26話 訪問者
「だ、団長!たたたた大変です!」
「なんじゃ、ノックくらいせんか」
団長は落ち着いているが、部屋に入ってきた団員の男は怯えた様子で立っているのが精一杯という感じだった。
「そそ、それがホーク様がいきなりお越しになって、ジャックという男を出せと。出さないとこの傭兵団を解散させるとまで仰っていて」
「ふむ、ジャックお前さんホーク様と知り合いなのか?」
ホーク様という言葉が出た途端、クレイ団長の顔が曇り先ほどまでの落ち着きがすこしなくなった気がした。
「いえ、全く知らない人です。そのホーク様というのは誰ですか?」
記憶を失ってからこの街に来たのはこれが初めてだ。
もし、ホークという男が俺が記憶を失う前に何らかの形で知り合いだったとしたら…。
「ホーク様はこのフォレス王国を護る三将軍の1人だ。別名『雷神のホーク』。強力な雷のフォースであらゆる敵からこの国を護り続けておる、それは凄い人じゃ。
だがなぜ、お前さんに用があるのかのぉ。何かやらかしたのか?」
眉間にしわを寄せこちらを顔をジロリと覗き込む。
「俺は何もやらかしてないですよ。むしろこっちが何故俺に用があるのか聞きたいくらいです」
「ふむ…では直接言って聞くしかないみたいじゃな。ホーク様を長々と待たせるのも悪いし、早速行くぞ」
報告をしに来た団員についていくと、入り口横にある練習場にその男はいた。
なかなか来ないことに苛立っているのか、団員の1人が持っていたと思われる木の練習用の剣を持ち、次々と団員を地面になぎ倒していく。
「あれがフォレス三将軍の1人…」
驚き立ち止まる俺を気にする様子もなく、クレイ団長はホーク様の前へ歩いて行った。
そして
「お待たせしてしまったのは申し訳ないです。でもだからと言ってうちの団員たちをここまでボコボコにする必要はないと思いますじゃ」
となんとか落ち着いた声で話そうとしているが、大切な団員たちがボロボロになり地面に倒れている様子を見て怒りが混ざった声になってしまっている。
一方、声をかけられたホークという男はクレイ団長の方を見てはおらず、じっと俺のことを見ていた。
前髪が短く切られた金色の短髪、そして俺の方をじっと見る山吹色の瞳。
フォレス三将軍の1人だからなのか、それとも元々の性格なのか神経質そうな雰囲気がただよっている。
クレイ団長の話を聞き終わると、返事を返すことなく、つかつかと俺の方にやってきた。
そして前まで来るといきなり手に持っていた木製の剣を俺に振りかざした。




