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異世界恋愛

婚約破棄は受け入れますが、その後のイベントはお断りします!

作者: 宮里蒔灯

一度でいいから婚約破棄ものを書いてみたかったのです。

「公爵令嬢マーサ・コーラル! 本日を持って君との婚約を破棄する!」


 凛とした声が大広間に響く。

 ざわめく周囲の視線を一気に集めたのは、たった今「傷物」になった私、マーサ・コーラルである。


 ……ついにこの日が来たのね。


 私は背筋を伸ばし、婚約者「だった」彼、サングロウ王国王太子であるロナルド・サングロウを静かに見つめた。


 今日はロナルドの16歳の誕生日。

 サングロウ城内の大広間で、私との婚約発表を兼ねた誕生日パーティーの真っ最中だった。パーティーの内容ゆえ、諸外国の王族や国内の有力貴族など、来賓の数はとても多い。


「この男爵令嬢ニコル・レモングラスへの数々の非道な振るまいや言動、しっかり報告を受けたぞ! 身分を傘にそのような行為に加担し、醜い感情に身を任せるなど、共に国を担っていくことなど到底不可能だ。よってこの婚約破棄は正当のものなのである!」


 婚約発表で私が立つはずだった壇上には、金髪碧眼で美麗な面立ちのロナルドが、艶やかな波打つ黒髪を腰まで伸ばしたあどけない美少女ニコルの腰を抱き寄せていた。ニコルは目を潤ませてロナルドを見つめている。

 ちなみに私は薄い黄色の直毛と深緑の瞳、中肉中背のどこにでもいる平凡な容姿。


 ロナルドの発言に呆然としている自国の王に向けて、私は淑女の礼をして口を開いた。


「国王陛下、発言の許可を頂いてもよろしいですか?」

「……許す」

「恐れながらロナルド殿下に申し上げます。婚約破棄の件は、殿下や私の一存で決められることではありません。この縁を結んでくださった国王陛下や私の父など、関係者各位を含めて話し合いをしなければ。また誓って、私はニコルさんを陥れるようなことはしておりませんわ」


 ロナルドの忌々しそうな視線など意に介さず、私は毅然と言い切った。そして心の中であきれる。


 全く、ロナルドって何て愚かなのかしら。国賓が集まった公の場で、国王が決めた婚約を勝手に破り、更に自分の恋人を同伴させるなんて。非常識にもほどがあるでしょうが。王太子が自国を貶めてどうするのよ?


「私も関係者の一人として発言を許可願えますでしょうか? 国王陛下、ロナルド殿下」


 周囲が緊張感で静まる中、私にゆっくりと近付いてきたのは、外務大臣を務めるお父様。

 口許に微笑みを浮かべているものの目は笑っておらず、青筋が浮かんだ顔は今まで見たことがないくらい恐い。私を自分の背中にかばい、静かに怒りを露にしているお父様に、当事者のロナルドはもちろん、国王陛下までかなり怯えていた。

 お父様の陰に隠れながら、私は心の中でため息をつく。


 婚約破棄と悪役令嬢なんて、更にテンプレ的な展開になってきたわね。これからいつ「ちょっと待った!」が入るのだろう。見ず知らずの存在から愛の告白や、いわゆる「ざまぁ」とか、そういった婚約破棄後のイベントはとにかく回避しなくちゃ。


 ◇ ◆ ◇


 そう、私には日本人女性だった前世の記憶がある。といっても全部は覚えていないのだが。


 思い出したのは今から約一年前、ロナルドが急遽一人で参加したパーティーで、彼の不注意によりニコルを怪我させてしまった日のことだった。

 いつもパーティーに同伴していた私だが、その日の体調は最悪。自分の部屋で高熱にうなされていた。この世界ではない別の世界の記憶が次々に思い出され、錯乱状態に陥っていたのである。


 ようやく落ち着いた後、両親と、看病してくれた専属執事のリヒトと、長年我が家に仕える執事長のザルツに、前世の記憶を思い出した旨を伝えた。みんな驚いていたが、私への態度はその後も今まで通りだったので、とてもありがたかった。


 一方ロナルドは、自分の周りにいない小悪魔タイプのニコルにどんどん惹かれていく。彼の立場や世間体などを私や近しい者たちが言葉を尽くし説得したが、効果はなかった。

 ロナルドが半ば意地になってニコルと過ごす時間を増やしていく中、私はふと思う。


 なんか、前世の私が好きだった婚約破棄系の恋愛小説の流れに似てる気がする……。


 前世の細かい素性や生い立ちなどはあまり覚えていないのだが、趣味や好きなものの記憶は残っており、その中でもネット小説にはまっていたことは鮮烈に覚えているのだ。


 今はいつ婚約破棄されてもおかしくない状況。しかも何故だかロナルドから目の敵にされている。

 なのでさしあたっての問題は、婚約破棄後のことである。


 私には、大切な人たちがいる。

 優しい両親、頼りになる専属執事リヒト、有能な執事長ザルツ、気のおけない友人たち。


 私の望みは、これからも彼らと共に穏やかに生きていきたい。ただそれだけなのだ。


 謂れのない罪を被せられて一族全員処刑されたり国外追放されたりするのは、いわゆる悪役令嬢ものに多かったが、ただの婚約破棄の物語でもないとは限らない。


 また、見ず知らずのなんかすごい立場や能力の存在に、「じゃあ俺が連れていっても問題ないよな?」と、一方的に見初められて勝手に連れ去られるような事態も困る。あれはただの誘拐だと思う。


 更にいうと、「ざまぁ」も求めていない。周りが止めても聞きもしないロナルドとニコルの身勝手な行動は、この先どう見ても茨の道に繋がっているだろう。断罪してまで追い討ちをかけるのもどうかと。


 というわけで、婚約破棄は謹んで受け入れ、バッドエンドや強制お迎えエンドやざまぁエンドなどイベント各種は回避すること。

 自意識過剰だろうが何だろうが、今後フラグっぽいものは全て折ること。


 私はこれらの使命ミッションを心に強く誓ったのだった。


 ◇ ◆ ◇


 コーラル家は国一番の経済力や発言力を持った忠臣として名高いし、そもそもお父様に頼み込んでロナルドと私の婚約を幼い頃に捩じ込んだのは、他でもない国王陛下ご本人。おいそれと無実の罪を押し付けられることはないはず。


 それにしても、コーラル家を親族にして謀反を起こさせないための政略結婚だってこと、ロナルドは知っているのかしら? ……知らないからこんなことになったのか。


 そしてこの世界は、いわゆるファンタジー的な要素がたくさんある。魔族や精霊や聖獣なども現実に存在するし、それぞれ人間を超越した力を持つことから畏怖の対象になっている。


 しかし、魔族の作る魔道具を前世で言うところの家電として日々の生活に利用し、大地の精霊王の力で緑豊かで肥沃な土壌を保ち、神の遣いとされる聖獣が天変地異の前触れに現れ被害を少なくしてくれるのは、全て事実なのだ。

 これらは私の教育係でもある執事長のザルツからの受け売りだが、生活において恩恵にあずかっているのも事実なので、私個人は畏怖も偏見もない。ありがたいことだと思っている。


 ニコルへのいじめは本当に身に覚えがない。リヒトから護身用にと渡された、前世の監視カメラのような映像を残せる魔道具があるので、それで証明しよう。


 私がつらづら考えていると、徐々に周囲も騒がしくなってきた。


「ロナルドよ! 何を血迷ったことを! 今すぐ訂正し、マーサ嬢に詫びよ!」


 あまりのことに絶句していた国王が、玉座から立ち上がって自分の息子を叱責した。再度大広間に静寂が訪れる。


「ですが父上、何度もニコルとの仲を認めてほしいと懇願したのに聞く耳を持ってくださらなかったではないですか。それに……」

「お父様、誇り高きコーラル家の娘であり、わたくしの一番の友が、男爵令嬢を陥れるような愚かな真似をするわけがありません」


 ロナルドの情けない声に、鈴を転がしたような可愛らしい声が被さった。

 ロナルドの双子の妹、第一王女のロザリア・サングロウ。侍従のジョーイを伴って、私の元へ近付いてきた。私は嬉しいやら申し訳ないやら、戸惑ってしまう。


「ロザリア、ジョーイまで……」

「それよりも、国賓が集まった公の場で、国王であるお父様が決めた婚約を勝手に破り、更にマーサ以外の女性を同伴させるなんて、実の兄ながら非常識にもほどがありますわ。そもそもマーサとロナルドが婚約関係なのは周知の事実。なのに、婚約者がいながら別の女性を気にかけるなんて、立場を忘れての責務怠慢、加えて不誠実とは、ロナルドは恥を知るべきです」


 近付いてきたロザリアは私に身を寄せ、正論でロナルドを責めた。その内容は、私が先ほど毒づいていたこととほとんど同じだったため、救われた思いがした。

 隣国の貴族子息で、修行のためロザリアの側近として働くジョーイが、労しげに私を見つめる。ロザリアが信頼をおく彼は、私の数少ない友人の一人だ。


「ロザリア、お前には関係な……!」

「ねえマーサ、あなたほど信頼できて、頭も良く、謙虚で、自分に厳しく他人に優しい、気品溢れる次期王妃として相応しい人は、世界中探したってなかなかいないわ。見る目がない男など放っておきましょ。私が必ずマーサだけを思ってくれる素敵な男性を紹介するから」


 兄と同じ金髪碧眼、そしてあどけなさと色気を兼ね備えた美少女であるロザリアは、ロナルドの言葉に再度被せながら、艶やかに笑った。ジョーイも何故か嬉しそうな笑みを浮かべている。


 友の優しい言葉に癒されながら、一つ気にかかることがあった。

 嫌がらせがニコルの被害妄想じゃないなら、誰かしら実際に彼女へ悪意を向けていたことになるのだが。望んでないのに私には多くの取り巻きがいる。もしかしたらその中の誰かが勝手に仕返しをした可能性に思い至った。それはやはり自分の責任なのかもしれない。


「私の努力が足りなかったのでしょう……」


 取り巻きを抑えることができないなんて、忠臣コーラル家の娘として情けない。私が思わず漏らした独り言を聞き取ったロナルドは、何を勘違いしたのか少し辛そうな声で話しかけてきた。


「マーサ、君と過ごした日々は楽しかったよ。君は同い年だが頼りになる姉のような存在だったし。愛情は芽生えなかったとはいえ、友として仲間として、二人で国をもり立てていけると思っていたのは本心だった」


 一旦言葉を切ったロナルドは視線をニコルに戻した。愛しい女性を熱心に見つめる彼は、甘い声で続けた。


「しかし僕はニコルに出会ってしまった。君がニコルにした嫌がらせを最初は信じられなかったよ。しかし証拠や証人が出てきて、それに怯えるニコルを見たとき、自分が本当に守りたい相手が誰なのか、愛を伝える相手が誰なのか、ようやくわかったんだ。ああニコル、僕と共に生きてくれるかい?」


 私の目の前で、ロナルドがニコルを強く抱き締めた。


 これで大団円と思っているなら、ロナルドは相当考えが浅い。

 思わず半目で呆れると、同じ表情をしたロザリアと目が合った。さすが親友、考えていることは同じか。

 勉強やマナーは完璧だし、剣の腕前も悪くないが、ロナルドは良くいえば素直、悪くいえば単純な男だった。

 きっとこの状況も、ニコルからの入れ知恵だろう。家の者や信頼する人々が調べたことを総合すると、彼女はやはりしたたかなようだ。


 ニコルは、自分と一緒になりたければ他国の王や貴族たちがいる場で婚約者を断罪すればいい、みんなが証人となり認められると、ロナルドに耳打ちしたらしい。それを鵜呑みにして実行するなんて、本当に浅はかなことだ。


 公の場で、サングロウ国王陛下が決めた婚約者を息子である王太子がないがしろにしたという事実は、一生消えない。国王の命に従わなかったとして、謀反の疑いをかけられたとしてもおかしくないのだ。


 周囲ももう黙ってはいない。

 とりわけ、列席している他国の王族や有力貴族たちは、ロナルドの愚かさやうかつさに失笑気味である。国内の貴族たちも渋い表情を浮かべていた。

 国王陛下は真っ赤な顔で震えている。息子が、自分で自分の首を絞めていることにまだ気付いていない様子に、怒り心頭のようだ。


 お父様が私を振り返り、そっと囁く。その顔は真剣だった。


「私はこの場をおさめなければいけないが、マーサはもう家に帰りなさい。心配しなくてもお前のことを信じている。絶対に不名誉な事実は残さない。この広間の外に家の者が待機しているから。マーサ、心から愛しているよ。お前は、自分の心のままに生きていいんだ」

「お父様、ありがとうございます。私も愛していますわ」

「ああ、知っているよ」


 私の言葉にお父様は柔らかく微笑み、改めて顔を引き締めて国王陛下へ向き直った。


「国王陛下、先程娘のマーサが申しました通り、婚約破棄の件は私がいれば済むことでございます。折角の祝いの席を騒がせたこともあり、娘にはこの場から辞してもらいます。よろしいでしょうか」

「構わん。マーサ嬢、此度のことは改めて謝罪する」

「もったいないお言葉でございます、陛下。それでは皆様、お騒がせ致しまして申し訳ありません。失礼致します」


 思惑が外れて動揺するロナルドや、話についていけない王族や来賓たちに素早くかつ丁寧に礼をして、ドレスを翻して手近の扉へ早足で向かう。


 これで本当に、終わり、ね。


 廊下に出て息を整えていると、頬に何か冷たいものを感じた。


 ここ一年悩まされていた問題が解決され、とても清々しい反面、胸の奥が少しだけ締め付けられる。

 初めて会ったときからニコルが現れるまで、少なくとも私はロナルドとの未来を描いていた。いつかは彼も、私を愛する伴侶として見てくれるはずと思っていた。


 やっぱり、初恋は実らないのね。まだ考えられないけど、もし次に恋をするなら、お互い想い合って幸せになりたいな。


 そっと目元をぬぐっていると、とんでもなく禍々しい気配を漂わせた美丈夫が三人、揃って現れた。


「リヒト、ザルツ、それにジョーイまで。どうしてそんなに恐い顔してるの?」


 戸惑う私の言葉に、彼らはにっこり笑う。すると三人を纏っていたどす黒い雰囲気は一気に霧散した。さっきのは一体何だったのだろう。


「いや? 何でもない。それよりも、立派な対応だったな。それでこそマーサだ」


 黒髪癖毛のリヒトは、男性的でとても端正な顔立ちだ。鍛え上げられた体から色気がにじみ出ている。人の目のないところではざっくばらんに話し、私の頭をぽんぽんと撫でる彼は、一人っ子の私にとって頼もしい兄のような存在。


「さあ、こんな忌々しい場所から早く帰りましょう」


 眉間に皺を寄せたザルツに肩を抱き寄せられた。

 明るい緑色の長い髪を一つ結びにして、中性的で美麗な容姿。銀縁の眼鏡をくいっと上げるのが彼のお決まりのポーズ。酷薄そうな顔にみえて、視線は気遣わしげに私の様子を伺っていた。長年コーラル家に仕えるザルツは、包容力があり、とても信頼できる。


「ロザリア様が、自分の代わりにマーサ様をお見送りするようにと。私自身も、あなた様が心配でしたから」


 私の両手をそっと握ったのはジョーイ。ふわふわと柔らかな赤毛に柔和な笑顔。年齢は私やロザリアよりも上だが、少年のような天真爛漫さだ。ロナルドの婚約者として同年代の男の人とほとんど交流を持たなかった私だが、彼はとても話しやすくて心が休まる。


「みんな……本当にありがとう。私は平気よ。王太子殿下に婚約破棄されたから当分は縁談もこないだろうし、勉強や趣味に励めるわ。ロザリアにも、よろしく伝えてちょうだいね」


 三人とも私を思いやってくれているのがよくわかり、とても嬉しくなった。

 すっかり安心した私は、城の廊下を軽やかに進み、待たせていた我が家の馬車へ乗り込む。穏やかな未来を夢見ながら。


 だから、リヒトとザルツとジョーイが私の馬車を見送った後、三人とも踵を返して大広間へ戻ろうとしていたなんて、考えもしなかったわけで。


 当日の婚約破棄後のイベントのみを警戒していた私は、その後「三人の婚約者候補」が現れるとは、夢にも思わなかったのである。


 ◇ ◆ ◇


「ロナルドの野郎、マーサから愛されていながら、俺が差し向けたサキュバスのニコルにころっと籠絡ろうらくされやがって。魔物の餌にしてやりてぇが、マーサはそれを望まねえだろうなぁ」


「マーサは優しい性根だ。しかしマーサを泣かせた罪は大きい。あの男が所有する土地だけは、当分不毛の大地にするか」


「あらら、魔族の王であるリヒト様と、大地の精霊王のザルツ様をここまで怒らせるなんて、ロナルド殿下は相当やってしまったなぁ」


「何を他人行儀な。貴殿も先程怒っておったではないか。そもそも神の遣いである聖獣の貴殿が、ただの人間であるマーサを気にかけていたからこそ、われやこの魔族の王が興味を抱いたのだぞ。今もマーサの良き友であるこの国の王女の侍従をしているのは、貴殿もマーサに惹かれたからであろう」


「ふふっ、そうですね。マーサ様は前世でひどく辛い人生を歩んできました。我が主である世界の創世神が彼女の存在を知り、次は幸せになるようこの世界の人間として生まれ変わらせてから、僕はそのお目付け役として見守ってきましたからね。やはり独占欲はあるかもしれません」


「俺だって、何度マーサを自分だけの物にしたくて連れ去ろうとしたか。結局神の力に阻まれて敵わなかったんだよな。まさか前世持ちとは知らなかったぜ。しょうがなく執事としてコーラル公爵家に潜り込んだが、正直今の生活は充実している。マーサの側にいて、マーサの笑顔を見られるだけで、心が満たされるんだ」


「マーサは魂だけでなく、心も清らかなのである。そして偏りない思考を持ち、謙虚で素直。我の話を全て鵜呑みにせず、きちんと疑問点を上げられるところも素晴らしい」


「魔族の王は兄貴っぷりが、精霊王は教育係が板についてますねぇ。おや、大広間が騒がしいですが」


「コーラル公爵が説明してんじゃねえか? 一年前、俺とザルツが正体を明かし、俺からは魔道具の売買優先権、ザルツからは国土の豊穣100年分の約束をそれぞれ持ちかけられた。条件は「マーサとの縁談」。」


「だが、マーサは王太子と婚約中。それならば、王太子が次期国王の素質があるか試させてもらう。試す内容が内容だから、マーサは婚約破棄され傷物になる可能性がある。そうしたら、我たちが直接その場に現れ、マーサのおかげで売買の優先権や豊穣の大地が手に入ると触れ込み、マーサとコーラル家の名誉にすり替える。これら全て国王以外には口外禁止」


「神様も「より幸せにできるなら」と許可してくださいましたし、三人で計画した甲斐がありましたねぇ! これでやっと僕たちはマーサ様に愛を伝えられますよ。そうだ、約束しませんか? 誰が選ばれても恨みっこなし。惜しみ無い祝福を与えると。マーサ様にはぜひ幸せになっていただきたいですから」


「いいぜ! マーサは俺が未来永劫幸せにしてやるのは決まってるけどな!」


「承知した。またザルツは独りよがりに。われこそが、マーサの真の理解者である」


「ふふっ、ロザリア様に後ろ楯になってもらって、マーサ様とより親しくなろっと」

さて、誰がマーサの心を射止めるのでしょうか?

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[一言] まぁ新たな四人目にして人間な第三者が現れない限り主人公の望みは何一つ叶わないとしか思えませんね、人外が人外の能力や人材をもって尽く人生を邪魔された上で人外の元に拐われてくなんて可哀想に...…
[良い点] 面白いです!面白かったです!読みやすい作品でした。 [気になる点] ニコルは結局なんなんですか? [一言] 続きはありますか?
[良い点] 短編小説とは思えない程クオリティが高く、連載小説で一度読んでみたいという気持ちになりました。 婚約破棄物でサキュバスが出るのも新鮮でした。 [一言] ロザリアさんが好きになりました…
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