29話 提案
「提案?」
ホークのにたついた顔からしてどうせ、ろくな提案でないことは容易にわかる。
だけど、俺もここでホークに惨敗したまま、というの訳にはいかない。
もう一度戦うチャンスをもらえるのなら…。
仕方なく、どんな提案か問うとホークは教えない、と即座に言い切った。
「お前が俺の提案を受ける。と言うまで教えない。どうせあそこには強い心を持たぬ者が行っても死ぬだけだ」
どうする?と言わんばかりにこちらをじっと見据えてくる。
「…く」
立ち上がった瞬間体全体に痛みが走る、再び地面に膝をつけてしまいそうになるのをなんとかこらえた。
「行くに決まってるだろ!」
ホークは最初からそういうだろうと思っていたと、相変わらずにたついた顔をしながら、用意させた紙に何か描いていく。
「これがそこへの地図だ」
受け取って見てみると、物凄い大雑把な絵と行くべき場所に印が付いていた。
「…この地図を読み解くことからが試練なのか?」
俺がぼそっと言ったことが聞こえたのか、ホークが顔を赤くする。
「下手で悪かったな!絵を描くのは苦手なのだ!だからと言ってお前に細かく教える気は無いぞ!」
機嫌を損ねたのか、それとも赤くなった顔を見られたくないのかホークは背を向けてしまった。
「悪かったよ、ところでこの印のところに行って何をすればいいんだ?」
相変わらず背を向けたまま試練について話し始める。
「提案した試練の場所がある山は、代々この国の強き者たちが己の強さを証明するため登っている山だ。手前に広がる森から山の頂上付近まで並みのものでは生きて帰れないほど強い獣たちが生息している。更にそこを越えられても、多くの者は頂上に住む主に殺され、生きて帰れるのは真に強い者か物凄い運のいいのやつだけだ」
その頂上に行くのが試練なのか?と聞くと、そうだとホークは頷いた。
「ただし、単に頂上に行って終わりというわけではないぞ。頂上には『天の樹』と言われる大樹がそびえ立っている。その樹に実っている果実を持って帰るのが試練だ。果実をとったら主を倒さず帰ってきていいぞ。まぁお前にそこまで行けるかわからんがな」
ホークは俺が戻ってくる確率はそこまで高くないと思っているようだ。
「期限とかはあるのか?」
「ない」
なら、必ず戻ってきてお前の驚いた顔を見てやると大口を叩くとホークは、少しこちらを振りむき、
「口だけにならないことを期待するぞ」
と仏頂面で答えた。




