13話 7つの竜の宝石
中に戻るとほとんどの客は踊りの疲れもあってなのかそれともただ単に酔い潰れただけなのかぐっすり寝ていた。
辛うじて起きている人もすでにベロンベロンになっていていつ寝てもおかしくない状態だ。
「もう〜2人して長々と何してたのよ〜」
マスターが俺の肘を軽く小突いてくる。
「別にただ話をしていただけですよ」
「本当に〜?」
今度はチラチラっとサラの方を見る。
「この大陸に伝わるドラゴンの伝説の話をしていたんですー」
「へードラゴンの伝説ってあの『7つの竜の宝石』を全て集めたものの願いを1つ叶えるってやつ?」
「「え?!」」
初めて聞く話に驚いて同時にマスターの方を見てしまった。
「なによ〜2人して驚いちゃって、もしかしてこのドラゴンの伝説の話は聞いたことなかったの?」
「はい、あの詳しく教えてもらえますか?」
「コホン、それじゃご期待にこたえて」
そう言うとマスターは後ろの酒棚に置いてある一冊の本を手に取り開いた。
「昔、1匹のドラゴンと1人の人間の娘が森の奥深くでひっそりと仲良く暮らしておりました。娘は白銀の様な銀髪を持ち聡明で美しく、ドラゴンは光をまとうかのように白く輝いていました。ある日、ドラゴンが狩りを終え戻ると娘の姿がありません。ドラゴンは、普段娘が家の外を1人で出ることはないのを知っていたので、あたりを必死に探しました。来る日も来る日も探しましたが、娘が見つかることはありませんでした。ドラゴンは嘆き悲しみ、やがて人里に降り助けを求めようとしましたが、その村の人達はドラゴンの姿を見るなり扉を閉ざし石を投げるものまでいました。ドラゴンはその様子を見てこう思いました『人間は悪いやつだ。だからきっと彼女を殺してしまったんだ、許せない』ドラゴンは怒り狂い世界を人間を滅ぼそうとしました。そして7年の時が経った頃、ドラゴンの目の前にあの白銀の様な銀髪の女が現れたのです。しかし自我を失ったドラゴンは、彼女の存在に気付くことはありませんでした。彼女は『私のためにごめんね』そういうと手をかざしました。するとドラゴンは白い光の玉となり、彼女はそれを包み込む様に抱きしめ涙を流しました。戦いが終わったのちに彼女は『7つの竜の宝石』を作り大陸のどこかに隠し、それを全て見つけたものの願いを1つ叶えると約束を残したのです。おしまい」
マスターはそっと本を閉じ机の上に置いた。
「この本意外と数ある伝説の本の中でもマイナーなのよね、あたしは一番好きだけど」
もし、この『7つの竜の宝石』が本当に実在するなら…確かめてみる価値はある。
「あのマスター、この近くにドラゴンにまつわる話がある街や村ってないですかね?」
「ん〜そういえばここから少し行ったとこにあるリッムルテって小さな村にそんな話があったような〜」
やはりここはマスターに頼って正解だった。
「まさかあなた達行ってみるつもりなの?」
「ええ、もしかしたら希望になるかもしれないんで」
「私もジャックがそこに行きたいなら賛成だよ」
「そう、イケメンがいなくなると寂しいけど…頑張りなさい。本当にあるといいわね」
「いろいろお世話になりました」
「またここによることがあったら来てちょうだい」
「ぜひ」
俺はマスターとしっかり握手を交わした。




