15話 リッムルテ
「なんだこれは…」
昨日は暗くて分からなかったが、翌朝宿の外に出てみるとほとんどの家が荒れ、人通りはなく、ゴーストタウンと言った方が早いような状況だった。
リッムルテはフォレス王国へ向かう人たちの中継地点。
だが普通は通行妨害程度でここまで廃村に近い状態になるはずはない。
「一体この村に何があったって言うんだ」
その後村の中を見て回ったがどこも荒れていて話を聞けそうな人には出会えなかった。
「いったん宿に戻って店主に話を聞くか」
「そうだね、お腹すいたけどお店も閉まっちゃってるし」
宿に戻ろうと来た道を引き返していると、前から1人の老人がこちらに歩いてきていた。
「ねぇ、ジャック。おじいちゃんいたけど」
「あの、すいません」
声をかけると老人は立ち止まりこちら見て。
「あぁーもしやあなた方が旅のお方ですかな?」
とゆったりした口調で聞いてきた。
「そうですけど」
「やはりそうでしたか。確かに言い伝え通りの見た目、間違いない」
「言い伝え?」
「まぁ詳しくはワシの家で」
老人はそういうと俺たちが来た道の方へ歩き出した。
色々気にはなったがとりあえずついていくと、さっき見た場所より少し奥の方に荒れていない手入れされた家が現れた。
「こんなところに荒れていない家があったなんて」
「ふぉっふぉっふぉ、ここは村の者でないとなかなか分からない場所なんじゃよ」
コンコンと老人が持っていた杖で扉をたたく。
パタパタと走ってくる音が聞こえ扉が開いた。
「村長様おかえりなさい」
中から小柄な女性が顔を出す。
「「え、村長様?!」」
思わず同時に驚きの声をだしてしまった。
「ふぉっふぉふぉっ、いかにもワシがここリッムルテの村長なのじゃ。そしてこの子は孫娘のレティー」
「よろしくっ」
レティーが笑顔で返す。
「立話もなんじゃ、部屋に入っておくれ」
「おじゃまします」
部屋に入ると中ははく製やらが飾ってあり、中々の雰囲気だ。
椅子に座っているとレティーが奥からハーブティーを持って出てきた。
「あのねこのハーブティー、レティーが作ったんだよ」
カップからはいい香りが漂っている。
「うん、うまいな」
「本当、これおいしーい」
「えへへ、嬉しいな。この村私たちと宿屋の店主さん以外いないからさ。本当はたくさんの人に飲んでもらって、もっといいもの作りたいんだよね」
レティーが寂しそうな笑みを浮かべる。
「あの、村長さんこの村で何があったんですか?」
「そうじゃな、そのことをお前さんたちに話さんとな。もし言い伝えが本当ならきっとこの村を救ってくださる」
村長は一呼吸置くと静かに語り始めた。




