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日常2

ふと、夢から叩き出された。

昨夜飲みすぎた酒の性で、頭がガンガンと悲鳴を上げている。

気分が悪い、脳味噌をこねくり回されたみたいだ。


痛む頭を抑え、体を起こした、場所は何時もの宿屋らしい。

どうやって帰ったか覚えていない、記憶が引き抜かれているみたいだ。


きょろきょろと周りを見渡すと、黒根と菅山が大の字で床に転がっていた。

どうやら彼らも飲み過ぎたらしい。

低いイビキを鳴らしている。


これ暫く起きそうに無い。

今日も僕だけで行動かな。


大きな欠伸をして、背を伸ばす。

パキポキと、背骨が伸びる感覚が全身に伝わった。

それと共に強烈な吐き気が襲ってきた。


胸焼けが酷い、下に降りて水を貰おうか。

フラフラと立ち上がり、下の階へと向かった。


朝っぱらなのに、冒険者がバカ騒ぎしている。

怒号が脳に響く。心地が良いものではない。

冒険者から少し離れた所で、水を頼む。


「飲み過ぎには気をつけなきゃ。」


宿屋のおばちゃんにそんな事を言われた。

その口振りから、昨日相当酔っ払ったらしい。


「すいません。」


一言謝礼すると、おばちゃんが冷えた水を一杯くれた。

水を一気に飲み干し一息付く、あぁ、なんだか身に染みる。


さて今日も狩りをするかどうか…………。

テーブルの木目を目で追いながら考えた。

今の状態は冴えないが、動けない程では無い。

が、本調子じゃないのは、確かだ。


休むのも一理ある。

昨日貯めた銀貨10枚がある。

今日は、お買い物をする日にするのも…………。


「あれ、無い…………。」


ポケットに手を突っ込んだが、銀貨が指に当たらない。

ポケットを覗くが銀の輝きは、一切見えない。


ひとつ、ひとつだけ思い当たるとしたら、昨日の酒盛りだ。

全部使ったかスラれたかは、どうでもいい。

お金が無ければ、野宿が確定する。


つまるところ、今日も魔物を狩る必要がある。




街からすぐ近くの森、僕のお気に入りの狩場だ。

ここには絶えず魔物が現れる、スライムからオークまで様々だ。

しかも何故か冒険者も滅多にここには来ない。

おすすめの狩りスポットなのに。


森道を進んで行きしばらく。不自然に空いた洞穴に生臭い糞を見つけた。

他にも食べ散らかされた兎や、ゴブリン独特の土臭さが残っている。

この近くに確実にゴブリンが居る。


そう分かると僕は洞穴の奥に身を潜める。

ゴブリンは、目と鼻が悪い為格好の的にされやすい。

その代わり、繁殖力はオークに劣らない。

2匹残しておけば一週間後には、30匹を超える。体験談だ。


がさり、と草を掻き分ける音が耳に入る。

目を凝らせば、草むらの向こうでゴブリンが武器を揺らしながら

洞穴に戻ってきているのが見えた。


総計5匹、子供一匹。その内一匹は、兎を肩に掛けている。

狩りから帰ってきたらしい。

一匹が洞穴の中を確認して、安心すると洞穴にずかずか入り込んだ。


ゲギャギャギャ、と気味の悪い声が洞穴に響く。

外に居たゴブリンが安心したように、洞穴に入る。

兎を担いでいた者が兎を洞穴の真ん中に、無造作に放り投げる。


兎の周りにゴブリンが群がり、貪り始めた。

背を低くして食べることに集中している。

…………今だ。


僕はと元いた場所を動き、リーダー格のゴブリンに剣を振り下ろす。

がら空きの背中に、致命傷の斬撃を与える。

返り血が吹き出し、全身が緑っぽい血で染められた。


「ギギャガガガァァァァ!!!!」


大きな叫び声が上がる。

それと共にゴブリン達は、兎を貪るのを中断した。

隙だらけだ。


目に付いた手短なゴブリンに斬り掛かる。

狙いは首元、軌道を確認し降り抜いた。

ザクリと、確かな手応えが感じられる。


「ガッ…………ヒュッ…………ヒュッ…………」


クリティカル、首に深いを与えた。

噴水のように血が噴き出す。

必死に首元を抑えるが、意味を成さない。


「ぎ…………ギャエエエエエ!!!!」


ゴブリンが襲い掛かって来る。

木の棍棒を片手に、無茶苦茶に走りながら。


はっきり言って、敵対されようが一体二体じゃ雑魚だ。


軽く頭を蹴り飛ばし、仰向けに転ばす。

剣を両手で握り、顔に向けて剣を振り落とす。

目に深く刺さり脳へ到達。

グジュリ、と嫌な感覚が手に伝わった。

ゴブリンの体が大きく痙攣する。

糞尿を撒き散らし、暫く痙攣すると動きが完全に止まった。


次だ。


ふと次のゴブリンに目を向ける。

対象は、メスと子供のメスだった。


「あれま。」


オスメス2匹残して繁殖を狙う奴、しようと思ったんだけどなぁ。

暫く、お金の心配が無くなると思ったんだけど。

生かして他のオスと交配させるのも有りだが、探すの面倒臭いし。


「殺っておこうかな。」


その言葉を放った瞬間、メスと子供は逃げ出した。

あれ、言葉って理解出来たっけ。

兎に角逃げられるのは、御免だ。


ポケットから吹き矢を取り出し、メスに向けて放つ。

矢は綺麗な直線を描き、背中にプスリと突き刺さった。


「やった。」


数歩走ると力を失い、パタリと倒れる。

さすが毒吹き矢、役に立つ。

暫く動きを止めてくれる優れものだ。


子供ゴブリンは、動かなくなったメスに縋り必死に動かそうとしている。


僕が近づくと、バッと立ち上がり私が守ると言わんばかりに立ち塞がった。

足は震えて、今にも逃げ出しそうだ。だが、必死に耐えて母親を守っている。

あぁ、なんて感動的だろう。



「ごめんね、すぐ殺してあげるから…………。」


1番柔らかい腹を貫き、母親の背中に串刺しになる形で刺し込んだ。

子供は、何が起きたか理解出来ないようだ。

キョロキョロと辺りを見渡している。

そして、自分の腹を貫いている物体を発見すると、


「ギ…………ギャアアアアァァァ!!!!ギャアアアァァァッ!!!!」


大声で叫び始めた。

脳に響く、折角良くなってきたのに。

申し訳ないが、五月蝿いので首を掻っ切った。

ずぬぬ……、とナイフが首を通る感覚がよく分かる。

ピューっと血が周囲に飛び散った。


「ヒュッ…………フヒュッ…………ヒューーッ!!ふヒュッ…………」


皮1枚繋がっているだけなのに、まだバタバタと手足を動かす。

ヒューヒューと息を漏らしながら、恨めしそうな目で睨んでくる。

暫くすると、目に輝きは無くなり、息を漏らす感覚が短くなると…………。

やっと死んだ。


「さて、さっさと首を切ろう。」


一日分は、何とか持ちそうだ。

ゴブリンの首1個は、銅貨30枚に変換される。

つまり、合計5匹で1銀貨50銅貨に変化する。


宿賃払っても、余りある。

最近首切りナイフが錆びてきてた所だ。

少し上質な物を頼んでみるか。




ゴブリンの頭が入った麻袋を冒険者ギルドに持ち込んだ。

建物内は安定の木造建築で、ここでもおっさんが馬鹿騒ぎしている。

さっさとここを出たい。


「今日もお疲れ様です。」


ギルドのお姉さんが、ニコリと微笑む。

ありがとうございます、と軽く礼をすると麻袋をテーブルに置いた。

それをお姉さんが中身を確認する。


「えーっと……5匹ですね。少々お待ちください。」


お姉さんは、1銀貨と50銅貨を確認させるようにみせると、

僕の手前にポンと置いた。


「今回は、1銀貨50銅貨になります。」


渡された報酬を軽く礼をしながら受け取ると、早速ナイフを

新しくする為に、ギルドを出ようとした。


ふと、視線を感じ右を向く。

すると、昨日逃げ出した女性冒険者と目があった。

が、首が折れんばかりに視線を逸らされる。


…………何か悪いことしたかな。


頭を捻りながら、ギルドを後にした。






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