旅立ち
ポッーーー
白の鬼火、白虎様が朱雀の地底湖へやってきた。
本来は、女王である朱雀様以外は、立ち入り禁止のはずなのに。
ポッーーー
黒の鬼火、これは玄武様だ。
一体どうして?
じゃあ、もちろん…
ポッーーー
緋の鬼火、やっぱり青龍様まで…
鬼門の各長が、一同に集まるということは、ただならぬことではない。
現に今まで、一度も揃ったことを見たことがない。
それに、地底湖まで入って来るのを見たのは、初めてだ…
なんだか不安で押しつぶれそうになりながら、繋いだ母様の手を、更に強く力を込める。
母様と視線は交差するのに、いつものように、優しい言葉はかけてくれない。
一体、何が起こるの?
不安なのは、他の子供たちも同じで、動揺の声が洞窟内に響き渡る。
「皆の者、聞くが良い。今ここにいる者は、これより地上で暮らして行くこととなる。その為、母から離れ、各長と一緒に行動し、生きる術を学ぶが良い。」
朱雀様の一声で、動揺の声は収まるも、母様と離れなければならないという言葉で、泣き出す子供が多くいた。
私も泣きたかったけど…
寂しいけれど、早く一人前になって、また父様や母様と一緒に暮らすんだ。
そう心に誓い、こぼれかけた涙を、懸命に振り払った。