6話 盗賊の街 2
―翌朝
「名前まではわかんねぇよ、でもあの格好はどう見ても盗賊だ。盗賊のことなら『ホワイトホエール』って裏路地にある酒場に行って聞くといい」
そう言うと店主は簡易的な地図を描いて渡してくれた。
「ありがとうございます」
「いいってことよ。礼はまた泊まることがあったらここを利用してくれるってことで」
宿の外でもう一度描いてもらった地図を確認した。
「この先にあるマーケットを少し行って右か…」
正直地図を読むのは苦手だ。
サラが少し街を見て回っててくれたおかげである程度の場所はなんとか把握できた。
「ねぇジャックこの街のマーケットすっごいんだよ、ロバとか馬とかがたっくさんいるの」
「ロバや馬はそんなに珍しくもないだろ」
自分のことは全く思い出せないがロバや馬は商人が荷物を運ぶのによく使っていることは覚えていた。
俺がいた街にもここのような大きなマーケットがあったのかもしれない。
「ロバは初めて見たけど、馬にもいろんな色があるんだね」
「まぁよく見かけるのはほぼ茶色系だな」
「私白いのしか見たことないの~」
さらっと言ってるが白って確か貴族や王族しか使えないはず、まさか…いやだが仮に王族や貴族だとしたらお付きとかそういうのなしにこうもウロウロできないか。
サラに関する疑問が一つ増えてしまった。
ゲンベルのマーケットは道の両側に露店形式で店がズラッと並んでいた。
盗品や強奪品だからなのか使用感があったり、刃がくすんでいたりしている店もあれば新品なのか見分けがつかない店まである。
路地のほうには用がなければ入らないほうがよさそうな店や怪しい取引をしている人達もいる。
「ねぇ本当にその『ホワイトホエール』ってとこ大丈夫なの?」
「さぁな、いってみるしかないが、万が一ヤバそうだったらなんとかするさ。安心しろ」
流石にここは奴隷取引とかもおこなわれてる街だ、出来ることならなるべく安全な策をとっていきたいとこだがなかなか難しいもんだ。
それにサラのことだ、宿屋に待機してろって言ってもいうことを聞いておとなしくしているとは思えん、今はこれが一番いい策だと願おう。
「いいか、俺が酒場で話を聞いてる間俺のそばをはなれるn」
「キャッ!」
いきなり小柄な少年がサラを突き飛ばすように走り去っていった。
「大丈夫か?!」
「うん、平気」
「なにか盗られたりは?」
「多分大丈夫だと…あれっ?!ポケットに入れておいたペンダントがない!!」
サラはその盗られたペンダントをよくポケットから取り出してみていた。
どこかであのガキに目をつけられたのかもしれない。
「どうしようジャック!あの子もう姿が見えないよ」
半分泣き出しそうな顔でこちら見てきている。
「相手はおそらく盗賊。盗賊のことなら『ホワイトホエール』か…」
「大丈夫だ、なんとしてでも取り戻してやるから」
俺たちは足早に『ホワイトホエール』へと向かった。




