7話 路地裏の酒場
店主の描いてくれた地図に従って進むと路地の奥の方にひっそりとその酒場はあった。
扉を開けて中に入ると昼間から酒を飲んでいる客が数人。
店内はいい感じにオシャレで拍子抜けするほどだ。
「いらっしゃーい」
オネエ口調なガタイのいいマスターが奥のカウンターから声をかけてきた。
カウンターの前まで行くとあまりのでかさにサラが背中に隠れてしまった。
「あらぁ、別に何もしないのに~それよりご注文は?」
「酒以外のものを2つ」
「そっちの子はわかるとしてあなたはのまないのぉ~?」
「俺は彼女の護衛だ、護衛が酔っちまったら話にならないだろ」
「あらあなた、見た目だけじゃなく中身もイケメンなのね~気に入ったわ~」
ゾクリ、背中に寒気を感じた。
この人が情報通じゃないなら今すぐにでも逃げ出したいくらいだ。
「ところであなたよくここがわかったね。ここはこの街に長く住んでる人じゃないと分からないはずだけど」
「あぁ、宿屋の店主に教えてもらったんだ」
「な・る・ほ・ど・ね。で、何をアタシに聞きたいわけ?」
飲み物を出しながらウィンクを飛ばしてくる。
「2つあるんだ」
宿屋の店主によるとお金をだして教えてくれる情報は1つだけ。
複数聞きたい事があるならマスターが出す厳しい条件をクリアする必要があるらしい。
「一応、剣の腕はある。それと雑用や力仕事でも構わないんだが」
「ん~そうねぇ~基本イケメンなら『あっち』のほうをおねがいしてるんだ・け・ど~」
「ダメ――――っ!!!!」
サラが大声を出しながら背中から出てきてすぐ引っ込んだ。
ナイスだ。
流石に情報に対して失うものが大きすぎる。
「しょうがないわねぇ、その子とあなたが私好みのイケメンだってことに免じて今回は1つ分の金額で許してあげる」
「あ、いや情報量は2つ分きちんと出すかr」
「1つ分でいいわよ、その代わりこの街にいる間毎日ここに来てちょうだい。ここに来るのはむっさい男ばかりだからあなたのようなイケメン毎日見て話せるだけで情報量1つ分の価値があるわ」
「そ、そうなのか」
正直、全く分からないがまぁマスターが納得してるならいいか。
「で、まず1つ目は?」
「えっと…サラ」
「少し長めの金髪で爽やかイケメンでちょっとアホっぽくて盗賊な人を探してるの」
すっごい大雑把な説明過ぎてマスターがぽかんとした顔をする。
「サラ、もう少し詳しく説明できないのか?」
「えーでも私絵描けないし」
「もしかしてだけど~この人じゃない?」
無駄にクオリティの高い絵をササっと描いて見せてきた。
「あーーーーっ!この人!この人が助けてくれたの」
あんな大雑把な説明だけでわかるなんてこの人並みの情報屋じゃないな。
だからこんな路地の奥のほうにあるのか。
「こいつはディーンっていうの。家を持ってないから酒場を転々としているわ。だから今どこにいるかはちょっとわからないわね」
「そうなのか、名前が分かっただけでも大きな収穫だありがとう」
「で、2つ目は?」
「彼女、サラがペンダントを少年に盗まれたんだ。どうしたら取り戻せるかこの街に詳しくないからわからなくて」
「…多分もう『ファイトオークション』に出品されているわね」
「『ファイトオークション』?」




