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だんじょん

来てしまった。

僕の目の前には、大きな洞穴が空いている。

中から不気味な声が轟き地面を伝って耳に入る。

多くの冒険者達が集い、命を落としていく悪魔の穴。


大型ダンジョン、通称【死の洞窟】。

僕はダンジョンを目にして、足が震え始める。

金貨に釣られなきゃ良かった。そう後悔し始める。


3人は、ちゃんと護衛するからと言ってくれたが、

気が気じゃない。

ダンジョンから溢れ出す魔力に今にも跪きそうだ。

ここは、Dランクの来る場所じゃない。


「ふむ、四人だな。そしてDランク以上と。入ってよし。」


おっさんは軽々しく、入場許可を出す。

死んだら末代まで呪ってやる。

楽しげに進む3人に震えながら付いて行く。


「そう緊張しないでよ、鈴。アトラクション感覚で楽しんで。」


ポンポンと、桜沢さんが背中を叩く。

痛い、力が強すぎだ。

倒れそうになりながらも、ダンジョンを進んでいく。


「…………何で僕を選んだの。」


ずっと思っていた疑問をぶつけてみる。

他にも居たはずだ、Bランクも街にうじゃうじゃいるし。

Dランクの方が少ないくらいだ。


「知らない人より、知ってる人の方が安心できるしね。」


滝野は、ニコリと微笑んだ。

成程縛りプレイ好きだな。


今だ高鳴る心臓を抑えビッタリ3人に引っ付いて進んでいく。

まるで幽霊屋敷みたいだ。


入口の光が見えなくなった頃。

魔物の動きが活発になって来たのが、手に取るように分かる。

殺気がピリピリと肌を突く。


「来た。」


滝野が突然声を出した。

それと共に、バサリと何かが落ちた。

蝙蝠だ。人間の背丈ぐらいの蝙蝠。


全く見えなかった。

剣も蝙蝠も。気づけば死んでいたし、滝野は刹那で剣を抜いていた。

さすがAランク、恐ろしい。


蝙蝠の頭を拝借しながら、3人に付いて行く。

後ろから襲われそうでとても落ち着いていられない。

ほんの細かな音でも反応してしまう。


暫く進んでいくと小さな部屋、のような場所に出た。

滝野の背の後ろからこっそり覗いてみる。

何も居ない…………?


「いくよー。」


桜沢さんが、声を上げる。

何に対してだ?疑問に思いながら、桜沢さんの行く末を追う。

が、すぐに見失った。

キョロキョロと、再発見しようと見渡した。


あれ、本当にどこに行った?

そう思いきる前に、ドチャァ、と鈍い音が響いた。

見たことの無い黒いゴブリンが地面に倒れ伏した。


続け様に、いや連発的に鈍い音は鳴り響く。

見えない。目で追えない。

次々と黒い血飛沫が飛んで、黒いゴブリンが倒れていく。


異次元だ。

俗に言うヤムチャ視点だ。

何が起こっているのか理解ができない。


「掃除完了、次行こ。」


「ありがとね。」


終わった…………。

有り得ない、人間の出来る動きじゃない。

唖然としている僕を置いて、3人は進み始めた。


「鈴、ボケっとしてると食べられるよ?」


桜沢さんの声で、現実に引き戻された。

食べられるのはゴメンだ。

新種のゴブリンの首を出来る限り麻袋に詰め込んだ。



Aランクの実力。

実際に目にすると、肝も縮み込む。

先程の素っ気ない対応が、恐ろしくなった。

後で謝っておかないと。

3人の背中を眺めながらそんな事を考えた。






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