表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

日常

「はっ……はっ……よし……、10匹目。」


木々に囲まれた小さな広場の中心で、僕は息を荒らげた。

周りには血に塗れたオークが息絶えている。

地面には、血溜まりが大量にできている。


ある程度呼吸を整えると、血塗れた剣からナイフに切り替える。

1番近くのオークに歩を進め、首筋にナイフを突き立てる。。

長いことやって来たからか、随分と切り取るのが上手くなった。


ズズズ、と気味の悪い感触と共にナイフを当てた場所から、血が溢れ出る。

新しく噴出した血液は、足元の血溜まりに流れ込んだ。

ゾワゾワと不快な感覚が体を走る。数年前の僕なら確実に吐いているだろう。


完全に切り離したオークの生首を、小さな広場の中心に放り投げる。

そして、次のオークへとナイフを向ける。

10匹分切り離すのは、そんなに苦じゃなかった。


手に持った麻袋に、生首を詰め込んでいく。

1個、2個、3個、4個…………。

あっという間に麻袋は、満杯になった。


取り忘れは無かったかと、周りを見渡す。どうやら見当たらない。

僕は口笛を吹き、野良狼を呼び寄せた。

彼らはすぐさま駆け付けて、首の無いオークを一心不乱に食い散らかし始める。


これは、先輩冒険者の豆知識だ。

野良狼は、下手に冒険者に手を出さないらしい。

彼らは、僕らが倒した魔物を餌にすると言っていた。


さて、ギルドに帰ろう。

今日は、少し良い飯が食えそうだ。



帰り道、倒れたゴブリンを見つけた。

胸元に、炎魔法を受け風穴が空いている。

冒険者が倒したっきりで放置しているものと見られる。

勿体無い、これでも結構お金になるのに。


肩にかけていた麻袋を地面に下ろし、ナイフを取り出す。

ゴブリンの首に刃を当てて、切り離していく。

オークと違って、緑っぽい血液が溢れ出た。


「ぐ…………ギャッ…………グゥえ…………」


あら、どうやらまだ生きていたらしい。

コヒュッコヒュッ、と空気の漏れる音が出る。

可哀想に、死にきれなかったのか、高い生命力が仇となったな。


「だず…………ギィエ…………デェ…………。」


「今楽にしてやる。」


そんな事を言いながら完璧に胴と首を切り離す。

顔は、未だにぱくぱくと口を開閉させていた。


麻袋に顔を持っていき、詰め込もうとした時、

何だか奇妙な視線を感じた。

視線の方向に目をやると、若い女性冒険者が立っていた。

格好からして魔法使いらしい。


「あぁ、こんにちは。」


軽く一礼すると唖然とした顔で、真似するように一礼を返してくれた。

しかし、どこか上の空だ。よくよく視線を辿ってみると、

彼女は、切り取ったゴブリンの顔をジーッと見つめていた。


「あ、もしかして貴方がこのゴブリンを…………?」


そう問い掛けると、小さく頷いた。

後から持っていくつもりだったのだろうか。

これは悪いことをしたと、ゴブリンを麻袋に入れるのを中断した。

そして、生首を抱えて彼女に近づいた。


「持ってってください、勿体無いですよ。」


あくまでも優しく諭すように、彼女に話しかけた。

が、彼女は甲高い叫びを上げると、走って逃げていった。

何なんだろうか、まったく。






あの後、売り払ったオークとゴブリンの頭は、約10銀貨へと変化した。

今日は、少し高い物が買える。

ホクホク顔で、宿屋に向かった。


「あ、鈴。ここに居たんだ!」


後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

振り返ると、僕と同い年の二人の人物が手を振っている。

僕の友人の黒根と菅山だ。

クラスで唯一この街で留まってくれた。


2人の冒険者ランクは、C。

中級冒険者だ。


「あー、クロと菅っちゃん。どうしたの。」


立ち止まって、二人が近くに来るのを待った。

駆け足で近くに来ると、僕の肩に手を置いた。


「昨日近くの洞窟に行こうって行ったじゃん。

急に居なくなるし…………。」


「その様子じゃ、既に一狩り行ったな?」


赤黒く染まった服と麻袋を交互に見て、そう言った。

僕は少し申し訳なさそうに、あははと苦笑った。

昨日そんな事言ってたな、と頭の中で思い返す。


「ごめん、行ちゃった。」


それと同時にテンションが分かりやすく下がった。

必死に謝るが中々許してくれなさそうだ。


あ、そうだ。と麻袋から銀貨10枚を取り出す。

ニコッと2人に笑い掛け、こう続けた。


「今日、ちょっと頑張ったんだ。奢るよ。」


2人の顔は、少し残念そうな顔から一転した。

これまた分かりやすくテンションが上がり、肩を組んできた。

本当に分かりやすい、心の中で苦笑いした。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ