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桜町幻想奇譚  作者: 里芽
雪洞鉄道
134/360

雪洞鉄道(4)

 沢山の手毬が、外で飛び跳ねている。短く刈られた黄金色の草原の上を、縦横無尽に。小さいものはせわしなく跳ね、大きなものの殆どは小さく、申し訳程度に。彼等は自らの意思で跳ねている。

 鬼ごっこらしきことをしているもの、二人(二つ)ぴったり寄り添いお互いの温もりを感じ合っているもの、他の手毬達によって作られた輪の中で激しくぶつかり合っているもの、ぐらんぐらん揺れながらタワーを作っているもの……彼等はまるで生き物で、とても『物』には見えない。


 遠くからなのでどんな模様のものがあるのかは残念ながらはっきりと分からなかった。しかし月光に照らされた彼等はとても色鮮やかだった。きっと花や鳥をイメージした模様等がその身に刻まれているのだろう。


 見る限り、口や鼻、目などは無い。間近で見ればあるのかもしれないが。さくらは彼等にそういうものがあるのかどうか、ゆっくり走る汽車の中から過ぎ去っては現れ、過ぎ去っては現れていく彼等を凝視する。目を寄せ、口をぎゅっと結び、じっと、じっと、見る。しかしどれだけ頑張ってもやや距離を置いた所にいる彼等に目鼻がついているかどうか確認することは出来ず、しまいに目と頭が疲れてしまい、確認を断念。一度息を吐き、老紳士の方に視線を戻したら、彼は身をぷるぷる震わせ、俯きながら笑っていた。窓の外を凝視していたさくらの顔が余程面白かったのだろう。


「そんなに力んで見ることもないでしょう。力を抜いて、ぼうっと眺める位が丁度良いと思いますよ」

 と時々笑い混じりの咳をしながら言われてしまった。どれだけ変な顔をしていたのだろう私はとさくらは急に恥ずかしくなり、真っ赤になった顔を冷やそうと、閉められていた窓を少しだけ開ける。飛び跳ねる手毬、その上空には棒無し赤青風車(かざぐるま)がいて、からから回りながら空を悠々と飛んでいた。その数は草原にいる手毬に匹敵している。


 やがてそんな彼等の姿も無くなっていくと、今度は畑らしきものがさくらの目に入る。しかしその畑から生えているのは野菜でも果物でも、植物でも無い。

 それは橙、赤、黄の灯りをその身に抱く――ランプにカンテラ、ランタン、提灯、行灯だった……。


 眩い灯りの海。その光が辺りを橙や黄に染めあげる。外に半身を向けているさくらの体も、今は橙、熟れた柿の色。

 その畑にはちらほらと人の姿が。灯りに囲まれてその体を光で染めている彼等もまた、灯りに見えた。


 まるで星空、星の海――世界が全て星空になった、そんな風にさくらは思う。


(衣服が木になる位だから、照明の類が畑で栽培されていても何にもおかしいことはないわね……)


「次は(とう)(とう)、橙燈――」

 今度はここで汽車が止まるらしい。アナウンスを聞いた乗客の一部は早くも立ち上がり、背伸びやあくびをしながら駅に着くのを待つ。さくらは僅かに開けていた窓を再び閉めた。老紳士も今度は汽車を降りるつもりのようで、もし宜しければご一緒しませんかとさくらを誘ってくれた。さくらは喜んでその申し出を受け入れ、汽車が止まるまでの間老紳士と短い会話を交わす。


 駅のホーム、その背にある屏風は浅黄色でその中で金魚が悠々と泳いでいる。

 泳いでいる絵が描かれているのではない、実際彼等は屏風の中を動き回っていたのだ。決まったルートを決まったように泳いでいるのではなく、自分の泳ぎたいように泳いでいる様子。彼等は皆気持ち良さそうに、楽しそうに屏風の青の中を泳いでいる。

 他の乗客は汽車から降りるなりすぐに駅を離れ、あの畑のある方へと向かっていったというのに、さくらといえば老紳士に根気良く何度も話しかけられるまで飽きもせずずっとその屏風を眺めていた。はっとして金魚と水の世界から戻ってきた時には、もうホームにはさくらと老紳士、汽車しか残っていなかった。


「ごめんなさい、私ったらつい夢中になって」


「良いのです。私も初めてこれを見た時はしばらくの間、眺めたものです」

 そう言いながら老紳士が屏風にゆっくりと触れる。すると泳いでいた金魚の内一匹が彼の指まで近寄ってきて、ちょんちょんとそれに口先で触れる。さくらも彼の真似をして右手を屏風につける。外の空気よりもひんやりとしていて、その冷たさが指先から全身を駆け巡り、身震い。さくらの方へも赤と黒のまだら模様の金魚がやって来て、興味津々の様子で彼女の指に何度も口づける。絵に触れられた指先がくすぐったい。しばらく彼等は老紳士とさくらの手で遊んでいたが、やがて飽きたのかすうっと離れていった。


「さて、参りましょうか」

 はい、とさくらは屏風から手を離す。屏風に触れていた手は気のせいか少し濡れていた。

 屏風の裏側にある階段を下り、少し歩くとすぐ畑に囲まれた道へと辿り着く。

 汽車に乗っていた時は気がつかなかったが、上空にも橙色のものがぷかぷか浮かんでいた。畑から生えているものよりずっと少ないが、空を彩るには充分すぎる数であった。


 広い道には蔓を編んで作ったらしい大きなカゴがある。何が入っているのだろうと覗いてみれば、そこには収穫されたらしい照明達がびっちりと。引っこ抜かれたからといって灯りが消えることは無いらしい。

 畑の方へ目を向ける。矢張り人の姿がぽつぽつ見える。彼等は畑からランプやランタンを引っこ抜いては傍らに置いてあるリヤカーらしきものにそれを乗せ、引っこ抜いては乗せを繰り返していた。


 リヤカーがいっぱいになるとそれを手で押し、カゴの前までやって来る。

 照明が山の様に積まれているリヤカーを押してやってきた一人の男と、その様子をじっと見つめていたさくらの目が合った。五十位の男で、頭に藍染めの太めの鉢巻をしている。着ているのは鉢巻と同じ色の甚平。灯りに照らされ、赤味の強い卵の黄身色になった肌、がっちりとした体。


「お客さんか。ああ、今日はここに汽車が止まる日だったのか」

 どうやら汽車は日によってその進路を変えるらしい。男はリヤカーに乗せていたものを次々とカゴの中へ入れていく。カゴの下にはローラーが幾つかついている。ある程度たまったら押してごろごろ転がしながら運んでいくのだろう。

 矢張りどう見てもカゴの中に入っているのはランプや行灯。ただ、ランプ等の中身は灯り以外何も入っていない。球体状の灯りが中央辺りに浮かんでいるだけ。他のものもそうなっているらしい。


「収穫したランプとかって、そのまま照明器具として使うんですか?」


「これを? いいや、これはそういうことには使わないな。照明器具はまた別の、ちゃんとした材料を使って作る」


「それじゃあこれは鑑賞用か何かですか?」

 さくらの問いに男は眉をひそめる。何を言っているんだお前はと思っているようだった。


「こんなものを鑑賞してどうするんだ。これは――食用だよ」


「食用!?」

 どう見ても食べられそうにないそれを食用だと言われ、さくらの頭は混乱する。ガラスや金属、プラスチック、木、紙等で出来ているらしいそれを食べるのだと言われれば流石のさくらでもそうなってしまう。

 もしかしてこの世界の人達は人間には食べられないものも食べられるのだろうか、そう思いながらさくらはカゴの中を指差す。


「これ、食べるんですか? ば、ばりばりって……」

 男は目をしばたいた後、大声で笑い出す。私はまた何か変なことを言ってしまったのだろうかとさくらは俄かに不安になった。


「いや、外は食わないよ。まず食うやつはいない。食えるように改良してあるのもあるらしいが。食うのは中にあるこれ」

 そう言って男が指したのは、橙色のあの光。光を食べる、一体どういうことだとさくらの頭はますます混乱する。これが紗久羅や一夜であったら訳分からんわ、頭おかしいんじゃないか――と正直な意見を、それは乱暴な言葉で口にしたに違いない。


「そんなに驚くことか? ああ、嬢ちゃんは外の世界から来たのか……それじゃあまあ、驚くか。ここらの畑で栽培されているのは『アカリモドキ』と言って、ごく一般の照明器具とは違う……果実なんだ」


「果実……」


「そう、果実。ここではごく当たり前のように食べられているよ。ま、実際食ってみるのが一番だろうな。丁度俺は今から家に帰るところなんだが――もしよければ、一緒に来るかい。どうせ汽車はすぐには出ないんだろう」

 さくらは迷い、老紳士の方をちらっと見る。彼は貴方の好きなようにしなさいと言いたげな優しい笑みを浮かべながら頷いた。これをどういう風にして食べるのか気になったさくらはお言葉に甘えることにし、男に頭を下げる。


 男はそれじゃあ決まりだなと言い、リヤカーを道端に置いたままカゴを押し先へ進み始める。あのリヤカーはそのままにしておいて良いのですかとさくらが尋ねたら不思議そうな顔をされた。どうやら盗まれたり、悪戯されたりしたことは無いらしい。さくらと老紳士はカゴを押すのを手伝ってやった。三人がかりで押してもかなりの重量がある。これをいつも一人で押しているなんて、このおじさんはすごいわと素直に感心した。

 ふとさくらは空を見上げ、宙に浮いている橙の灯りに目を向ける。


「おじさん、空に浮かんでいるあれも……アカリモドキなんですか」

 男はさくらに言われ顔を上げ、それから深いため息をつく。


「今日は随分あがっちまったなあ。ああ、あれも全部アカリモドキだ。こいつらの中には『浮遊病』という病気にかかってしまうものがいる。それにかかった奴は皆ああして宙に浮かんでしまうんだ。ああなると食べることも、商品にすることも出来ない。そして空を飛べない俺達にはあれをとる術が無い……だが。お、来た来た。ほら、あっちを見てくれ……そう、あそこだ。大きな鳥が見えるだろう? あいつらが浮遊病にかかったアカリモドキを食べてくれるんだ。浮遊病にかかったものが少ない時は畑のやつに手を出してしまうんだが……まあそれは仕方の無いことだ」


 空を飛んでいるのは人を二三人余裕で乗せることが出来そうな鳥だった。鳥といっても普通の鳥ではない。比較的地上近くを飛んでいた鳥がいたからその姿をはっきりと見ることが出来たが――それはどう見ても折り紙で折った鶴であった。赤、青、緑などそれぞれ色は違う。彼等は口をぱかっと開けると、アカリモドキを丸呑みにしていく。彼等は中身だけでなく外もしっかり食べるらしい。


「奴等はアカリモドキを食べると町の奥の森へと帰っていく。そこにある『たまり池』って所で排泄をする。その排泄物を肥料屋達が回収し、良質の肥料を作るんだ。その肥料を使って俺達はアカリモドキを栽培する。アカリモドキを食べたあの鳥達……『オオカミトリ』の糞で出来た肥料を使うと、浮遊病その他諸々の病気にアカリモドキがかかりにくくなるんだ。その事実が発見されるまでは、栽培したものの殆どは収穫される前に病気にかかって駄目になったらしい。ちなみに他の野菜の栽培等にも使われる」

 甲高く鳴きながら、オオカミトリ達は次々と空に浮かんでいるアカリモドキを次々と食べている。今日はいつもよりエサが多いから、きっと喜んでいるだろうとさくらは思った。ちなみに男の話では、病気にこそかからなかったものの売り物にはならないというもの等を森に持っていき、オオカミトリ達に食べさせてやることもあるそうだ。


 道中、男同様アカリモドキの栽培をしている者数人と出会った。皆汗をだらだら流しながらアカリモドキを引っこ抜いたり、リヤカーを押したり、カゴにアカリモドキを入れたりしている。

 地上を覆う星空。その果てにあったのは、沢山の建物だった。背の高いものは殆ど無い。あそこで皆暮らしているらしい。建物の明かりは皆ついている。


「皆さん、日中ではなく夜に活動されていらっしゃるんですか」


「大体陽日(ようび)の途中から(よい)()の間に起きて、朝日(あさび)に寝ているな。地域によって寝る時間帯は変わるようだが、この辺りはそういう感じだな」


「えと、陽日……宵日?」

 さくらは始めに自分がいたホームで汽車の到来を告げた鳥がその様な単語を口にしていたことを思い出した。しかしそれが一体何を意味しているのかは分からなかった。

 見かねた老紳士がさくらに説明をしてくれた。


「この世界は一日が短いのです。そして、一日中夜の日もあれば一日中昼の日もあるのです。深い夜から陽が昇る位までの日を『宵日』陽が昇ってすぐ位の日を『朝日』一番明るい日が『陽日』星が瞬きだし、夜が深くなっていくまで位の日を『星日』というのです。一日の時間は日によって違います。宵日が一番長く、朝日と昼日は短めらしいです」

 時間の流れも他の世界とはまた違うらしい、と男が補足を入れる。具体的に一体宵日は何時間なのだとか、時間の流れがどういう風に違うのか――ということは教えてくれなかった。あまりさくらに詳しいことを説明して、彼女の世界を狭めたくなかったのだろう。

 先程まで鳥の鳴き声と、畑仕事をしている音位しかなかった世界に少しずつ別の音が混ざっていく。それは人の話す声。しかもかなり大きく、騒々しい。


 町中は汽車から下りた客らしき者とこの町の住人らしき人で随分と賑わっていた。人間よりアバウトで細かいことを気にしない者の多い妖達はすでに町に溶け込んでおり、どう見ても照明器具なものを畑で栽培したり、食べたりするという事実もあっという間に受け入れているらしく、四本の柱の上に布が貼られているだけの店が並んでいる市場で買い物を楽しんでいた。彼等の順応力の高さに素直に感心するさくらだった。


 専門的に売られているものは当然店によって違う。果物や野菜らしいものがずらり並んでいる所もあれば、惣菜屋らしき所、雑貨屋、装飾品を売る店、肉屋などもある。カゴを一度邪魔にならない場所にのけ、三人は市場を一通り見てまわる。

 特にさくらの目を惹いた店というのが。


 駄菓子を入れるのに使うようなガラス張りの木箱。そこにびっちりとビー玉らしき物が入っている――という店だった。

 ビー玉の色は入っている箱によって違う。大きさはそれぞればらばら。ビー玉には幾何学的な模様が入っていて……どちらかといえばトンボ玉に近いかもしれなかった。


「これは何ですか? とっても綺麗」

 さくらは木箱の蓋を開け、それを手に取り、頬ずりしてやりたくなった。しかし勝手に触ってはいけないものかもしれなかったので、我慢。


「それに目を輝かせる女の子なんて初めて見たよ。何、それを手に取ってみたい? いや別にそれは構わないけれどさ……それはアカリモドキとか、他の野菜とかの栽培に使う、肥料だよ。ほらさっき教えた」

 ええ!? と男の説明にさくらは仰天。飛び跳ねながら後退。

 肥料――オオカミトリの排泄物入り。


「と、とても肥料には」


「見えないって? そうなのか……俺達は当たり前のようにこれを使っていたから、逆にこれ以外の肥料を目にしてもいまいちぴんとこないだろうな」


「でも全然臭わない……箱越しだからかしら」


「いや、箱から出しても殆ど臭わないよ。加工する前は少し臭いがな。だから肥料を製造している工場は町の外れ――例の森の近くにある」

 そのやり取りを聞いていた、肥料屋のおじさんが声をあげて楽しそうに笑う。


「何だその子、お前の愛人か何かか? 悪い奴だな、かみさんにばれたら殺されちまうぞ」


「阿呆言うな、こんな芋っ娘誰が愛人にするか」


「酷いこと言うなあ、おい。可哀想なお嬢ちゃん――悪いことは言わない、そんな男なんかはやめて、おじさんに乗り換えちゃいなさい。絶対可愛がってあげるから」

 冗談っぽく笑う肥料屋の男。さくらはただ困ったように笑うだけ。


「駄目ですよ、この可愛らしいお嬢さんは私のものなのですから」

 二人の会話に割り込んだのは老紳士で、やっぱり冗談っぽく笑いながらさくらの肩に手を置く。何だか彼にそう言われると冗談でも気恥ずかしくなり、俯いてしまう。

 残念だ、などと言いながら肥料屋は店を去る三人を、手を振って見送った。


 石畳の上に建てられている家はどれも小さめ。白や黄色の壁にはぴかぴかになるまで磨きあげたらしい石が幾つも埋め込まれ、屋根には暗い色をした、一際大きく、そして輝いている石がびっちりと埋められている。屋根の上には煙突。ちょっと不思議な、だがメルヘンチックで愛らしい家々。

 男の家は、中心の大通りからやや外れた通りにあった。その通りにはここでアカリモドキを栽培している農家の家が固まっているらしい。道はカゴを運びやすくする為か随分広い。


 あそこが俺の家だ、と男の指差した建物の前には誰かが立っていた。こちらに背を向け、ふくよかな体とパーマのかかった栗色の髪を揺らしながら何かしている。服装を見るに女であるらしいその人。恐らく男の奥さんなのだろう。

 

「おい、今帰ったぞ」


「おや、あんた。お帰り」

 女の手には布。改めて彼女の足元に目を向けると、そこにはバケツらしきもの。どうやら壁に埋め込まれている石を磨いていたようだ。男は彼女に挨拶をした後、家の裏手にカゴを運んでいく。


「なんだいあんた達。ここの者達じゃないよねえ? ああ、そっか……雪洞鉄道でここまで来たのか。あれは日によってまわる場所が変わるんだよねえ。今日はここに止まる日だったんだねえ」


「壁の石、とても綺麗ですね」

 挨拶した後、さくらがそう言うと女はえっへんとその大きな胸を誇らしげに張った。


「そりゃあ宵日になる度磨いているからね」


「そんな頻繁に磨いていらっしゃるんですか?」


「当たり前じゃないか。壁の石の輝きはね、その家を守る女の良さを示すものなんだ。良い女はまめで、根気強い。つまりあたしはとても良い女ってことだ」


「何が良い女だ。図体と声と態度がでかいだけの女じゃないか」

 戻ってきた男がそう言いながら戻ってきた。戻ってくるなり女はこの野郎と彼の頭を、石を磨いた布で思いっきりはたく。


「あんただって似たようなものだろうが。……ちょっとお嬢ちゃん、何笑っているんだい。見世物じゃないんだよ、見世物じゃ。全く」


「乱暴な奴め……そうだ、お前。このお嬢ちゃんと爺様にアカリモドキを食べさせてやってくれないか。調理方法とかも見せてやって欲しい。こっちの嬢ちゃんはアカリモドキを初めて見たらしい」


「別に構わないよ。それじゃあ、中に入って」

 女――男の奥さんはバケツに布を突っ込み、二人に手招きをしてドアを開ける。木製のドアには絵の具か何かで細かな模様が描かれている。後で聞いたところによると、これも彼女が描いたものであるらしい。


(私には絶対描けないわ。櫛田さんなら出来そうだけれど)

 さくらはそう思いながら老紳士と共に夫婦の家にお邪魔した。


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