3話 山を越えて
あれから山賊が出ることはなく夜が明けた。
徐々に朝日に包まれゆく森。
それと同時に鳥たちが一斉に鳴きだす。
「サラ、起きろ朝だぞ」
「ん~もう少し」
「おい、今日中に街につく予定なんだぞ」
ゴロリと寝返りを打ちながらのんきなことを言っているがここから街まではあと半分ほどある、道中山賊や盗賊に出くわせばまた野宿になってしまうことだってある。
昨日は現れなかったが今日も同じとは言えない。
だからと言って長旅の経験があるとは見えない彼女のためにも、なるべく焦らせるような策は取りたくないがなかなか護衛とは難しいものだ。
「ふぁあ~あ」
眠そうな目をこすりながらやっと起きてきた。
「もう少ししたら残りのパンを食べて出発したいんだが大丈夫か?」
「うん頑張る~」
伸びをしながらのんきな返事をしている。
ここが宿屋ではなく地面の上だということを忘れてしまいそうだ。
ーパン を食べ終え、荷物の確認をし2人は残りの道を歩いていた。
「ねぇジャック、次の街って本当に大丈夫なの?」
「さぁな、武器や防具はかなりいいものが安値で揃うらしいが」
盗賊の街ゲンベル、その名の通り街にあるものはほぼ全部強奪品や盗品である。
闇市も盛んで奴隷取引などが毎日のように行われている。
ここにくれば目当てのものが見つかる、見つからなければ取り寄せられるか交渉をすればいい、相手に先に買われたら盗ればいい。
そんな街である。
「俺も行ったことはないから、宿屋の店主が話盛ってる可能性もある、まだ信用はできんな」
「確かにそうだね〜」
のんきに相槌を打っているがサラのような奴が一番狙われやすい、うっかり一人歩きして変なもん買わされなきゃいいが…。
それに闇市も危険だ、あんま目を離さないようにしないといけないな、もし店主の話が本当なら。
「あ!あれそうじゃない?」
サラの指差す先にそびえ立つ街の城壁が見えた。
「なんとか日暮れまでにはつけたようだな」
「へへっ!それはどうかな?」
「!」
声がしたと同時に盗賊が周りを囲んできた。




