しかったし、先生のことは大好きだし、色んなこと教わっておいら達うんと賢くなった気がするし……とても楽しかった、いらないなんて……本当は、でも、でも苦しい……楽しい思い出だったからこそ、別れるのが辛くて」


「うん、辛いな。楽しい思いをすればする程、別れは辛くなる。こんな思いをする位なら、会わなきゃ良かったって思う気持ちも分かる。でも……そんな辛い気持ちよりも、それまでに得たものの方がずっと多いと思うんだ。辛くて悲しい気持ち以上のものを、俺はお前達にあげられたと思うし、俺もお前達から沢山貰ったよ」

 奈都貴は目の前にいる藤吉郎に、そしてその後ろにいる子供達に向かって優しく、とても優しく話しかける。その優しさは子供達にとって辛いものであり、一方で癒しになったことだろう。


「……思い出ってのは、大切な宝物になるんだよ。お前達はさ、沢山の宝物を貰うのと、一つも貰わないの、どっちがいい?」


「そんなの、宝物を沢山貰う方が良いじゃないか! でも、最後に無くしちゃうなら……最初から一つも貰わない方が良いよ。無くさないなら、うんと貰った方がずっと良いけれど」

 という清太の言葉に、皆が同意する。


「……無くならないよ。思い出は、宝物は――例えお別れしても、二度と会うことが無くても絶対に消えない。ちゃんと手元に残り続けるんだ。得たまま失うことのない宝物だってこの世にはあるんだよ」


「無くならない?」


「そう、無くならない。ずっとその頭に、心に残るよ。無くなることがないなら、沢山、出来るだけ沢山手に入れた方がいいじゃないか。もう重いよ嫌だよって思う位沢山さ。そういうものは、誰かと会って、関わるからこそ手に入れられるものだ。何もしなければ、辛い思いをすることは無いけれど、その気持ち以上に大きな宝物を手に入れることも出来ない。そしてその宝物は一生に一度、その時だけ手に入るものだ。同じものはね、一度逃したら二度と手に入らないものだ」

 子供達の涙が少しずつ引いていくのが分かる。彼等は本当に物分かりの良い、素直な子供達だった。


「確かに別れは辛い。辛くて、苦しくて仕方の無いものだ。でも必ずそれ以上のものをお前達は手に入れているから……それはきっと、あああの時手に入れて良かったなと思えるものになるから。辛いって気持ちの先には必ず、それ以上に愛しいものがあるから。だから、だから……会わなきゃ良かったなんて、言わないでくれ。この先も、悲しい思いをする位なら何もしない方が良いだなんて思わないで、その思い以上に大切なものを沢山沢山手に入れて欲しい。何にも代えられない宝物をね。出会うことは辛いことじゃない。大切な宝物を手に入れる為に必要なことなんだよ。……これが最後に俺がお前達に教えることだよ」

 先生、先生、先生と収まりかけていた涙がぶり返し皆大きな声を上げて泣き叫んだ。だが、もう会わなければ良かったなどと口にすることはなかった。先生、先生……そう言って、泣いて、叫んで、うんと泣いて泣いて、まだ泣いて、泣いて……そして皆最後には泣き止んだ。彼等はきっと前を向いてくれるだろう。自分の拙い言葉を聞いて泣きながら笑ってくれたありし日の少女と同じように。


 嗚呼良かった、本当に良かったと胸を撫で下ろしたその時、天が俄かに明るくなった。見れば、天から金と藤の光が降り注いでいた。嗚呼、あれは、藤棚。

 白く青く赤く、眩い大きな光の藤が天に咲き、そしてそれが金の光の粉を撒き散らす。降り注ぐ光の粒は涙で大泣きして腫れた子供達の目蓋を、滴の跡がついた頬を優しく撫でた。天を覆う藤は眩しく、眩しく。子供達が歓声を上げるのが聞こえる『光藤(ひかりふじ)だ、光藤だ』と。


「光藤……?」


「そう、これはね先生、光藤っていうの。時々ねお空には光の藤が咲くの。とても大きな藤の花を咲かせて、そして黄金の光を降らせるの。先生は感じないかもしれないけれど、今ここはとても良い香りで包まれているんだよ。この匂いはね、人を幸せにするものなの。先生、これがおいら達が先生に最後に教えることになるね。先生、これはとっても珍しいんだよ。滅多に藤の花はお空に咲かないの」


「そうか……最後の最後に皆で見られて良かったな。なあ、陽菜」

 ええ、と陽菜はにこりと笑う。そしてそれにつられるようにして子供達もうんと満面の笑みを浮かべた。

 光藤は此度の素晴らしい出会いと別れを彩り、そして皆に祝福を与えているように思える。様々な色を見せ、輝くその美しい花に眩く輝く未来を、希望を見い出さぬ者などいない。藤の花は美しい未来を指差している。さあ、行けと。悲しみも苦しみも喜びも何もかも全て抱きながら、涙を拭いて、真っ直ぐ進めと。しばし見入っていると、突然陽菜がぱんと手を叩いた。どうやら彼女、何か思いついた様子。


「そうだ! ねえ、奈都貴。最後に皆で写真を撮りましょう。記念撮影。ほら、いつも私のカバンの中に……あった、ほら、デジカメ」


「いや、ほらって言われても……カメラにこいつらの姿は」

 笑いながらカメラを取り出す陽菜に、奈都貴は困惑を隠せない。以前カメラのことを子供達に教えた時に試してみたのだが、カメラのレンズは子供達の姿も家に重なる子遊庵も映らなかった。今日やっても同じことだろう。花も子も幻となり決して記録には残るまい。しかし陽菜はそれを承知で言っているらしく、もう馬鹿と奈都貴を小突く。


「……例え実物で残らなくたっていいじゃないの。大切なのは気持ちでしょう? 皆の姿をこの写真の中に閉じ込めることは出来ないけれど、でもきっとこの写真を見る度皆の姿を思い出すことが出来るはず。この胸の中に、私達がちゃんと皆の姿を残している限り。ね?」

 ああ、そうだな。ちゃんと映っていなければ意味が無いなんてことはないよな、奈都貴はそう言って子供達を集める。子供達はもうすっかりやかましさを取り戻しており、先生の隣は俺だ、いいえ私よと場所争いを始めたり、魂を吸われませんように魂を吸われませんようにとお祈りしたり(迷信であることを言った上で教えたのだが)、大騒ぎ。それをどうにか収めつつまずは陽菜が撮り、次に奈都貴が撮った。やっぱりレンジに彼等の姿は映らなかったけれど、それでも良かった。

 最後、子供達だけで写真を一枚。


「よし、撮るぞ……一足す一は?」


「二!」

 子供達が声を揃えて言い、ピースサインととびっきりの笑顔を二人に見せてくれた。

 これが子供達と作る『最後の思い出』になった。子供達と別れ、家に帰った時源太と会い言葉を交わした。彼は子供達が最後は笑って自分達と別れたことを知ると安堵の息を漏らし、嬉し涙を零した。


 そして次の日の朝、奈都貴達が目を覚ました時にはすでに渡遷京はその姿を消していた。弥助曰く朝方に出立したらしい。こちらへやって来た時は随分と騒がしいご登場だったのに、去る時は本当に静かだったという。何の前触れもなくすうっと溶けて消えていったらしい。呆気ない、劇的な演出も何も無い、驚く程あっさりとした別れに拍子抜けしなかったと言えば嘘になる。一方で、彼等らしい別れ方かもしれないとも思った。湿っぽいことなど大嫌いであろう彼等にふさわしい別れ方だ。


 うるさい妖達の話し声も、生活音も、珍妙な生物も、建物も、一つ残らず消え去り、世界は日常を取り戻した。彼等が去った桜町はとても静かで、これ程までに静かだったかと驚く位だった。きっと日常が戻ってきたことにより、狂ってしまった人達も正気を取り戻していくことだろう。狂気は非日常と共に日常の向こうへ流され、何もかもが元通りになる。それを多くの人は喜ぶだろうと奈都貴は思う。自分だってようやくあの変てこな世界とおさらば出来ると、懐かしささえ感じるいつも通りの桜町の姿を見た時、胸を撫で下ろした。一方で子供達との別れを寂しく思う。もう彼等と学校ごっこをすることも、子供達の騒がしい声を聞くことも、喧嘩や悪戯を止めたりすることもない。


(……嗚呼、自分が思っていた以上に俺は楽しんでいたんだろうな。何か心にぽっかり穴が空いた気分)


「私今日、学校の帰りにレンタルビデオ店に寄ったの。のりものとかのDVDを探していてね、あ、これ皆が喜びそうって思った瞬間思い出したの。嗚呼そういえば皆行っちゃったんだなって。そう思ったら寂しくなって……危うく泣きそうになっちゃった」

 奈都貴もうっかり彼等がいないことを忘れ、本屋に寄り、子供達が喜びそうな本を探してしまった。そんな風になる位『学校ごっこ』は二人の日常生活に溶け込んでいたのだ。その『学校ごっこ』が無くなり、二人の日常にはぽっかりと大きな穴が空いた。その穴もきっと、しばらくしたら埋まって綺麗さっぱり無くなるだろうけれど。

 紗久羅と柚季も同じように「体の中にぽっかりと穴が空いたような心地がする」と言った。彼女達にとって渡遷京の人々との思い出は決して良いものではなかったが、それでも日常に無理矢理入り込んできたものが消えてしまうと穴は空く。


――なっちゃんとは違ってあたしも柚季も、あいつらのせいで散々な目に遭ったけれど……それでも何か心にぽっかりと穴が空いた気分。寂しいとか、悲しいって気持ちにはならないんだけれど……何か、でもこう、穴が……嗚呼、何て言ったら分かんねえなあ、この感じ! 寂しくないけれど穴は空いているんだよ!――

 そんな何かよく分からないけれど空いている穴もすぐに塞がることだろう。塞がるまでに時間がかかりそうなのは、ただいま絶賛魂抜け殻状態になっているさくら位だろう。もっとも、またこの町で不思議なことが起きたならあっという間に立ち直りそうだが。


「あれは夢だったのかなって、何か思っちゃう。この町って不思議なことがよく起こるけれど……でも、何か本当に起こったことって気持ちがしないなあ。今でさえこうなんだもの、もっと後になったら私……」


「夢じゃないよ。夢なもんかよ」

 そう言って奈都貴はあるものを取り出す。それを見て、陽菜は「そうだね」と笑った。

 フォトフレームの中に入った写真。そこに映っているのは隣町のとある場所。何ということはない民家が映っているだけの、わざわざフォトフレームなどに入れる必要もないようなものだった。

 だが二人はその写真の中に、満面の笑みを浮かべピースサインをする子供達の姿を、皆に祝福を与えた美しい光の藤を見る。もしかしたらあの日々は夢であったのかもしれないと思う度、きっとこの写真を見れば「違う、あれは夢じゃないんだ」と思えるだろう。二人だけに見えるものが、夢じゃないよと教えてくれるはずだ。


――おいら、大きくなったら先生みたいにうんと頭の良い人になるよ! 先生と同じ位、ううん、先生以上に賢くなってね、先生か博士か……何かすっごい人になるの!――


――俺は好きな女と結婚するんだ、絶対振り向かせてやるんだ、へへ!――


――あ、あたしも! あたしも好きな子の花嫁さんになるのよ! 絶対なってやるんだから! ま、まあそいつはあたしの想いににぶちんだから気づいていないみたいだけれど!?――


――私は本を書くわ。素敵な物語を書いて、沢山の人を喜ばせるの。先生にそれを見せられないのは残念だけれど、でも、応援していてね、先生。約束よ――


 写真を見れば、子供達の声が頭の中で響く。別れの間際夢を語ったり、何が一番の思い出だったか語ったりしたことを思い出し心に空いた穴が温かいもので少しずつ埋まっていくのを感じる。今頃子供達の心に空いた穴にも、そんな優しく温かなものが注がれているだろうか。そうであって欲しいと願う。

 奈都貴は写真を自分の部屋に置いた。それを部屋から取り払うことはないだろう。


 今年の(一日遅れの)バレンタインデー――聖バレンタインデーならぬ遷都バレンタインデーがもたらしたもののことはきっと忘れることは無いだろう。

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