『重陽』
九月九日は五節句のひとつ、重陽
旧暦では 菊の咲くころなので
〔菊の節句〕とも呼ばれています。
昔、中国では
奇数を陽の数とし、
偶数を陰の数とし
陽の極である[9]が重なる9月9日は、
大変めでたい日とされました。
日本には、奈良時代の初めに中国から伝わり、
宮中では邪気を祓う為に菊を飾ったり
不老長寿の願いを込めて
菊の花びらを浮かべた菊酒を酌み交わし
詩歌を詠む観菊の宴が催されました。
平安時代には、
〔着綿〕も行われるようになりました。
着綿とは、
九月八日のうちに菊に真綿を被せ、
九日の早朝に花の香りと夜露のしみこんだ
綿を顔にあてます。
菊の露は長寿に効果があると云われ
この行事も、
不老長寿の祈願とされました。
この時期の茶の湯の席の主菓子は
土台の練りきりにヘラで
菊の花びらをつけ
その上に白い餡を綿のように
被せたものを用います。
昨今の茶会では
薄茶の茶会でも主菓子が
出されるようになってきましたが、
本来は、薄茶には干菓子を合わせ
主菓子のどっしりとした甘味には
濃茶をと考えられておりました。
余談ですが、茶の湯において
菓子の役割がいまのようになったのは
比較的新しく、砂糖の製造が盛んになった
江戸時代中期のことだと考えられます。
と、すれば千の利休の時代の菓子はと言えば
栗や干し柿などの果物で
現在でも果物を「水菓子」と呼ぶのは
こんなとこから来てると思うと
楽しいですね。
現代ではあまり馴染のない節句ですが、
菊を愛でつつこの歳時記を肴に
美しい菊の花々に
不老長寿の願いを込めて
お酒好きの仲間とともに
風雅で、優雅な夜を過ごしてみませんか?
重陽の 香を利く陽の めでたさや
朝子 2017・8・28
お酒は呑むもの、飲まれちゃあかんよ?