4話 盗賊団
「へへへっ、殺しはしねぇからさっさと女と荷物を置いて逃げな」
薄汚い笑みを浮かべながら盗賊たちが周りを囲んでいく。
いくら森を抜けたからといってもここはまだ森から数十メートルの位置、周りの奴らはごり押しで突破できたとしても茂みの中から遠距離攻撃されたら正直、今の俺では勝てるかわからない。
「どうしたぁ?逃げねぇのかぁ?逃げねぇなら殺るまでだがよぉ」
「( くそっ、ごり押しだろうとなんだろうとやってみるしかねぇか。)」
軽く深呼吸をし
「彼女は俺の恩人であり守るべき人でもある。ここでしっぽ巻いて逃げるんて出来るかよ!!」
背中に背負っていた大ぶりの剣を抜きグッと力を込めて持つ。
剣の技術はおろか、オーラやフォースさえ一度しか試していない、それも実戦ではなくてだ。
「…でもやってみるしかねぇんだ」
「あぁ?なんだって?よく聞こえねぇが別れの言葉は済ませたかっ?!」
言い終わると同時に相手が短剣を構え突っ込んできた。
周りも一斉に動きだす。
「『プラーミアヴェント』」
2人の周りを風が吹き荒れる。
「へ?わああああああああああああああなんだこりゃぁああああ」
飛びのいたリーダー以外の子分たちが次々と焼け崩れていく。
炎の風が吹き荒れる中
驚くサラと驚きで固まる盗賊リーダー。
記憶を失ってから初めて実戦で使ったフォース。
どんなフォースやエレメントが使えるかは覚えていた。
でもここまでするつもりはなかった。
この場を乗り切るだけ力でよかった…なのに。
呆然としているジャック見て
「へっ、へへへへへこいつよくも俺の大事な子分達を…くそったれが!」
短剣を震える手で再び構え直し背中めがけ突っ込んだ。
「おめぇ強いんだかなんだか知らねぇが背中がガラ空きだぜぃ!死ねやあああ」
「ジャックっ!!!」
サラが悲鳴をあげる。
しかし背中に刃が届くか届かないかのとこで、短剣は地面に落ちた。
「ま、マジかよ…こいつなん…でっ」
盗賊団リーダーの体を大ぶりの剣が貫いていた。
辺りに血が飛び散る。
「俺様に気安く触るな下等が」
ジャックの目は先ほどとは打って変わり冷たい色を放ちながらゴミを見るような目で盗賊団リーダーを見据えていた。
「ジャック?ねえどうしちゃったの?」
サラが駆け寄り触れるとジャックは意識を失い地面に倒れた。
目が覚めたのはゲンベルの宿屋のベッドの上だった。




