5話 盗賊の街 1
「ここは?」
目を開けると見知らぬ部屋のベッドの上だった。
体が少しだけ痛む。
ベッドの上ということは、盗賊団は倒したのか?
わからない。
盗賊団のリーダが何かを言っていた、サラの悲鳴も聞こえた。
そこまでしか覚えていない、なぜか急にそこで意識が遠くなって…。
それから?それからなにがあった?
俺は…
ガチャっ
「ジャック!よかった。目、覚めたんだね」
「サラ…」
よかった、サラは無事だった。
「なぁ?盗賊団は?」
「なーに言ってるの。ジャックが倒してくれたんじゃないー、フォースの加減間違えて倒れちゃったけどね」
明るくそう言っているが、明らかに俺に気を使って嘘をついていた。
「なぁ、気を使わなくていい本当のこと教えてくれ」
「今は知らないほうがいい!」
即答だった。
いつものサラからは考えられないほど強い言い方。
「すまない、今は聞かないでおく」
「うん、そうしたほうがいい。私も強く言いすぎちゃったごめん」
「いや、サラは悪くない。俺のためを思って言ってくれたわけだし…でも、でもさいつか教えて欲しいもしかしたら記憶を少しでも取り戻すきっかけになるかもしれないし」
「うん、ジャックに話しても大丈夫そうになったら話すよ」
「ありがとう」
聞きたいことは山ほどあるが、今はその言葉だけで充分な気がした。
「ところでここはどこなんだ?」
聞こうと思っていてすっかり聞きそびれいた。
「ゲンベル、盗賊の街ゲンベルよ」
「え?でも俺倒れたんだよな?この宿屋まで誰が運んだんだ?」
初めて助けてもらったときは通りすがりの商人に運んでもらったらしい。
今回も同じパターンと思ったが今ゲンベルは西側、俺たちの来た方角からの商人の受け付けはしていないと聞いている。
「えーっとね、背はそこそこ高めで、めっちゃイケメンだったー」
「は?」
「でも彼ジャックをうまく持ち上げて運べないから、ゲンベルから荷車借りてきて運んだんだよー」
体が痛むのはフォースうんぬんよりそれのせいな気がしてきた。
「で、そいつの名前は?」
「わからない。宿屋についてベッドに運んだら「おっと礼はいらねぇ、俺はただの通りすがり名乗る名もないさハーッハッハッハー」ってそこの窓から飛び降りて出て行っちゃったから」
「なんだそら」
しかし、2階の窓からためらいもなく飛び降りるってことは風のエレメントをある程度使いこなせるものか、こういうことに慣れたこの街盗賊しかいないな。
とりあえず宿屋の店主は顔を見ているわけだし、ついでに話を聞いて街を一通り探してみるか。




