2話 出発
ー2日後
傷は驚く速さで治っていた。
記憶を失う前となにか関係があるのだろうか。
今のところ分かっているのは護衛が出来るくらい剣の腕があり、ジャックという名前であるということ。
前を鼻歌交じりで歩いているサラに関してもわかったことはない。
「ねぇジャック難しい顔してどうしたの?」
気が付くと前を歩いていたはずのサラがいつの間にか俺の横にいた。
考え込んでいたつもりはないが、護衛としてこれは気を付けないといけない。
「そんな顔してたか悪い」
「もうっ!あれこれ考えてても何も始まらないでしょ。もっとこう笑顔笑顔」
頬に人差し指を当てにっこり笑う。
「そうだな」
確かに彼女の言うとおりだ。
考えたところで何かが分かるわけではない。
ただ自分が何者であったのか、今の自分は記憶を失う前の自分とは全く違う人間なのか。
もし何かに追われていたり、誰かを殺したことがあるのならばサラに迷惑をかけたくない、巻き込みたくない、だからこそ早く記憶を取り戻さないといけない
町を出るとすぐ山へ続く街道だった。
「ところでジャック、ここから先は何が出るかわからないけどオーラやフォースは使えるの?」
オーラとは全ての人が持っている『気』のようなもの。
展開することで、肉体を強化することができる。
フォースはオーラを体外に打ち出す技術。魔法の類と同じである。
エレメントを付加することで様々な現象を発生させることができる。
オーラ、エレメント能力が強いほど技は強力になる。
そしてエレメント、火水氷雷風土光闇の8属性。
修練により習得することはできず、生まれ落ちたときに決まるが、血の影響が大きい。
同じ属性のエレメントでも才能により強弱がある。
「宿屋でどの程度使えるか試してみたが、一通りは使えるみたいだ。後は実戦するかない」
「えっ!?ジャック宿屋でってもし力が制御出来なくて燃えちゃったらどうしたのーもうっ!」
顔を膨らませて怒る彼女を見て今気がついた。
確かに宿屋が全焼なんてなっていたらシャレで済む話じゃない、それどころかもっと自体が大きくなっていたかもしれない。
「すまない、そこまで考えていなかった。今後は気をつける」
「それならよし!そういえばここら辺は山賊やら盗賊やらが出るって噂だけどジャックの実戦にも私があなたの実力を確認するにも丁度いいんじゃないかしら?」
「そうだな。出ればの話だが」
辺りは日も落ちかけ山賊やらが出るには丁度いい暗さになってきていた。
おまけに道の両側は深い木々に覆われている、複数で襲ってきた場合、今の俺の実力で守りきれるかは不安だ。
「ジャック。次の街まではまだ半分くらいあるわ、今日は手頃なところを探して野宿にしましょ」
「あぁ、そうだな」
上等な服を着ているからてっきり野宿なんて嫌よーとか言うんだろうなと思っていたが意外とたくましい
ま、護衛もこういう子の方が楽でいいが。
しばらくして野宿を出来そうな場所に焚き火を作りその周りに腰を下ろした。
食事は街で買ったパンを1つずつ。
「サラ、俺の上着を貸すからこれかけて寝ろ。俺は山賊が出ないか見張っている」
「ありがとう」
そう言うと疲れていたのだろう、すぐに寝息を立てて寝てしまった。
これから先何が起こるのかわからない。
サラの事情もまだ知らない。
ただ俺は彼女についていけば何がわかる
そんな気がした




