22話 入団
建物の中に入ると最初にそこそこの広さの広間があり、数人の傭兵が武器や装備を磨いていた。
入ってきた俺たちに気づくと皆、じろじろとこちらを見る。
「お前達みたいな傭兵志望っぽくないのは、珍しいから仕方ないさ」
前を歩いてる武装した男がこちらを見て言う。
確かに冒険者一行が最強の傭兵団に来ることなんて、よほどの理由がない限りあるもんじゃない。
2階に上がり、奥の扉の前までやってきた。
「さて着いたが、団長に部屋に通していいか聞くから少し待ってろ」
そう言うと部屋の中に入っていった。
「ねぇ、もしダメって言われたらどうするの?」
「そん時は大声出して中の団長に頼み込むしかないな」
そんな会話をしていると扉が開き、武装した男が顔を出す。
「団長から許可が下りた、入れ」
「失礼します」
最大にして最強の傭兵団の団長の部屋だ、きっと豪華なんだろうと思っていたら、中に入ると団長が腰かけている椅子と書類の積まれた机、乱雑に入れられた本棚のみの簡素な部屋だった。
「アンタ達が傭兵志望者か?」
椅子をくるりとこちらに向けると、ボサボサの髪と適当にカットした顎髭、鍛え上げられた筋肉の屈強な男がにこりと笑いかけてきた。
「あ、いえ傭兵になりたいわけではなく、団長様にお聞きしたいことがありまして」
団長がほーっと驚きの声を上げる。
「ワシに聞きたいことねー、だがここは傭兵団だ。仲間以外に情報は教えられんのおー」
チラチラっと団長が顔を見てくる。
「ワシの見立てではお前さん、宝の持ち腐れな感じがするんじゃよなー」
「どういう意味です?」
うーーんと顎に手を置き、少し考え込んだ後
「今も強いには強いのじゃが、本来の力ならばワシさえ勝つことは不可能なくらい強いはずなのじゃ。だがその力が…なんというか封印されていると言うのか…」
机の周りをグルグルと回りながら回答に悩んでいた。
本来の力が封印されているというのは、記憶を失ったからなのだろうか。
記憶が戻れば力も取り戻せるのだろうか。
「まぁ、お前さんがワシに聞きたいことがあるならワシの傭兵団に入るしかないぞ」
どうだ?とこちらを見る。
「しかし、俺がこの団に一時的でも入ってる間、この2人は」
「あぁ、それなら心配ない。お前さんの仲間も傭兵団の仲間として同じように快適に過ごせるようにしてやろう」
団長がこれなら断れまい、と言いたげな顔をするのでサラとディーンの方を見ると2人とも最強の傭兵団の暮らしに興味津々な様子だった。
「分かりました。団長が俺の聞きたいことに答えてくれるまで、精一杯ここの仲間として頑張らさせてもらいます」
「うむ。で、名前はなんと言うんじゃ」
「俺は、ジャック。この2人はサラとディーンです。」
「そうか、ではジャック、サラ、ディーン。クレイ傭兵団にようこそ歓迎するぞ」




