16話 ブローグル湖
「この村はな、近くにあるブローグル湖という湖から水のエレメントの恩恵を受けているのじゃ。村がここまで繁栄したのもそのおかげ、だからワシらは代々湖を守り共に歩んできた」
そこまで話すと村長は一冊の本を棚から持ってきた。
「水のドラゴン『アーリティア』、澄んだ水のように美しいブローグル湖に住みし竜。ある時、アーリティアは湖を訪れた1人の若者に恋をした。そして幾度目かの再開時、思いの丈を若者にぶつけると若者は『私はこの近くに村を建てたいと思っている。アーリティア、君がその村を永久に平和で美しい村としてくれるなら私はあなたの気持ちにこたえよう』と言った。アーリティアは、湖が枯れない限り村を水のエレメントの加護が守り続けるようにしようと誓い、2人は結ばれた。それから250年、1人になったアーリティアにも命の終わりが近づいていた。アーリティアは村の長を呼び『私が死んでも加護は残り続けます。でもいつかこの村に大きな災厄が訪れる、その時村は滅ぶかもしれない』と言った。村長が村が助かる方法はないのかと問うと『深い赤髪の剣を背負った男と輝くような銀髪の白い服を着た少女、この2人に助けを求めなさい。さすれば村は救われるでしょう』と答える。その2日後アーリティアは静かに消えるように息を引き取った」
そっと本を閉じ
「この話の通りこの村は今、水の加護が消え更に大きな災厄に見舞われておる。ワシはこのドラゴンと人が作った村がなくなるのは嫌なんじゃ。ここは皆が守り続けそしてたくさんの思い出がある。どうか、どうかこの村を救ってはくれないだろうか」
村長は床に座りそして頭を床につけ懇願する。
「村長さん、そこまでしなくても…俺たちがこの村を必ず救ってみせますからだから」
「私もレティーや村長さんが喜ぶ姿みたいし、それに美しかった頃の村も見てみたいもん!」
「あぁ…ありがとうございます、ワシはここまで待ち続けてよかった、この知らせを聞けばきっと村から一時的に離れている者たちも戻ってきてくれる」
レティーも涙を流しながら喜びを見せる。
「ところで水の加護が消えたというとこは、ブローグル湖はもしかして」
「ええ、数か月前なんだかよくわからん連中がブローグル湖に現れて「ここは今日から我らのものだ」と。もちろん最初はワシらも抵抗しましたさ、でも攻撃を受けて負傷するものが後を絶たず…それからしばらくして湖の水が…」
「私たちはあいつらがなんで湖の水を狙ったのかわからないの。でもきっと悪いことに使おうとしてるに違いないわ」
「そうじゃお前さんたち名前をまだきいておらんかったな」
「俺はジャック、こっちはサラです」
「ジャックにサラか、どうかこの村をよろしくお願いします」
「はい」
俺は差し出された村長の手をぎゅっと握り返した。




