19話 村の宝
村に戻ると村長とレティーが入り口で待っていた。
「おぉーよくぞご無事で。村に水のエレメントが戻ってきたということは、あの連中を退治してくださったのじゃな」
「はい、一応縄で縛っておいたのでどうするかはお任せします」
「うむ、いやしかし本当に感謝してもしきれませんわい」
そう言うと持っていたハンカチで顔を覆う。
「村長様エレメントが戻ってきてからずっとこの調子なのよ」
よく見ると村長の背中をさするレティーの目元も涙で潤んでいた。
「レティーちゃんも嬉しそうだね」
サラが隣で嬉しそうに笑う。
「これで村から避難していた者たちももどってくる、あなた方が来てくれたおかげで言い伝え通り危機から救われましたわい。ワシは…ワシは…」
村長が再びハンカチで顔を覆いしゃがみ込む。
しばらくしてレティーが立ち上がり深々とお辞儀をする。
「ジャックさん、サラさん、本当にありがとうございます。村長様が渡したいものがあるのと、今日は遅いですし家に泊まっていってください」
「ありがとう、助かるよ」
村長の家に着いた後、レティーがたくさんの品を夕食に作ってくれた。
「さぁ、どんどん食べてください。今日はお祝いです」
テーブルいっぱいに料理が並ぶ。
「これレティーや、あんまり作りすぎても食べきれんじゃしょうがないぞい」
次の品を作ろうとしているレティーを村長がたしなめる。
「ごめんなさい、ついうれしくて」
持っていたトレイで顔を少し隠す。
「ここにあるのくらいなら食べきれるんで大丈夫ですよ」
「そうそう、私もこう見えてたくさん食べれるんだから」
サラが自慢げな顔をしているが、たくさん食べられるなんて初耳だ。
結局、言っていたほど食べられずソファーの上でぐったりのびる。
「うう…食べ過ぎた」
「そりゃあんだけ無理して食べたらなー」
あきれながらレティーの淹れてくれたハーブティーを飲んでいると
「ジャックさんサラさんすこしいいですかな?」
村長が奥の部屋から小さな木箱を持って出てきた。
「はい。大丈夫ですけどそれは?」
「これはこの村に代々伝わる宝なんです」
そう言うと小さな木箱をそっと机の上に置きふたを開けた。
中には闇を切り取ったかのような黒い宝石のついたネックレスが入っていた。
「すごい真っ黒だね」
サラがまじまじと宝石を見つめる。
「これはドラゴンの目を使ったものだと言われておりましてな、なんでも『7つの竜の宝石』の一つだとワシは伝え聞いておりますのじゃ」
「『7つの竜の宝石』って実在するんですか?」
「さぁ、ワシはそうだと聞いただけなので…」
もしそれが本当に存在するものならばこの大陸のどこかにあと6つあることになる。
願いをかなえる宝石…それがもし本当なら。
「ねぇジャック、全部探してみない?もし本当ならそれって凄いことじゃん」
「そうだ…な。どこに行くって当てがあって旅してるわけじゃないしな」
「おふた方、それならフォレス王国に行ってみるのはどうですかな?」
村長がネックレスをサラの首にかける。
「これはこの村を救ってくださったあなた方に差し上げます」
「えっ、村の宝なのに」
ネックレスをはずそうとしたサラの手をおさえ
「ジャックさんサラさん、あなた方にならこれを渡してもいい。ワシがそう思ったんです、どうか受け取ってくだされ」
「ありがとうございます」
「さて…もうこんな時間じゃ、出発はやはり明日ですかの?」
「そうですね」
村長が立ち上がり残ったお茶を飲み干す。
「では早めに休まれた方がいい。フォレスは見るとこが多いですからのー体力は充分にあった方がいい」
「そうなんですか、じゃあそうします」
レティーとサラは同じ部屋に俺は用意してもらった部屋に入り眠りについた。




